おことわり
このブログには、エッチなことがたくさん書いてあります。まだ18歳になっていない人が見ていい所ではありません。今からこんな所を見ていると、将来ダメ人間になってしまいます。早くほかのページへ移動してください。 >googleでほかのページを検索する< なお、掲載している小説はすべて虚構であり、実在の人物・団体等とは一切の関係がございません。 |
お知らせ
「オナこもりの小説」は、エロ小説を気ままにアップしていくブログです。たまに、AV女優や、TVで見た巨乳のことなども書いています。左サイドにある「カテゴリ」から、それっぽい項目を選んでご覧ください。
小説には、連続作品と一話完結作品があります。連続作品は、左「カテゴリ」の各作品名より一話から順番に読むことができます。また「目次」には、各作品の概要などをまとめた記事が集められています。 ■連続作品 ◆長編作品 ▼「子宝混浴『湯けむ輪』~美肌効姦~」 ◆中編作品 ▼「大輪動会~友母姦戦記~」 ▼「青き山、揺れる」 ▼「師匠のお筆」 ◆オムニバス ▼「母を犯されて」 ◆短編作品 ▼「育てる夫」 ▼「最後の願い」 ▼「ママの枕」 ▼「ブラック&ワイフ」 ▼「夏のおばさん」 ▼「二回り三回り年下男」 ▼「兄と妻」 ■一話完結 ▼「ふんどし締めて」 ▼「旧居出し納め・新居出し初め」 ▼「牛方と嫁っこ」 ▼「ガンカケ」 ▼「祭りの声にまぎれて」 ▼「シーコイコイコイ!」 ▼「サルオナ」 ▼「母の独白」 ▼「童貞卒業式」 ▼「お昼寝おばさん」 ▼「上手くやりたい」 ▼「珍休さんと水あめ女」 ▼「栗の花匂う人」 ▼「乳搾りの手コキ」 ▼「妻つき餅」 ▼「いたずらの入り口」 ▼「学食のおばさん便器」 ▼「山姥今様」 ▼「おしっこ、ついてきて。」 ★作品一覧 |
稔は予定より早く帰路に着いていた。今回の学会はどうにも身の入らない内容で、特別責任もなかった彼は、残りを切り上げて帰ってきたのである。明日に備え、浩介の好きな名産品を買いに途中寄り道をしたが、それでも大分時間が余った。 自宅に着く頃には日が傾きだしていたが、家の灯りはまだ点いていない。通例ならもう灯っていてもおかしくない頃合いである。 「出かけているのかな」 そう思いながら、彼は鍵を差し込んだ。開いている。中に入ると、見慣れた靴が脱いであった。 「浩介が来ているのか」 と、その時だ、いとも不穏な声が上から聞こえてきたのは。 「オオオォォ……ン……」 それは何かの声には相違なかったが、地響きのように低く、獣のような唸りだった。 「なんだ?」 稔はたちまち不安になって、鞄も下げたまま二階へと向かう。屋内はシンとしているが、時折また思い出したように声が上がる。近づくにつれ、それは高みを帯びた女の声に似てきた。得も言われぬ胸騒ぎを覚え、彼は自然と忍び足になった。 寝室の扉が開いている。光は漏れていないが、断続的な声は確かにそこから聞こえてくるようだ。稔は警戒心を引き上げて、恐る恐る中を覗いてみた。 「これは……!」 その目に飛び込んできたのは、目を疑う光景だった。電気も点けない薄暗がりの中、窓から射しこむ街灯の光にぼんやりと照らされているのは一組の男女。女の方は彼がよく見知った裸で、向こう向きに四つん這いとなり、その背後から細身の男が、やはり全裸で彼女を突き動かしている。彼らの動きに合わせ、女の生白い肌が波打ち、垂れ下がった乳房がブランブランと無尽に揺れていた。 稔は言葉を失って、少しの間その場に立ち尽くしていた。 「浮気……?」 ややあってこのまさかの事態を把握しようと努める。妻の浮気など今まで想像だにしなかった彼である。しかも我が家に堂々と男を連れ込むなんて。 だが彼にとって不幸だったのは、それが単なる浮気でなかったことである。 「まさか」 本当は瞬間的に察知していた。あの若々しい背中。張りのある肌。熟れた女と対照的なその姿は、どんなに否定しても疑いようがない。後ろ髪から体格から、そして玄関の靴。何もかも証拠は揃っていた。相手はあの浩介に間違いない! 「約束が違う」 彼は目まいを起こして、鞄を取り落とそうとしたのを慌ててこらえた。なんということだ。あれはあの夜限りの願い事だったはずなのに。 これはもう看過できないと、稔は震える気持ちを励まして、二人を止めるべく動いた。が、その踏み出そうとした足を、妻の一言が止めさせる。 「あ……あなた……」 夫は驚いて静止した。それはうわ言のような声音で、ほとんど朦朧としながら放ったようである。よく見れば、あちらを向いた彼女の顔にはアイマスクが装着されているではないか。なるほど、妻は自分と性交渉しているつもりらしい。 「そんな馬鹿な」 どういう計略によってそんな大それたことが可能なのか。自分はずっと外に居たのだ。妻の方にその気がないと成立しないのではないか。稔には今日これまでの顛末など想像もつかないことだった。 いずれにせよ、ここに居る自分に向けて彼女が呼びかけているのではなさそうだった。二人ともこちらに背を向けて、まるっきり主人が帰宅したことにも気づいていない様子だ。それ位夢中で情事にふけっている。 「オッ、オッオッホオオォォ……ッ!」 言語不明瞭な雄叫びが佳子の口から漏れる。さっきから聞こえていたのはこれだったのだ。それは長年連れ添った稔も初めて聞く声だった。何回セックスをしたって、妻がこんな声を出したことはない。まさしく獣のように野性的な、肉体の本能が出す、それは音だ。そうしてまた思い出したように、 「あな……あなたぁ……」 と、挟む。その口からはよだれを垂らし、普段の知性的な彼女の片鱗もない。浩介はほとんど暴力的なまでに激しく腰を叩きつけており、互いの下半身がぶつかる度に、パンパンという音が炸裂する。加えて、グチャグチャとか、ヌチャヌチャといったような、生殖器から発せられる汁の音も聞こえた。 いつ果てるとも知れない交わりも、浩介の休止によって唐突に終わる。彼はグッと引き寄せた尻に股間をめり込ませて倒れ、佳子の垂れ乳を持ち上げてグニャグニャと揉みしだいた。 その時、稔の脳裏に怖ろしい考えが閃く。これは今日が初めてのことではなくて、あの夜以降何度も繰り広げられてきた展開なのではないか。自分の目を盗んで、二人は逢瀬を続けてきたのではあるまいかと。それは絶望的な仮説だった。稔はいまや顔面蒼白となって立ち尽くしていた。 その前で、佳子の体が仰向けにひっくり返されていく。稔はその動きに慌てて、壁の裏に身を潜めた。どうしてこちらがコソコソとしなければならないのか、自分でも意味が分からない。混乱する気持ちを抱えながら、しかし彼は再び部屋を覗いた。 だらしなく広がった股の間に浩介が鎮座して、彼は佳子に覆いかぶさり、その唇を奪っていた。背中が街灯でキラキラと光っている。汗だくなのであろう。おそらく佳子もそうに違いない。あの様子では、いつかの夜の比ではない位に追い込まれているはずだ。稔は怖いもの見たさで二人の接続部を見た。すっかり刺さり切った肉棒の淵から、白いあぶくが沢山垂れている。もはや異次元のセックスに見えた。 稔は暗澹たる気持ちに沈んでいった。愛していた二人が、同時に遠い所へ行ってしまったように思える。どうしてこうなったのか。言うまでもなく己が蒔いた種である。 「それにしても、あんまりじゃないか」 罰を受けるということ、罪を背負うということはこれ程までのことなのか。理不尽の観を禁じえない。 そんな彼を深淵から引き戻すように、 「あなた……」 と呼びかける声がする。 「あなた……」 しつこく呼んでくる。それが粘っこく耳にこびりついて、稔の心を倒錯させる。 「あなた」 何度も聞いている内、その声音にはただの惰性ではない真心がこもっているように感じだした。考えてみれば、妻がそう易々と自分を裏切るとは思えない。彼女は賢い女だ。それに情も厚い。彼女はあくまでも真に夫と営みを共にしているつもりではないか。そうだ、佳子は俺を諦めてはいない。 この時、稔は自身の体に異変が起きているのに気付いた。ズボンの前がこんもりと山になっている。 「なんで……!」 実に久しぶりの懐かしい感覚。彼は思い切ってチャックを下ろした。中から出てきたのは隆々と青筋の立った勃起である。 「何をしようとしている」 狂人を演じようとでもいうのかと、シニカルな理性が笑う。それでも彼がしがみついたのは、妻が自分を信じているという建前である。彼女は俺とセックスをしているつもりなのだ。であれば、現に繋がっている相手が誰であれ、俺と交わっているのと同じことだ、と。 稔は音がせぬように注意深く鞄を下ろすと、おもむろに自らの竿をしごき始めた。まるで学生時分を思い出すような溌溂とした勃起だ。彼は、しかし決して目の前の痴態に興奮してオナニーをするのではない。これはあくまでも佳子とのセックスである。目前の男と彼の身は同化しており、佳子の膣にそのペニスは入っているのだ。 「あなた……」 「うん、そうだよ」 稔は浩介の動きにシンクロさせて手を動かした。片や女の柔肉と、片や己の手と。本来あるべき地位が入れ替わっていることは意識の外に置いて。使用した回数では圧倒的に劣る女肉を相手取りながら、しかし今日思うまま回を重ねてきた浩介は落ち着いていた。その点で、ベテランであるべき稔の方がこの度は分が悪かった。同じように動かしながら、彼の方が先に事を済ませてしまったのである。 「何をしているんだ……」 少量の精液がポタポタと手からこぼれていく間に、急速に熱が冷めていく。我に返った稔は恐ろしい程の自己嫌悪に苛まれた。ハンカチを出して床を拭く間も、死んでしまいたい程に情けなくなった。頭上では激しいやり合いが続いている。 「イィーアァアッ……ハンアッ……ア、バァー……!」 相変わらず意味不明に吠える佳子。正体もないとはこのことで、髪を振り乱し、メスの本性丸出しで逝き狂っている。 性の悦びを知っている熟女と、精力のまま奔放に突き進む青年との体の相性は、憎らしい程よく合うものである。その説を、まさしく身をもって証明していく佳子と浩介だ。彼は今、佳子にペニスをくわえさせている。夢うつつの彼女は、一心不乱にそれへしゃぶりついていた。その口へ、浩介は精液を飲ませる。 稔はもはや後をも見ずにその場を離れ、書斎に引きこもった。暗い部屋のまま、ドッカと椅子に身を預ける。後はもう、ただそこで時の過ぎるのを待った。 それからどれ位の時間が経ったのか、例の声が収まって、玄関の扉の開閉するらしい音が聞こえた。稔はゆるゆると立ち上がり、そっと廊下に出てみる。恐る恐る寝室を覗けば、放心した佳子がベッドの上に放置されていて、浩介の姿は見当たらない。玄関に下りると、そこに彼の靴は無く、扉は施錠されていた。 「帰った……のか」 彼はひとまずホッとして、さてこの後の始末をどうしたものかと思案しながら寝室へ取って返す。 佳子は寝息を立てていた。素っ裸で布団もかぶらず、だらしなくベッドの上に仰向けで伸びていた。まさに犯された事後の女といった体たらくである。稔はその傍に立って、彼女の体を見下ろした。所々赤くなっているのは、いわゆるキスマークを付けられたのだろう。ほとんど至る所に見られた。どれだけしつこく愛されたのだろうか。 その顔はさぞかし疲れ切って老け込んでいるのではないかと思いきや、案に反して気力の充実した、肌艶の良いものだった。口惜しいが女としての多幸感が見て取れる。目は優しく閉じており、さっきまでの狂ったような態度が嘘のような穏やかさだ。 そこまできて、稔はハッとした。アイマスクが外されている。慌てて辺りを見渡すと、足元には剥ぎ取られた衣服が散乱しており、その中にそれは落ちていた。拾い上げて、また考え込む。これは果たして事後に外したものだろうか、それとも最中に外したものだろうか。事後自ら外したのなら問題はなし、もし最中にだったら事である。全ての前提を覆すことになるからだ。 しかし、考えても分からないことだし、推理を働かせるには彼はもう疲れ過ぎていた。諦めて片づけに着手する。使用済みのコンドームがそこここに散らばっているのを、一つ一つ摘まみ上げ回収していった。ご丁寧にもこういう教えを守った点は彼らしいと思った。計五つ。これは例の夜を前に稔が買い求めた品で、六枚入りだった。あの晩に一つと今日とで全て使い切った計算になる。 