おことわり
R18
このブログには、エッチなことがたくさん書いてあります。まだ18歳になっていない人が見ていい所ではありません。今からこんな所を見ていると、将来ダメ人間になってしまいます。早くほかのページへ移動してください。

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なお、掲載している小説はすべて虚構であり、実在の人物・団体等とは一切の関係がございません。

    
お知らせ
「オナこもりの小説」は、エロ小説を気ままにアップしていくブログです。たまに、AV女優や、TVで見た巨乳のことなども書いています。左サイドにある「カテゴリ」から、それっぽい項目を選んでご覧ください。



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妄想の座敷牢羞恥の風ましゅまろくらぶ



小説には、連続作品と一話完結作品があります。連続作品は、左「カテゴリ」の各作品名より一話から順番に読むことができます。また「目次」には、各作品の概要などをまとめた記事が集められています。

■連続作品
◆長編作品
「子宝混浴『湯けむ輪』~美肌効姦~」

◆中編作品
「大輪動会~友母姦戦記~」
「青き山、揺れる」 ▼「師匠のお筆」

◆オムニバス
「母を犯されて」

◆短編作品
「育てる夫」  ▼「最後の願い」  ▼「ママの枕」  ▼「ブラック&ワイフ」
「夏のおばさん」  ▼「二回り三回り年下男」  ▼「兄と妻」

■一話完結
「ふんどし締めて」
「旧居出し納め・新居出し初め」  ▼「牛方と嫁っこ」  ▼「ガンカケ」
「祭りの声にまぎれて」  ▼「シーコイコイコイ!」  ▼「サルオナ」  ▼「母の独白」
「童貞卒業式」 ▼「お昼寝おばさん」  ▼「上手くやりたい」 ▼「珍休さんと水あめ女」
「栗の花匂う人」「乳搾りの手コキ」 ▼「妻つき餅」 ▼「いたずらの入り口」
「学食のおばさん便器」 ▼「山姥今様」 ▼「おしっこ、ついてきて。」

作品一覧

湯けむ輪(34) 21:18

子宝混浴
『湯けむ
~美肌効


こだからこんよく
ゆけむりん
びはだこうかん






――午後九時十八分


その人物は、呆気にとられて固まっていた。だがそれも、宇川が声をかけるまでの一瞬の間だけだった。

「吉野はん! 吉野はんやないか!」

「お、おお……!」

長四角の顔には縦に深い皺が刻まれ、そのてっぺんに申し訳程度に髪の毛が乗っている、まるでそれが野菜のヘタのように見える、そんな男だ。やはり宇川らの一行の一人で、名を吉野(よしの)という。

「な、なんや……どういう……?」

だいぶ酔っているらしくそれは赤くなった顔にも明らかだったが、さすがに目の前の状況を見ては、酔いながらも戸惑わざるを得ないよう。

「いやあ、ここで知りおうた奥さんでな、ほんでこの子らもここでおうたんやけど、まあ折角やしみんなで仲良うしょうか、いうことで」

宇川が言えば、湊山も、

「そうですねん。混浴やさかいに、色々出会いがありますわ」

と、ほのぼのした調子で説明する。それを聞いて吉野は、

「へえ……そうか、混浴か……」

と、基本的なことに感心しつつもまだ心おさまらぬ様子で、しかし口元は明らかに俗な興味で緩ませながら、湯船の中へ入ってきた。

「えらい仲良なったもんやなあ」

言いながら、吉野はついに満面をほころばせた。それと同時に、彼の股間の肉棒は早くも持ちあがりだす。

「そやで。どスケベな奥さんでなあ、一人で混浴風呂にマワされに来とんねん」

牛滝がそう話す途中で、吉野はあることに気づいた。

「いやっ、牛ちゃん! エラいとこに入ってるやんか」

そう指摘したのは、牛滝のペニスが倫子のアナルに入っていることである。

「どこから声出してんのかと思たら」

吉野の指摘を受けて、牛滝は答える。

「へへ、ケツや。ケツでしてんねん。混浴に奥さん一人やさかいな、女手一つでは穴が間に合わんねや」

まるで、混浴風呂に入ったら女はペニスを入れられるのが当たり前といったような口ぶりである。さらに、

「この奥さんも、ケツの穴つこてくれ、言いよるさかいな。見てみぃ、後ろから前から挿されて、ずっとあの世に逝きっぱなしやわ」

相変わらず勝手なことを並べ立てていく。もっとも、倫子の気持ちが昇天し続けているのは事実だ。

そんな彼女を取り巻いてずらりと残りの男根が居並ぶ。彼女にとっては、もはや男たちというより男根たちといった方がイメージしやすい。彼らという存在を、男根だけで認識しているのである。その部分だけが意味を持つと。

ここは彼女にとって天国なのか地獄なのか。快楽が精神を凌駕した今となっては、彼女に聞いてみてもはっきりしないだろう。

さて、吉野は彼ら男根たちを見まわして言うよう、

「これ、みんな?」

全員が倫子とまぐわったのかという意図である。

「そや、兄弟や」

宇川がニヤニヤと言う。その上、

「この子らなんかもう二回したで」

と、赤石と別所を指した。

「そや、自分の番やんか」

牛滝が気づいて、栃尾に言う。栃尾は待ってましたとばかりに倫子に挿入した。再びの二本挿しである。

「次、しまっか?」

宇川が吉野に聞いた。

「へへっ」

吉野は笑ってはっきり言わなかったが、その意思はもう明白だった。

「あ、別に焦らんでもエエねんで」

次が控えていると知って慌てないようにと、宇川は栃尾を気遣った。だが、栃尾にはそう言われようが言われまいが関係なかった。彼はあまりにもあっけなく射精を終えてしまっていたからである。

引きさがる彼、それと入れ替わりに、吉野が前に進み出た。


<つづく>



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[2010/08/30 21:18] | 「湯けむ輪」 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
湯けむ輪(35) 21:21

子宝混浴
『湯けむ
~美肌効


こだからこんよく
ゆけむりん
びはだこうかん





――午後九時二十一分


「へへへぇ」

笑みを浮かべた吉野は、陰茎の先を迷いなく倫子の膣に押し込んでいった。そこにはさんざっぱら男たちの精液が放出されていたが、それらは何ら彼をためらわせるものではなかった。

「おお……具合ええ……!」

彼は湯に浸かるのと同じようにため息ついて、その快感を表現した。

一方、彼がすっかり倫子の内にその身を埋めると、牛滝は彼女ごとおもむろに起き直った。

「ちょっとこう、挟んでしょうか」

彼が言うには、倫子を二人の間で持ち上げ、その前後から挟み撃ちにしようというのである。すぐにそれは実行され、二人は男根を挿入したまま倫子の体を宙に持ち上げた。

「サンドイッチや」

牛滝は言った。やや不自由な体勢ながら、両者はカクカクと腰を振りだす。するとそれにつれ、倫子の足がブラブラと揺れた。

彼女にとっては、たとえ相手が一人でも初めての体位である。もし気が確かなら、それなりの心の動きがあっただろう。だが、生憎今は、

「アウアフ……」

などと、意味不明な声を微かに上げ、口辺からよだれとザーメンを垂らすだけだった。

その口を吉野が吸う。そうすると、密着する二人の間で倫子の巨大な乳房がつぶれ、さらに余った脂肪が隙間からあふれた。それは、彼女の体が上下する度に、吉野の胸板の上でツルツルと滑る。

