昔々ある所に、清六という牛方がおったそうな。
清六は正直者で気の優しい男じゃったが、頭が鈍く、見た目も不格好だったので、皆から馬鹿にされておった。
「あらいやだ、牛六さんが来たわよ」
「見ちゃ駄目よ、おみつちゃん、あばたがうつるわよ」
「牛のくそを食べて生きているそうよ」
「怖いわ。化け物じゃない」
女達は姦しく噂し合い、清六のことを避けて通った。
幼い頃から大人には可愛がられず、孫次郎のおっかあなぞは“うじ虫”呼ばわりで水をかけた。
それでも子 供同士はまだ遊んでいたが、少し大きゅうなるとのけ者にし始め、幼馴染のお絹は、味方の振りをして清六をだまし、落とし穴に連れて行ったりした。
大人になったらなったで、今度は目下の者が侮りだす。
花の名前を教えてやったお弓坊も、少し色気づき出すとたちまち近寄らなくなって、ほかの者と指差して“くさいくさい”と罵った。
じゃが清六は、どんな仕打ちを受けても腹を立てず、ただ穏やかに笑っておった。
「おらがうすのろじゃから、仕方がない」
そんな有り様だから、当然嫁の来手もなかった。
「おっかあ、今日も無事に務めが果たせただ」
清六は家の裏手へ回って、墓石に手を合わせる。
清六のおっかあは物心ついて間もなく死んだ。
おっとうは初めからいない。
清六はおっかあの墓に続いて、横に並ぶ漬物石大の墓にも手を合わせた。
「べこ、あの世でみんなと仲良くしとるか」
それは世話していた牛の墓じゃった。
同じような石が、ほかにも幾つか並んでおる。
みんな、清六の牛じゃ。
中でも去年亡くなったべこは清六と一緒に大きゅうなってきた牛で、一等思い入れが深かった。
おっかあが死んだ時よりもわんわん泣いた位じゃ。
「おらの子が、みんな元気でいてくれたらええんじゃがのう」
立ち上がって見上げると暮れかけた空に一番星が輝いておる。
その横をスーッと流れ星が落ちた。
さて、その夜のことじゃ。
囲炉裏の前で草の根の汁をすすっておると、トン、トン、トンと、表の戸を叩く音がする。
「誰じゃ」
「清六さ、開けて下さいまし」
女の声じゃ。
清六は訝しみながらも扉を開けてみた。
すると、そこには浅黒い肌をした若い女が立っておった。
背丈は五尺五寸程もあり、清六より高い。
おまけに、着物がはち切れそうな程に恰幅が良く、大柄な女に見えた。
「あんた、どちらさんじゃ」
「へえ、わしゃあお前さまの嫁になりに来た、お福いうもんじゃ」
「なに、嫁?」
清六は目を丸くしてのけ反った。
するとお福という女はその脇を抜けてずけずけと家の中に入ってしもうた。
「ふつつかもんでごぜえますが、よろしゅうたのんますだ」
「ま、待て待て待て」
早くも囲炉裏の前に座って風呂敷包みを解き始めた女を、清六は大慌てで止めた。
「どうしたんじゃ」
「ど、ど、どうしたもこうしたも、嫁をとるなんて話、おら聞いとらん」
「そりゃあ、そうじゃ。誰も言うとらん」
澄ました顔で言ってのけると、お福は風呂敷の中を見せ、
「ほれ、魚と酒じゃ。夫婦の祝いに宴じゃ宴じゃ」
と、まるで勝手知ったる我が家とばかりに、テキパキと夕飯の準備を始めた。
「ほれ、いつまでそんなとこ、突っ立っとる。お前さまもはようこっち来んさい」
まだ呆気にとられたままの清六じゃったが、仕方なしに座る。
「だ、だ、だいたいあんた、どっから来たんじゃ」
「星の子村じゃ」
「なんじゃ、ほしのこ村? 聞いたこともない……」
「高い所にあるでよ」
「高い所? 向こうの山ぐらいか」
「いんや、もっと、もっとじゃ。うんと高い所じゃ」
お福は手際よく魚をさばく。
草の汁の残りは別へ移して、鍋には水を張り、徳利をつけ、囲炉裏に掛けた。
清六はその背中へ、気になることを問い続ける。
「そいで、ど、どうして、おらの、よ、嫁っこになるんじゃ」
「お前さまがよ、牛っこを大事に大事にして、真面目に働いとるんを知っとるからじゃ」
「知っとる? どうして知っとる」