またちょっと立ち止まって、稔は思案した。 「五枚で、足りたのか……?」 五枚も一挙に使ったこと自体驚愕であったが、逆に言えば五枚も必要な絶倫が、それが切れたからここまで、といって諦めるだろうか。よく思い返してみれば、あの時の結合部にはそれらしい色が見えなかった気がする。 彼はたちまち不安になって、それでも確かめずにはいられなかった。緊張しながら妻の股の間を覗き込む。シーツはぐっしょりと濡れており、その大きな染みの上にふやけた尻が乗っている。その水源は言うまでもなく女の園。縮れ毛の先からも滴が垂れ、早くも乾き始めた滝の跡は陰肉から下へ下へと無数に筋を残していた。 水源地の淵は無残にもパックリと開きっぱなしになっており、突貫工事の凄まじさを物語っている。そして、その穴の下辺から白濁した汁がダラリとこぼれ出ていた。泡立った粘液にとどまらない、それは明らかに男が残していった子種汁に相違ないと思われた。もし指で掻き出せば、奥にはまだ残りが溜まっているかもしれない。稔はそう思ったが、一層惨めに感じる未来を恐れ、手は出さなかった。 代わりに別の挙動に出た。さっきはあれ程の勃起をしたのだから今また挑めるかもしれない。ふいに思い付き、股の間に座り直す。妻を抱き、これまでの一連を夫婦の営みだったことにしてしまえば、彼女と浩介を取り戻せるかもしれない。いかにも稚拙な筋書きだが、彼は本気でそう考えた。 股間を露出する。そこは今のこの家同様、静まり返っていた。竿をしごいてみる。が、あの情熱はどこへやら、うんともすんとも言わない。意固地になってしばし弄り回してみても、期待した反応は得られなかった。ハーッと彼はため息をつき、一物を仕舞う。妻は眠ったままだ。あるいは気絶しているのか。もしも勃起を挿入されたら、またあの淫獣が起動するかもしれないが、今は叶わぬ夢である。 稔はゴミを捨て、散乱した衣服を畳むと、タオルで妻の体を浄めていった。出来るだけ痕跡を消してやることで、忌まわしい記憶も薄らぐように思えたからである。乳房の裏側も股間周りも順次拭いていく。妻が他人とした情事の後始末は惨めである。拭われている最中も佳子は目を覚まさない。微かに開いた口から、時折艶めかしい吐息が漏れる。何だかまだ淫らな戯れを続けているようだった。 一通り仕事が終わると、稔は妻を見下ろしてまたため息をついた。股を閉じさせたから前よりだらしなさはない。彼はその上に布団を掛けると、最後にアイマスクを着けさせて、当てどもなく部屋を出、後ろ手に扉を閉めた。 翌朝、いつもよりかなり遅い時間になって佳子は起きてきた。 「あら……」 居間にいた夫を見て、明らかに極まりが悪そうである。 「ごめんなさい、寝坊しちゃって……」 夫にどこまで知られているのか分からないから、どう話していいか迷う。朝起きてみれば、部屋は綺麗に片付いていた。彼女にはそれが、浩介によるものか、夫によるものか判然としない。それでつい、相手の出方を窺うのだった。 「朝飯はもう食べちゃったよ」 夫は平然と変わらぬトーンで静かに新聞を読んでいる。少なくとも特別な緊張感は漂っていない。 「あの……昨日は……?」 佳子はかまを掛けてみる。ベッドに夫が寝た痕跡はなかった。自分はアイマスクだけを付け、裸のままで眠っていた。寝間着を着ずに寝た経験など一度もない。 「昨日は」 稔は意外なことを言い出した。 「結局外に泊まったよ。ほら、あんまり遅くなったからね。連絡したろ?」 嘘をついた。彼自身驚く程スムーズに口から出たものだ。 「ああ……」 佳子は携帯電話を取り出す。確かに連絡が来ていた。ここは駆け引きである。 彼女には昨日の記憶が途中から無かった。セックス中に意識を飛ばしたのは初めての経験である。浩介がいつ帰ったのかも知らない。ただ体だけは昨日のことを誰よりも覚えていた。口の中は妙にネチャネチャとしていたし、痴穴に至っては言うに及ばず、使い込んだ実感が今も残っている。恐ろしいまでに激しい情熱だった。一体彼がどれだけ種を残していったのかしれない。 「こ、浩ちゃん、何時頃来るかしらね……」 何気なくそう言いながら、彼女は部屋を出て風呂場へ行った。こんな時間にシャワーを浴びる習慣はなかったが、もし問われれば、浩介が来る前に身支度を整える、などと言って誤魔化すつもりだった。 だがその日、浩介は結局来なかった。そればかりではない。もう二度と家に来ることも、佳子に迫ることもなかったのである。 あの逢瀬の後、浩介の容態は急変していた。それはまるで、佳子に全ての精を吸われたかの如くに著しく衰弱していったのである。そうしてそのまま帰らぬ人となった。 「それはあんまり卑怯だよ、浩介」 弔いを終えてふと空白の時間が出来た時、稔は寂しく微笑みながら、一人ポツリと呟いた。間男の最期にしては、あまりにも潔さが過ぎる。いや、そもそも死を目前にしなければ、彼がああいう望みを掛けることもなかったのである。今はただ後悔も、まして恨みもなく、寂寥と虚無が稔の胸には去来するのみ。 浩介の死に顔は穏やかだった。人生の心残りを叶えた彼だったが、その心に最期に浮かんだのは、決して佳子を抱いたことではなく、おじさん、おばさんと三人で山へ遊びにいった思い出だったことを、夫婦は知る由もなかった。 それから瞬く間に三カ月以上が過ぎた。 あの日以来泣き通して、憔悴しきっていた佳子も少しずつ落ち着きを取り戻していた。そんな彼女が、ある日、思い詰めた様子で稔に話があると言ってきた。 「実は……」 緊張した面持ちをしている。 「あの……わたし……」 極めて言い出しにくそうにしていたが、その覚悟はもう決まっていたのだ。 「赤ちゃんが出来たの」 稔は目を見開いた。そして、一瞬で全てを悟った。浩介の子だ! 浩介の子だからこそ妊娠を打ち明けたのだ。そして、妻はもう産む決断をしている! 「おめでとう!」 稔は思い切り妻を抱き寄せた。 佳子ははらはらと涙を流しながら、夫の胸の中で言った。 「ありがとう」 稔は、この運命を、責任を受け入れていこうと、そして、妻と生まれてくる子に生涯を捧げようと固く天に誓った。 〈終〉
テーマ:エロ体験談・告白・官能小説 - ジャンル:アダルト |
その事があってから、ひと月が過ぎた。浩介(こうすけ)は手術を受け、入院と一時退院を繰り返し、帰宅の折には以前と同じように家族で食事もとった。
稔(みのる)は、少なくとも浩介の目には平生と変わらぬ様子で接してくれた。あの日持ち掛けられた提案には驚いたが、その真剣な面差しと重々しい切り出し方に接し、彼の覚悟と事の重大さを思い知りつつも、浩介は決意を曲げなかった。稔の方では、ひょっとすると翻意してくれるかもしれないという一縷の可能性に期待もしていたし、浩介もためらわないではなかったが、やはり今生唯一の心残りの成就を選んだのである。 佳子(よしこ)は毎日見舞いに来てくれた。彼女もまた以前と何ら変わりなく母親としての顔しか見せなかった。浩介がどれだけ熱い眼差しを向けても、その牙城が崩れることはなかった。いっそ彼女を押し倒そうかとも考えた。だが、それをすればおじさんの決断が無駄になる。おばさんを悲しませてしまうことに思い至り、結局悶々と耐えるしかないのだった。 しかし、彼女を知った後だからこそ一層思いは募る。知っているからこそ具体的に思い描ける。その度に彼は自分を慰めるしかなかった。あの人の柔らかさ、あの人の匂い、あの人の熱を思い出しては、あの人にくるまれるつもりで竿を握る。若くもあるし、病身でも性欲はある。むしろ死に近づく程に種の保存に執心するかのごとく、怒張はいきり立った。 「ああ……佳子さん……」 彼の中で、彼女は前より完全に女だった。愛しさが溢れ、一層可愛く見える。 そういった変化は、実は彼一人の内心にとどまるものではなかったのかもしれない。こんなことがあった。 「床嶋さん、なんか最近キレイになりましたよね」 「ええ?」 唐突にそう言ってきたのは、職場の年若い看護師である。 「みんなで噂してたんですよ。キレイになったっていうか、色っぽさが増したっていうか」 からかい半分とも取れる明るい声音ではあったが、興味津々といった様子もしている。しかし彼女の好奇心は先輩看護師の介入に阻まれた。 「床嶋さんは前からお綺麗でしょ。失礼なこと言ってないで、さっさとそれ片付けて」 後輩は唇を尖らせながら不承不承業務に戻っていったが、立ち去りながらもなお、 「でもいいなあ、優しい旦那様がいて、お仕事も出来て」 と、まだ何か言い足りない風であったのを、また先輩にたしなめられていた。 「キレイ……? どこがよ……」 独りになった時、佳子は鏡の前で自嘲気味に唇を歪めた。雰囲気にどこか変化が出ているのだろうか。そう考えると不安にもなるが、自問自答しても答えは出ない。 浩介の前ではこれまでと変わらず、否これまで以上に慈愛の精神を持って振る舞っているつもりだ。思えば、彼が自分を女として見だしたのも、こちらに隙があったからかもしれない。本当の母性愛で包んでやれていれば、心の迷いは生じなかったのではないだろうか。自覚はもちろんないが、どこかで彼に良く思われようとしていたのかもしれない。そう考えだすと、先日の一件だってそもそも自分が蒔いた種という説も成り立つ。何しろ、浩介に責任転嫁するような考えは端から出来ないのだ。 ただ、反省はするが、後悔はしない。そこは女だ。過ぎてしまったことは仕方がないと思う。今さら過去は変えられないし、その罪を背負って前に進むしかない。あの件を前提にした人生しか今後は無いのだ。だから、この秘密を想い出に変えて、夫を労わってこれからも家族の関係を大事にしていこう。そう強く強く念じた。 他方、そう強くもいられないのが男だ。稔はあの日以来ぼんやりすることが多くなった。あれで良かったのかなどと、今更ながらに悩む。浩介の為だと言い聞かせてみても、自分自身を説得しきれないでいた。妻は屈託なく日々を生きているし、自分も支障なく日常を送っている。外面的に何も変わらない。秘密は秘密であって胸の内にしか存在しないもの、あまつさえ時が経てば夢のような形に変ずる。そう知ってはいても、さてそんな日が来るかどうかとなると…… ある夜、妻の方から寝所に誘われた。十数年前ならいざ知らず、いやその頃ですら珍しかったし、近年では尚更なかったことだ。彼女自身何かしら期するところがあったと見える。稔は誘いに乗った。だが、出来なかった。彼の下半身は全く反応しなかったのだ。そればかりか、彼女の裸を見た時、あの光景がフラッシュバックしたのである。桃色に染まった肌で荒く息を吐いていた彼女の姿を。あの時のように自分は満たしてやれるのか。そう思った刹那、彼は浩介をライバルとして比較していることに気が付いた。一人の愛する女を取り合う構図は、まさにそれではないのか。 「違う! 浩介を……そんなわけはない」 強く否定しに掛かれば掛かる程、その疑念が浮き彫りとなる。また、あの若さに、あの満ち溢れた自信に勝てるのか、と弱気にもなる。 浩介は間違いなく本気で、ひたむきに佳子へ愛を向けている。それ故に厄介だ。そもそもそんなことがあっていいはずはないのだ。本来であれば、稔は彼を叱責しなければならなかった。彼は初手で誤ったのである。それはなぜか。つまらない虚栄心の故か。ただ、その解を得たとて時既に遅し。それに、あの時拒絶していたら、それはそれで悔やんだのかもしれず…… 「ごめん」 稔は静かに詫びて、妻に挑むのを止めた。 「いいのよ……」 佳子は優しく微笑み返す。女に恥をかかせたことを、夫は心から情けなく思った。 佳子は寂しかった。別に性欲に駆られて誘ったのではないつもりだ。ただ、夫婦の絆を確かめ合うように、軽く抱いてくれるだけでも良かったのである。彼の心労を思いやれば心配ではあるが、彼から打ち明けられぬ問題である以上、後はもう時間が解決するほかない。それまで静かに寄り添っていこう。妻はそう決意を新たにした。 その日、夫は学会の為に出張で、佳子は非番の時間に一人で家の掃除をしていた。明日は浩介が帰ってくる。それに備えてのことだ。 掃除の後で寝室の片づけをしていると、ある引き出しに意外な物を見つけた。 「これは……」 見紛うはずもない、あの夜のアイマスクである。