吉野はその感触を楽しみつつ、深々と肉棒を彼女の前の穴に挿し入れた。二人の縮れ毛が入り口で絡み合う。他方、後ろの穴の入り口にも縮れ毛はへばりついていたが、それは牛滝もまた深々とその穴に肉棒を挿し込んでいたからだった。

「どないでっか、吉野はん」

彼は問う。

「ええ具合や、こんなん初めてや」

吉野は答えた。ユッサユッサと二人は倫子を抱え揺する。しばらくそうしていたが、やがて牛滝が言った。

「もうぼちぼち出そうやわ。どない? 一緒に出しまひょか?」

「そうやな」

吉野は彼の意図をすぐに汲み取って、その申し出を受けた。すなわち、前後で同時に射精しようというのである。二人は申し合わせてラストスパートのピストンを行った。

「アウフウゥヒエヘエェ……ッ!」

倫子は白目をむいてだらしなく二人にもたれかかる。本来なら前の男にしがみついてでも体を安定させたいところだが、もはやそんな防衛意識すら放棄してしまうほどに、彼女は手いっぱいだった。もしも二人が一気に手を引いたら、そのまま湯の中にドボンである。

その様子を指さして、宇川が笑う。

「重そうやなあ。こら重労働やで」

その指摘は当意即妙で、確かに今の倫子はすこぶる重そうだった。普段なら決して太っては見えないのだが、大の大人の女ひとり、こうやってだらけきった格好で抱えあげられていると、たとえ二人がかりでも重そうに見えた。

もっとも、労働中の男達が音を上げることはなかった。彼らが宣言したのは、むしろ仕事の完遂である。

「ああっ!」

「うっ!」

口々に快感の叫びを上げて、前後の両者は倫子の体内に精液を吹きあげた。

――同時射精。膣内と肛門内に、一斉に熱いスペルマがほとばしる。生殖行為としては概念上ありえないことだ。そもそも二人の男と同時に性交渉することもだが。

「うわあ、すごいなあ」

湊山が感嘆の声を上げた。まるで二発同時の打ち上げ花火を見たようだった。

ひとしきり脈動を終えた所で、まず吉野が肉棒を抜く。すると、栓が抜けた穴ぼこから、ツーッと白濁液が流れ落ちた。

続いては牛滝の番だ。だが彼は大股開きに倫子を抱え上げたまま、容易に男根を抜こうとしなかった。

「このままお風呂でブリブリされたらかなんからなあ」

意外な彼の心配りだった。もしものことを心配し、彼は彼女を抱えたまま脱衣所の方を目指す。

「おいおい、どこ行くねんな」

宇川が尋ねる。すると、牛滝はそれに答えて、

「ん? トイレ、トイレ」

そう言って、男性の脱衣所の方へ入って行った。

「なんや……、そやからアナルはめんどくさいねん」

宇川はいささか不満そうである。

「……しかしあんたら、ずっとここおったんかいな?」

ふと吉野が問う。

「そやねん」

宇川が応じる。

「さすがにのぼせてきたわ」

彼はそう言って笑った。


<つづく>



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[2010/08/31 21:21] | 「湯けむ輪」 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
湯けむ輪(36) 21:26

子宝混浴
『湯けむ
~美肌効


こだからこんよく
ゆけむりん
びはだこうかん






――午後九時二十六分


主役が一旦抜け、浴場が静けさを取り戻しつつあった頃、脱衣所では一つの動きがあった。これまでの例によって、新たな仲間が加わったのである。彼とは牛滝が倫子とともに便所から出てきた所で出くわした。

「オー、誰か思たら」

声をかけてきたのは須賀谷(すがたに)という男、やはり牛滝らの連れである。二人は談笑しながら、憔悴しきった風の倫子を連れて浴場に入った。

倫子ときたら、輪姦された上に便所の世話までされて、もはや人心地がしていない。浴場に連れ戻された彼女はは、まず真っ先に“ウォシュレット”と称してシャワーで股間を洗い流された。

「アーきれいなった。これでいつでも使えるで。ケツの穴準備万端や!」

牛滝は嬉々として言った。

その直後、当たり前のように倫子はまた新しい男、須賀谷に犯された。自然な段取りだった。

「こんなエエことできる思わへんかったわ」

須賀谷は言って、洗い場に四つん這いにさせた倫子の膣を後ろから突きまくった。さらに彼女の口を、湯船から上がった吉野が男根で塞ぐ。勃起はしていないが、性欲は満々だ。

「ほんまやで。こんななんもない宿で、こんなお得ななあ」

吉野は言う。それを聞いて、牛滝がまた例によって、やれ淫乱だの、やれ変態だのと倫子のことを勝手に解説して聞かせる。須賀谷も吉野も、それを聞いて何の不審も抱かなかった。むしろ目の前の肉欲が全てだった。

やがて、須賀谷は倫子の体内で果てる。これまた何の違和感もない膣内射精。彼の肉棒が抜かれると、ドロドロと白い汁がこぼれ落ちる。次々と入れられて飲まされて、まるでミルク飲み人形のような膣だ。

それを目で追いながら、牛滝は言う。

「おしっ、次誰や。自分らまだヤりたいやろ」

彼は少年たちに問いかける。しかし、三人が答える代わりに発言したのは宇川だった。

「そのことなんやけどな。さっき話してたんやけど、ええ加減のぼせてきたさかい、ぼちぼち上がろかちゅうてんねん」

「エー上がる?」

牛滝は不満そうだ。続けて須賀谷も、

「今来たとこやのに……」

と、冗談混じりながら本音を漏らす。

「うんまあ、お風呂は入ったらええねんけどな。ボクらはもう十分浸かったし、一遍上がってやな、ほんで、奥さんと一緒に上行こか、上行ってみんなで続きしょうか言うててん」

宇川がこう説明すると、牛滝らも納得した様子だ。すると、須賀谷が、

「あ、そう言うたら、渡瀬さんと榊原さんもこっち来る言うたはったし、どっちみちここにしばらくおりますわ」

と申し出、彼だけはまだ浴場に残ることになった。

こうして彼らの今後のプランは決まった。この輪の中心人物ともいうべき倫子の意見が聴取されることもなく。

「ええやんな? 奥さん。まだまだ夜は長いし」

宇川がささやく。すると牛滝も、

「チンポは仰山あるさかいな、一晩中犯してまだまだイかせまくったんで」

湊山も、

「奥さん、忘れられへん夜にしましょか。思い出づくりですわ」

口々にささやく。

「思い出づくりっちゅうか、子づくりちゃうか」

牛滝の言葉に皆笑った。

(ああ……)

倫子はどうしていいか分からないままに、そのまま男たちに連れ去られていった。足は地面に着いていたが、現実に歩いているものかどうかも分からなかった。それでも、これから起こるのがどれほどとんでもないことかというのだけは肌で感じられた。大変な大仕事をまだまだしなければならないのだと。

もっとも、その大仕事の前に、彼女にはまだ一つ二つこなさなければならない仕事が残っていた。その一つが、早速に脱衣所に出た彼女を待ち受けていた。


<つづく>



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[2010/09/04 21:26] | 「湯けむ輪」 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
湯けむ輪(37) 21:37

子宝混浴
『湯けむ
~美肌効


こだからこんよく
ゆけむりん
びはだこうかん






――午後九時三十七分


男性用の脱衣所に、倫子は男らに連れられるままに入った。そして、そこでまた新しい男根を入れられた。

渡瀬(わたぜ)という、さっき須賀谷が言っていた男の一人だ。一行が脱衣所に出た時、ちょうど外から入って来た所をはち合わせた。そしてそのまま、ほぼ出会いがしらにセックス。無論、周りの男たちの誘導によって。

