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R18
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なお、掲載している小説はすべて虚構であり、実在の人物・団体等とは一切の関係がございません。

    
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「オナこもりの小説」は、エロ小説を気ままにアップしていくブログです。たまに、AV女優や、TVで見た巨乳のことなども書いています。左サイドにある「カテゴリ」から、それっぽい項目を選んでご覧ください。



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妄想の座敷牢羞恥の風ましゅまろくらぶ



小説には、連続作品と一話完結作品があります。連続作品は、左「カテゴリ」の各作品名より一話から順番に読むことができます。また「目次」には、各作品の概要などをまとめた記事が集められています。

■連続作品
◆長編作品
「子宝混浴『湯けむ輪』~美肌効姦~」

◆中編作品
「大輪動会~友母姦戦記~」
「青き山、揺れる」 ▼「師匠のお筆」

◆オムニバス
「母を犯されて」

◆短編作品
「育てる夫」  ▼「最後の願い」  ▼「ママの枕」  ▼「ブラック&ワイフ」
「夏のおばさん」  ▼「二回り三回り年下男」  ▼「兄と妻」

■一話完結
「ふんどし締めて」
「旧居出し納め・新居出し初め」  ▼「牛方と嫁っこ」  ▼「ガンカケ」
「祭りの声にまぎれて」  ▼「シーコイコイコイ!」  ▼「サルオナ」  ▼「母の独白」
「童貞卒業式」 ▼「お昼寝おばさん」  ▼「上手くやりたい」 ▼「珍休さんと水あめ女」
「栗の花匂う人」「乳搾りの手コキ」 ▼「妻つき餅」 ▼「いたずらの入り口」
「学食のおばさん便器」 ▼「山姥今様」 ▼「おしっこ、ついてきて。」

作品一覧

最後の願い〈上〉
「何を馬鹿なことを!」

稔(みのる)は、まさかこんな短期間に二度も同じ台詞を吐くことになろうとは思いもしなかった。眼前の青年は耳まで真っ赤にして、緊張と羞恥と恐怖の入り混じった感情にブルブルと震えながら、しかし目線だけには確固たる決意をにじませてこちらを見ている。

「無理は承知しています! でも、それでも、なんとか」

言い切らぬ間に、浩介(こうすけ)は咳込んで言葉を詰まらせた。それを見た稔は、

「ああっ!」

と言って、文字通り頭を抱え込む。このいたいけな青年がかくも短い期間にこれ程の悩みを持ち込もうとは考えもしなかったことだ。幼い頃より面倒を見てきた中でも、こんなに苦悩したことはない。

 交通事故で両親揃って失った浩介を引き取ったのは、ちょうど十年前。彼の父が大学の後輩だった縁である。稔夫妻には子が無かったこともあり、我が子同然に愛情を注いできて、呼称こそ“おじさん”“おばさん”であったが、浩介の方でも親同様に懐いていたはずであった。聡明な彼は医学部への進学も果たし、この春から晴れて夢への第一歩を踏み出していた。つまり、育ての両親と同じ道を選んだのである。

 ところが、だ。運命は惜しみなく将来を奪う。一体彼が何をしたというのか。父母を奪っただけに飽き足らず、今度は彼自身の命さえ奪うという。病が発覚した時、既に手遅れだと言われた。

「何を馬鹿なことを!」

耳を疑った。あらん限りの伝手を頼って八方駆けずり回ったが答えはどれも残酷なもの。もちろん医師である稔自身にも分からないはずはない。だがどうしても信じたくないのだ。患者の死を数々看取ってきた彼だが、今ほとんど初めて遺族の気持ちと同じになったと言っていい。実の親の時ですらここまで諦めきれなかったことはないのだから。

 本人に告知する気はなかった。しかし余命幾ばくもない段階においてはそれも無意味である。手続きが済めば、明日にでも入院、そして手術。今日はそういう話を伝え、当人の意思を確認する日だった。

 真実を聞かされても、浩介は決してたじろがなかった。やはり察していたのである。日を増すごとに激しくなる体の痛みが異常を知らせていた。若い肉体なだけに進行のスピードが速い。同時にまた偏った情熱も加速していった。