本来の用途から言えば何ら怪しむべき道具ではないのだが、あの件があった為にやましい物に思える。しかも几帳面な夫らしく、ご丁寧にも避妊具の箱と共に仕舞われていた。 佳子は少し苦笑して、ふとそれを手に取ってみた。もうああいう使い方をすることはないだろう。となれば、今後は睡眠の際に使ってみようか。そんなことを思いながら、彼女はふと何気なく、本当に気まぐれでそれを着けてみた。昼間でもたちまち視界が真っ暗となる。 ちょうどその時だった。ガバッと後ろから何者かにいきなり抱き着かれたのだ。 「キャッ!」 悲鳴を上げて、反射的にそれを振り払おうとする。だが相手の腕力がそれを許さない。筋力や腕の位置から察して明らかに男性のそれだ。 「あなた?」 佳子は恐る恐る尋ねたが、自分自身言い終わらない内にそれが間違いであることを悟っていた。では、ならず者が忍び込んできたか。いや、違う。直感がそう告げていた。 彼女はふと、浩介がまだ幼かった頃、後ろから目隠しをしてきて、 「だれだ?」 と、よく言ってきたのを思い出した。その時はわざと何度か間違えた振りをしてから向き直り、満面の笑みを浮かべた少年を見て自らも笑顔となり、よしよしと頭を撫でてやるのが常だった。 そうだ、あの時のように戯れにしてしまえばいい。早くこのアイマスクを外して。そう思った刹那、彼女は尻の上っぺりに硬いしこりが押し付けられるのを感じて動揺した。うなじには熱い息が掛かる。男からは冗談に出来ない殺気めいた気配が漂い出ていた。 男は強引にも佳子をベッドへ押し倒した。そして、激しく抗う彼女に馬乗りとなって己の体ごと抑えつけ、カットソーの隙間から中へ手を差し込んできたのだ。それはひんやりと冷たい手だった。 佳子がその冷たい衝撃を感じると同時に背筋には悪寒が走る。もはや犯意は明確であった。早く止めなければいけない。彼女は躍起になって相手を押し返そうとしたが、腕力では到底敵わない。もし浩介だとすれば、あの病身のどこにこんな力が残っているのか。 「ホントに浩ちゃんなの?」 訝しがるのも無理はない。それに、あの子がこんなことをするはずがない、とも思いたい。その時ハッと閃いた。これはまた夫が仕組んだ計画なのではないかと。だとすればその辺りで彼が見守っているのかもしれない。 しかし、その考えはすぐに打ち消された。アイマスクを着けたのはあくまで偶然なのだ。そのことまで彼が計算していたとは考え難い。第一、彼は今出張に出ているではないか。 その間に衣服はめくり上げられ、薄青い花の刺繍が施された白地のブラジャーが露にされる。 これはもういけないと、佳子は相手を押し戻すことから方針転換し、アイマスクを取る方に注力することとした。これを外して、外して……外したら、どうなるのだろう。相手が浩介だったとして、今まさに禁忌を犯している彼と相対することとなる。つまりは彼を罪びとに貶めてしまう。そんなことはしてやりたくない。それに、今まで築いてきた関係を台無しにする結果ともなる。思えば、それを回避する為の道具立てではなかったか。 この一瞬の逡巡が明暗を分けた。驚くべき手際の良さで男はスカートをめくり上げ、さらにアイボリーのショーツを脇へずらすと、まだ濡れてもいない陰裂へ早くも剛直を押し当てた。 「待って」 とばかり、佳子が下腹部へ手を伸ばすのと、男根が穴に納まるのとはほとんど同時だった。彼女が握る手の中をスライドして、肉竿が通り過ぎていく。その時彼女の指には、確かにゴムの感触があった。 「やっぱり浩ちゃん」 突然の強姦魔がコンドームを用意しているとは考えにくい。であれば、さっきアイマスクと一緒に置いてあったあれを彼がわざわざ取ったのだろう。佳子は彼の最低限の気遣いとまた避妊にちょっと安堵した。 だが、だからといってもちろん現状を受け入れられるわけではない。夫が仕組んでいないなら、これは彼の管轄外の所業。夫の保護下にない以上、許されざる不倫なのだ。 「やめて」 奥まで入ってしまった不倫棒、その太さで無理矢理筋穴を広げられる苦しさに喘ぎながら、佳子は懇願するように言った。浩介の名指しを相変わらず避けている今、あとはもう頼むほかないのだった。 しかし、ここまで来て浩介が止める理由はなかった。再び戻ってこられた肉穴の熱に感動しながら、彼は夢中になって自身の快楽を追求していく。 浩介にとって、これは願ってもない僥倖だった。日々恋慕の情に悶々としていた彼は、とにかく佳子に会いたくて仕方なく、無理を言って半日早く帰宅させてもらうと、飛ぶようにして家までやってきた。初めは、いきなり行って彼女を驚かせてやろうという純粋な遊び心だった。それこそ佳子が思い出していたようなやり方である。ところが、いざ部屋を覗いてみると、なんとアイマスクを装着しだしたではないか。その瞬間に彼の理性は崩壊した。いわば突発的な犯行だったわけである。 まだ濡れていない膣穴はギリギリと肉棒を締め付ける。だがさすが年の功というべきか、きつ過ぎるということはない。彼女の柔らかい人柄そのもののように、器もしっぽりと男をくるみ込む感じ。それでも出産を経験していない彼女であるから、やはり狭さは保っている。ほかに女を知らない浩介だからその辺りの機微には気づけない。ただただ愛しい人の中に入っている悦びがあった。そして、彼女が気持ちいいことを改めて知った。 肉茎を断続的に摩擦すること二十数回、彼の限界はすぐに訪れた。自分でしごくのとは加減が全く違う。それにまた、この間の時みたいに執念深く粘れなかった。許されざる犯行だっただけに、やはり焦りがあったのである。 しばし我慢を試みたがもう耐えきれないと見るや、浩介は最後に思いのまま腰を使った。そうして相手の両肩を掴んで上体ごと彼女に密着して抑え込みつつ、一気に思いの丈を愛する穴へとぶちまけた。 「ンンッ!」 あの日以来の熱を胎内に覚えて、佳子の体が反射的に驚く。 「終わった……のね」 とうとう最後までやりおおさせてしまったと、虚脱感が押し寄せてくる。事件なんて呆気ないものだ。あれ程の怖ろしいことが一瞬で終わる。それにしても前の時はひどく長く感じたものだが…… 「いいえ、あの時は……」 佳子は少し頬を赤らめながら思い返した。あくまでも夫婦の営みとして始まったから、夫が前もって丁寧に愛してくれたのだと。その結果もあってのあれだから、決して浩介一人にやり込められたのではなかったのだと。 浩介はうずめていた枕から顔を上げ、ちらりと彼女の喉を盗み見た。ちょうど生唾を飲んだらしく、そこが僅かに動いて見えた。その動きが可愛らしく、彼は思わずそこへ吸い付き、チロッと舌先を出しながら、そこから首筋、鎖骨の辺りへかけて、軽く舐めながら唇を這わせていった。 「イヤァ……」 くすぐったそうに見悶える佳子。ゾクゾクと総毛だつ。気持ち悪いわけではないが、背徳的な怖さがある。何より、事を終えた相手がすぐに離れようとしないのも気がかりだ。 彼女の逆立った産毛が日光を浴びてきらめくのに目を細めながら、浩介はうなじの中に鼻をうずめ、彼女の髪から漂う甘い香りで肺を満たした。過去には肩より下まで伸びていた佳子の髪だが、現在は全体をショートに整えている。そのロングだった頃を思い出しつつ、浩介は彼女の髪をやんわりと撫でた。 近くで見ると、本当に美しい人だと思う。美人といってもツンと澄ました所は全くなく、あくまでも柔和な母性的な顔立ち。この人に憧れてずっと生きてきたのだ。 「もっと、もっと知りたい!」 彼女の全てを知りたい。そう思った時、彼の準備はもう出来ていた。若い肉体が一発で済むはずもない。浩介は新しいコンドームに付け替えると、やにわにショーツの脇から再突入を開始した。 「ンアッ!」 佳子は驚いてのけ反った。再び入ってきた欲棒は、先程とも遜色なく、いやむしろ増したのではないかという程の硬度で、膣肉を遺憾なくえぐり抜いていく。 「もっと、もっと!」 浩介は彼女の両脚を肩に担ぎ、ぐっと前のめりになって上から下へと腰を叩きつけた。自然、佳子の尻が浮かび上がる格好となる。 「ヒアッ!」 子宮の口に亀頭が激突して、佳子は思わず悲鳴を上げた。それでも相手はお構いなく、硬直棒はドスドスと奥壁を激しくノックし続ける。彼女はたまらずに彼に抗っていた手をベッドへ振り下ろし、シーツにしがみついた。 浩介はしばらくそうやって連撃を続けた後、小休止の合間にブラジャーに手を掛けた。そしてホックも外さずに無理矢理それをずり上げる。すると、一旦めくれ上がった乳房が乳首のとっかかりを通過した直後にドロンと落下して広がった。 浩介はそれとの再会を喜びつつ、むさぼるように乳輪ごと吸引する。母乳の出ないことが不思議だと思う程ジュウジュウと吸った後、パッと離すと、乳玉は呆気なく形を崩し、自立出来ずにとろけた。見れば、乳輪の外側にほの紅い輪っかが残っている。彼は左の乳房にも同じことを施し、同時に肉穴を突いていった。 少しく乱暴になりだした彼に恐れをなしつつ、それでも敢然と拒絶出来ない佳子。もはや貞操を奪われしまった今、それに付随する行為も一緒くたに許容してしまう自堕落さがある。もう罪の重さは変わらないというのか。結果、相手のしたいようにさせてしまっている。 「ンッンッ……」 予想できないタイミングでドクドクと流れ込んでくる熱汁。それをまた胎内に感じながら、今度は幾分驚きも収まって、相手のことを思いやった。この闇の向こうで、彼はどんな表情をしているのかと。 二発目の射精を終え、浩介は上気した面持ちで、まんじりともせずに佳子の顔を見下ろしていた。初めより呼吸の荒くなった彼女の頬は、ほんのりと染まっているようだった。幾度となく見慣れた普段着の中から乳房を露出している様を見ていると、恋焦がれる人をとうとう自分の女にしたことを実感し、感無量であった。のだが、欲求というのは果てしがないものだ。 「ああ、もう……我慢出来ない」 浩介は辛抱堪らなくなって倒れ込むと、右手で彼女の頭を抱き、左手をその卵のようにツルリとした丸い頬に添えた。お互いの息が吹きかかる程の距離である。佳子は何かを察して本能的に口を閉じる。ちょうどその直後、浩介の唇が佳子のそれに押し付けられた。 「ダメよ、浩ちゃん」 佳子は衝動的に相手の胸へ手を突っ張ったが、無力にも押し返すことは出来なかった。頭は固定され横を向くことも出来ない。 浩介の唇は、きつく結んだ相手の唇を剥がすかのように上下に挟んで動いていく。上唇から下唇、時に引っ張り上げようとしたかと思えば、横へ移動したりして、あっという間に全体を周回していった。 佳子は口を開かぬ覚悟だったが、どうしても息苦しくはなるもの。油断という程の油断ではないが、ちょっと唇が緩んだのを見逃す浩介ではなかった。今度は舌が入ってきて、第二関門の前歯が蹂躙されていく。それはまるで掃除でもするように上の歯、下の歯、ゆくゆくは頬の裏の方まで舌は侵入し、丁寧に表面を舐めとっていった。 「イヤ、やめて」 この接吻は、初め姉弟としているような違和感しかなかった。背徳というよりも意味の分からない感覚。核心の一線はとっくに越えているのに、やはり二人は男女の仲ではなく、佳子からすれば、浩介はいまだに我が子以上の何ものでもなかったからである。 ところが、彼が三回目の挿入を始めてからその様相は変わってきた。 「ウソでしょ!?」 まずはそれが佳子の率直な感想だった。夫の若い時分でも一晩で二回以上のことはなかった。彼女はそれでも十分満足していたし、何ら疑問にも思わなかったのである。それが、若いとはいえこの短時間に三回もしようとしている。しかもまだまだ硬い。 そして、この合体と並行してのキスである。夫との愛の営みにおいて、これは必ずあることだった。なので、彼女の中では暗に、セックスとキスが連想的に図式化されていたのである。ここに至って、浩介と交わすそれも少し意味が変わってきた。 つい噛み合わせを直した隙をこれまた逃さず、浩介の舌はとうとう奥の空間に侵入してきた。佳子の舌は逃げ回ったが、彼は追い回すことにこだわらず、歯の裏や歯茎を舐めたりして寄り道も愉しんだ。そうこうして乱れ合う内には、いよいよ舌同士も絡み合う形となった。唇同士も密着し、互いの唾液で口の周りはベトベトになるし、彼の唾液は佳子の口内へトロトロと流れ込んでくる。経験のない浩介だが、彼を突き動かすのはとにかく探求心だ。