「見とったんじゃ全部。高い所におるからのう」
「はあ、そないに高いか。高かったら全部見えるんか」
「そうじゃそうじゃ。そんでうちの長老も、よかろうちゅうて、わしを嫁に出したんじゃ」
そうこうする内に魚をさばき終えたお福が座に戻ってきた。
改めて明るい所で見ると、お福はクリクリと黒目が大きゅうて、福々しい丸顔の、美人とはまた違うが、愛嬌のある可愛らしい顔をしておった。
「ほれ、酒が温もった」
清六は勧められるがままに、飲みなれない酒を飲み干す。
「おお、温い酒じゃ」
「初めて飲んだんけ?」
ポオッと頬を染めながら、お猪口を片手にお福が笑う。こうして、さしつさされつする内に夜は更けていった。
さて、次の日の朝。
「なんじゃ、いつの間にか眠っておったんか」
目を覚ました清六が、大あくびをして辺りを見渡すと、ガランとした家の中にお福の姿はなく、昨日使った皿も茶碗も綺麗に片付いておる。
「はて、それにしても昨日は変な夢を見たわい。まだ頭がぼんやりするのう」
するとその時、ガラリと戸が開いた。
「お前さん、起きたかえ」
見れば、まごうことなき夕べのお福じゃ。
「や、おめえはゆんべの。夢やなかったんか」
「何寝ぼけとる」
呆気にとられる清六じゃったが、お福は一向気にも留めん。
「まだオラんとこにおったんか」
「そらぁおるで。わしゃお前さまの嫁じゃからのう。そんなことより、ほれ、はよう顔洗ってきんさい」
こうして清六は、何が何やら分らぬままに、お福と暮らすことになったそうな。
お福は働き者じゃった。
炊事洗濯掃除はもちろん、牛方の仕事もテキパキとこなす。
体は清六よりも丈夫な程で、大きな牛を相手にしても一向引けを取らない。
清六はお福の働きぶりと、また牛をよく可愛がる風を見て、すぐに心を許すようになった。
さて、そんな嫁っこの噂は、すぐさま村中に広まった。
「おい、聞いたか、清六の嫁の話」
「聞いた聞いた。あっ、見ろ、噂をすれば」
田植えをしていた男共が見れば、丘の小道を牛方夫婦がゆく。
「ありゃあ、ひどく大きななりをしとるのお」
「おお、おお、まるで牛じゃ」
「牛方の嫁っこは牛か。こりゃあええ」
皆は指差して笑ったが、そうは言いながらも、心では別なことを考えもした。
「さてさて、ヌケ六の嫁というのが気にくわんが、一度ぐらい試してやってもええか」
その夜。
ちょうど月のない闇夜じゃった。
清六とお福がスヤスヤと眠っておると、家の戸がスーッと音もなく開いて、何者かが暗がりの中に忍び込んで来た。
昼間、お福の噂をしておった男の一人じゃ。
「おお、おお、よう寝とる」
寝息を立てる夫婦を見比べると、男はモゾモゾとお福の布団へ潜り込んでいった。
そうして、そっと手を這わせ、着物の上からお福を調べてゆく。
「温うて柔こい体じゃ」
こんもりした胸の山がスー、スーと息をする度に上がったり下がったりしておる。
「これは愉しめそうじゃわい」
男はニターッと頬を緩めるや、早速事に及ばんと腰を浮かせた。
と、その時じゃ。
トン、トンと、背中を叩く者がある。
「や、清六め、起きたか」
男はギョッとして振り返ったが、果たしてそこにおったのは、昼間も一緒にいた仲間じゃった。
「田吾作」
「考えることはおんなじじゃの、権兵衛」
田吾作はニヤニヤ笑ってお福の方を顎でしゃくる。
権兵衛は呆れた調子で言うた。
「わしが先じゃけえの」
こうして二人の間男が一つ屋根の下に揃うこととなったのじゃが、さすがにこの騒ぎなれば、間もなくお福は目を覚ました。
「なんじゃ、おめえらは」
咄嗟に権兵衛をはねのけようとする。
「シー。大きな声を出すでない」
馬乗りの権兵衛が慌ててお福の口を押さえにかかる。
田吾作も手伝って、お福の両手を抑えつけた。
「夜這いじゃ、夜這い。ただの夜這いじゃ」
「村に嫁いだ嫁っこは、みんなすることじゃ」
二人は小声でそうまくしたてたが、お福は得心がゆかん。