「お願いです! どうか許してください」

「しかしだな……」

「お願いします! どうか佳子(よしこ)さんと」

「言うな……!」

平生なら“おばさん”と呼ぶべきところを、あえて名前で呼ぶ。こんなことは初めてだった。稔は顔を手で覆って相手を見ないようにした。つい今しがた始まった押し問答。何か力になれることはないか、と話を向けたのがきっかけだった。何が欲しいとか、何処へ行きたいとか、多少の無理は通してでも叶えてやろうと思ってのことだった。

 最初、浩介はいかにも思い詰めた表情で、何か言いかけてはやめるというのを何度も何度も繰り返していた。何をそんなに躊躇うのか、稔は不思議に思いながらも、いつにも増して柔和な笑みを浮かべて、ゆっくりと彼の言葉を待った。すると、予想だにしない答えがその口から漏れ出たものだ。

「ぼ、僕は、お、女の人を、知りません」

「ほお……」

なるほど、と思った。そういう系統の話なら言いにくかろうと。妻が同席しなかったのは結果的に良かった。男同士なればこそ、こういう悩みも打ち明けられるというものだ。稔は、そう言えばこの子の浮いた噂は聞いたことがなかったな、などと瞬時に思いを巡らせたが、意を決した浩介が訥々と言葉を紡いでゆくのですぐに現実に引き戻された。

「だから、け、経験をしてみたいです」

ズバリと青年は言い切った。まさに一生に一度の願いというわけである。だが、本題はむしろここからだった。

「それで、その……」

「うん」

はてどうしたものか、と早速に稔は考え始める。いわゆる性風俗店の世話になるか。差し当たりそれしか思いつかないが、生憎自分はその道に明るくない。これは案外厄介だぞ。浩介の名誉のためにも妻には伏せておきたいし。だが、ここまで思い切らせた以上、なんとしてでも叶えてやらなければならない。

「あの……」

浩介の言葉はまだ続いていた。いよいよ口が重くなり、ここにきてさらに逡巡する様子だ。だが、一度口火を切り、既に恥をかき始めた以上、もはや開き直るほかない、という勢いで彼は突貫した。

「お、お、おばさんと……」

「ん?」

稔には聞き取れなかった。単純に声が小さかったし、想定外の単語だったからというのもある。

「おばさん……お、奥さん……よ、佳子さんに、お、お相手してほしいです!」

徐々に声量を増しながら、最後は怒鳴る様にして浩介は絶叫した。

「おばさん? 奥さん? 佳子さん?」

何を言っているのだ、稔には唐突過ぎて意味が分からなかった。その混乱を余所に堰を切ったように浩介がまくし立てる。

 実はこの家に引き取られるよりずっと前、実の親に連れられて初めて会ったその日から佳子に恋してきたこと。もちろん叶わぬ恋なのだから、こんな日が来なければこの想いは秘めたままでいるつもりだったこと。おじさんを裏切る気など毛頭なく、だからこそ正面からあえて恥知らずな頼みをしていること。決して気が触れたわけでも自暴自棄になったわけでもなく、真剣にお願いしていること。そういったことをつらつらと、いとも流暢に説明していった。このことは決してその場の思い付きでないことを示していた。

「妻を、抱かせろ、と?」

要するにそういう頼みだと理解した時、しかし稔の混乱には一層拍車がかかった。

「この子が、アイツを?」

考えもしなかったことで、にわかには信じがたい。現にいくつ歳の差があると思っているのか。稔は震える心で計算した。自分が今六十二だから、一回り年下の妻は今年五十、いや誕生日が来ていないからまだ四十九か。対して浩介は……十九。十九? 三十も年上のアイツが今でもいいと? 確かに、初めて会った頃ならまだ三十代ではあったし、恋をするのも分からなくは……いや、やはり信じられない……

