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妄想の座敷牢羞恥の風ましゅまろくらぶ



小説には、連続作品と一話完結作品があります。連続作品は、左「カテゴリ」の各作品名より一話から順番に読むことができます。また「目次」には、各作品の概要などをまとめた記事が集められています。

■連続作品
◆長編作品
「子宝混浴『湯けむ輪』~美肌効姦~」

◆中編作品
「大輪動会~友母姦戦記~」
「青き山、揺れる」 ▼「師匠のお筆」

◆オムニバス
「母を犯されて」

◆短編作品
「育てる夫」  ▼「最後の願い」  ▼「ママの枕」  ▼「ブラック&ワイフ」
「夏のおばさん」  ▼「二回り三回り年下男」  ▼「兄と妻」

■一話完結
「ふんどし締めて」
「旧居出し納め・新居出し初め」  ▼「牛方と嫁っこ」  ▼「ガンカケ」
「祭りの声にまぎれて」  ▼「シーコイコイコイ!」  ▼「サルオナ」  ▼「母の独白」
「童貞卒業式」 ▼「お昼寝おばさん」  ▼「上手くやりたい」 ▼「珍休さんと水あめ女」
「栗の花匂う人」「乳搾りの手コキ」 ▼「妻つき餅」 ▼「いたずらの入り口」
「学食のおばさん便器」 ▼「山姥今様」 ▼「おしっこ、ついてきて。」

作品一覧

最後の願い〈中〉
 その事があってから、ひと月が過ぎた。浩介(こうすけ)は手術を受け、入院と一時退院を繰り返し、帰宅の折には以前と同じように家族で食事もとった。

 稔(みのる)は、少なくとも浩介の目には平生と変わらぬ様子で接してくれた。あの日持ち掛けられた提案には驚いたが、その真剣な面差しと重々しい切り出し方に接し、彼の覚悟と事の重大さを思い知りつつも、浩介は決意を曲げなかった。稔の方では、ひょっとすると翻意してくれるかもしれないという一縷の可能性に期待もしていたし、浩介もためらわないではなかったが、やはり今生唯一の心残りの成就を選んだのである。

 佳子(よしこ)は毎日見舞いに来てくれた。彼女もまた以前と何ら変わりなく母親としての顔しか見せなかった。浩介がどれだけ熱い眼差しを向けても、その牙城が崩れることはなかった。いっそ彼女を押し倒そうかとも考えた。だが、それをすればおじさんの決断が無駄になる。おばさんを悲しませてしまうことに思い至り、結局悶々と耐えるしかないのだった。

 しかし、彼女を知った後だからこそ一層思いは募る。知っているからこそ具体的に思い描ける。その度に彼は自分を慰めるしかなかった。あの人の柔らかさ、あの人の匂い、あの人の熱を思い出しては、あの人にくるまれるつもりで竿を握る。若くもあるし、病身でも性欲はある。むしろ死に近づく程に種の保存に執心するかのごとく、怒張はいきり立った。

「ああ……佳子さん……」

彼の中で、彼女は前より完全に女だった。愛しさが溢れ、一層可愛く見える。

そういった変化は、実は彼一人の内心にとどまるものではなかったのかもしれない。こんなことがあった。

「床嶋さん、なんか最近キレイになりましたよね」

「ええ?」

唐突にそう言ってきたのは、職場の年若い看護師である。

「みんなで噂してたんですよ。キレイになったっていうか、色っぽさが増したっていうか」

からかい半分とも取れる明るい声音ではあったが、興味津々といった様子もしている。しかし彼女の好奇心は先輩看護師の介入に阻まれた。

「床嶋さんは前からお綺麗でしょ。失礼なこと言ってないで、さっさとそれ片付けて」

後輩は唇を尖らせながら不承不承業務に戻っていったが、立ち去りながらもなお、

「でもいいなあ、優しい旦那様がいて、お仕事も出来て」

と、まだ何か言い足りない風であったのを、また先輩にたしなめられていた。

「キレイ……? どこがよ……」

独りになった時、佳子は鏡の前で自嘲気味に唇を歪めた。雰囲気にどこか変化が出ているのだろうか。そう考えると不安にもなるが、自問自答しても答えは出ない。

 浩介の前ではこれまでと変わらず、否これまで以上に慈愛の精神を持って振る舞っているつもりだ。思えば、彼が自分を女として見だしたのも、こちらに隙があったからかもしれない。本当の母性愛で包んでやれていれば、心の迷いは生じなかったのではないだろうか。自覚はもちろんないが、どこかで彼に良く思われようとしていたのかもしれない。そう考えだすと、先日の一件だってそもそも自分が蒔いた種という説も成り立つ。何しろ、浩介に責任転嫁するような考えは端から出来ないのだ。