佳子の歯や唾の味も、唇の内外の感触も、何もかも全てを味わい尽くしたい彼である。 浩介は佳子の艶のある髪へ指を絡ませて頭皮をまさぐり、他方で額から頬を撫で、耳のひだをなぞった。肉棒の存在感とも相まって、我知らず佳子の目が熱っぽく潤みだす。体の芯から女にされていく。 だが、二人はかかる情事に埋没していきながらも、当初からある共通の懸念を有していた。それは時間の経つごとに膨れ上がっていくもの。すなわち、 「あの人が帰ってくる前に」 稔の出張のことは浩介も知っている。もちろん計画的な犯行ではなかったが、彼の居ないことが行動に踏み切らせた面は否めない。そうして実際に犯してしまった今、あとはもう、おじさんの帰る前に精一杯佳子を愛そうという腹積もりだった。 一方、佳子はといえば、これはもう気が気ではなかった。大体の帰宅時間は予想しているし、まだ大丈夫とは思っているものの、こんなに浩介が粘るとは思わなかったし、そもそもが夫を裏切っているわけで後ろめたく、すぐにでも切り上げるべきだとは本心から考えていたことだ。 かの夜の折は、あくまでも形式上は夫との情事だったところ、今回は端からの不倫である。このアイマスクが故に辛うじて建前を死守しているとはいえ……ここで佳子は、はたと気が付いた。そうだ、自分は夫と性交しているのだと。浩介もまたそれに乗っかって行為に及んでいるわけで、たとえ夫が介在していなくても、この交渉は夫婦のそれというべきなのである。ならば、自分は夫に抱かれている風を演じ続けなければならない。 佳子はか細い声で試しに言ってみた。 「あなた……」 我ながら白々しく感じられ、その声は覚えず震えていた。言った傍から耳まで赤くなる。そうだ、夫だ。あの人に抱かれているのだと自己暗示めいたものを掛ける。こうなるともう自分との闘いだ。 それにこれは、もしも夫に見つかった時に、いくらかでも彼の心を和らげようという打算もあってのことである。妻は夫と思ったからこそ抱かれているのだと思えば、彼も理解がしやすいだろう。そう考えた。が、そのすぐ後から、結局保身ではないかとの疑念が湧いてくる。妻が悪くないとすれば、責任は全部浩介に押し付けられるのだ。 佳子は、しかしこれ以上満足に思案出来なかった。彼女の煩悶を台無しにするようなことを浩介が言い出したからである。 「佳子さん……」 彼は遂に声を出した。それは言ってはならない掟だったはずだ。佳子の背筋へ冷たいものが一気に走り、耳の奥がキーンと鳴って、彼女は恐怖から身を震わせた。 「佳子さん」 聞き間違いではなかった。聞きなれたあの声で、明瞭に彼は呼んでいた。 「ダメよ、ダメ」 「佳子さん」 「名前で呼ばないで」 「佳子さん!」 「浩ちゃん、お願い」 「佳子さん……ああ……佳子さん!」 佳子は必死に心で哀願したが、情熱をまとった彼には一切届かなかった。その勢いのまま男根を女陰の奥底へこすり付け、むさぼるように彼女の口を唾液ごと吸い上げる。佳子は息も絶え絶えになってきて、胸の奥がカーッと熱くなる。 「ダメ……ダメだったら……」 愁眉を寄せて見悶える。全身から汗が吹き出し、火照った肌は桜色に染まっていく。 「イヤァ……!」 腿の内側が、まるで自分のものでないように一人歩きしだし、もうどうしようもない感覚。そこへきて、浩介はとどめの連撃を繰り出し、そしてそのまま熱情を噴射して果てた。 「アァウァ……!」 彼とディープキスを交わしながら、佳子は絶頂していた。浩介が正体をバラシてしまって、この先どうなるのかなんて、今は咄嗟に見当も付かなかった。 浩介は浩介でさらなる行動に出る。今度は下半身に移動し、そこにあったスカートもショーツも全部取り去ってしまった。 「イヤ……」 佳子は恥じらったが、制止する力も出なかった。恥部を見られていることは視覚を失っても分かる。なんとなれば、闇の中だからこそ想像力が逞しくなる。 浩介は愛する人の陰唇をまじまじと見つめた。毛量は薄い方で、処理を徹底していなくてもそれ程繁茂していない。やや茶味がかった縮れ毛が申し訳程度に割れ目を包んでいる。その中に周りの肌よりも深い色の陰唇が可愛らしく鎮座している。その拓けた中心部には、先程来自分がくり抜いた穴が黒く開いていた。 さらに視線を下げると、生白い尻の奥に集約した皺がある。そこは桃色がかって見えた。浩介は佳子の尻の穴まで知れたことに喜びを感じたが、彼女の羞恥を思いやるとあまり深くは追及しないことにした。何となく自身でも気恥ずかしいような気持ちがある。 何よりも今は女陰だった。複雑な回廊のようなひだが重なっており、無知な彼には何が何やらさっぱり分からない。まずは鼻を近づけてみたが、匂いという程の印象はこれといってなかった。ただ彼の中の補正で、佳子らしい甘い香りが漂い出ていたような気はした。むしろ印象的だったのは、そこから湯気でも立っているのではないかという程、顔面に熱気を感じたことである。 続いて、指の腹で外周をなぞってみる。瞬間、佳子がビクリと痙攣した。浩介はその反応をチラリと窺いつつ、肉の厚みを確かめるように摘まんでみる。そうしながら、自分が入っていた穴の奥を改めて確認した。なんだか新鮮なホルモンのような、オレンジとピンクの合わさった色の、しっとりとした粘膜が剥き出しになっている。彼は思い切って、そこに唇をくっ付けた。 「ヒィッ!」 佳子は悲鳴を上げて、思わず口の周りを両手で覆った。到底我が子から受ける仕打ちではなく、これ以上の辱めはない。合体よりも恥ずかしい。余程止めようと考えたが、止めることも恥ずかしいような気がして身動き出来ないでいた。 浩介の研究は続く。まるでお定まりの如く指を差し入れてみる。 「熱い!」 彼は内側の熱にびっくりした。体の内部から直に感じる体温は、体の表面に触れるのと全く訳が違っていることを知った。医学生らしい感想といえば感想といえる。この場合、さながら佳子は実験体というわけだ。あるいは手術と言うべきか。いずれにせよ、続いては味覚を調べてみねばならない。 「ンンッ!」 ゾワゾワと総毛だたせて、佳子は口をへの字に結んだ。もう勘弁してくれと祈った。恥部を、それも今しがたまで使用していた痴穴を舐められている。 浩介は彼女の反応を見て驚いた。一体に彼は、佳子が感じているという想定をしてこなかった。自分だけが気持ちよくなることで精一杯だったし、何より男として自分が見られていると思っていなかったから、相手を気持ち良くさせてやろうなどと高い目標を課していなかったのである。 だが今の反応を見ると、あるいはそれが出来るかもしれない。そう思った彼は、佳子を喜ばせたくて夢中で舌を使いだした。内壁に沿って、グルリグルリと舐めこそぐ。先程指でも感じたことだが、中はしっとりと湿り気を帯びているようだった。汗も混じっているだろう。無論己の吐いた唾液もそこに混ざる。しかしそれ以上に、奥から汁が湧いてくるようである。これが愛液か。そう悟った瞬間、彼は無上の喜びを感じた。 「佳子さんのお汁」 浩介はこれこそ求めていた彼女の真髄と感じて、まるで名水を味わうかの如く、夢中で湧き汁を啜った。出来ることならこの汁で口中を一杯に満たしたいとさえ願った。 ズズズとか、ピチャピチャとかいう音が聞こえだすと、佳子はもう身も世もなく悶え、 「もうよして……」 と、切に懇願した。確かに言いようのない快楽のある事実がまた彼女を苦しめる。浩介は指も織り交ぜながら、彼女の膣を嫌という程愛した。闇雲なやり方だったが、一旦火照りだした佳子の肉体は憎らしくも対応し、女体の悦びをまっしぐら。そういう時間が延々と続いた。 やがて浩介は起き上がり、新しいコンドームを着ける。四回目の準備である。そうして、彼は平べったく伸びた乳房をそれぞれかき集めてギュッと搾ると、まるでそれを取っ手代わりのようにして体を支え、勢い衰えない怒張を、グショグショの水浸しになった雌穴へ、もはや慣れた調子でねじ込んでいった。 まだ日は高い。稔が帰るまでには、十分時間があるはずだった。 テーマ:エロ体験談・告白・官能小説 - ジャンル:アダルト |
「何を馬鹿なことを!」
稔(みのる)は、まさかこんな短期間に二度も同じ台詞を吐くことになろうとは思いもしなかった。眼前の青年は耳まで真っ赤にして、緊張と羞恥と恐怖の入り混じった感情にブルブルと震えながら、しかし目線だけには確固たる決意をにじませてこちらを見ている。 「無理は承知しています! でも、それでも、なんとか」 言い切らぬ間に、浩介(こうすけ)は咳込んで言葉を詰まらせた。それを見た稔は、 「ああっ!」 と言って、文字通り頭を抱え込む。このいたいけな青年がかくも短い期間にこれ程の悩みを持ち込もうとは考えもしなかったことだ。幼い頃より面倒を見てきた中でも、こんなに苦悩したことはない。 交通事故で両親揃って失った浩介を引き取ったのは、ちょうど十年前。彼の父が大学の後輩だった縁である。稔夫妻には子が無かったこともあり、我が子同然に愛情を注いできて、呼称こそ“おじさん”“おばさん”であったが、浩介の方でも親同様に懐いていたはずであった。聡明な彼は医学部への進学も果たし、この春から晴れて夢への第一歩を踏み出していた。つまり、育ての両親と同じ道を選んだのである。 ところが、だ。運命は惜しみなく将来を奪う。一体彼が何をしたというのか。父母を奪っただけに飽き足らず、今度は彼自身の命さえ奪うという。病が発覚した時、既に手遅れだと言われた。 「何を馬鹿なことを!」 耳を疑った。あらん限りの伝手を頼って八方駆けずり回ったが答えはどれも残酷なもの。もちろん医師である稔自身にも分からないはずはない。だがどうしても信じたくないのだ。患者の死を数々看取ってきた彼だが、今ほとんど初めて遺族の気持ちと同じになったと言っていい。実の親の時ですらここまで諦めきれなかったことはないのだから。 本人に告知する気はなかった。しかし余命幾ばくもない段階においてはそれも無意味である。手続きが済めば、明日にでも入院、そして手術。今日はそういう話を伝え、当人の意思を確認する日だった。 真実を聞かされても、浩介は決してたじろがなかった。やはり察していたのである。日を増すごとに激しくなる体の痛みが異常を知らせていた。若い肉体なだけに進行のスピードが速い。同時にまた偏った情熱も加速していった。 「お願いです! どうか許してください」 「しかしだな……」 「お願いします! どうか佳子(よしこ)さんと」 「言うな……!」 平生なら“おばさん”と呼ぶべきところを、あえて名前で呼ぶ。こんなことは初めてだった。稔は顔を手で覆って相手を見ないようにした。つい今しがた始まった押し問答。何か力になれることはないか、と話を向けたのがきっかけだった。何が欲しいとか、何処へ行きたいとか、多少の無理は通してでも叶えてやろうと思ってのことだった。 最初、浩介はいかにも思い詰めた表情で、何か言いかけてはやめるというのを何度も何度も繰り返していた。何をそんなに躊躇うのか、稔は不思議に思いながらも、いつにも増して柔和な笑みを浮かべて、ゆっくりと彼の言葉を待った。すると、予想だにしない答えがその口から漏れ出たものだ。 「ぼ、僕は、お、女の人を、知りません」 「ほお……」 なるほど、と思った。そういう系統の話なら言いにくかろうと。妻が同席しなかったのは結果的に良かった。男同士なればこそ、こういう悩みも打ち明けられるというものだ。稔は、そう言えばこの子の浮いた噂は聞いたことがなかったな、などと瞬時に思いを巡らせたが、意を決した浩介が訥々と言葉を紡いでゆくのですぐに現実に引き戻された。 「だから、け、経験をしてみたいです」 ズバリと青年は言い切った。まさに一生に一度の願いというわけである。だが、本題はむしろここからだった。 「それで、その……」 「うん」 はてどうしたものか、と早速に稔は考え始める。いわゆる性風俗店の世話になるか。差し当たりそれしか思いつかないが、生憎自分はその道に明るくない。これは案外厄介だぞ。浩介の名誉のためにも妻には伏せておきたいし。だが、ここまで思い切らせた以上、なんとしてでも叶えてやらなければならない。 「あの……」 浩介の言葉はまだ続いていた。いよいよ口が重くなり、ここにきてさらに逡巡する様子だ。だが、一度口火を切り、既に恥をかき始めた以上、もはや開き直るほかない、という勢いで彼は突貫した。 