「どれだけ軽蔑されても構いません。ここまで育ててもらって、恩を仇で返すようなお願いをして……でも……でも! どうせ死ぬなら、最後に想い出を!」

浩介は切々と涙ながらに訴え、遂には床に手をつかんばかりにしだす。

「よ、よさないか!」

さすがにこれを稔は止めて、ただほとんど思考停止のような状態で、これからどうしたものか判断がつかず、ほとほと困り果てていた。そんな中でも、浩介から魂の叫びが続く。彼とて、もはやここまでぶちまけた以上、後には引けないのだった。

「待て、待ってくれ」

稔はやっとのことでそれを押しとどめ、しかし自身の言葉になんの裏打ちもないので情けなく、ただ大きなため息をついて座り込んだ。待てと言ったって、間を置いて考えたところで何になろう。ましてや時間的猶予など許されない状況で。だが、やはり今すぐ答えは出せない。何よりこの場にいない者にも関係する重大事だ。この点は浩介もさすがに理解しており、結局のところこの夜はここで別れた。

 だが、二人は知らなかった、この会談を扉一枚隔てて聴いていた者のいたことを。すなわち第三の当事者、佳子である。

 三人で夕食をとった後、彼女は片付けの名目で台所に残った。その間に何気なく夫が浩介を書斎へ連れ出し、話をするというのがかねて打ち合わせていた段取りである。息子のように慈しんできた者の不幸に、佳子の手は震え、涙が止まらなかった。これでは到底冷静に告知をすることなど出来ない。自分は医者失格だと思った。

 それでも、今晩の浩介の明るい笑顔を思い出し、心を奮い立たせる。まるで病魔に侵されているのが嘘のような屈託ない態度。もう既に察しはついているだろうに、あえて心配をさせまいと健気に振る舞っているようだった。

 佳子はゆるゆると洗い物を終えると、コーヒーを淹れ、そのカップを載せた盆をしっかりと掴み持ち上げた。フウッと息を吐き、書斎を目指す。そしてそれは、目的の部屋の前まであと二、三歩と迫った時だった。その衝撃の言葉が耳をつんざいたのは。

「おばさんが、いえ、佳子さんが好きなんです!」

咄嗟には意味が分からなかった。一体何の話をしているのか。想像の遥か上をゆく会話である。佳子はドアノブに掛けようとしていた手を止め、息を殺して聞き耳を立てた。

「わたしを……抱……く……?」

聞けば聞く程に混乱する。だが確かにそういう風に言っているのだ。我が子と思っていた彼が男として、そして母親代わりの自分を女として見ている。室内で夫は動揺しているようだ。それはそうだろう、自分だっていくら考えても理解が追いつかないでいる。ましてや夫に妻と関係させてほしいと願い出、筋を通しているつもりらしい。荒唐無稽である。

 気でも違ってしまったのだろうか。不安から心臓が早鐘のように打ち出し、彼女は中に入るきっかけを失って、ただただその場に立ち尽くしていた。怒りはない。むしろ憐憫の情が次第に心を占めていった。女性を知りたいと彼は願う。だが今から誰かと出会い愛し合う仲となるのは難しいだろう。大切な子だけに、いい加減な相手と結ばれてほしくもない。であれば、いっそ……

「わたしが犠牲に……」

そう思い至って、しかし佳子は恥ずかしくなり、また恐ろしくもなってきつく冠りを振った。

「何を考えて……!」

息子と体を重ねるなんて、そんな母親がいるはずない。これまでの歴史が崩壊してしまう。男性として見ることなんて出来ない。あえて評すならば、気持ちが悪い。そう、これは気持ちが悪いことなのだ。けれど、彼の方では自分を対象と認めているらしい。手近で頼みやすい女が自分しかいないと判断したのかもしれないが、少なくとも女としては見ているのだ。

「わたしは、でも、だって、あの人が……」

そうだ、その前にまず結婚している。夫を裏切ることになってしまうではないか。佳子はそこでハッとして顔を上げた。あの人はどう答えるのか。だが、彼の声はくぐもって生憎聞き取ることが出来なかった。