 ただ、反省はするが、後悔はしない。そこは女だ。過ぎてしまったことは仕方がないと思う。今さら過去は変えられないし、その罪を背負って前に進むしかない。あの件を前提にした人生しか今後は無いのだ。だから、この秘密を想い出に変えて、夫を労わってこれからも家族の関係を大事にしていこう。そう強く強く念じた。

 他方、そう強くもいられないのが男だ。稔はあの日以来ぼんやりすることが多くなった。あれで良かったのかなどと、今更ながらに悩む。浩介の為だと言い聞かせてみても、自分自身を説得しきれないでいた。妻は屈託なく日々を生きているし、自分も支障なく日常を送っている。外面的に何も変わらない。秘密は秘密であって胸の内にしか存在しないもの、あまつさえ時が経てば夢のような形に変ずる。そう知ってはいても、さてそんな日が来るかどうかとなると……

 ある夜、妻の方から寝所に誘われた。十数年前ならいざ知らず、いやその頃ですら珍しかったし、近年では尚更なかったことだ。彼女自身何かしら期するところがあったと見える。稔は誘いに乗った。だが、出来なかった。彼の下半身は全く反応しなかったのだ。そればかりか、彼女の裸を見た時、あの光景がフラッシュバックしたのである。桃色に染まった肌で荒く息を吐いていた彼女の姿を。あの時のように自分は満たしてやれるのか。そう思った刹那、彼は浩介をライバルとして比較していることに気が付いた。一人の愛する女を取り合う構図は、まさにそれではないのか。

「違う! 浩介を……そんなわけはない」

強く否定しに掛かれば掛かる程、その疑念が浮き彫りとなる。また、あの若さに、あの満ち溢れた自信に勝てるのか、と弱気にもなる。

 浩介は間違いなく本気で、ひたむきに佳子へ愛を向けている。それ故に厄介だ。そもそもそんなことがあっていいはずはないのだ。本来であれば、稔は彼を叱責しなければならなかった。彼は初手で誤ったのである。それはなぜか。つまらない虚栄心の故か。ただ、その解を得たとて時既に遅し。それに、あの時拒絶していたら、それはそれで悔やんだのかもしれず……

「ごめん」

稔は静かに詫びて、妻に挑むのを止めた。

「いいのよ……」

佳子は優しく微笑み返す。女に恥をかかせたことを、夫は心から情けなく思った。

 佳子は寂しかった。別に性欲に駆られて誘ったのではないつもりだ。ただ、夫婦の絆を確かめ合うように、軽く抱いてくれるだけでも良かったのである。彼の心労を思いやれば心配ではあるが、彼から打ち明けられぬ問題である以上、後はもう時間が解決するほかない。それまで静かに寄り添っていこう。妻はそう決意を新たにした。

 その日、夫は学会の為に出張で、佳子は非番の時間に一人で家の掃除をしていた。明日は浩介が帰ってくる。それに備えてのことだ。

 掃除の後で寝室の片づけをしていると、ある引き出しに意外な物を見つけた。

「これは……」

見紛うはずもない、あの夜のアイマスクである。本来の用途から言えば何ら怪しむべき道具ではないのだが、あの件があった為にやましい物に思える。しかも几帳面な夫らしく、ご丁寧にも避妊具の箱と共に仕舞われていた。

 佳子は少し苦笑して、ふとそれを手に取ってみた。もうああいう使い方をすることはないだろう。となれば、今後は睡眠の際に使ってみようか。そんなことを思いながら、彼女はふと何気なく、本当に気まぐれでそれを着けてみた。昼間でもたちまち視界が真っ暗となる。