すると、何しろ牛を相手に引けをとらん女じゃ、二人がかりでも抑えるのが厄介になってきた。
と、そこへもう一人の男がやってきた。
やはり昼間の仲間じゃ。
「なんじゃ、先を越されたか」
「おう、孫次郎、ええ所に来た。女が暴れよるんじゃ、手ぇ貸せ」
「よしきた」
孫次郎はすぐに仲間の輪に入る。
男三人がかりとなっては、さしものお福も為す術がなかった。
とうとう抑え込まれて、果ては家から運び出されてしもうた。
投げ出されたのは牛小屋の藁の上じゃ。
「おめえら何するんじゃ」
「夜這いじゃちゅうとろうが」
「すぐに済むけえ堪忍せえ」
「ヌケ六じゃ物足りなかろうて、ほんまもんのマラを喰わしたるけえの」
男共は口々に言うて諸肌を露にすると、一斉にお福へと襲い掛かった。
着物の袷を開けば、たわわに実った乳袋が暴れるようにまろび出る。
「おお、牛女は乳も牛並みじゃわ」
「肥えよると思うとったが、乳のせいじゃったか」
お福はもう言われ放題され放題じゃ。
乳袋は手に手に面白おかしくこね回され、時にはきつく搾り上げられるが、もちろん乳の出るあてはなし。
ただただ玉の汗をまぶして、男達の手の平をしっとりと張り付かせるばかりじゃ。
やがてボボも剥かれれば、誰からともなく褌からマラを飛び出させはじめた。
「どれ、ぼちぼち頂こうかの」
一番槍は権兵衛じゃ。
“ウン”と唸って勢いをつけると、上向いたマラをボボにねじ込んでいきおった。
ズブズブズブ……
「おお、これは……」
「どうじゃ、具合は」
「うん、ええ。中々ええ塩梅」
お福は遂に観念したものか、顎を伸べてただ宙を見ておる。
事ここに至りなば、もはや抗ってもしようがないというもの。
その股を割って、男が覆いかぶさり抱きすくめる。
男が腰を振る度に、藁が舞い上がると、それが汗にまみれた肌に張り付きおった。
マラも汗同様次第に濡れそぼって、お福の柔こい肉をしごきまくる。
連れが順番待ちで見守っていようがお構いなしに、権兵衛はほしいままに腰を使った。
お福の手を抑える連中にも、その盛りぶりは十分伝わっておる。
「はよう代われ」
もう辛抱たまらんとばかりに、二番手の田吾作が急かしだす。
孫次郎は自分のマラをしごきながら、お福の顔にこすり付けた。
そうじゃ、権兵衛が終わっても次が、そしてまた次も控えておる。
急かされたからというのでないが、権兵衛はあまり長くもたなかった。
具合良しはまんざらでなかったらしい。
これはほかのもんの時もそうじゃった。
「ほお、見た目によらず、よう締まりよる」
気取って様子を作った田吾作も、
「吸いついてくるようじゃ」
素直に驚いてみせた孫次郎も、皆交代してマラを挿した時にお福の具合を褒めたものじゃ。
ひょっとしたら、村のほかの女共よりも、いや隣村の者よりも、果ては商売女よりも、ここいら一帯でこれまでまぐわったどの女よりも良いかもしれぬ。
そんな風に勘ぐって、早二周目に入り、はたまた三周目と数えるうちに、いやもう男らは夢中になっておった。
「これは思いのほかの掘り出しもんじゃわい」
清六ごときの嫁という蔑みもすっかり忘れて、三人はお福を堪能しつくしたものじゃ。
数珠つなぎで休む間もなくマラをぶっ込み続ける。
お福もお福でもはや怒りもせぬ。
さりとて笑いもせぬが、何やら男達よりも高い位置から物を見とるような風情があった。
元々夜這いは夜這いじゃて、百姓に操も何もなかろうが、お福の大らかさはちと趣が違う。
大女なるが故じゃろうか。
いやそればかりでもなさそうじゃ。
やや子のように甘え、その乳を含む時、得も言われぬ安らぎを男は覚える。
まるで観音様に抱かれとるような温もりじゃ。
分厚い背中に手を回してしがみつく時、男はふと思う、お福に己が体で遊ばせてもろうとるのじゃなかろうかと。
どれほどの時が経ったものか、東の空が白々と明るうなりだして、ようやく男らは終わりを知った。
夜が明けねばまだ続いたやもしれんて。