「お、お、おばさんと……」 「ん?」 稔には聞き取れなかった。単純に声が小さかったし、想定外の単語だったからというのもある。 「おばさん……お、奥さん……よ、佳子さんに、お、お相手してほしいです!」 徐々に声量を増しながら、最後は怒鳴る様にして浩介は絶叫した。 「おばさん? 奥さん? 佳子さん?」 何を言っているのだ、稔には唐突過ぎて意味が分からなかった。その混乱を余所に堰を切ったように浩介がまくし立てる。 実はこの家に引き取られるよりずっと前、実の親に連れられて初めて会ったその日から佳子に恋してきたこと。もちろん叶わぬ恋なのだから、こんな日が来なければこの想いは秘めたままでいるつもりだったこと。おじさんを裏切る気など毛頭なく、だからこそ正面からあえて恥知らずな頼みをしていること。決して気が触れたわけでも自暴自棄になったわけでもなく、真剣にお願いしていること。そういったことをつらつらと、いとも流暢に説明していった。このことは決してその場の思い付きでないことを示していた。 「妻を、抱かせろ、と?」 要するにそういう頼みだと理解した時、しかし稔の混乱には一層拍車がかかった。 「この子が、アイツを?」 考えもしなかったことで、にわかには信じがたい。現にいくつ歳の差があると思っているのか。稔は震える心で計算した。自分が今六十二だから、一回り年下の妻は今年五十、いや誕生日が来ていないからまだ四十九か。対して浩介は……十九。十九? 三十も年上のアイツが今でもいいと? 確かに、初めて会った頃ならまだ三十代ではあったし、恋をするのも分からなくは……いや、やはり信じられない…… 「どれだけ軽蔑されても構いません。ここまで育ててもらって、恩を仇で返すようなお願いをして……でも……でも! どうせ死ぬなら、最後に想い出を!」 浩介は切々と涙ながらに訴え、遂には床に手をつかんばかりにしだす。 「よ、よさないか!」 さすがにこれを稔は止めて、ただほとんど思考停止のような状態で、これからどうしたものか判断がつかず、ほとほと困り果てていた。そんな中でも、浩介から魂の叫びが続く。彼とて、もはやここまでぶちまけた以上、後には引けないのだった。 「待て、待ってくれ」 稔はやっとのことでそれを押しとどめ、しかし自身の言葉になんの裏打ちもないので情けなく、ただ大きなため息をついて座り込んだ。待てと言ったって、間を置いて考えたところで何になろう。ましてや時間的猶予など許されない状況で。だが、やはり今すぐ答えは出せない。何よりこの場にいない者にも関係する重大事だ。この点は浩介もさすがに理解しており、結局のところこの夜はここで別れた。 だが、二人は知らなかった、この会談を扉一枚隔てて聴いていた者のいたことを。すなわち第三の当事者、佳子である。 三人で夕食をとった後、彼女は片付けの名目で台所に残った。その間に何気なく夫が浩介を書斎へ連れ出し、話をするというのがかねて打ち合わせていた段取りである。息子のように慈しんできた者の不幸に、佳子の手は震え、涙が止まらなかった。これでは到底冷静に告知をすることなど出来ない。自分は医者失格だと思った。 それでも、今晩の浩介の明るい笑顔を思い出し、心を奮い立たせる。まるで病魔に侵されているのが嘘のような屈託ない態度。もう既に察しはついているだろうに、あえて心配をさせまいと健気に振る舞っているようだった。 佳子はゆるゆると洗い物を終えると、コーヒーを淹れ、そのカップを載せた盆をしっかりと掴み持ち上げた。フウッと息を吐き、書斎を目指す。そしてそれは、目的の部屋の前まであと二、三歩と迫った時だった。その衝撃の言葉が耳をつんざいたのは。 「おばさんが、いえ、佳子さんが好きなんです!」 咄嗟には意味が分からなかった。一体何の話をしているのか。想像の遥か上をゆく会話である。佳子はドアノブに掛けようとしていた手を止め、息を殺して聞き耳を立てた。 「わたしを……抱……く……?」 聞けば聞く程に混乱する。だが確かにそういう風に言っているのだ。我が子と思っていた彼が男として、そして母親代わりの自分を女として見ている。室内で夫は動揺しているようだ。それはそうだろう、自分だっていくら考えても理解が追いつかないでいる。ましてや夫に妻と関係させてほしいと願い出、筋を通しているつもりらしい。荒唐無稽である。 気でも違ってしまったのだろうか。不安から心臓が早鐘のように打ち出し、彼女は中に入るきっかけを失って、ただただその場に立ち尽くしていた。怒りはない。むしろ憐憫の情が次第に心を占めていった。女性を知りたいと彼は願う。だが今から誰かと出会い愛し合う仲となるのは難しいだろう。大切な子だけに、いい加減な相手と結ばれてほしくもない。であれば、いっそ…… 「わたしが犠牲に……」 そう思い至って、しかし佳子は恥ずかしくなり、また恐ろしくもなってきつく冠りを振った。 「何を考えて……!」 息子と体を重ねるなんて、そんな母親がいるはずない。これまでの歴史が崩壊してしまう。男性として見ることなんて出来ない。あえて評すならば、気持ちが悪い。そう、これは気持ちが悪いことなのだ。けれど、彼の方では自分を対象と認めているらしい。手近で頼みやすい女が自分しかいないと判断したのかもしれないが、少なくとも女としては見ているのだ。 「わたしは、でも、だって、あの人が……」 そうだ、その前にまず結婚している。夫を裏切ることになってしまうではないか。佳子はそこでハッとして顔を上げた。あの人はどう答えるのか。だが、彼の声はくぐもって生憎聞き取ることが出来なかった。 そうこうする内に会談が終了しそうな雰囲気を感じ取って、佳子はそそくさとその場を後にし、再び台所へと戻った。そして明かりも点けずに呆然とまた立ち尽くす。 「あの子が……わたしを……?」 頭の中を同じ考えがグルグルと堂々巡りしている。その時、パッと部屋の電灯が点いた。稔だった。 「あら、今コーヒー持っていこうと思って」 佳子は何も知らない風を装って言った。 「いや、浩介は帰ったよ。送ろうかと言ったんだけども、少し一人になりたいからって」 「そう、浩ちゃん帰ったの」 稔はコーヒーを一口啜った。それはすっかり冷めていたが、彼は気にも止めなかった。 「……それで、浩ちゃんはなんて?」 「ん? うん……」 稔は分かりやすく目を逸らす。 「だいぶ、気が動転しているようだったな……」 彼は苦笑いを浮かべたつもりだったが表情がこわばって上手くいかなかった。 それから二、三日、この件について何ら進展はなかった。佳子は診察に付き添ったりもしたが、あくまでもこれまで通りの母親役に徹していたし、浩介の方でも全く変わった挙動に出ることはなかった。ただ、佳子には些か変化が見られたようで、 「床嶋さん、大丈夫ですか?」 などと、同僚に顔色を心配されたことはあった。家庭の事情は既に職場でも知られていたので、やはりそのことで悩んでいるのだろうと周囲には察せられるだけだったのだが、彼女は懸案を見通されたように感じて独り恥じ入るのだった。 事態が急転したのは何の前触れもない、ある夜のことである。 「これを着けてくれないか」 薄暗がりのベッドの上で唐突に稔からある物を手渡されたのだ。 「え?」 それはアイマスクだった。夫婦の営みの最中、前戯が終わった頃に差し出された。惰性的な交渉を防ぐ目的でこういう趣向を取り入れるとは聞いたことがある。だが、夫はこれまで一度もこの種の試みを持ちかけたことはない。その点で、極めてノーマルな嗜好の持ち主であるといえよう。 そもそも、稔から今夜誘われたことも意外であった。彼は五十代後半に入ってからいわゆる不能気味となり、この三年に至っては全く夜の生活もなかった。決して夫婦仲が悪いわけではなく、お互いにそういった行為からはもう卒業したような感覚。ある意味では友人のような、またある意味では同志のような関係性と思っている。 そんな夫が急に誘ってきた。あの立ち聞きを経ていればこそ、妻には特別に感じるものがある。そんな中での提案だ。彼女は受けた、夫の苦悩に寄り添うべく。 「これを、着けるの?」 稔は黙って頷く。その表情は著しく緊張していた。佳子は急に胸騒ぎを覚え、夫の顔をよく見る。すると、彼はそっと目を逸らした。 「何かある」 そう思うのは、長年連れ添った夫婦の勘のみに基づくものではない。やはり当面の疑念が介在しているからで、これを受け入れるか否かには、表面以上の決断を求められているのだと悟らざるを得なかった。そして、夫は既に何かを決断したのだ。次は自分である。 佳子は悩み、しかし一瞬の後にはアイマスクを手に取っていた。仮に日頃であっても、それは明朗な好奇心でもって彼女は受け取っただろう。行為自体を直ちに不愉快だと認定する程彼女は狭量ではない。且つはまた今あえて問い詰めることもしなかった。真実を知らせないというのが、彼の趣旨であろうから。 これから何が起こるのか確定ではない。だが妻としては夫を信じるしかなかった。もしも自分が思いついた手法通りだとするなら何と稚拙なアイデアとは思うが、あるいは彼にとっては未必の故意であり、自分が察した場合をも想定してなお、一緒に堕ちてくれという願望かもしれず。いずれにせよ一蓮托生の思いは同じである。 佳子がそれを装着すると、程なくしてベッドが軽くなったのを感じた。暗闇の中で、あっと思ったが、それも一瞬のことで、すぐにギシリとまた重量が加わる。 「あなた?」 「うん?」 夫だ、夫は居る。だが彼はその後余計なひと言を付け加えた。 「大丈夫だよ」 「大丈夫」とは、この場合どういう意味だろうか。平素なら単に、怖がらなくてもいいよ、という意味だと理解もしようが。 しばらくの沈黙があった。ひどく重い闇の中で、それはとても長く感じられた。確かに何かがうごめく気配がある。佳子に緊張が走った。 「あなた」 そう呼びかけようとした刹那だった。硬くて熱いものが秘裂にぶつかった。 「ヒッ!」 思わず悲鳴を上げて、体をこわばらせる。本能的にその熱いものから逃れようと身を引く。ここに来て恐ろしさが胸の内を占めていく。 しかし、相手は待ってくれない。彼女の反応にちょっとたじろいだのも束の間、もう後には引けないとばかり、硬い突起をぐいっと押し込めてきた。 「ああ……っ!」 佳子は唇をきつく結んで、見えない中でも目をギュッとつむった。禁忌を犯す恐怖と逃れられない運命と、諦観と覚悟とに翻弄されながら、無力な己を恥じながら、もはや生きた心地もなくその身を硬直させる。 ズッ、ズッ、ズルズルと、硬い棒が女の細道を押し広げて沈んでいく。 「これは……」 疑うべくもなかった。これは夫ではない。認めたくはないが、やはり……! 「ンッ!」 男根は行き着く所まで入って、今や二人の股間が密着するまでになった。紛れもない男の欲棒である。奥の奥まで届いて、佳子は顎を伸べ呻く。もう何年も迎え入れてこなかった硬さ。久方ぶりの男だが、しかし、女の体は覚えている。あの頃の、若かったあの人の硬さ。それと同様か、あるいはそれ以上の…… 「あの人は!?」 ハッとして佳子は気が付いた。これが夫ではないなら彼はどこに居るのか。……いや、居る! これも確信が出来た。彼の気配は確かにあった。では、彼はどんな思いでこの光景を目の当たりにしているのだろうか。 稔は確かに見ていた。さすがに挿入の瞬間こそ目を逸らしたが、この計画を実行した以上は見守らねばならぬと思った。彼は妻以上に悔恨と無力感に苛まれていた。本当は部屋から出ていたかったが、妻を生贄に捧げた卑劣な自分の最低限の義務として、あるいは自分への罰として受け入れることを決めた。それに、妻はあくまで自分と性交しているつもりであるから、さっきみたいに話しかけてくることもあろう。その時返事をせねばならないのでもあった。 「ああっ!」 佳子は目尻の皺に涙を溜めて、夫の辛さに思いを馳せた。また同時にこんな浅ましい姿を最愛の人に見られていることを深く恥じた。一体にこんなことを本当にしなければいけないのか。 しかし、今抱かれている相手を蔑むことも出来ない。彼は余命幾ばくもなく、その最後の望みを自分にかけてくれた。何より幼き頃より今日までずっと慈しんで育ててきたわけで、その彼が劣情を露にしたからとて急に恨むことなど出来ない。