 ちょうどその時だった。ガバッと後ろから何者かにいきなり抱き着かれたのだ。

「キャッ!」

悲鳴を上げて、反射的にそれを振り払おうとする。だが相手の腕力がそれを許さない。筋力や腕の位置から察して明らかに男性のそれだ。

「あなた?」

佳子は恐る恐る尋ねたが、自分自身言い終わらない内にそれが間違いであることを悟っていた。では、ならず者が忍び込んできたか。いや、違う。直感がそう告げていた。

 彼女はふと、浩介がまだ幼かった頃、後ろから目隠しをしてきて、

「だれだ?」

と、よく言ってきたのを思い出した。その時はわざと何度か間違えた振りをしてから向き直り、満面の笑みを浮かべた少年を見て自らも笑顔となり、よしよしと頭を撫でてやるのが常だった。

 そうだ、あの時のように戯れにしてしまえばいい。早くこのアイマスクを外して。そう思った刹那、彼女は尻の上っぺりに硬いしこりが押し付けられるのを感じて動揺した。うなじには熱い息が掛かる。男からは冗談に出来ない殺気めいた気配が漂い出ていた。

 男は強引にも佳子をベッドへ押し倒した。そして、激しく抗う彼女に馬乗りとなって己の体ごと抑えつけ、カットソーの隙間から中へ手を差し込んできたのだ。それはひんやりと冷たい手だった。

 佳子がその冷たい衝撃を感じると同時に背筋には悪寒が走る。もはや犯意は明確であった。早く止めなければいけない。彼女は躍起になって相手を押し返そうとしたが、腕力では到底敵わない。もし浩介だとすれば、あの病身のどこにこんな力が残っているのか。

「ホントに浩ちゃんなの?」

訝しがるのも無理はない。それに、あの子がこんなことをするはずがない、とも思いたい。その時ハッと閃いた。これはまた夫が仕組んだ計画なのではないかと。だとすればその辺りで彼が見守っているのかもしれない。

 しかし、その考えはすぐに打ち消された。アイマスクを着けたのはあくまで偶然なのだ。そのことまで彼が計算していたとは考え難い。第一、彼は今出張に出ているではないか。

 その間に衣服はめくり上げられ、薄青い花の刺繍が施された白地のブラジャーが露にされる。

 これはもういけないと、佳子は相手を押し戻すことから方針転換し、アイマスクを取る方に注力することとした。これを外して、外して……外したら、どうなるのだろう。相手が浩介だったとして、今まさに禁忌を犯している彼と相対することとなる。つまりは彼を罪びとに貶めてしまう。そんなことはしてやりたくない。それに、今まで築いてきた関係を台無しにする結果ともなる。思えば、それを回避する為の道具立てではなかったか。

 この一瞬の逡巡が明暗を分けた。驚くべき手際の良さで男はスカートをめくり上げ、さらにアイボリーのショーツを脇へずらすと、まだ濡れてもいない陰裂へ早くも剛直を押し当てた。

「待って」

とばかり、佳子が下腹部へ手を伸ばすのと、男根が穴に納まるのとはほとんど同時だった。彼女が握る手の中をスライドして、肉竿が通り過ぎていく。その時彼女の指には、確かにゴムの感触があった。

「やっぱり浩ちゃん」

突然の強姦魔がコンドームを用意しているとは考えにくい。であれば、さっきアイマスクと一緒に置いてあったあれを彼がわざわざ取ったのだろう。佳子は彼の最低限の気遣いとまた避妊にちょっと安堵した。

 だが、だからといってもちろん現状を受け入れられるわけではない。夫が仕組んでいないなら、これは彼の管轄外の所業。夫の保護下にない以上、許されざる不倫なのだ。

「やめて」

奥まで入ってしまった不倫棒、その太さで無理矢理筋穴を広げられる苦しさに喘ぎながら、佳子は懇願するように言った。浩介の名指しを相変わらず避けている今、あとはもう頼むほかないのだった。

 しかし、ここまで来て浩介が止める理由はなかった。再び戻ってこられた肉穴の熱に感動しながら、彼は夢中になって自身の快楽を追求していく。

 浩介にとって、これは願ってもない僥倖だった。日々恋慕の情に悶々としていた彼は、とにかく佳子に会いたくて仕方なく、無理を言って半日早く帰宅させてもらうと、飛ぶようにして家までやってきた。初めは、いきなり行って彼女を驚かせてやろうという純粋な遊び心だった。それこそ佳子が思い出していたようなやり方である。ところが、いざ部屋を覗いてみると、なんとアイマスクを装着しだしたではないか。その瞬間に彼の理性は崩壊した。いわば突発的な犯行だったわけである。