「アア~、最高やなあ」

後ろから倫子の尻を引き寄せて、その密着状態のまま膣内に射精しつつ渡瀬は言った。

「一杯飲んで、美味しいもん食べて、次は女やなあて、ちょうど思てたとこやねん」

と、満足そうである。肉穴から明るみに帰ってきた肉棒は、ピクンピクンと跳ねて、まるで彼の喜びに同調しているかのようだった。彼はその後須賀谷の待つ浴場へと入っていった。

他方、倫子は浴衣を着せられていた。無人の女性用脱衣所から持ってこられた、彼女が脱いだものである。外での移動にはさすがに全裸はまずかろうとの宇川の判断だった。

但し、下着は着けさせられなかった。誰が提案するともなしに、そういうことになっていた。男たちにとっては遊び心である。

「ごっついブラジャーやなあ!」

手に持って広げながら牛滝が言った。確かに大きなカップではあった。持ち主の胸の豊かさを想像するに余りある代物であった。

「どスケベな乳にぴったりやで」

彼はそれを倫子の胸に合わせてみた後、傍にいた栃尾の方へ放り投げた。それを見て宇川が言う。

「持って帰り、記念に」

冗談とも本気ともつかない言葉に、栃尾は赤石と顔を見合わせる。彼らは仲間内でちょっと譲り合ったりしたが、その場には捨て置けないので、結局上下の下着とも栃尾が持って出ることになった。

ぞろぞろと脱衣所を出る。宿泊客の少ない館内は静まり返っている。途中の売店も閉まっている。ただ自動販売機だけが変わらぬ営業を続けていた。その前を抜け、奥のエレベーターへ。誰にも会わない。倫子はひそかに胸をなでおろしていた。

また脱衣所から出ると外気が心地よく、その冷たさは彼女の神経をなだめた。一方でそれは現実に立ち戻らんとする空気でもあった。彼女は嫌な予感がした。これから起こる変態的痴情事への恐れ? どこまでも堕ちてみたいという自身の破滅的性向への恐れ? いな、それよりももっと直接的で具体的な恐れだ。

小規模な館内にエレベーターは一台だけで、一行はその前でしばらく待った後、降りてきた箱の中に順々に乗り込んでいった。倫子は気づかなかった。彼女の前には男たちの背中。だから見えなかった。開いたドアから出てくる人々の顔が。

「お母さん!」

その声は鋭い切っ先でもって倫子の胸を貫いた。

「お母さん!」

もう一度呼びかけられる。倫子は凍れる背筋のままに振り返った。既にその身は男達に囲まれて、箱の中に踏みこんでいた。

「あっ……!」

目で追うまでもなかった。最も近しい者の顔はどこにいても見分けられるものだ。エレベーターを出てすぐの所、そこに娘がいた。倫子の娘である。予感は的中した。決定的な事実、身内の者に遭遇するということ、しかも最も見られてはまずい相手に。

それでも、倫子の脳はフル稼働し、それにともなってある表情が形づくられる。母親の顔、である。どんな境遇を経ていようとも我が子の前では母でいなければならぬと考える、それが母親というものだ。

「あら」

浴場での痴貌から一転、凛とした顔になる。しかし、さりげなく浴衣の前を引き締めるあたり、動揺はうかがえた。

倫子は思った、このままエレベーターはもう上がってしまうだろう、あるいは、上がってしまえばいいと。これを機会として降りるという選択もありえたが、穢れてしまった体で娘の前に出るのは気が引けたし、それに、男達がどういう態度に出るか懸念がないではなかった。

とにかくエレベーターはもう出発する、それでとりあえずこのいたたまれない状況からは解放される、それでいいのだ、その後のことはそれから考えればいいと、見た目は取り繕えてもとても得策を練れるような心境ではない彼女は必死で念じた。

彼女は一瞬待った。扉が閉まりかけ、娘に何か言葉をかけ損なう演技を想定しながら。ところが、扉は閉まらなかった。室内の誰かが、気を回して“開く”のボタンを押していたからである。


<つづく>



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[2010/09/05 21:37] | 「湯けむ輪」 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
湯けむ輪(38) 21:44

子宝混浴
『湯けむ
~美肌効


こだからこんよく
ゆけむりん
びはだこうかん






――午後九時四十四分


「もう、待ってたんだよ! ずっとお風呂にいたの?」

娘は唇を尖らせて母に詰め寄らんとする。

「ええ、まあ……」

母は焦っていた。左右を視界の端で窺って落ち着かない様子だ。

それを見て娘も周囲の人々を意識する。と同時に、母がこちらに出てくればいいのにと思いつつ、こう言った。

「これからみんなでカラオケに行こうって言ってるんだけど、お母さんも来てよ」

彼女は後ろの方を指さす。見ると、向こうの方に見覚えのある後ろ姿が幾人か歩いていた。

「ええそうね……でも……」

倫子は言い淀む。と、彼女の懸念を見澄ましたかのように、なんと彼女の体、それも股間の辺りに触れるものがあった。偶然手が当たったという程度ではなく、明らかにまさぐるような感じで。

(うそでしょ!?)

こんな堂々たる痴漢があるだろうかと、倫子は疑った。だが現実にその手は彼女の股間、浴衣の中にまで侵入してくる。さらに驚くべきことには、後ろから彼女の浴衣の裾をまくり上げさえし始めたのだ。

(ちょっと! いくらなんでも!)

倫子は動揺した。しかしさすがに母である。娘の前では表情を崩さない。たとえ下着を着けていなくとも、その恥部を男にまさぐられようとも、その上恥穴に指を入れられてさえも。

誰とも知れぬ男の指は、秘唇を無茶苦茶にかき回して、母たる女を容赦なく辱める。濃厚な粘液が肉襞から指の腹を濡らす。女の穴は彼女の分別に反して、もうメスの役割に専念しだしていた。

それでも倫子は耐えなければならない。火照りきった肉体はいまだ燃焼状態にあり、ちょっと気を抜けばメスの悦びに乗っ取られていまいそうだ。

だが、今さら指で責められたとてどうということもないのも事実だ。さんざっぱら種付され続けた後なのである。あまつさえ、この期に及んで貞操の呵責にさいなまれることもない。

と、一瞬でもたかをくくったのがかえっていけなかった。

「お母さんね……」

そう言いかけた時だった。ベッタリ、と尻の間に、あのすっかり慣れ親しんだオスの重みが乗っかったではないか。倫子はそれまでうまく演じきるつもりだったが、あまりにびっくりしてちょっと声を裏返らせてしまった。

幸いにそれを怪しまれることはなかった。が、いつばれるとも分からない。倫子の前にも男が乗っており、彼女は彼らの間から顔を出して娘と会話していたのだが、下半身まですっかり隠れているかどうかは、大いに疑問であった。

「お、お母さんね、一回お部屋に……」

(お、お願い! お願いですから、ここではやめて!)

表と裏で言葉が分離していく。

男の肉棒はますますいきり立ち、そして彼女の尻の下へ潜り始める。

(うそよ……さすがに……それはまさか……)

彼女はうたぐりなからも、既に本心では諦めざるをえないことを知っていた。彼女の性器はキュンと引き締まり、中からじんわりと汁を湧き出させてくる。それは悦びの証か、それとも条件反射か。

肉棒は盲目的に甘い水を求めてその入り口を行き来していたが、ようやく探り当てたと見えて、そこからは一遍にその頭を潜り込ませてきた。

(入って……くる……は、入る!)