寝坊助の清六が起きてきたのは、それからもうしばらく日が昇ってからじゃ。
「ほれ、朝飯はこさえてあるでよぉ、はよ仕度してこんね」
お福はいつもと何ら変わらぬ声音、変わらぬ屈託のなさで亭主を急かすのじゃった。
一方、前の晩で味を占めた権兵衛らは、すぐにまたお福へ夜這いに押し掛けた。
揃いも揃ってまたぞろ三人衆じゃ。
すると、お福、一度も二度も同じとばかり、鷹揚に男らを相手にしたものじゃ。
こうしてまた代わる代わるにがっぷり四つで明け方まで……
こんなことが続くうち、ほかの男衆にもお福の器量は評判となりだした。
夜這いに来る顔ぶれも段々増えてくるし変わってくる。
小さな村のことじゃけえ、流行りとなったらすぐで、たちまち村中の男共がお福の体を知ることとなった。
毛も生えよらん童から、なにせ村一番の長老様まで家に呼びつけるしで、大変な人気じゃ。
厚かましい連中は、夜と言わず昼日中からお福を弄んだ。
「おい、お福。おやぁ、どこ行ったんかいのお」
清六がおっとり振り向くと、つい今しがたまで連れ立っておったお福がおらん。
その時女房は、ちょっと用足しに寄った草むらで押し倒され、逆に男から用を足されておった。
「すぐ済むけえのお、堪忍せえよ」
言いながら、男は早々とマラを挿し込んでおった。
夜まで待っておったのでは、順番が回ってこんと、抜け駆けをしたものじゃ。
こんな輩は後を絶たず、ある時は田んぼのあぜ道で股を開かれ、稲穂の上に足先が見え隠れ……
またある時は地蔵小屋の裏に手をつかされ、後ろからマラを出し入れされてガタガタとお堂を揺さぶり……
あるいは水車小屋に連れ込まれて悪童共を一人で引き受け……
あるいは寺の和尚から変態三昧に体の隅々までなぶられ……
と、いつしかお福は至る所でその身をむさぼられるようになった。
それでも驚くべきはお福の頑丈さじゃ。
体を壊すことなど一度もなかったし、日頃の働きぶりは相も変わらず。
なんとなれば、前よりよう働いとるのじゃないかという位じゃった。
何より生来の明るさに翳りの差す素振りなぞ微塵も見られんかったそうな。
清六は大いにお福に助けられた。
今もっていきさつの分からん押し掛け女房じゃったが、もはやこの嫁っこのおらん明日は考えられんかった。
お福の偏った人気ぶりには未だ気付かん朴念仁じゃったが、それでも前より体は丈夫になったし、顔つきにも張りが出てきた。
そういう変化は周りの見る目も変えるものじゃろうか。
お福が来て僅かひと月も経った頃から、清六に対する、特におなごの眼差しが違い始めた。
あれ程馬鹿にしてきた庄屋の娘を皮切りに、後家から童女まで何やら思いのこもった目で見つめるようになっていったのじゃ。
じゃが、これには不思議なからくりがあった。
お福が夜ごと犯されおる時、清六が一人大人しく寝ておったかというと、果てしてそうではない。
実はフラフラと寝床を離れて、家の外へと抜け出しておったのじゃ。
じゃが、当人は気づいとらん。
誠に妙な話じゃが、清六は眠ったままのつもりなのじゃった。
そうして清六がいずこへ向かったかといえば、お福のところ、ではなく、別の所。
はじめの晩に向こうたのは権兵衛の家じゃった。
権兵衛の嫁は清六の幼馴染のお絹じゃ。
おっかあ同士仲が良く、子 供の頃はよう遊んだが、長じるに従うてほかの連中と同様、清六を馬鹿にするようになっておった。
清六は家の中に入ってゆく。
亭主はもちろん居らん。
それを知ろうはずもないが、清六は堂々と嫁の布団に襲い掛かった。
そうじゃ、清六がしようとしておるのは夜這いじゃ。
これには、すぐにお絹も気が付いた。
「阿呆、気でもちごうたか!」
当たり前の習わしも、清六がすると大それたことになる。
元よりお絹にはその気がないのじゃ。
じゃが、なんぼ歯向こうても、今宵の清六には一向敵わん。
どうしたことか、まるで牛のように重うて動かんのじゃ。
「ヒイッ、後生じゃから、堪忍してくんろ」