 まだ濡れていない膣穴はギリギリと肉棒を締め付ける。だがさすが年の功というべきか、きつ過ぎるということはない。彼女の柔らかい人柄そのもののように、器もしっぽりと男をくるみ込む感じ。それでも出産を経験していない彼女であるから、やはり狭さは保っている。ほかに女を知らない浩介だからその辺りの機微には気づけない。ただただ愛しい人の中に入っている悦びがあった。そして、彼女が気持ちいいことを改めて知った。

 肉茎を断続的に摩擦すること二十数回、彼の限界はすぐに訪れた。自分でしごくのとは加減が全く違う。それにまた、この間の時みたいに執念深く粘れなかった。許されざる犯行だっただけに、やはり焦りがあったのである。

 しばし我慢を試みたがもう耐えきれないと見るや、浩介は最後に思いのまま腰を使った。そうして相手の両肩を掴んで上体ごと彼女に密着して抑え込みつつ、一気に思いの丈を愛する穴へとぶちまけた。

「ンンッ!」

あの日以来の熱を胎内に覚えて、佳子の体が反射的に驚く。

「終わった……のね」

とうとう最後までやりおおさせてしまったと、虚脱感が押し寄せてくる。事件なんて呆気ないものだ。あれ程の怖ろしいことが一瞬で終わる。それにしても前の時はひどく長く感じたものだが……

「いいえ、あの時は……」

佳子は少し頬を赤らめながら思い返した。あくまでも夫婦の営みとして始まったから、夫が前もって丁寧に愛してくれたのだと。その結果もあってのあれだから、決して浩介一人にやり込められたのではなかったのだと。

 浩介はうずめていた枕から顔を上げ、ちらりと彼女の喉を盗み見た。ちょうど生唾を飲んだらしく、そこが僅かに動いて見えた。その動きが可愛らしく、彼は思わずそこへ吸い付き、チロッと舌先を出しながら、そこから首筋、鎖骨の辺りへかけて、軽く舐めながら唇を這わせていった。

「イヤァ……」

くすぐったそうに見悶える佳子。ゾクゾクと総毛だつ。気持ち悪いわけではないが、背徳的な怖さがある。何より、事を終えた相手がすぐに離れようとしないのも気がかりだ。

 彼女の逆立った産毛が日光を浴びてきらめくのに目を細めながら、浩介はうなじの中に鼻をうずめ、彼女の髪から漂う甘い香りで肺を満たした。過去には肩より下まで伸びていた佳子の髪だが、現在は全体をショートに整えている。そのロングだった頃を思い出しつつ、浩介は彼女の髪をやんわりと撫でた。

 近くで見ると、本当に美しい人だと思う。美人といってもツンと澄ました所は全くなく、あくまでも柔和な母性的な顔立ち。この人に憧れてずっと生きてきたのだ。

「もっと、もっと知りたい!」

彼女の全てを知りたい。そう思った時、彼の準備はもう出来ていた。若い肉体が一発で済むはずもない。浩介は新しいコンドームに付け替えると、やにわにショーツの脇から再突入を開始した。

「ンアッ!」

佳子は驚いてのけ反った。再び入ってきた欲棒は、先程とも遜色なく、いやむしろ増したのではないかという程の硬度で、膣肉を遺憾なくえぐり抜いていく。

「もっと、もっと!」

浩介は彼女の両脚を肩に担ぎ、ぐっと前のめりになって上から下へと腰を叩きつけた。自然、佳子の尻が浮かび上がる格好となる。

「ヒアッ!」

子宮の口に亀頭が激突して、佳子は思わず悲鳴を上げた。それでも相手はお構いなく、硬直棒はドスドスと奥壁を激しくノックし続ける。彼女はたまらずに彼に抗っていた手をベッドへ振り下ろし、シーツにしがみついた。

 浩介はしばらくそうやって連撃を続けた後、小休止の合間にブラジャーに手を掛けた。そしてホックも外さずに無理矢理それをずり上げる。すると、一旦めくれ上がった乳房が乳首のとっかかりを通過した直後にドロンと落下して広がった。