「お、お部屋に、入る、から……」

彼女は言っていたが、それは“帰る”の言い間違いだった。

「エー! いいじゃん、このまま行こうよ!」

娘は言い間違いには気づかなかったが、なおも食い下がった。

「あ、でも、ね、一回帰ってから……」

(お願い許して……!)

娘にも男にも向けて彼女は願う。しかし、どちらも聞き届けてくれない。男の腰はじわじわと動いて、肉竿は穴の中でピクピクと脈打つ。

「なんでなんで? めんどくさいじゃん!」

娘はいつになく聞きわけがない。なんとしてもこれを説得しなければならぬ。そうして、この場を早く終わらせなければ。

「お化粧、直したいし……、ね? すぐに……イ……行くからぁ」

妙に色っぽい声で倫子は言う。認めたくはなかったが、この常識外れの状況において、妙にゾクゾクと肉体が感じるのである。先ほどまでの浴場という、ある種隔絶された空間での場合とは違う、現実的な緊張感がそうさせるのだろうか。

ともかくも、娘はようやくのことで納得してくれた。

(ごめんね……お母さん……お母さん……イく、から……)

「イくから……先に、イッてぇ……」

言った刹那、倫子は歯を食いしばった。それと同時に、膣肉も食いしばる。その時、後ろから咳払いに似せた呻きが一つ聞こえた。瞬間、熱いほとばしりが体の芯にしみ込んでくる。

それと、扉が閉まるのとどちらが早かったかは分からない。だが事実として、倫子は娘の目前で見ず知らずの男にペニスとザーメンを入れられたのである。

(最低……わたし……)

風呂場では忘れかけていた、あるいは気づかないように努めてきた罪悪感が心に充満していく。

「ハア~良かった。こういうシチュエーションはたまらんな。全然モたへんかった。そうか、あの子娘やったんか」

それは今回彼女を新しく犯した、榊原(さかきばら)という名の男。娘たちと一緒に降りてきたエレベーターに乗っていたところを、仲間たちと合流し、そのわずかの間に倫子の事情を知ったのである。

「無茶するなあ、あんさんは」

「そやけど、娘の前でチンポ突っ込まれて、どえらい感じとったやん奥さん。もうほんまチンポ狂いやな」

宇川と牛滝が口々に囃したてて笑いを誘う。そんな状況とはつゆ知らず娘は先へ歩いていたが、ふと後ろでエレベーターが再び開いたので振り返って見た。ちょっと見ただけだったが、そこに母の顔は見いだせなかった。

母はその時その場ににしゃがみ込んで、自分を犯し終えた榊原のペニスをフェラチオしていたからである。


<つづく>




現在時刻21:47(1時間54分経過)
挿入された男根=11本
射精された回数=15発(膣14・尻1)



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[2010/09/06 21:44] | 「湯けむ輪」 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
「湯けむ輪」目次

<作品名>
子宝混浴『湯けむ輪』~美肌交姦~
(こだからこんよく ゆけむりん びはだこうかん)


<作品概要>
ある温泉宿で、一人の人妻が複数の男達と一晩中まぐわい続けるお話。
属性:熟女、和姦、輪姦、中出し、童貞、アナルほか


<あらすじ> 
倫子(りんこ)は、夫と娘、それに夫の仕事仲間の家族三組とともに、温泉旅行にやってきた。

夕飯の後、連れの幼子達と共に大浴場へと赴いた彼女。相客がいないのをいいことにはしゃぎ回っていたが、途中で加わった別な連れの息子・肇(はじめ)と不可抗力ながら関係を結んでしまう。

知り合いの子との過ちに呆然とする倫子。しかし、彼らが去った後も事件は終わらなかった。サウナ室にじっとこもって、一部始終を見ていた男・宇川(うかわ)が現れたのだ。既に性感が高まっていたこともあり、また旅先の解放感も手伝って、言い寄られるままに倫子は彼にも体を許してしまう。

その興奮の極地で、さらなる衝撃的事実が彼女を襲った。宇川と結合している所を、後から来た彼の仲間・牛滝(うしたき)と湊山(みなとやま)に見られてしまったのだ。もはや避けられない定めとして、流されるままに彼らとも肉欲を交わしていく倫子。

さらには、合宿で来ていた少年三人ともその場で続けざまに交尾を重ねていく。途中でアヌスの処女まで奪われ、膣・口・尻に三本同時に男根を入れられる。それらあまりに想像を超えた状況の中、信じられない程の絶頂を繰り返して、倫子は性によって狂わされてしまう。

その後も続々と現れる新しき男根達。浴場を出ても痴戯は終わらず、むしろその度は加速するばかり。果てしない輪姦遊戯は一体どこまでエスカレートするのか。


<登場人物>
板橋倫子(いたばし りんこ)
物語の主人公。42歳。日頃は家事も子育ても平凡にこなす専業主婦。子供たちと真っ裸ではしゃぎ回る無邪気な一面も。性欲はそれなりに成熟しており、考え方も柔軟。巨大な乳房を筆頭に豊満な肉体を有する。


~倫子と共に来た仲間達~
自身の家族と、日頃から仲良くしている三家族。

新木翔太(あらき しょうた)・修次(しゅうじ)
幼い兄弟。まだ性には目覚めていないが、勃起はする。

鶴巻肇(つるまき はじめ)
鶴巻の息子。幼子達の目を盗み、戯れに乗じて倫子を犯してしまう。

倫子の娘
健康的で無邪気。性にはまだ無頓着である。夕食以降、母とはすれ違いが続く。

翔太と修次の母
酒に弱く、吐いて寝込んでいる。

亀山の妻・亀山の娘
年の若い妻とまだ幼い娘。

鶴巻(つるまき)
板橋の長年の仲間で、倫子とも旧知。肇の父。

新木(あらき)
板橋の仕事仲間。翔太と修次の父。

亀山(かめやま)
板橋の下で仕事を覚え独立した。倫子に惚れている。

板橋(いたばし)
倫子の配偶者。鈍感で朴念仁。


~関西弁中年グループ~
宴会の後で機嫌が良い。いずれも好色。

宇川(うかわ)
肇との行為を目撃後、倫子を口説く。実質、一連の件の首謀者。

牛滝(うしたき)
ムードメーカー的存在。倫子のアナル・ヴァージンを奪う。

湊山(みなとやま)
グループでは若手。膣内射精を好む。

吉野(よしの)
グループでは最年長も、まだまだ現役。

須賀谷(すがたに)
撮影担当。倫子の痴態も激写。

渡瀬(わたぜ)
粗野で無鉄砲。倫子の窮地にも頓着しない。

榊原(さかきばら)
言葉攻めを中心に倫子を辱める。


~合宿卓球部員達~
いずれも倫子で童貞を卒業する。

三年生
赤石(あかいし)

栃尾(とちお)

別所(べっしょ)


二年生
三国(みくに)

白峰(しらみね)

大牧(おおまき)

関(せき)


一年生
西浦(にしうら)

伊東(いとう)


~卓球部OB学生~
玉造(たまつくり)

川棚(かわたな)

東郷(とうごう)


~卓球部引率者~
宮浜(みやはま)…顧問

奥津(おくつ)…監督


~宿泊所従業員~
袋田(ふくろだ)

藪塚(やぶつか)