しかも健気に、一途に自分を想い続けてきたという。そう、育ての母ではなく、一人の女として自分を見てくれていた…… 「イヤッ!」 ふとそこへ思い至った時、佳子は忽ち恥ずかしくなり、拒絶の声を上げそうになったのをすんでの所で止めた。彼の前に今自分は一糸まとわぬ姿をさらけ出しているのだ。くたびれた五十路前の裸。肌の張りも衰え、乳も垂れている。憧れてくれている子にこんな情けない姿を見られているのだ。 ちょうどその時、彼の手が佳子の乳房に触れた。 「イヤ……ッ!」 恥じらいの極致で佳子は身をよじらせる。手は彼女の感触を確かめるように優しく動いた。 浩介は歓喜に包まれながら目の前の人を見下ろしていた。憧れの人の裸身。ずっと昔、まだ自分が幼かった頃、一緒に風呂に入った時以来。あれから十年経って、再び相まみえる日が来ようとは夢にも思わなかった。彼女の母性そのものを象徴するかのような丸みを帯びたフォルム。顎や肩の辺りには年輪を感じる贅肉が見られたが、彼女が卑下するような印象は全くなく、むしろ全体としては均整のとれた体型だったし、何より浩介には魅力的な女性にしか映らなかった。年齢の不利などは一切感じない。 乳房は中年になって一層肉が付き豊かさを増しており、そこに控えめに乗った乳輪が上品さを醸し出していた。浩介は夢にまで見たそれへ手を伸ばし、その柔らかさを堪能した。柔らかいといってもゴムのようではなく、餅のようでもあるが中身はもっと緩い感じ。表面の反発は少なく、指を押し込めば戻るまでに時間差があった。そうしてずっしりとした重量感。彼は辛抱たまらなくなって上部の突起に吸い付いた。 「ンハ……ッ!」 微かな吐息が上の方で聞こえる。浩介は己を育ててくれた乳でもないのに、赤ん坊よろしく夢中でチュウチュウと吸う。この時ばかりは子供に帰ったようにも見えるが、内実はやはり男である。何より、彼の陰茎はすっかり母ならぬ女の股に深く突き刺さっているのだから。 彼女の体温が内壁からダイレクトに伝わってくる。実際には事前に稔から渡されたコンドーム越しではあるが、佳子の熱はそんな被膜では防げない程、肉棒を焦がさんばかりに熱かった。彼女と繋がった時、浩介の心は愛おしさで一杯になった。本当なら可愛い顔をまじまじと見て、その唇まで奪いたかった。だが一線は越えなかった。本懐を遂げたとはいえ、これはあくまでかりそめの関係。稔も佳子も本来は傷つけたくない彼である。 浩介は冷静だった。死を目前に控えた人間の強さであろう。あるいはこの一たびの奇跡を無駄にはしないという強い意思で、彼は逸る気持ちを抑え込み、じっくりと佳子を愛した。不慣れながらもじわじわと腰を使い出す。 痩せ型で贅肉も少なく、腹だってもちろん出ていない若さ溢れる青年の肉体。それを目に出来るのは稔だけである。アイマスクさえなければ佳子もまた凛々しい彼を見ることが出来たのだが、仮に見たとして、この場合素直に成長を歓べはしないだろう。なぜなら、男としての存在感がいよいよ増して、次第に激しさの度を加えていく彼の摩擦が彼女から冷静さを奪っていったからである。 「ンアッ!」 息を吸う瞬間にひとりでに声が漏れる程、佳子の神経は恥穴へ集中した。一体に元気だった夫とて、これ程硬く熱く、そしてまた激しかっただろうか。且つはまた熱烈純情な愛がヒシヒシと体の芯に伝わってくるのだ。体を重ねているからこそ分かる。浩介の必死さが痛い程に伝わる。 「ンッンッンン……!」 本格的に体の熱が高まる。永遠とも思える位、繰り返される出し入れ。時折小康を迎えたかと思えばそれも僅かの間で、すぐにまた連続で深くまた深くえぐられる。これが愛し合う男女の仲ならば女が発情しきるのに必要十分だった。 「待って、違う、待って」 そう言って制止しようと何度も思ったが、それは出来ず、佳子はされるがままになっていた。彼女は焦りを自覚していた。肉の悦びを知っている女ならその境地に達するのは容易い。記憶がそれを求めるからだ。まして数年来のおあずけを喰った身の上、折しも閉経を目前に控えて最後のあだ花を咲かそうともがく女体。彼女は恐れた。追い込まれる程に忘却できない存在がある。 稔は、激しく繰り広げられる目の前の痴態を視界の端に辛うじて収めながら、もはや感情の整理を付けられないでいた。ただただ、これは浩介の最後の願いなのだ、と繰り返し胸の内に念じ続けた。妻はほかの男に抱かれているのではない、俺に抱かれているのと同じで、彼女は裏切っていない。裏切ったのは俺だ。だが浩介の為に仕方がないことなのだ。この秘密はあいつと二人きりのもので、そしてこの罪は、俺一人墓場まで背負っていけばいい。そう形式付けることで何とか理性を保っていた。 しかし、現実では妻と浩介が汗みどろになってくんずほぐれつしている。子供だと思っていた浩介。優しくて聡明な浩介。しかし、佳子に横恋慕していた浩介。彼の愛は確かに本物らしい。それは分かる。彼のこともまた自分は愛しているのだ。 同じく浩介を愛する佳子。その彼に股を開かされている佳子。妻のセックスを傍から見たことなど無論初めてだ。薄闇の中でも彼女の乳房が揺れ動き、全身の汗のきらめくのが見て取れる。マスク越しでも表情は分かる。きっと切なげに眉根を寄せて、ちょっと媚びるような甘えと、圧倒的な慈愛に満ちた眼差しでこちらを見てくるのだ。 「佳子……?」 その反応は絶頂が近いことを示すと、稔の経験がお節介にも囁きかけてきた。そういえば、もう何年も妻を抱いていないことも同時に脳裏によぎった。 「あなた……違うの……」 ギシギシと軋むベッドの上で行き場もなく身悶えながらも、佳子は愛する人の視線を忘れなかった。若い肉体に貫かれる年増女の醜態をどこか客観視する自分がいる。全身の発汗がもう先程から止まらない。肌は桃色に染まり、彼女の煩悶を悦楽が塗り込めていく。 「あなた、見ないで……」 惨めに泣く佳子の穴ぼこで、青年のたぎりが弾けた。熱い中にもひと際の熱が身内に流れ込んでくる。これもまた遠い昔にあった感覚。かつては妻として誇らしくも嬉しくもあった瞬間だった。その記憶が肉体をまた紅潮させる。 浩介はくずおれるように覆いかぶさって、ギュウッと佳子にしがみついた。彼の薄い胸板の下で、広がった乳房が押しつぶされ、一部は脇から外へはみ出す。その表面にもまた汗の玉が浮いていた。 稔は射精の瞬間顔を伏せた。ある種の礼儀のつもりである。今は浩介だけの時間を尊重しようと。引き締まった尻が上下に二、三微動し、やがて完全に停止した後、いきり立ったままの彼が離れると、その下から弛んだ生白い尻がくたびれた格好で現れた。稔はまた目を伏せたが、今度は己の罪を恥じたからである。 佳子がアイマスクを外した時、そこには夫の姿だけがあった。彼女は一瞬ハッとしたが、あくまでもそれが当然のことである。彼女は涙を誤魔化す為、眩しそうに眼をしばたかせ何か感想を探した。今までにない趣向のこと、久しぶりの営みのこと、夫が元気であったことなど幾つか候補が浮かんだが、どれも白々しく思え、口には出さなかった。 稔もまた掛ける言葉を探したが、ついに何も言わなかった。彼の表情は平生に違わず、表向き何もなかったかのようであった。 佳子は見てはならぬと知りつつも、つい何気なく夫の股間を見てしまった。早々とタオルを巻いていた彼のそこもまた、平坦で平生と何ら変わりはなかった。 テーマ:エロ体験談・告白・官能小説 - ジャンル:アダルト |
「いやあ、二人のおかげで、ホント捗るな」 啓成(ひろしげ)は隆々と筋肉の盛り上がった前腕で、日光にきらめく額の汗を拭った。褒められた二人は「いやいや」などと謙遜している。彼らもまたいずれ劣らぬ筋肉の持ち主だ。三人は学生時代のラグビー仲間で、啓成の一学年先輩が次郎(じろう)、一学年後輩が義就(よしなり)。今日は啓成の引っ越しを手伝いに来ていた。 「ほぉんと。たった三人でもう片付いちゃった」 荷物をすっかり運び出した旧居から、セミロングの外はね茶髪を揺らしながら啓成の妻・厚子が出てくる。目鼻立ちのはっきりとした顔に派手なメイクを施した上、いかにも気の強そうな目力を湛えた、一種の美人である。ちなみに彼女と夫は元同級生で、次郎と義就を含め皆同じ学校に通っていた。 「恭章(やすあき)来い。新しいおうちに行くぞぉ!」 啓成は今日の為に借りたトラックの運転席に向かいながら、あと数か月で六歳になる息子・恭章を手招きした。息子は素直に駆けていき、父の太い腕にひょいっと抱え上げられて真ん中の席に納まる。助手席には次郎が乗り込んだ。トラックは定員の都合で全員一遍に乗ることが出来ない。大人の男三人は二人ずつ交代でこれまで二往復し家具を運搬してきた。運び出す荷物はこの便が最後である。 「出発進行!」 「オー!」 親子の元気な号令で、三人を乗せた車は走り出す。それを見送って、厚子と義就が屋内へ戻った。 「もう大体は掃除し終わったんだけど。あとさ、こういう……」 ガランとした家の中で、厚子はフローリングに這いつくばる。後から続く義就は、そのタイトジーンズの尻を絡みつくような視線でじっとりと眺めた。はち切れそうな程ピチピチに張った尻の表面には、くっきりとV字形の曲線が浮き出ている。彼はおもむろにそれへ近づくと、戯れに己の股間をピッタリとその谷間へ押し付けてみた。 「ちょっと、何してんの!」 驚いた厚子が咄嗟に腰を引いて逃れ、振り返る。その緩い胸元を、義就はじっと見つめた。厚子はその意味に気付いてTシャツの襟を押さえる。主張の強いGカップが深く黒い谷を覗かせていたのだ。 「相変わらず、でっけえな」 心の声をそのまま声に出す義就。あえてズケズケと品評するのも昔馴染みの気安さからだ。かつて一度は我が手中に収めた物。厚子と義就は学生当時に恋人同士であった。まだ啓成と付き合う前の話だ。 彼は今日一日ずっとムラムラしていた。久しぶりに昔の女と会ってみれば、驚く程その体型が変わっていないばかりか、年輪を重ね、人妻となりまた母親となって、むしろ当時より強烈な色香がムンムンと肌から立ち上っている。作業をして汗ばんでくればなおさらの色気だ。 朝からじっくりと盗み見てきて、義就はもう我慢の限界だった。 「あっちゃん!」 言うが早いか組み付いて、またぞろ股間を尻に押し付ける。 「キャッ!」 厚子は逃げる。床板に指を立て、這いつくばって前進する。男はそれへ覆いかぶさると、ある秘技を使った。 「ちょっと、やめて!」 たちまち苦悶の表情を浮かべ、女の口元が緩む。それは義就の得意技、押し倒しながらの全身くすぐりであった。あらかじめ弱点は心得ているのでツボを押さえるのは造作もない。甘え上手な後輩カレシは、よくこれを使ってじゃれたものだ。彼女の身もだえようは、ウィークポイントが年を経ても変わらないことを証明していた。 「ちょ、ムリムリ、ほんっと無理ってば」 多少の懐かしさも覚えつつ、厚子は苦しそうに笑いながら身をよじって逃れようとする。義就はもちろん逃すまいと押さえ、巧みに服を脱がそうとする。まずジーンズに手を掛ける。と、厚子がそこをガードしにくるので、今度はシャツをたくし上げにかかる。慌てて厚子がそちらに向かえば、改めてジーンズを。こうして、厚子の肌は徐々に剥き出しになっていった。 さあここまでくると後は簡単だ。確かに昔馴染みの油断もある。大体レ○プというのは知人によって行われるものだ。厚子も無論抵抗し続けたがそこは女の細腕。所詮男の、しかも剛腕な彼には敵いようもなかった。床に突っ伏して抑え込まれ、 「ちょぉっとぉ!」 非難も虚しく義就の勃起が厚子の背後からぶっ刺さって消える。下着を肉棒そのものでずらし、汗まみれの素肌を滑って、熱く蒸れた肉穴の奥へと、深く深く。 「スッゲ! 寝バックのマ○コ気持ちいい!」 家具もないガランとした部屋の中で重なり合う男女。強引にブラジャーごとめくり上げられ、露出した乳房がひんやりとしたフローリングの上にひしゃげる。横にはみ出たスライムのようなそれを、義就は倒れ込んだまま撫でまわした。手の平にポチャポチャした柔らかさが心地よい。そうしながら、じっとりと汗ばんだ後ろ髪の生え際に唇を寄せる。 ゾワゾワと総毛だたせて、厚子は歯を食いしばった。過去の男に情愛など無く、今は純粋に友人として見ている。夫が助っ人に彼を連れてきたのには驚いたが、吹っ切れている分素直に受け入れられたものだ。