 浩介はそれとの再会を喜びつつ、むさぼるように乳輪ごと吸引する。母乳の出ないことが不思議だと思う程ジュウジュウと吸った後、パッと離すと、乳玉は呆気なく形を崩し、自立出来ずにとろけた。見れば、乳輪の外側にほの紅い輪っかが残っている。彼は左の乳房にも同じことを施し、同時に肉穴を突いていった。

 少しく乱暴になりだした彼に恐れをなしつつ、それでも敢然と拒絶出来ない佳子。もはや貞操を奪われしまった今、それに付随する行為も一緒くたに許容してしまう自堕落さがある。もう罪の重さは変わらないというのか。結果、相手のしたいようにさせてしまっている。

「ンッンッ……」

予想できないタイミングでドクドクと流れ込んでくる熱汁。それをまた胎内に感じながら、今度は幾分驚きも収まって、相手のことを思いやった。この闇の向こうで、彼はどんな表情をしているのかと。

 二発目の射精を終え、浩介は上気した面持ちで、まんじりともせずに佳子の顔を見下ろしていた。初めより呼吸の荒くなった彼女の頬は、ほんのりと染まっているようだった。幾度となく見慣れた普段着の中から乳房を露出している様を見ていると、恋焦がれる人をとうとう自分の女にしたことを実感し、感無量であった。のだが、欲求というのは果てしがないものだ。

「ああ、もう……我慢出来ない」

浩介は辛抱堪らなくなって倒れ込むと、右手で彼女の頭を抱き、左手をその卵のようにツルリとした丸い頬に添えた。お互いの息が吹きかかる程の距離である。佳子は何かを察して本能的に口を閉じる。ちょうどその直後、浩介の唇が佳子のそれに押し付けられた。

「ダメよ、浩ちゃん」

佳子は衝動的に相手の胸へ手を突っ張ったが、無力にも押し返すことは出来なかった。頭は固定され横を向くことも出来ない。

 浩介の唇は、きつく結んだ相手の唇を剥がすかのように上下に挟んで動いていく。上唇から下唇、時に引っ張り上げようとしたかと思えば、横へ移動したりして、あっという間に全体を周回していった。

 佳子は口を開かぬ覚悟だったが、どうしても息苦しくはなるもの。油断という程の油断ではないが、ちょっと唇が緩んだのを見逃す浩介ではなかった。今度は舌が入ってきて、第二関門の前歯が蹂躙されていく。それはまるで掃除でもするように上の歯、下の歯、ゆくゆくは頬の裏の方まで舌は侵入し、丁寧に表面を舐めとっていった。

「イヤ、やめて」

 この接吻は、初め姉弟としているような違和感しかなかった。背徳というよりも意味の分からない感覚。核心の一線はとっくに越えているのに、やはり二人は男女の仲ではなく、佳子からすれば、浩介はいまだに我が子以上の何ものでもなかったからである。

 ところが、彼が三回目の挿入を始めてからその様相は変わってきた。

「ウソでしょ!?」

まずはそれが佳子の率直な感想だった。夫の若い時分でも一晩で二回以上のことはなかった。彼女はそれでも十分満足していたし、何ら疑問にも思わなかったのである。それが、若いとはいえこの短時間に三回もしようとしている。しかもまだまだ硬い。

 そして、この合体と並行してのキスである。夫との愛の営みにおいて、これは必ずあることだった。なので、彼女の中では暗に、セックスとキスが連想的に図式化されていたのである。ここに至って、浩介と交わすそれも少し意味が変わってきた。

 つい噛み合わせを直した隙をこれまた逃さず、浩介の舌はとうとう奥の空間に侵入してきた。佳子の舌は逃げ回ったが、彼は追い回すことにこだわらず、歯の裏や歯茎を舐めたりして寄り道も愉しんだ。そうこうして乱れ合う内には、いよいよ舌同士も絡み合う形となった。唇同士も密着し、互いの唾液で口の周りはベトベトになるし、彼の唾液は佳子の口内へトロトロと流れ込んでくる。経験のない浩介だが、彼を突き動かすのはとにかく探求心だ。佳子の歯や唾の味も、唇の内外の感触も、何もかも全てを味わい尽くしたい彼である。