お絹は願うたが、清六のマラは猛り狂って止まらんかった。
あっという間にお絹のボボに深々と突き刺さる。
知り合うて長い事なるが、こんなことになろうとはお絹はついぞ考えもせんかった。
もし清六が正気じゃったなら、清六もおんなじじゃったろう。
夜這いを仕掛けたことなぞ、これまで一度もなかったのじゃから。
「イヤッ! いやぁ!」
お絹は冠りを振って、嫌がりおる。
清六は全く聞こえていぬ風で黙って腰を振る。
まるでからくり仕掛けのように規則正しうマラを出し入れし続ける。
もはや人間業とも思われんその動きは、無論我が亭主にも出来ぬ所業じゃった。
しかも、マラは充実し、寸分の隙もなく穴ぼこに満ちておる。
太さも長さもピタリと一致し、腹の中満杯の心地じゃ。
「ウゥッ……アァウアァ……か、堪忍してけれ……」
お絹は息も絶え絶えに、清六の背なへ腕を回す。
清六はとどまることを知らぬ。
一度も果てることさえなく、マラを突き立て続けおる。
それは周りが薄っすらと明るうなるまで続いた。
「オォウ……オホオォ~……」
静かな小屋の外へおなごの鳴き声が響く。
お絹はいつしか身も世もなくよがり哭いており、もう何度も極楽へ逝かされておった。
男を知ったるおなごの身なればしようのないことじゃ。
そのボボの内へ、あれ程蔑んだ男の子種が、ほれ、腹いっぱいに注がれおる。
お絹はもう正体もなく、間男の尻へ足を巻き付けて、受け入れたのじゃった。
一夜明ければ、しかし、寝覚めが悪い。
清六に犯されたことが、恥ずかしいやら悔しいやらで、表にも出にくい程じゃ。
じゃが、初めて知らされた女の悦びは確かにこの身に残っておる。
思い出せば身内が疼く程じゃ。
お絹は仲の良いおなご連中にも打ち明けられずに、悶々と日々を送るのじゃった。
心なしか、どのおなごも、会う顔会う顔皆物憂げに見ゆる。
そうして清六が通ると、ある者は頬を赤らめて顔を伏せ、ある者は物陰に隠れて覗き見をし、またある者は密かに流し目を送るのじゃ。
こういう者は日一日と数を増していった。
殊に変化の著しかったんは、庄屋さんの一人娘、お琴じゃった。
お琴は日頃、ほかの娘を煽ってまで清六を馬鹿にしていたが、にわかにぱったりとそれをやめてしまったのじゃ。
そればかりか、かねて“グズ六”“ボケ六”とまともに名さえ呼ばなかったものを、近頃では“清六さ”などと呼んで、うっとりとため息までつく始末。
これもやはりお絹と同様な夜を過ごしてからじゃった。
「あんれまあ……」
悲鳴を聞きつけて、小間使いの婆やがようやく起き出して来た時、事は既に大分と進んでおった。
上にのしかかった誰ぞのマラが、お琴のボボに深々挿し込まれておる。
すわ夜這いじゃ。
生憎のこと、今晩は主人が居らぬ。
「お嬢様」
本来なら、婆やは開口一番手にしたほうきを振り上げて、間男を振り払わねばならぬ。
じゃが廊下から一歩も中に入れんかった。
「あんれまあ……なんともはや、ご立派な……」
神々しくも逞しいマラに見とれる内、婆やは自然と手を合わせておった。
色鮮やかなお嬢のボボが太棹をよだれまみれでしゃぶり込んでおる。
同じ女なればこそ分かった、お嬢はもう喜んでおると。
「じさまを思い出すのお」
婆やは目を細め、マラが上から下へとブンブン振り落とされるのに従うて、我知らずほうきを股ぐらにおしつけるのじゃった。
この夜を境にお琴は変わった。
生来の我儘で、親の目にも横柄極まりなかった娘が近頃しおらしゅうなったことを、庄屋さんは年頃のせいと喜んでおったが、なんのなんの、男のマラにしつけられたからとは夢にも思うまいて。
かくして、清六は続々と村のおなごを従えていった。
お福を愉しんだ男共の家には軒並み通うた。
女房も、娘も、母も、姉妹も、後家から生娘まで、まぐわうにあたうるおなごは漏れなく仕留めた。
村の中のことじゃから、一通り終えるのに暇はかからぬ。
すぐさま二周目、三周目と畳み掛けていき、それにつれて、女連中の顔つきはあからさまに変わっていった。