~タクシー運転手~
浪岡(なみおか)

松倉(まつくら)


~周辺の住人~
矢板(やいた)
スナック「ベル」のマスター

鎌先(かまさき)
ピンサロ「リング」店長

羽根沢(はねさわ)

森岳(もりたけ)

沼尻(ぬまじり)


<目次>
[プロローグ]
v.s.翔太・修次・肇
19:53(1)

[大浴場編 1]
v.s.宇川・牛滝・湊山・赤石・栃尾・別所・吉野・須賀谷・渡瀬・榊原
20:11(6)

[合宿大部屋編]
v.s.宇川・牛滝・湊山・赤石・栃尾・別所・吉野・須賀谷・渡瀬・榊原・三国・白峰・大牧・関・西浦・伊東・玉造・川棚・東郷
21:54(39)

[階段編]
v.s.宮浜・奥津
23:20(43)

[スナック編]
v.s.渡瀬・榊原・袋田・藪塚・矢板
23:40(46)

[タクシー編]
v.s.藪塚・浪岡
00:36(65)

[ピンサロ編]
v.s.鶴巻、新木、亀山、板橋、藪塚
00:48(69)

[道端編]
v.s.鎌先・松倉・羽根沢・森岳・沼尻
01:45(81) ~

[大浴場編 2]
v.s.宇川・牛滝・湊山・赤石・栃尾・別所・吉野・須賀谷・渡瀬・榊原・三国・白峰・大牧・関・西浦・伊東・玉造・川棚・東郷・袋田・藪塚・矢板・浪岡・鎌先・松倉・羽根沢・森岳・沼尻
02:42(85) ~




<10話ごとの表示>
(001)19:53~(010)20:15(011)20:18~(020)20:44
(021)20:47~(030)21:07(031)21:09~(040)22:03
(041)22:22~(050)23:53(051)23:54~(060)00:20
(061)00:24~(070)00:50(071)00:24~(080)01:36
(081)01:45~(090)03:59(091)04:12~(100)05:46




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[2010/09/07 22:00] | 目次 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
「兄と妻」(序)

『兄と妻』



   序



底抜けに晴れ渡った空に入道雲が湧いている。それに絡まんとでもするように、朝顔の蔓が懸命に伸びる。対して、庭の砂地はカラカラで死んだようだ。岩も地面も黄色くなって、疲労感を隠そうともしない。

塀の外では、近所のおばさんが打ち水をして、それらを癒しているのだろう。通りすがりの挨拶から発展した井戸端会議が、彼女の活躍を賑々しく伝えている。蝉よりもやかましいその声は、テレビの音すらかき消しそうだ。

「夏だなあ」

ふと外の方へと目を移して、賢次は言った。休日のこととて彼は着の身着のままにごろりと横になりテレビを見ていた。その足元には扇風機が首を振っている。いずれも最新式で、近来普及目覚ましい電化製品である。

「夕立でも来ればいいのにねえ」

そう言いながら近づいてきたのは彼の妻である。見れば、手に盆を捧げ持っている。

「おっ! 西瓜か!」

賢次は歓声を上げた。西瓜は彼の好物である。これを食べたいがために子供の頃は夏が待ち切れなかったものだ。西瓜を見るといつも彼は田舎の夏を思い出す。

そういえば、もうすぐ盆休みで帰省するから、いずれたらふく食べられるだろう、と彼は話した。

それを聞き、妻は複雑な顔をする。今の西瓜を前にして、田舎のそれを懐かしむことばかりが不快なのではない。帰省後に避けては通れないある事情が頭に浮かんだためである。

それは、夫の親類と顔を合わせること、とりわけ、彼の兄と会うことだった。元来人見知りな彼女は親戚筋との付き合いを苦手としていたが、義兄に至ってはそれ以上に彼の人となりが嫌いなのだった。

義兄は夫とは正反対の人物である。夫が真面目に会社勤めをし、結婚もし、家も持ち、着実に人生を築き上げていく一方、義兄はいまだ定職にも就かず、やれ文学だ、やれ活動だのと騒ぐばかりで、夢を追っていると言えば聞こえは良いが、要するにその日暮らしの風来坊みたいなものなのである。

彼女は彼のこういういい加減な所を常から軽蔑していたのだ。

賢次はそれを知ってはいる。世間一般の見方もそれとほとんど同調していることまで分かっている。しかし、いかに愛妻家を自認する彼とて、こと兄のこととなると譲るわけにはいかなかった。

彼は今幸せであるが、それは兄のおかげによるものと信じて疑わないのである。こういう話をすると、妻は決まって否定的に言う。兄よりも賢次の方が何倍も優れた人物なのにと。

しかし、それは違うと彼は思う。彼は妻の言葉を聞いて別に怒ったりはしないが、兄の名誉を守るため、やんわりと諭すように語るのだった。

自分が今の生活を送れるのも、東京で就職したいという希望に兄がいち早く賛成してくれたからだし、そのおかげでお前とも出会えた、それに、幼少の頃より兄は何くれとなく自分をかばってくれたし、悪ガキにいじめられればすぐさま駆けつけて助けてくれた、などなど。

彼はさらに、兄の性格上の美徳を数え上げ、現在の自分があるのは全て兄のおかげだとまで言い切った。

そうまで言われてしまうと、妻としても黙るほかない。彼女は夫の兄思いの揺るぎなさに、軽い嫉妬すら感じるのだった。実際、この話をする時、賢次はこの世で自分だけが兄の価値を認めていることに、一種の優越感すら覚えていた。

夫婦は、今はこの点について立ち入らず、ブラウン管に映る白黒の画面を見やりながら、黙々と西瓜をかじっていた。気だるくも平和な夏の日の午後だった。

だが、今日の平穏な時間は、もうそれ以上長く続かなかった。


<つづく>[全三回]




妄想の座敷牢



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[2010/09/12 22:00] | 「兄と妻」 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
「兄と妻」(破)

   破



「まあ!」

そう妻が驚いた声を上げたので、賢次も思わず顔を上げた。折しも、あれほど強かった日差しを急速に広がった厚い雲が遮った時、縁側から中を覗く人影が畳の上に闇をもたらしていた。

「兄さん!」

賢次は狂喜して西瓜の種を飛ばす。噂をすれば影と言うが、話題にも上らぬうちからヌッと現れ出でた兄である。

彼はその社会的に不安定な身分と同様、今日もまたつかみどころのない怪しげな扮装をしていた。東南アジア風の派手な色のシャツ――但しその表面はほこりっぽくくすんでいる――や、よれよれのハンチング、足には雪駄……。

ぱっと見では何を生業にしている人か分からない格好だ――もっとも、実際その通りの生活なのだから実態に即してはいたが。

「お茶入れて来ますね」

妻は笑顔を作って立っていったが、内心不機嫌であることが賢次には明らかだった。彼女としてみれば、兄がこうやって唐突に、しかも庭からずけずけ入ってくる所も腹立ちの要因なのであろう。いかに兄弟といえども、ここは他人の家なのだから節度をわきまえろということである。