 浩介は佳子の艶のある髪へ指を絡ませて頭皮をまさぐり、他方で額から頬を撫で、耳のひだをなぞった。肉棒の存在感とも相まって、我知らず佳子の目が熱っぽく潤みだす。体の芯から女にされていく。

 だが、二人はかかる情事に埋没していきながらも、当初からある共通の懸念を有していた。それは時間の経つごとに膨れ上がっていくもの。すなわち、

「あの人が帰ってくる前に」

 稔の出張のことは浩介も知っている。もちろん計画的な犯行ではなかったが、彼の居ないことが行動に踏み切らせた面は否めない。そうして実際に犯してしまった今、あとはもう、おじさんの帰る前に精一杯佳子を愛そうという腹積もりだった。

 一方、佳子はといえば、これはもう気が気ではなかった。大体の帰宅時間は予想しているし、まだ大丈夫とは思っているものの、こんなに浩介が粘るとは思わなかったし、そもそもが夫を裏切っているわけで後ろめたく、すぐにでも切り上げるべきだとは本心から考えていたことだ。

 かの夜の折は、あくまでも形式上は夫との情事だったところ、今回は端からの不倫である。このアイマスクが故に辛うじて建前を死守しているとはいえ……ここで佳子は、はたと気が付いた。そうだ、自分は夫と性交しているのだと。浩介もまたそれに乗っかって行為に及んでいるわけで、たとえ夫が介在していなくても、この交渉は夫婦のそれというべきなのである。ならば、自分は夫に抱かれている風を演じ続けなければならない。

 佳子はか細い声で試しに言ってみた。

「あなた……」

我ながら白々しく感じられ、その声は覚えず震えていた。言った傍から耳まで赤くなる。そうだ、夫だ。あの人に抱かれているのだと自己暗示めいたものを掛ける。こうなるともう自分との闘いだ。

 それにこれは、もしも夫に見つかった時に、いくらかでも彼の心を和らげようという打算もあってのことである。妻は夫と思ったからこそ抱かれているのだと思えば、彼も理解がしやすいだろう。そう考えた。が、そのすぐ後から、結局保身ではないかとの疑念が湧いてくる。妻が悪くないとすれば、責任は全部浩介に押し付けられるのだ。

 佳子は、しかしこれ以上満足に思案出来なかった。彼女の煩悶を台無しにするようなことを浩介が言い出したからである。

「佳子さん……」

彼は遂に声を出した。それは言ってはならない掟だったはずだ。佳子の背筋へ冷たいものが一気に走り、耳の奥がキーンと鳴って、彼女は恐怖から身を震わせた。

「佳子さん」

聞き間違いではなかった。聞きなれたあの声で、明瞭に彼は呼んでいた。

「ダメよ、ダメ」

「佳子さん」

「名前で呼ばないで」

「佳子さん!」

「浩ちゃん、お願い」

「佳子さん……ああ……佳子さん!」

佳子は必死に心で哀願したが、情熱をまとった彼には一切届かなかった。その勢いのまま男根を女陰の奥底へこすり付け、むさぼるように彼女の口を唾液ごと吸い上げる。佳子は息も絶え絶えになってきて、胸の奥がカーッと熱くなる。

「ダメ……ダメだったら……」

愁眉を寄せて見悶える。全身から汗が吹き出し、火照った肌は桜色に染まっていく。

「イヤァ……!」

腿の内側が、まるで自分のものでないように一人歩きしだし、もうどうしようもない感覚。そこへきて、浩介はとどめの連撃を繰り出し、そしてそのまま熱情を噴射して果てた。

「アァウァ……!」

彼とディープキスを交わしながら、佳子は絶頂していた。浩介が正体をバラシてしまって、この先どうなるのかなんて、今は咄嗟に見当も付かなかった。

 浩介は浩介でさらなる行動に出る。今度は下半身に移動し、そこにあったスカートもショーツも全部取り去ってしまった。

「イヤ……」

佳子は恥じらったが、制止する力も出なかった。恥部を見られていることは視覚を失っても分かる。なんとなれば、闇の中だからこそ想像力が逞しくなる。

 浩介は愛する人の陰唇をまじまじと見つめた。毛量は薄い方で、処理を徹底していなくてもそれ程繁茂していない。やや茶味がかった縮れ毛が申し訳程度に割れ目を包んでいる。その中に周りの肌よりも深い色の陰唇が可愛らしく鎮座している。その拓けた中心部には、先程来自分がくり抜いた穴が黒く開いていた。