今はもう清六への情を隠そうともせぬ。
抱かれとうて、来てほしゅうて、門に立ち、辻に立って清六へ愁眉を送る。
じゃが、昼間の清六は朴念仁じゃ。
夜の夢なぞつゆ知らぬ。
素っ気ない振りで仕事に精を出す。
そこがまたおなごにはたまらん。
こんなことが続く内、村中のおなごの腹が揃って大きゅうなり始めた。
「だ、誰じゃ、うちの娘を孕ませたんは」
庄屋さんは、今でも我が子が生娘じゃと信じとったから、度肝を抜かれ声を荒げた。
近頃めっきり足腰が悪うなって、咳も止まらぬし、食事もほとんど喉を通らん。
このところ日に日に体が弱っていくようじゃ。
これは庄屋さんに限ったことではなかった。
村中の男共が皆一様に体を弱らせて、日がな一日床に就いておるような有り様じゃ。
流行り病かと思われたが、女共はいずれもピンピンしとる。
いかんのは男だけじゃ。
いや、たった一人、丈夫な男がおった。
そうじゃ、清六じゃ。
清六だけは元気で、なんとなれば、前より体躯も立派になったようじゃった。
これが伏せる男共の代わりというて、よその田んぼへ行き毎日手伝うて回る。
相変わらず丈夫なお福と連れ立うて、働くも働く、百人力の活躍ぶりじゃ。
おなご連中は不甲斐ない男らを足蹴にして、頼りがいのある清六を歓んで迎えた。
日が暮れても仕事は終わらぬ。
夜はボボの世話じゃ。
男衆は干からびてしもうて、かれこれ何カ月も前から誰もマラが立たぬ。
役に立たん連れ合いに代わって、清六がおなごを慰めて回るのじゃ。
「おい、清六やぁ……頼むから外でヤッとくれぇ……」
か細い声で田吾作は布団から手を伸ばしたが、清六の耳には届かぬ。
同じく女房の耳にも届かぬ。
女房は柱に両手をついて、尻の方からマラを挿され、狂ったようによがり哭いておる。
あれ程満悦の顔を己がさせたことはあったか。
何も出来ぬ田吾作は一晩中その声を耐え忍ぶしか出来んかった。
孫次郎んちでは女房とおっかあが清六を迎えた。
「清六さ、おらにも、おらにもぶっ込んでくんろ」
清六の膝にすがる女房。
マラは今、孫次郎のおっかあに入っておる。
「オオォー……」
おっかあは犬ころのように遠吠えした。
孫次郎のおっかあは後家となってからもまだ若くて器量も良い方じゃったから、以前はよく夜這いを受け入れたものじゃ。
清六が幼い頃にもやはり綺麗じゃと思うたことがある。
「ねえねえ、清六さ」
嫁は辛抱たまらんといった調子で、清六の玉袋を舐めさする。
孫次郎は耳を塞いで布団の中で丸まった。
お弓は巳之助と恋仲で、密かに目配せしては頬を染めるような初心じゃったが、今では清六のマラで、極楽へ逝く悦びを知っておる。
清六を知るまで生娘じゃった。
今もって清六しか男を知らぬ。
「お弓ちゃん……」
痩せこけた頬の巳之助が床の上でうわ言に呼ぼうとも、マラをくわえたお弓にはもう届かぬ。
その連れの久兵衛もうなされておった。
「ね、姉や……」
あれ程男勝りで肝っ玉の据わった姉やも、今では清六のマラの虜となり、弟すら目に入らぬ様子じゃった。
巳之助も久兵衛も、水車小屋でお福を座禅転がしした頃が懐かしい。
今や立ち上がる気力とてなく、可哀想に、まだ若いが先は長くないじゃろう。
誰も立たん。
されど、女は腹ボテ。
皆分かっておった、腹の子の親が誰かを。
母も娘も姉妹も、揃って同じ父親の子を産むのじゃ。
やがて、あちらこちらで産声が聞こえる季節となった。
お福のみはまだ孕んでおらん。
それはそうじゃ、清六はまだお福を抱いておらん。
抱くことを知らんからじゃ。
「ややこが仰山生まれたのお」
清六はにこにこと笑うて村を回った。
親も子も皆元気じゃった。
そんなことがあってこの村は、いつしか“牛方村”と呼ばれるようになったんじゃと。
めでたしめでたし
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