だが、いくら妻が不満を抱こうともこと兄の前では意味をなさない、それが賢次だ。彼は子供のようにはしゃいで兄を迎え入れるのだった。

兄が縁側に上がると間もなく、大粒の雨が降り出した。

「やあ、ちょうど良かった」

彼は言い、二人は笑い合う。親しい彼らにとっては、どんな現象も話の種となり会話が弾むのだった。

加えて兄は漂々と世を渡る人の常として非常に口が立つ。あるいは、達者な口先の才故に遊民生活が許されるというべきだろうか。その晩の食卓も彼の講演会だった。

だが、妻には心楽しまぬ時間だったようで、当然のように彼が泊っていくことと決まった時も、彼女はさりげないながら早くも懸念を表明したものだ。

「いつ頃までいらっしゃるのかしら」

それは賢次にも分からぬことだったが、むしろ分からなくても良いことだった。兄ならばいつまでいてくれても良かった。そんな彼の希望が届いたものか、実際兄はその翌日もさらに翌々日も出ていくそぶりを見せなかった。

妻の不安が的中したわけである。彼は金の無心こそしなかったが、朝晩きっちりと食事をし、彼女の手を煩わせたものだ。さても彼女にとっては厄介極まる話である。

何しろ相手は天敵ともいうべき人物なのであるから、そのうち堪忍袋の緒が切れるかもしれない、夫はひそかに憂えていた。

ところがそう思いきや、彼女も慣れたのか、あるいはようやく彼の美徳を解したものか、徐々に不満を口にしなくなり、ついにはぱったりと陰口を言わなくなったのである。人とは変われば変わるものだ。賢次は喜んだ。

ある時、

「あなた……」

深刻な顔をして妻が話しだしたことがあった。賢次は、やはり来たか、と身構えたものだったが、結局全然関係のない話で終わって一安心した。そんなこともあった。

また彼女の変化は次のような場面にも表れていた。

ある日、賢次は会社から自宅に電話をかけた。もちろん妻が出た。だが彼女は妙に息が上がっていた。問えば、いわく、

「ちょ、ちょっとお掃除の最中だったのよ」

ははあ、なるほど、雑巾がけか窓ふきか、あるいは押入れの整理か何かをしていて、それから慌てて電話に駆けてきたんだな、と彼は一人合点した。

と、ふいに、

「ア……お、お義兄さんたら……」

電話の向こうでこちらをはばかるように妻が言う。賢次は聞き逃さず、

「兄さんもそこにいるのかい?」

と尋ねた。すると、間髪入れずに兄が電話口に現れる。賢次は彼の声を聞き嬉しげに問うた。

「今日はどこへも出ないの?」

すると、兄は答えて言った。

「ああ……うん、出るよ……もうすぐ……出るっ……!」

この一件によって、賢次は自分がいない間も二人が平和に暮らしている様子を垣間見れて満足だった。彼が会社から帰宅する時、決まって兄は家にいたが、妻とだけでいる間家の中は殺伐としてやしないだろうかといつも気を揉んでいたのである。

帰宅時といえばある日、賢次が玄関に入ると、まるで電話の時と同じように息せき切って妻が走り出てきたことがあった。平生ならゆったりと奥から現れるのに、その日は些か取り乱しているような感じだった。

「あんまり暑いから、ちょっと行水をしていたのよ」

彼女はそう言った。確かに、裾の方の髪の毛が少し濡れていたし、首から鎖骨にかけて汗ばんだように水滴がついていた。それにしても、行水をしていたのならそれで、別にわざわざ出てこなくても良いのに、賢次はそう言ったが、泥棒が入ってくるかもしれないから、と言われて納得したのだった。

その日も兄は家にいた。賢次が部屋着に着替えた後、彼は風呂場から悠々と現れた。

「あれ? 兄さん、もう風呂に入ったのかい?」

賢次が尋ねると、兄は、

「ああ、行水だ。気持ちよかったよ」

と言って、台所に座った。賢次はそれを不審には思わなかった。彼は、自宅に風呂があることがちょっとした自慢で、それを兄が使うことに喜びを感じていたからである。その頃、まだ近所には風呂のある家が多くなかったのである。

兄は風呂のみならず、家にある物はなんでも遠慮なく使用した。そして、大抵家にいた。

いつぞや、賢次がひどい熱を出して珍しく会社を休んだ時も、たまたまかしれないが兄は家にいた。いや、いてくれたと言った方がいいのかもしれない。弟を心配し、寝室にこもる彼に度々言葉をかけに来てくれたものだ。

妻だってもちろんのことである。そうして、彼らは賢次をそっとしておいて、今やすっかり打ち解けたらしく、居間の方で二人くつろいでいるのだった。そのことは、便所に立った時にそちらの部屋から二人のひそひそ話が聞こえたことで確認済みである。

彼は熱に浮かされながらも、その状況を知ってほほ笑んだ。妻が兄を認めてくれたこと、そして、二人して自分を心配してくれることが嬉しかった。だから彼も、二人に余計に気を使わせないために、居間の方へは立ち寄らずに静かに寝室に戻ったのだった。

そんなことなどがあって、兄はすっかりこの家の住人、そして、弟だけでなく夫婦にとって大事な人となっていったのである。彼はこのことを歓び祝しこそすれ、不審や疑念を生じることなど一切なかった。何も。決して。


<つづく>[全三回]




妄想の座敷牢



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[2010/09/13 22:00] | 「兄と妻」 | トラックバック(1) | コメント(0) | page top
「兄と妻」(急)

   急



――運命のその日、奇しくも会社は早仕舞いだった。こんなことは、少なくとも入社してこのかた初めてだった。後になって思えば、それは不吉の予兆だったのかもしれない。

しかし、賢次はもちろんそんなことを考えもしない。むしろ早くに帰宅できることを幸運とすら感じていた。それが証拠に、途中でケーキまで買って帰るという浮かれぶりを見せたものだ。今日が特に何かの記念日というのでもないのにである。彼は自らのいつにない気まぐれに、兄のような気ままさを見つけた気がしてほほ笑んだ。

そうして家へ帰る道すがら、彼の胸は幸福に満たされていた。目に映る全てが輝いて見えた。

自宅近くに来ると、近所の子供たちが道の上でケンケンパをしてあそんでいる。表通りはもう随分と進んだが、ここいらはまだ舗装されていない道も多かったもので、子供たちはそこへ丸や三角を書いて遊んでいたのである。

その横を物売りが台車を引いて通り、少し先の角では見知った顔のおばさん連中が井戸端会議をやっていた。そういう風景が、明るい日差しの中にきらめいている。もう夕方近かったが、夏の太陽はまだ高かった。

賢次は自宅に到着した。しかし、玄関の引き戸の前でふと立ち止まる。そうだ、いつかの兄のように、庭から入って驚かせたらどうだろうか、それは急に湧いて出た悪戯心であった。

その思いつきを早速彼は実行に移した。ぬき足さし足で玄関を逸れてそちらの方へ回り込んでいく。我が家に入るというのに、まるで空き巣のようである。

庭の入り口まで来ると、案の定縁側は開け放たれており、その上テレビの点いているのが見えて、居間に誰かがいるのは明らかだった。それを知ると、もう賢次はわくわくとして笑顔を禁じえない。

彼は今にも吹き出しそうなのを必死に堪えながら、相手に気取られぬようにそおっとそおっと近づいていった。テレビの前に仰向けに伸びる足が徐々に見えだす。すね毛の感じからそれは兄だとすぐに分かった。

だが、腰の辺りまで見えた時、賢次は、おや、と不思議に思った。さらに、腹、胸と見えて確信する、兄は裸であると。それと同時に、賢次は妙に嫌な感じを覚えた。そして、自分でもどうしてそうしたのかは分からぬが、とっさに身を低くして、庭と外を隔てる壁の方へと行ったのである。