 さらに視線を下げると、生白い尻の奥に集約した皺がある。そこは桃色がかって見えた。浩介は佳子の尻の穴まで知れたことに喜びを感じたが、彼女の羞恥を思いやるとあまり深くは追及しないことにした。何となく自身でも気恥ずかしいような気持ちがある。

 何よりも今は女陰だった。複雑な回廊のようなひだが重なっており、無知な彼には何が何やらさっぱり分からない。まずは鼻を近づけてみたが、匂いという程の印象はこれといってなかった。ただ彼の中の補正で、佳子らしい甘い香りが漂い出ていたような気はした。むしろ印象的だったのは、そこから湯気でも立っているのではないかという程、顔面に熱気を感じたことである。

 続いて、指の腹で外周をなぞってみる。瞬間、佳子がビクリと痙攣した。浩介はその反応をチラリと窺いつつ、肉の厚みを確かめるように摘まんでみる。そうしながら、自分が入っていた穴の奥を改めて確認した。なんだか新鮮なホルモンのような、オレンジとピンクの合わさった色の、しっとりとした粘膜が剥き出しになっている。彼は思い切って、そこに唇をくっ付けた。

「ヒィッ!」

佳子は悲鳴を上げて、思わず口の周りを両手で覆った。到底我が子から受ける仕打ちではなく、これ以上の辱めはない。合体よりも恥ずかしい。余程止めようと考えたが、止めることも恥ずかしいような気がして身動き出来ないでいた。

 浩介の研究は続く。まるでお定まりの如く指を差し入れてみる。

「熱い!」

彼は内側の熱にびっくりした。体の内部から直に感じる体温は、体の表面に触れるのと全く訳が違っていることを知った。医学生らしい感想といえば感想といえる。この場合、さながら佳子は実験体というわけだ。あるいは手術と言うべきか。いずれにせよ、続いては味覚を調べてみねばならない。

「ンンッ!」

ゾワゾワと総毛だたせて、佳子は口をへの字に結んだ。もう勘弁してくれと祈った。恥部を、それも今しがたまで使用していた痴穴を舐められている。

 浩介は彼女の反応を見て驚いた。一体に彼は、佳子が感じているという想定をしてこなかった。自分だけが気持ちよくなることで精一杯だったし、何より男として自分が見られていると思っていなかったから、相手を気持ち良くさせてやろうなどと高い目標を課していなかったのである。

 だが今の反応を見ると、あるいはそれが出来るかもしれない。そう思った彼は、佳子を喜ばせたくて夢中で舌を使いだした。内壁に沿って、グルリグルリと舐めこそぐ。先程指でも感じたことだが、中はしっとりと湿り気を帯びているようだった。汗も混じっているだろう。無論己の吐いた唾液もそこに混ざる。しかしそれ以上に、奥から汁が湧いてくるようである。これが愛液か。そう悟った瞬間、彼は無上の喜びを感じた。

「佳子さんのお汁」

浩介はこれこそ求めていた彼女の真髄と感じて、まるで名水を味わうかの如く、夢中で湧き汁を啜った。出来ることならこの汁で口中を一杯に満たしたいとさえ願った。

 ズズズとか、ピチャピチャとかいう音が聞こえだすと、佳子はもう身も世もなく悶え、

「もうよして……」

と、切に懇願した。確かに言いようのない快楽のある事実がまた彼女を苦しめる。浩介は指も織り交ぜながら、彼女の膣を嫌という程愛した。闇雲なやり方だったが、一旦火照りだした佳子の肉体は憎らしくも対応し、女体の悦びをまっしぐら。そういう時間が延々と続いた。

 やがて浩介は起き上がり、新しいコンドームを着ける。四回目の準備である。そうして、彼は平べったく伸びた乳房をそれぞれかき集めてギュッと搾ると、まるでそれを取っ手代わりのようにして体を支え、勢い衰えない怒張を、グショグショの水浸しになった雌穴へ、もはや慣れた調子でねじ込んでいった。

 まだ日は高い。稔が帰るまでには、十分時間があるはずだった。


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