だからこそ、この仕打ちは悔しかった。何より己の脇の甘さに腹が立った。 とはいえ、事ここに至りなばもう終わるまで耐えるほかない。新居まで片道ニ十分。これまでの経験上、大体トータル一時間前後で行き来するはずだ。それまでになんとか! 夫も子 供も悲しませたくない彼女である。 ゴリゴリに固まり切った怒張が、パチュンプチュンと小さなあぶくを弾かせながら、入り口の肉壁を両脇へこんもりと盛り上げつつ、しっかりとくっ付いたまま激しく出入りする。 「たまんねえよ厚子。お前も久しぶりのチ○ポ気持ちいいだろう」 勝手な男は一人悦に入っている。黙りこくっている女にもお構いなしに、密着して腰をくねらせる。男の腹と女の背中。裸の体温が互いに伝わり合う。それが男には心地よく、女には不快に受け取られた。 「旦那のチ○ポよりいいだろ。なあ、お前オレのチ○ポ大好きだったもんな」 「(そんなわけあるか!)」 厚子はどちらの問いも一蹴したが言葉には出さなかった。ただただムカムカした。入室を許可していない男は、しかし強引に居座って室内を荒らしまわっている。例えば天井を叩き、例えば床を踏み鳴らし、その上壁に汁気を撒き散らす。 「あの頃は生でヤらせてくれなかったけど、やっぱ生気持ちいいわ」 そう言われて厚子はハッとする。案の定、彼の台詞は次の通り続いた。 「なあ、このまま中出ししていい?」 「は? テメェ、ふっざけんな!」 これには遂に厚子も声を荒らげざるを得なかった。それも若い頃のようなお里の知れる口ぶりに戻って。冷静に言えば、避妊せずに交わりだした時点で危険なのだが、それよりもコイツの吐き散らかしが体内に注がれることこそ不愉快だったのだ。 「いいじゃん、いいじゃん」 義就は笑いながら言って上体を起こした。うつ伏せの女体に騎乗するような格好となる。その体勢で尻の両肉を広げると、肉棒をくわえている膣がパックリと開いてよく見えた。フニャフニャとした尻肉を両手で持って水面のように揺らすと、汗のたまった肛門までパクパクと開閉する。彼は上からその光景を見下ろしつつ、自身を出し入れして愉しむ。挿入当初は湿り気程度だったのが、いつしか穴の内部までヌルヌルと濡れそぼっている。 「エー、ダメ?」 「外に……ていうか、早くして!」 急かしたのは終わりを促す意味だったが、相手には伝わらなかった。むしろ気分が乗ってきたと捉えたものだ。義就は厚子の腰を持ち上げると、そのまま四つん這いにさせて後ろからガシガシと腰を叩きつけた。 「ちょ……早く(終わって)」 「なんだ、まだ早く? そっか、激しく突かれるの好きだもんな」 「ちが……」 パンパン、パンパンと空の室内に響き渡る、男と女の肌がぶつかり合う音、それから豊満な乳房同士が弾け合う音。厚子の鼻腔から刹那的に甘い吐息が漏れる。女とは経験を積むほどに男が恋しくなる生き物。まして日頃は夫婦という許された関係の中でのみ体を重ねていたら、その反動でどうしてもその場に臨んで慣れた反応を示してしまうもの。恥部が濡れるのも声が漏れるのもそういう理屈だ。 義就は義就で、この久しぶりに手に入れた肉体を我が手に取り返すべく、まさに男を見せつけるべく奮闘したものだから中々に粘った。元々性には強い方だ。厚子が彼をフッたのも、実は彼の求めるしつこさとその態度の軽薄さの故である。 男女はくんずほぐれつ揉み合い、ほかに誰もいない住居で恥知らずな営みを続ける。綺麗にした床を汗まみれで転がり、二人でハアハア言いながら、我が物顔でこの家を占拠している。本来主人夫婦がするべき営み。しかし夫は既に去り、残った妻だけが頑張っている。この家で最後に作られる命は、妻と間男による婚外子となってしまうのか。 時間は刻々と流れる。体位は後背位から正常位へと移っていた。厚子は間男の手で大股開きさせられ、揺れ回る乳房も全部さらけ出している。ドスドスと上から下へ杭のように打ち付けられる男根。まだイかない。 「ンッンッ……!」 向かい合う相手の体を突き放そうともできず、厚子はしおらしく手の甲を口元に当てて眉根を寄せた。目は開けない。一つには男を見ないためで、もう一つには自分との闘いだ。女故に体が返してしまう反応を認めたくない。 そんな中、遂に恐れていた時が訪れた。外に車のエンジン音が聞こえだす。それほど長く交わっていたのか、あるいは想定より早く戻ってきたのか。とにかく厚子にはすぐに危機が分かった。義就の胸をドンドンと叩き首を横に振る。 「ムリ! もうムリ!」 「あとちょっと、もうちょっとでイくから」 「ムリだって! 終わって! 早く!」 「中で、中でいい?」 厚子は遂にヤケクソでブンブンと頷いた。 「いいから、早く終わってぇ……!」 義就はラストスパートを掛けた。玄関の外ではもう話し声がする。ひと際高く聞こえるのは恭章の可愛い声だ。それを聞きながら、父ならぬ余所者男は全部の種汁を膣内に流し込んだ。そうしながら倒れ込み、厚子に唇を重ね、無理やりそれを開くと舌をねじ込む。ネロネロと舌を絡め、最後のとどめとばかりねぶり倒す。厚子はされるがままだ。 気が気ではないスリルの中、痴穴を収縮させる厚子。肉体は桜色に染まり、少し前とは違った発汗で全身を濡らしながら肩で息をする。しかしその後の行動は速かった。彼女はすぐさま起き直って身支度を整える。 「おう、どうだ片付いたか」 息子を伴って啓成が入って来る。 「うん、まあ、大体」 そう言いかけて、厚子は慌てて手元の雑巾を取り寄せ床をさっと拭いた。先程自分が付けた背中の汗が跡になっているのを見つけたからである。彼女はそれを気取られないように早口で続けた。 「まあ、残ったとことか、あっち片付けてからまた来てやろっかな。後でまた思い出すこととかあるかもしれないし」 「そうか」 夫は特に気にすることもなく、 「しっかし、暑いな、この部屋」 と、室内に漂う独特の熱気に辟易し、シャツをつまんでパタパタとやった。その後ろで義就は涼しい顔をしていた。 |
ショートオムニバス・シリーズ 『母を犯されて』
ケース9 母・香菜 32歳 ざわめきから遠ざかった茂みの中に母娘はいた。 「全部出た?」 「うん」 香菜の問いに娘は頷く。下草と枯れ葉に水たまりが染み込んでいた。母はそれからあえて目を逸らし、パンツを上げた娘の手を引き何食わぬ顔で宴席へ戻ってゆく。 誰も気に留めることのない中、二人は元の位置に座った。ビニールシートの上には食べ散らかした弁当やつまみ。そこに頭上から降り注ぐ花びらが彩を添えている。空は青く澄み、春の風が穏やかに吹き渡る。 赤く染まった頬に心地よくそれを受けながら、香菜はつい杯を重ねた。普段の酒量は決して多くないが、元来飲めない口ではない。清々しい外気が彼女の気を後押しもする。陽気に浮かされた子 供達は、腹が膨れると走り回って遊びだし、大人達は一層話に身を入れた。 それでも二、三時間経てば退散する者が出てくる。しつこいのは酒飲みばかり。ただこの会の場合、そういう勢力の方が多かった。 さて、春の日といっても太陽が西へ傾くにつれて肌寒くなる。カーディガンの上から二の腕をさすりながら、香菜は席を立った。ここ高台の広場は見晴らしも良く、住民にとって絶好の集会場所であるが、用足しに不便なのが玉に傷だ。裏の寺にある公衆便所一択となるが、そこまで参道をはるばる上ってゆかねばならない。 階段の入り口で夫にばったりと出会った。 「トイレか?」 明け透けに言って、フラフラとよろめく。この分ではあの階段を上まで行ってはいまい。そう妻がいぶかる先から、 「その辺で済ましちゃえば」 と、彼はゲラゲラ笑った。日頃にもない粗雑さである。こういうとき、女は理不尽を感じずにいられない。切羽詰まった生理現象が尚更腹立たしくさせた。 山中はひんやりと涼しく、その中を香菜はトボトボと進む。家へ下りるよりは近い。だが上にたどり着いても空室とは限らない。じりじりする焦りもあって、彼女は低い段差で何度か躓いた。 「ちょっと飲み過ぎたかな……」 人のことをとやかく言えた立場ではないと思った。見渡せば周囲の緑は外から見るよりも深く、どこまでも覆い隠すよう。男らが出来心を起こすのも無理はない。実は香菜も娘にごねられて先程その茂みで野 小 便をさせた。寺から例年苦情が出ていることも知っている。だがこれだけの自然だ。実際は何ほどの影響があろうか。 酒で鈍った理性が彼女の脚をそそのかした。道から外れて草を踏み、ようやく身の丈を隠しおおせる位置に来た。緩んだ気持ちが急速に尿意を高める。香菜は下着を下ろし、とうとうその場にしゃがみ込んだ。 「ホッ……」 淡い背徳感が漏れてゆく。出始めると一気だ。普段意識する以上に沢山出るように感じた。 その時である。一体どこから湧いてきたのかと思う位唐突に人の影が動いた。 「えっ!」 咄嗟に身を縮こまらせる。もうこれ以上はしゃがめない程に。水流は未だ衰えない。爪先にぐっと力を込めて踏ん張る。不安定な斜面で窮屈になった筋肉が悲鳴を上げた。 「早くどっか行って!」 必死で念じる。だが、次に目を開いた時、その願いは空しくも砕け散った。 「おっ、奥さん!」 それは、下田という、顔と名前位は知っている程度な、上の年代の男性であった。やはり今日の花見に参加している。 「やあ、驚いたなあ。奥さんも野ションですか」 彼は初めこそ驚いていたものの、すぐに我が事の方が重大とばかり段取りを始めた。ズボンの前を開き、中からイチモツを取り出す。 「えっ、ちょっと!」 香菜の動揺が静まらぬ中、下田は彼女の横に立って立 小 便を始めたのだ。立っているのと座っているのと、男と女との違いはあれど、二人並んでジョロジョロとやる。 すると、そこへもう一人の酔客が現れた。大沢という中年男性だ。下田と親し気に挨拶していたが、その陰に香菜がいると知って驚いた。一瞬二人の関係を疑ったが、そうではないと知ると、 「最近は女の人も立ちションすんだねえ」 と呆れたように言い、彼もまた当たり前に小用を始めた。香菜を挟んで右隣りである。 「ちょ、ちょ、ちょっと……」 顔のすぐ横に男性の性器が並んでいる。自分の夫のだって、放 尿する場面など見たことがないのに。香菜はぐっと下を向いて出来るだけ視界にそれらが入らないようにした。 目を閉じたいがそれは出来ない。身を低くしている方が当然小水と近い位置になる。すると、男らの放つ跳ねっ返りや蒸気が香菜の脚の方へ舞ってくるが、これが気になって仕方がない。変な緊張を強いられて早くも体中が痛い。 「いやあ、大自然の中でのションベンは開放的でいいですね」 下田は呑気なことを言っている。 香菜は耳まで真っ赤にしてただ俯くだけ。悲鳴を上げることも出来ない。恨めしいのは止まらない尿だ。草や葉にぶつかってチョロチョロと流れていく音が実際以上に大きく聞こえた。 「ふう……出た出た」 そう言って先に動いたのは下田だった。香菜はまだうずくまっている。 「あれ? 奥さんまだですか」 酒で出来上がっている下田は露骨に下品である。 「ひょっとして大きい方ですか」 「違います!」 香菜は反射的に否定したが、その瞬間あれが目に入って慌てて下を向いた。彼はまだ仕舞っていなかったのである。薄暗い中で一層黒ずんで見える萎びた茄子だった。 その内に大沢も終わった。やはり気になるのは香菜の様子だ。 「早く行ってよ」 香菜は心に願ってみるが、どうしたことか二人はもたもたしている。この間抜けな場面を面白がっているのかもしれない。そう思うと、一層惨めに感じた。実は香菜、とうに終わっていたのだが、足がつって立てなかったのである。 下田はじっと見下ろしていた。露に剥かれた白い双丘が後ろ髪を引く。彼はゴクリと生唾を飲み込んだ。 「大丈夫ですか。どこか具合でも」 「だ、大丈夫ですから。早く行ってください」 この時香菜はふいにゾッとする寒気を背筋に感じた。羞恥とは異なる危険を感じたのである。それは彼女の心中をざわつかせ、体勢を崩させた。 「あっ!」 ほとんど同時に叫んで、香菜が後ろにひっくり返ろうとするところを、咄嗟に下田が後ろへ回って受け止める。 「大丈夫ですか」 「大丈夫です……」 下田が支えなければ斜面を転げ落ちてしまう。だが、香菜には感謝よりも大きい懸案があった。彼女のショートボブの後ろに、明らかに彼の股間がある。