 そうこうする内に会談が終了しそうな雰囲気を感じ取って、佳子はそそくさとその場を後にし、再び台所へと戻った。そして明かりも点けずに呆然とまた立ち尽くす。

「あの子が……わたしを……?」

頭の中を同じ考えがグルグルと堂々巡りしている。その時、パッと部屋の電灯が点いた。稔だった。

「あら、今コーヒー持っていこうと思って」

佳子は何も知らない風を装って言った。

「いや、浩介は帰ったよ。送ろうかと言ったんだけども、少し一人になりたいからって」

「そう、浩ちゃん帰ったの」

稔はコーヒーを一口啜った。それはすっかり冷めていたが、彼は気にも止めなかった。

「……それで、浩ちゃんはなんて?」

「ん? うん……」

稔は分かりやすく目を逸らす。

「だいぶ、気が動転しているようだったな……」

彼は苦笑いを浮かべたつもりだったが表情がこわばって上手くいかなかった。

 それから二、三日、この件について何ら進展はなかった。佳子は診察に付き添ったりもしたが、あくまでもこれまで通りの母親役に徹していたし、浩介の方でも全く変わった挙動に出ることはなかった。ただ、佳子には些か変化が見られたようで、

「床嶋さん、大丈夫ですか?」

などと、同僚に顔色を心配されたことはあった。家庭の事情は既に職場でも知られていたので、やはりそのことで悩んでいるのだろうと周囲には察せられるだけだったのだが、彼女は懸案を見通されたように感じて独り恥じ入るのだった。

 事態が急転したのは何の前触れもない、ある夜のことである。

「これを着けてくれないか」

薄暗がりのベッドの上で唐突に稔からある物を手渡されたのだ。

「え?」

それはアイマスクだった。夫婦の営みの最中、前戯が終わった頃に差し出された。惰性的な交渉を防ぐ目的でこういう趣向を取り入れるとは聞いたことがある。だが、夫はこれまで一度もこの種の試みを持ちかけたことはない。その点で、極めてノーマルな嗜好の持ち主であるといえよう。

 そもそも、稔から今夜誘われたことも意外であった。彼は五十代後半に入ってからいわゆる不能気味となり、この三年に至っては全く夜の生活もなかった。決して夫婦仲が悪いわけではなく、お互いにそういった行為からはもう卒業したような感覚。ある意味では友人のような、またある意味では同志のような関係性と思っている。

 そんな夫が急に誘ってきた。あの立ち聞きを経ていればこそ、妻には特別に感じるものがある。そんな中での提案だ。彼女は受けた、夫の苦悩に寄り添うべく。

「これを、着けるの?」

稔は黙って頷く。その表情は著しく緊張していた。佳子は急に胸騒ぎを覚え、夫の顔をよく見る。すると、彼はそっと目を逸らした。

「何かある」

そう思うのは、長年連れ添った夫婦の勘のみに基づくものではない。やはり当面の疑念が介在しているからで、これを受け入れるか否かには、表面以上の決断を求められているのだと悟らざるを得なかった。そして、夫は既に何かを決断したのだ。次は自分である。

 佳子は悩み、しかし一瞬の後にはアイマスクを手に取っていた。仮に日頃であっても、それは明朗な好奇心でもって彼女は受け取っただろう。行為自体を直ちに不愉快だと認定する程彼女は狭量ではない。且つはまた今あえて問い詰めることもしなかった。真実を知らせないというのが、彼の趣旨であろうから。

 これから何が起こるのか確定ではない。だが妻としては夫を信じるしかなかった。もしも自分が思いついた手法通りだとするなら何と稚拙なアイデアとは思うが、あるいは彼にとっては未必の故意であり、自分が察した場合をも想定してなお、一緒に堕ちてくれという願望かもしれず。いずれにせよ一蓮托生の思いは同じである。

