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妄想の座敷牢羞恥の風ましゅまろくらぶ



小説には、連続作品と一話完結作品があります。連続作品は、左「カテゴリ」の各作品名より一話から順番に読むことができます。また「目次」には、各作品の概要などをまとめた記事が集められています。

■連続作品
◆長編作品
「子宝混浴『湯けむ輪』~美肌効姦~」

◆中編作品
「大輪動会~友母姦戦記~」
「青き山、揺れる」 ▼「師匠のお筆」

◆オムニバス
「母を犯されて」

◆短編作品
「育てる夫」  ▼「最後の願い」  ▼「ママの枕」  ▼「ブラック&ワイフ」
「夏のおばさん」  ▼「二回り三回り年下男」  ▼「兄と妻」

■一話完結
「ふんどし締めて」
「旧居出し納め・新居出し初め」  ▼「牛方と嫁っこ」  ▼「ガンカケ」
「祭りの声にまぎれて」  ▼「シーコイコイコイ!」  ▼「サルオナ」  ▼「母の独白」
「童貞卒業式」 ▼「お昼寝おばさん」  ▼「上手くやりたい」 ▼「珍休さんと水あめ女」
「栗の花匂う人」「乳搾りの手コキ」 ▼「妻つき餅」 ▼「いたずらの入り口」
「学食のおばさん便器」 ▼「山姥今様」 ▼「おしっこ、ついてきて。」

作品一覧

「青き山、揺れる」(1)

麗らかな陽射しに照らされて、木目の大看板が輝いている。――“努素毛部屋”墨痕鮮やかに大書してある。その凛々しい筆致には、かつてわくわくとして尊敬の眼差しを送ったものだ。その横を通る時、自らも堂々とした気持ちになったものだ。

だが今は違う。今はむしろ悶々として辺りに素早く視線を走らせつつ、まるで見つかってはまずいとでもいうように、こそこそとその横を通り抜けた。

もっとも、外面的には、それほど気を使わなければならない理由は見つからないはずである。

確かに、世間に顔が売れている立場上、余りに一つ所に足繁く通うというのは、良からぬ噂を招く懼れもあり慎むべきところではあったが、その点は十二分に気を使い、適度に訪問の間隔を開けてきたつもりだ。

そして、それを徹底している限り、別に仕事上知り合いになった相手と取材後も親交を続けることは、何ら恥じらうことではないし、むしろ美談として伝えられてもいい話である。

しかし、かかる親交の内実を思えば、良識のある大人としてやはり堂々としてはいられない。今日ここを訪れた真の目的を思えば。

今日ここへ来るまで、前回から今日まで、上述の間隔を保つためにどれほどの我慢を重ねてきたことか。本当ならばもっと度々来たい。いかにそれなりにハードなスケジュールとはいえ、ここを訪れる機会ぐらいはいくらでも用意できる。

しかし、そうはいかないというのが現実である。それに、本能のままに、後先も考えずに行動する、そんなことは己の性格上とてもできない。やはり現実の生活は大事だ。今の地位を維持できているのも、そうして節度を守っているからだと思う。

だから、いかにここへ依存しても、溺れすぎるということはないのである。しかし、そうして外面的に理性を保ち続けなければならないこの期間の何とつらかったことか。日増しに悶々として、幾度誘惑に負けそうになったか知れない。

昨晩なぞはほとんど眠れなかった。欲求はピークに達していた。朝は早朝から起き出し、受話器を持ってそわそわと落ち着かなかった。先方の都合上余りに早くかけるわけにもいかなかったし、それに早くかけ過ぎて、いかにも待ち切れないのだと見破られるのも恥ずかしかった。

そんな風だったから、今日ここへ来るということに、恥ずかしさと情けなさと、そしてそれら以上に大きな嬉しさを感じて、祐子(ゆうこ)はそこの玄関の戸を開けたのである。


<つづく>




<目次>
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