それは、動物的勘というものだろうか。本能で危険を察知し、反射的に行動をとったものだ。彼はまた、驚くべき鋭敏さでもって事態を把握しようとしていた。人間、想定外の状況に置かれても、存外冷静に分析できるものである。

そもそも、暑い盛りのことでもあり、兄が裸で寝ているからといって別段驚くには当たらないはずである。だが、賢次の冷静な洞察は、平常ではない何かを早くも見抜いていたのだ。彼の動悸は次第に激しくなっていった。

彼は苦しい胸を押さえながら、庭石の陰に隠れた。兄が友人から貰ってきたというそれは、そもそも庭とは名ばかりの我が家の狭い敷地には不釣り合いな、かなり大きなものだった。

今にして思えばこのためにわざわざ兄が配慮したのではないかというぐらい、身を隠すのにおあつらえ向きなその裏にしゃがみながら、賢次は一時も目を離すことなく居間を見つめる。

一糸まとわぬ姿で肘をつき仰向けに寝る兄。それはよい。問題はその向こう。確かにその向こうに何者かがいる。それはかつて想像だにしなかった状況、しかしながら、今は胸をかき乱されそうな疑惑の場面。

果たして、それはすぐに確信に変わった。まるで彼によく確認させようとでもいうように、その人物は上体を起こしたのである。乳のまろみが胸板の上を斜め下に滑り落ちる。右手を後ろに突っ張り、左手で顔にかかったほつれ毛を直し……。

賢次は息をのんだ。どうして見間違えようか。それは彼の妻だった。確かに全裸の妻だった。

男女は寝転がってテレビを見ていた。ほどなく男も上体を起こし、女に何事か話しかける。女は笑った。テレビのことを言ったのか、それとも、愛のささやきだったのか。こちらまでその声は届かなかった。

二人は気だるい感じで肩寄せ合って、実に仲睦まじく語り合っている。傍目にはまるで夫婦のように見える。しかし、彼らは夫婦ではない。彼は夫の兄であり、彼女は夫の妻である。そして、夫は、庭にいる。まるで空き巣のように自分の家に忍び込んで、兄と妻の裸を見ている……。

それは、青天の霹靂にしても余りに奇想天外だったし、空想としても突飛過ぎた。賢次にとっては思いもよらないどころか、天地がひっくり返る位ありえるはずのないことだったのだ。

しかし、現実に見せつけられてしまっては、もはや信じるも信じないもない。動かぬ証拠というわけである。男女が裸で寝そべっていることに、一体ほかのどんな正当な理由があるだろうか。

事実は小説よりも奇なり、彼の脳裏にはそんな警句が渦巻いて離れなかった……。

ふと夫は気づく。縁側の上に皿が、その上に西瓜の皮が並んでいることに。彼の好物である西瓜の皮が。彼はそれが買ってあったことすら知らなかったが、ひょっとしたら彼が食べるはずだったかもしれないものだ。それは彼を癒すもの、家に稼ぎをもたらす夫を楽しませるはずのものではなかったか。

そういえば、二人の見ているテレビも、二人を冷ませている扇風機も、みんな夫が買ったものである。兄が買ってきたものなど一つもない。かろうじて兄の手のものがあるとすれば、今夫が身を隠している不格好な置き石だけだ。

夫の今の境遇のなんとみじめなることか。彼は暗澹たる気持ちに一気に沈みこみながら、受けた衝撃の大きすぎるために立ち上がることもままならなかった。

そんな彼をよそに、目の前の二人はつと立って、見えないところへ行ってしまった。二人の姿が消えたことは、賢次の目の前が真っ暗になったのとちょうど一致するようだった。

認めたくなかった。兄と妻が不倫の愛を営む、そんなことがあり得るわけないではないかと。

ふと思い出す。そういえば、妻が深刻な様子で何かを切りだそうとした日のあったことを。もしかしたら、あの時何かのきっかけがあったのではないか、そんなことを思う。もっとも、今となってはどうしようもないことだ。

そんな状態でじっと固まっていて、一体どれほどの時間が経ったろう。滝のように流れる汗が、背中にぴったりとシャツを張り付けた。

と、彼の視界に再び妻が、それに続いて兄が現れる。まだ裸、である。それになぜか、彼らの体にも多量の滴が伝っていた。――行水、そのフレーズが頭に閃く。

いつかの日、彼が帰ると慌てて奥から走り出てきた妻。行水をしていたのだと言った。後から出てきた兄も、そう、行水と。二人で、行水を……。我が家の自慢の風呂で、二人。その露見を恐れ、着の身着のままに夫の前に走り出る妻。悲しくもつじつまが合った。

白昼、彼らはいつもそうして過ごしていたのだろう。いつも家にいる兄と妻、夫のいない二人の時間、彼らはこうして不貞の関係を愉しんでいたのだ。だらだらと、淫らに。

我が物顔で台所の椅子に座る兄。そこへビールを出す妻。以前の賢次なら何とも思わなかった。たとえ人が働いている間、昼間から酒を飲んでいても、そればかりか、家の物を何気兼ねなく消費しても。兄なら何でも許せた。

だがしかし、だがしかし――瞬間、賢次は目をそむけた。グラス片手に立ち上がった兄、その足元に、妻が膝折って立ち、なんと、なんと彼の陰茎を口にくわえたではないか。

自分の物はことごとく兄のために使ってもいい、だがしかし、妻までもなのか! 賢次は戦慄した、現実の残酷さに。そして、妻の淫乱ぶりに震え慄いた。賢次は目を逸らした、つもりでいた。だが実際には、一寸も首を動かせなかった。

だから、彼は見ていた、その一部始終を。妻が両手を膝の上に揃えて兄の陰茎をしゃぶり、それにともなって陰茎が膨らみ起き上がっていく様を。

兄はコップのビールを妻にも与えてやった。妻は彼の手ずから与えられるままに飲み干す。そしてまたしゃぶる。また飲む。またしゃぶる。まるで酒のつまみのように陰茎を食す妻。

足もとから兄を見上げるその格好は、まるっきり餌を貰う犬のようだ。仮に犬にしてもすっかり飼いならされてしまっている。夫は妻の変貌ぶりに愕然とした。

しかし、驚愕の事態はそれだけにとどまらなかった。その時、電話が鳴ったのであるが、それに出た妻への兄の仕打ちは、もはや正気の沙汰とは思われなかった。受話器を握る彼女の尻を引き寄せ、なんと合体したのである。

「アンフッ!」

艶めかしく腰をくねらせて、妻がため息を吐く。背中に走る溝の影が、男根を受け入れた女の悦びを生々しく表わしているようだった。さらに、続いて妻が口にした言葉は夫を震え上がらせた。

「あ、お義母さん……」

なんと相手は田舎の母だった。電話だと大きな声音になるのか、明らかにさっきまでより妻の声が聞き取りやすい。分けても母の名は、賢次の耳膜を鋭くつんざいた。

「……ええ、今、お掃除を……」

呼吸を荒げて妻が言う。賢次の脳裏である回路がつながった。またしても記憶と符合する事態だ。あの時も、そうあの時も彼女はそう言った。では、あの時も……。

兄は容赦なく妻の尻へ腰をすり寄せる。先ほど膨張した兄の肉茎は、完全に妻の腹の中に埋まっていた。やがて、パチンパチンという肌と肌のぶつかる音がこちら側にまで響きだす。

「ア……お、お義兄さんたら……」

妻は甘えるように言い、その口角には笑みが浮かんでいた。彼女は兄と電話を替わる。まったく同じだ、あの時と。ではあの時も、夫と通話をしながら、彼らはこうして白昼堂々股間を突き合わせていたわけだ。