 佳子がそれを装着すると、程なくしてベッドが軽くなったのを感じた。暗闇の中で、あっと思ったが、それも一瞬のことで、すぐにギシリとまた重量が加わる。

「あなた?」

「うん?」

夫だ、夫は居る。だが彼はその後余計なひと言を付け加えた。

「大丈夫だよ」

「大丈夫」とは、この場合どういう意味だろうか。平素なら単に、怖がらなくてもいいよ、という意味だと理解もしようが。

 しばらくの沈黙があった。ひどく重い闇の中で、それはとても長く感じられた。確かに何かがうごめく気配がある。佳子に緊張が走った。

「あなた」

そう呼びかけようとした刹那だった。硬くて熱いものが秘裂にぶつかった。

「ヒッ!」

思わず悲鳴を上げて、体をこわばらせる。本能的にその熱いものから逃れようと身を引く。ここに来て恐ろしさが胸の内を占めていく。

 しかし、相手は待ってくれない。彼女の反応にちょっとたじろいだのも束の間、もう後には引けないとばかり、硬い突起をぐいっと押し込めてきた。

「ああ……っ!」

佳子は唇をきつく結んで、見えない中でも目をギュッとつむった。禁忌を犯す恐怖と逃れられない運命と、諦観と覚悟とに翻弄されながら、無力な己を恥じながら、もはや生きた心地もなくその身を硬直させる。

 ズッ、ズッ、ズルズルと、硬い棒が女の細道を押し広げて沈んでいく。

「これは……」

疑うべくもなかった。これは夫ではない。認めたくはないが、やはり……!

「ンッ!」

男根は行き着く所まで入って、今や二人の股間が密着するまでになった。紛れもない男の欲棒である。奥の奥まで届いて、佳子は顎を伸べ呻く。もう何年も迎え入れてこなかった硬さ。久方ぶりの男だが、しかし、女の体は覚えている。あの頃の、若かったあの人の硬さ。それと同様か、あるいはそれ以上の……

「あの人は!?」

ハッとして佳子は気が付いた。これが夫ではないなら彼はどこに居るのか。……いや、居る! これも確信が出来た。彼の気配は確かにあった。では、彼はどんな思いでこの光景を目の当たりにしているのだろうか。

 稔は確かに見ていた。さすがに挿入の瞬間こそ目を逸らしたが、この計画を実行した以上は見守らねばならぬと思った。彼は妻以上に悔恨と無力感に苛まれていた。本当は部屋から出ていたかったが、妻を生贄に捧げた卑劣な自分の最低限の義務として、あるいは自分への罰として受け入れることを決めた。それに、妻はあくまで自分と性交しているつもりであるから、さっきみたいに話しかけてくることもあろう。その時返事をせねばならないのでもあった。

「ああっ!」

佳子は目尻の皺に涙を溜めて、夫の辛さに思いを馳せた。また同時にこんな浅ましい姿を最愛の人に見られていることを深く恥じた。一体にこんなことを本当にしなければいけないのか。

 しかし、今抱かれている相手を蔑むことも出来ない。彼は余命幾ばくもなく、その最後の望みを自分にかけてくれた。何より幼き頃より今日までずっと慈しんで育ててきたわけで、その彼が劣情を露にしたからとて急に恨むことなど出来ない。しかも健気に、一途に自分を想い続けてきたという。そう、育ての母ではなく、一人の女として自分を見てくれていた……

「イヤッ!」

ふとそこへ思い至った時、佳子は忽ち恥ずかしくなり、拒絶の声を上げそうになったのをすんでの所で止めた。彼の前に今自分は一糸まとわぬ姿をさらけ出しているのだ。くたびれた五十路前の裸。肌の張りも衰え、乳も垂れている。憧れてくれている子にこんな情けない姿を見られているのだ。

 ちょうどその時、彼の手が佳子の乳房に触れた。

「イヤ……ッ!」

恥じらいの極致で佳子は身をよじらせる。手は彼女の感触を確かめるように優しく動いた。

 浩介は歓喜に包まれながら目の前の人を見下ろしていた。憧れの人の裸身。ずっと昔、まだ自分が幼かった頃、一緒に風呂に入った時以来。あれから十年経って、再び相まみえる日が来ようとは夢にも思わなかった。彼女の母性そのものを象徴するかのような丸みを帯びたフォルム。顎や肩の辺りには年輪を感じる贅肉が見られたが、彼女が卑下するような印象は全くなく、むしろ全体としては均整のとれた体型だったし、何より浩介には魅力的な女性にしか映らなかった。年齢の不利などは一切感じない。