それは今しがた見た茄子とは打って変わって、太く実り切っていた。 「あの、あの、もう……」 やんわりと助けを断ろうとしたが男は離さない。それどころか一層強く密着してくる。今やすりこぎのように成長したものが、後頭部を押している。 大沢の目も爛々と輝きだしていた。彼もまた一歩、一歩とじりじり歩を詰めてくる。 「あの……ホントに、もう……」 「でも離したら転びますよ」 下田の鼻息はいつしか荒くなっていた。心臓の鼓動も早まっている。思いは違えど、それは香菜も同じだった。現場を急速に緊迫感が取り巻いた。 下田は両脇から腕を入れて香菜を助け起こす。その手は明らかに胸に触れていた。香菜の足元がよろめいたのに合わせて、男は前方の木に彼女を押し付ける。咄嗟に手を突かなかったら顔面を強かに打っただろう。 「催してきたんで……こっちの用も足しておきましょうよ」 硬いものが生白い尻に触れる。尻はビクッと痙攣して引いた。それを肉棒が追いかける。男の犯意は明白であった。 「やめてください」 助けを求めて大沢を見るがすぐに目を逸らす。彼の大きなわだかまりが目に入ったからだ。 「奥さんも尻出して誘ってたんでしょう」 「違います」 「どうせ恥ずかしいところ見られたんだから、お互いに恥ずかしいことしましょうよ」 議論の余地など端からなかった。男根は静かに入ってきた、膣に近接し互いの尿の雫をまといながら。 「イヤァッ!」 そんな悲鳴を最初の出会いで上げればよかったのだろうか。汚れるのも厭わずに逃げ出せばこんなことにはならなかったのかもしれない。そう考えてみても、今も現に彼女は声を出せずにいる。声を殺して耐えるしか出来なかった。 下田は尻を引き寄せては押し返し、あるいは自分の腰を押し出しては引いて肉棒を出し入れした。香菜は樹木にすがりつき、尻を突き出してじっと耐えている。肉棒は次第に粘液にまみれテラテラと鈍く光った。それが白い谷間から出たり入ったりしている。 それをすぐ傍で凝視しながら、大沢は自分の肉茎をゴシゴシとしごく。彼も含め三人の熱気は、山と春の冷気の中でもいや増すばかり。呼吸は入り乱れ、ジワリと汗が噴き出してくる。やがては白濁汁も噴き出した。 「うぅっ!」 「やっ、な、中は……!」 下田の終焉を悟って香菜はようやく声を上げたが、言いかけて半分以上は諦めていた。だが下田も思惑は同じだったようで、結局彼は射精の直前に抜いて尻にぶっかけた。勢いついた迸りはスカートにも沢山かかり、それ以外は尻の上にボタボタと落ちた。 彼と入れ替わりで、大沢も当たり前に“用足し”に立つ。香菜も尻を突き出して待つよりほか仕方なかった。公 衆 便 所とは不特定の者に使用を許可された便 所であるが、不特定の者の“用を足す”のに彼女の体が使われるなら、彼女こそ“公 衆 便 所”と言えるだろう。大沢はその道理を証するがごとく、使用済みの便器に男根を突き入れた。 やることと言えば同じく出し入れである。香菜は入れられる時に「グッ」と歯を食いしばり、出される時に「ハッ」と口を開けて眉根を寄せた。彼女はこらえていた。が、こらえる前に飲酒が過ぎたようだ。 「アァッ!」 と切なく啼いた。その直後に大沢も気付いて思わず離れる。バシャバシャと二人の間に水しぶきが起こった。去就を迷っていた下田も近寄って来る。香菜はまた漏らしていた。 「またオ シ ッ コして、しょうがないなあ」 「ごめんなさい……」 なぜ謝罪したのかを当人は自覚していない。大沢も意に介さず、下腹部をびしょ濡れにしたまま再突入する。 ちょうどその頃、少し離れた草陰で彼らの様子を覗き見している者がいた。浅沼という少年である。あらかたの子 供は家に帰ってしまったが、酔っ払い家族の子は一部居残っていた。彼はほかの子との遊びにもいい加減飽き、ふと何気なく山の方へ入ってみた。そこで思いもかけない場面に遭遇したのである。 彼は自分のペニスを握り締めながら、まんじりともせずに現場を見ていた。異様な興奮がその身を包み、既に一度射精している。それへまた思いがけない珍客がやってきた。 「どうしたの?」 見れば幼い女の子。あっと思って、咄嗟に浅沼は右手で彼女の口を塞いだ。あまり慌てていたので精液まみれの手の平だった。彼女こそ香菜の娘であることを彼は知っていたのだ。 娘はびっくりして暴れ出す。浅沼はズボンを上げるのも後回しにして彼女を抑えつけた。それは彼なりの優しさだった。今の今、母親で搾り出した精液を娘の口に付けてさえ、守らねばならない捻じれた優しさだ。 母は輪姦されていた。その事実を隠してやりたい。 そんな気遣いも露知らず、大沢は香菜の膣内に子種汁を注ぎ込んだ。 「ア……ッ!」 香菜は愁眉を寄せて体の芯に熱い汁を感じる。そのしばらく後で、今度は別の汁が怒涛のごとく流れ込んできた。 「こうやって洗い流したら妊娠しないから」 大沢は膣の中で小 便していた。 「イヤァッ!」 さすがに敵わぬと身もだえする香菜だが、大沢はそれを許さじと抑えつけ、隙間なく密着して尿を注ぎ込む。当然穴の中に行き場はなく、それが溢れて香菜の脚を伝ってチョロチョロと滝のように流れた。 すると、それに対抗するかのように、今度は香菜がまた漏らし始めた。既に大沢の栓が抜かれ、ガニ股に開いた脚の間からジャージャーと垂れ流す。 それが終わってへたり込もうとするのを下田が受け止め、待ってましたとばかり海綿体を接続する。 「お行儀の悪い子には、お仕置きしないと」 彼も大沢に倣って、膣 内 放 尿をした。これでは文字通り、香菜の膣は便器である。 「すごいことしてる!」 浅沼はもう辛抱たまらんとばかり右手でペニスをしごき立てた。娘を抱きながら、非情にも母親でオナニーする。シコシコという振動が無垢な少 女に伝わろうとも関係ない。最初は持ち替えた左手でかろうじて彼女を押さえていたが、とうとうそれも及ばなくなった。 「ママー!」 娘は飛び出した。男達は脱兎のごとく逃げ出していく。余談だが、不慣れな山道を酔いどれが走ったために、下田は足を、大沢は腕を骨折する大怪我を負ったという。 「ママもここでオ シ ッ コしてたの?」 娘は屈託ない笑顔で尋ねた。母は水たまりの中で力なく笑い返した。 〈おわり〉 |
ショートオムニバス・シリーズ 『母を犯されて』
ケース7 母・理恵 32歳 「大丈夫ですか?」 隣の人が思わず声を掛けずにはいられない程、理恵はひどく息苦しそうにしていた。 「あ、ええ、大丈夫です。ちょっと走ったもので」 息も絶え絶えに答えると、なおも早口に付け足す。 「急に暖かくなりましたねえ」 そうして、取って付けたように愛想笑いを浮かべた。まるで、それ以上何かを追及されないようにとでもするかのようであった。 幸いにして隣人はそれにすんなり同調して前方に向き直った。式典は間もなく始まろうとしている。 理恵は式に間に合ったとは言うものの、着席した途端に噴き出したのが大量の汗だ。慌ててハンカチで拭うも、頬は桜色に染まり、襟首からは蒸気が立ち昇るよう。また、先程来の出来事で動悸はいまだ鎮まらず、体の芯にも妙な疼きが残っている。そんな調子なので、具合を心配された。 もっとも、その親切な人だっていつまでも彼女に構ってはいない。今日は我が子の入学式。理恵の息子もまたこの私立小に入学する晴れの日だ。 「そう、こんな晴れの日に……」 祝辞を聞きながら彼女の心は沈んだ。 そのほんの五分前まで、彼女の身は体育倉庫の暗がりにあった。小窓からの陽射しが彼女の肌に浮いた雫をきらめかせる。うなじからふくらはぎまで露に剥かれた白い肌。垂れ下がった乳房は、しかし重力にまかせて自由にはならない。なぜなら後ろから伸びた手が鷲掴みに支えているからだ。 武田は無言でそれを揉みしだきつつ、ヌラヌラとねちっこく男根を揺さぶった。それは理恵の尻の間にすっかり接続されている。 「……ンッ!」 理恵は軽く呻いた。が、それ以上声は上げない。彼との交渉ではいつもそうだ。夫との時だって無闇に喘いだりしないが、それとこの場合とでは違う。彼女にとってこれは屈辱であり、且つ己に課した試練なのだ。 「ふぅ……」 武田は前後に出し入れせず、平面的に円を描いた。すると、棒がねじれて穴の中を攪拌するかのようになる。彼なりの愉しみ方であった。 「ウウゥ……!」 理恵は歯を食いしばった。 「イイんですか? お母さん」 相手の陰湿な問いには応じず、彼女はギュッと目をつむる。が、直後にまた開く。目を閉じると接続部に意識が集中してしまうのだ。彼女はそれを恐れた。どうしても耐えきらねばならないのである。 「“裏口”?」 初めての時、理恵は意味が分からなかった。いや、その本来の意味というべきか、自身の選んだ手段についてなら分かる。約三カ月前、彼女は息子の為にその決断をした。いわゆる“裏口入学”。 夫は全く育児を分担してくれなかった。そのくせ外づらだけにはこだわる。彼の家もそうだ。虚栄心が強く、重圧だけをかけてくる。大した家格ではない。金もコネもない。だから、理恵一人で背負った。これはもう意地だ。女のプライドを賭けた闘いである。 とはいえ、持ち掛けてきたのは先方、窓口となった武田からである。彼の要求は単純で、彼女の肉体。呆れ果てた下劣さだと思った、が、我が身を犠牲にする不思議な高揚感に我知らず嵌まりながら、理恵はその身を捧げたのである。 武田は変態だと、程なくして彼女は知らされた。彼の言う“裏口”それは…… 「ンフゥ……ッ!」 膣の奥が痙攣し、ジンジンと震える。空洞の穴ぼこ、その奥ひだが、だ。実際にこすられているのはそこと皮一枚隔てたと感じられる通路、元来外から差し込まれる物などないはずの道筋。 「そろそろ慣れてきましたね、お母さん」 男根は丸々とくり抜いた穴に隙間なく収まっている。鶏が卵をひり出すように無理矢理開いた口。理恵は肛門に陰茎を挿入されていた。そこが彼女の裏口だという。 「変態!」 口惜し気に理恵は心で叫んだ。何度やっても同じだ。初めての時も、今も。 「慣れてくるとたまらんでしょう」 アナルは既に何度も性交の用に供されてきた。それまで処女だったのに、“変態”武田は余念なく彼女の裏口を拡張していき、いつしか挿入の引っ掛かりも徐々に少なくなっていった。だが、それを当然に認める彼女ではない。 「ンッ……クッ……ンンッ!」 「イイですよ、光君のお母さん、いい具合ですよぉ!」 「息子の名前を出すな」 会話をしたくないから口に出しこそしないが、こういう一言は案外堪える。あの子は今頃、他の児 童と共に集まっているだろうな。そんな現実がちらつくと目まいがする。同じ校内にいて、こんな恥ずかしいことを…… しかし、どんな複雑な心境も肉体的衝撃が打ち消していく。理恵は、これが自分の体特有のことなのかどうか判断できなかったが、尻穴を犯されている時、膣穴が無性に疼くのである。痛みというよりむず痒い感じ。いじらしくもある切なさ。 「ああ、そんなにきばらないで、締まる! 締まりのいいケツ穴ですよ、光君のお母さん!」 少し桃色がかっても見える丸々とした尻。その輪郭が波打って揺れる。武田はいよいよ激しく肉棒を出し入れしだした。もう最後が近いのだ。それと同時に極め付きとばかり、剥き出しのクリトリスをひねり上げた。 「ンヒッアァアッ!」 遂に彼女は悶絶した。 ――そんなことが直前まであって、ようやくたどり着いた式場である。 チクチクと乳首が痛む。ブラウスに直接触れているからだ。折角今日の為に下ろしてきたジャケットとスカートのセットアップも式の前に一度全部脱がされたのもさりながら、事後には下着を武田に没収されてしまった。 「ほらほら、早くしないと間に合わないですよ」 そう言って急かされ、仕方なしに飛び出した。どこまでも下劣な男である。 「ママ!」 一連の行事が終わって、光が一目散に駆けてきた。この子の為にやったこと、結果が全てだ。そう思えば成功である。理恵は目を細めて息子を抱く。 と、そこへ、 「お帰りは裏口の方が近いですよ」 声を掛けてきたのが武田だ。厚顔無恥なこの男、そこは“裏門”と言うべきではなかろうかと心に突っかかりつつも、笑顔で会釈し、理恵は息子の手を引いて校門へ向かった。 その締まりない肛門から出た白濁汁が内腿を伝ってツーッと流れ落ちていくことに、幸せな親子は全く気付いていなかった。 〈おわり〉 |