あの時はまったく気づかなかった。妻が自分としゃべりながら兄の肉茎に貫かれていようとは。また兄が妻を犯しながら平然と自分と話をしていようとは。よくもまあぬけぬけと、夫をないがしろにできたものだ。まったく狂者の仕業だ、賢次はそう思った。

しかも今は、あろうことか母までも欺いている。母の前で、堂々と不義密通を働いている。

妻は兄に受話器を渡した後、前のめりに体を折って、電話台の脚の下の方をつかみながら、もはや完全に肉欲に心を支配された者のごとく、ただただ息荒く喘いでいた。その顔は生殖を悦ぶメスそのものだった。

兄もまた母と会話をしながら、ただひたすら妻との肉交を愉しんでいる。彼らにはもはや人間的理性などないのだろうか。動物的野蛮な性欲のみが彼らを突き動かしているようである。

「……ああ……うん……仲良くやってるよ……」

兄は母に話す。そうして、その言葉を実証するつもりなのか、一層深々と肉茎を突き入れて、やがて電話を切った。

直後、彼が妻から離れると、両者の股間からポタポタと白い汁が垂れ落ちる。とうとうこの恥知らずな兄は、母との会話中に弟の妻へ子種を注ぎ込んだのだ。将来母が抱く初孫は、彼の子かもしれない。

もっとも、兄には何らやましいところなどないだろう。その心理が、弟の賢次には何となく分かる。兄は本当に、ただ目の前の欲望に忠実なだけなのだ。決して弟を害そうなどと計画してやっていることではない。

万事行き当たりばったりな男なのである。妻のことも、最初から狙っていたわけではないだろう。彼にとっては、この肉欲の戯れが楽しいだけなのだ。

他方、妻はどうだろう。妻は一体どういうつもりでやっているのか。兄の子ができてもよいというのか。夫に対してどう思っているのか。

彼女は、再び居間に移動して寝ころんだ兄の横に座り、彼の股間を一心に愛撫しだした。力弱くなった陰茎を手でしごき、そして舐めしゃぶっている。彼女に反省の情はあるのだろうか。

もし、賢次が彼女の前に現れたとして、彼女はどんな反応を示すのだろうか。そうして、彼はどうしたらいいのだろうか。彼には判断ができなかった。怒りの感情よりも、まだ裏切られたショックの方が大きくて、彼の脳は思考停止状態だった。

それに、既に彼は出ていくタイミングを逃していた。最初に偶然出くわすのが最も良かったが、妙に鋭く勘が働いためにそうはいかなかったし、その後もまたその後も体が固まって出て行けず、そうするうちとうとう子作りまでされてしまったのだ。

彼はすっかり塞ぎこみ、視線を地面に落していた。と、その時、妻のある一言が聞こえた気がして、またはっとして彼は頭を上げた。

「あの人が、帰ってきちゃう……!」

あの人、それは夫である自分のことに違いない。はっきりとそう言ったのかは分からないが、彼の耳にはそう聞こえた気がした。

はっきりしているのは、彼らが再び交接を始めたことだ。二人は飽きることなくまぐわい続けた。時折体位を変え、中には妻が兄の上にまたがるものもあった。妻は兄の上で、いかにも妖艶に舞っていた。

あの人が帰ってきちゃう、だからどうだというのか。だからやめてほしいのか。帰るまでに早くやりおおせてしまいたいのか。賢次には分からない。

だが、もし賢次が家にいても、彼の目を盗んで二人は痴情を重ねるのではないだろうか。今なら分かる、いつか彼が熱を出して寝ていた時、彼らが居間にこもって何をしていたか。見ていたように分かる。

彼らにとっては、夫という障害もただ情事を盛り上げるための舞台装置に過ぎないのだろう。夫に見つからぬようにいかに快楽を得るか、そういう遊びなのだ。

夫が熱にうなされている間、彼らは一つ布団で愛し合っていたのだ、何度も何度も。激しく性器を求めあって、互いの粘液をからめ合って。賢次が便所に立った時も、二人はつながっていたに違いない。なんという卑劣なことか。

自分はこんな家に帰らねばならないのか。妻が言うように、夫というだけの役割の者として、これから帰らねばならないのか。

しかし、真実を知った今、以前と同じような態度をどうして続けられよう。彼の精神は、それをこなせるほど強くも、あるいは弱くもなかった。

彼はふらりと立ちあがった。そうして、鞄とケーキの袋を提げ、家の門を出た。彼の心は土砂降りの雨だったが、外は相変わらずいい天気だった。

角を通ると、

「あら、旦那さんどこ行くの?」

と、打ち水をするおばさんに話しかけられたが、彼はそれに力ない愛想笑いで答えるのがやっとだった。彼は行くあてもなく、ただぼんやりと歩いて行った。彼の姿は、そのまま夕焼けの街へ消えていった。


<おわり>




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[2010/09/17 22:00] | 「兄と妻」 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
「青き山、揺れる」(1)

麗らかな陽射しに照らされて、木目の大看板が輝いている。――“努素毛部屋”墨痕鮮やかに大書してある。その凛々しい筆致には、かつてわくわくとして尊敬の眼差しを送ったものだ。その横を通る時、自らも堂々とした気持ちになったものだ。

だが今は違う。今はむしろ悶々として辺りに素早く視線を走らせつつ、まるで見つかってはまずいとでもいうように、こそこそとその横を通り抜けた。

もっとも、外面的には、それほど気を使わなければならない理由は見つからないはずである。

確かに、世間に顔が売れている立場上、余りに一つ所に足繁く通うというのは、良からぬ噂を招く懼れもあり慎むべきところではあったが、その点は十二分に気を使い、適度に訪問の間隔を開けてきたつもりだ。

そして、それを徹底している限り、別に仕事上知り合いになった相手と取材後も親交を続けることは、何ら恥じらうことではないし、むしろ美談として伝えられてもいい話である。

しかし、かかる親交の内実を思えば、良識のある大人としてやはり堂々としてはいられない。今日ここを訪れた真の目的を思えば。

今日ここへ来るまで、前回から今日まで、上述の間隔を保つためにどれほどの我慢を重ねてきたことか。本当ならばもっと度々来たい。いかにそれなりにハードなスケジュールとはいえ、ここを訪れる機会ぐらいはいくらでも用意できる。

しかし、そうはいかないというのが現実である。それに、本能のままに、後先も考えずに行動する、そんなことは己の性格上とてもできない。やはり現実の生活は大事だ。今の地位を維持できているのも、そうして節度を守っているからだと思う。

だから、いかにここへ依存しても、溺れすぎるということはないのである。しかし、そうして外面的に理性を保ち続けなければならないこの期間の何とつらかったことか。日増しに悶々として、幾度誘惑に負けそうになったか知れない。

昨晩なぞはほとんど眠れなかった。欲求はピークに達していた。朝は早朝から起き出し、受話器を持ってそわそわと落ち着かなかった。先方の都合上余りに早くかけるわけにもいかなかったし、それに早くかけ過ぎて、いかにも待ち切れないのだと見破られるのも恥ずかしかった。

そんな風だったから、今日ここへ来るということに、恥ずかしさと情けなさと、そしてそれら以上に大きな嬉しさを感じて、祐子(ゆうこ)はそこの玄関の戸を開けたのである。


<つづく>




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[2010/09/21 22:00] | 「青き山、揺れる」 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
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