 乳房は中年になって一層肉が付き豊かさを増しており、そこに控えめに乗った乳輪が上品さを醸し出していた。浩介は夢にまで見たそれへ手を伸ばし、その柔らかさを堪能した。柔らかいといってもゴムのようではなく、餅のようでもあるが中身はもっと緩い感じ。表面の反発は少なく、指を押し込めば戻るまでに時間差があった。そうしてずっしりとした重量感。彼は辛抱たまらなくなって上部の突起に吸い付いた。

「ンハ……ッ!」

微かな吐息が上の方で聞こえる。浩介は己を育ててくれた乳でもないのに、赤ん坊よろしく夢中でチュウチュウと吸う。この時ばかりは子供に帰ったようにも見えるが、内実はやはり男である。何より、彼の陰茎はすっかり母ならぬ女の股に深く突き刺さっているのだから。

 彼女の体温が内壁からダイレクトに伝わってくる。実際には事前に稔から渡されたコンドーム越しではあるが、佳子の熱はそんな被膜では防げない程、肉棒を焦がさんばかりに熱かった。彼女と繋がった時、浩介の心は愛おしさで一杯になった。本当なら可愛い顔をまじまじと見て、その唇まで奪いたかった。だが一線は越えなかった。本懐を遂げたとはいえ、これはあくまでかりそめの関係。稔も佳子も本来は傷つけたくない彼である。

 浩介は冷静だった。死を目前に控えた人間の強さであろう。あるいはこの一たびの奇跡を無駄にはしないという強い意思で、彼は逸る気持ちを抑え込み、じっくりと佳子を愛した。不慣れながらもじわじわと腰を使い出す。

痩せ型で贅肉も少なく、腹だってもちろん出ていない若さ溢れる青年の肉体。それを目に出来るのは稔だけである。アイマスクさえなければ佳子もまた凛々しい彼を見ることが出来たのだが、仮に見たとして、この場合素直に成長を歓べはしないだろう。なぜなら、男としての存在感がいよいよ増して、次第に激しさの度を加えていく彼の摩擦が彼女から冷静さを奪っていったからである。

「ンアッ!」

息を吸う瞬間にひとりでに声が漏れる程、佳子の神経は恥穴へ集中した。一体に元気だった夫とて、これ程硬く熱く、そしてまた激しかっただろうか。且つはまた熱烈純情な愛がヒシヒシと体の芯に伝わってくるのだ。体を重ねているからこそ分かる。浩介の必死さが痛い程に伝わる。

「ンッンッンン……!」

本格的に体の熱が高まる。永遠とも思える位、繰り返される出し入れ。時折小康を迎えたかと思えばそれも僅かの間で、すぐにまた連続で深くまた深くえぐられる。これが愛し合う男女の仲ならば女が発情しきるのに必要十分だった。

「待って、違う、待って」

そう言って制止しようと何度も思ったが、それは出来ず、佳子はされるがままになっていた。彼女は焦りを自覚していた。肉の悦びを知っている女ならその境地に達するのは容易い。記憶がそれを求めるからだ。まして数年来のおあずけを喰った身の上、折しも閉経を目前に控えて最後のあだ花を咲かそうともがく女体。彼女は恐れた。追い込まれる程に忘却できない存在がある。

 稔は、激しく繰り広げられる目の前の痴態を視界の端に辛うじて収めながら、もはや感情の整理を付けられないでいた。ただただ、これは浩介の最後の願いなのだ、と繰り返し胸の内に念じ続けた。妻はほかの男に抱かれているのではない、俺に抱かれているのと同じで、彼女は裏切っていない。裏切ったのは俺だ。だが浩介の為に仕方がないことなのだ。この秘密はあいつと二人きりのもので、そしてこの罪は、俺一人墓場まで背負っていけばいい。そう形式付けることで何とか理性を保っていた。

 しかし、現実では妻と浩介が汗みどろになってくんずほぐれつしている。子供だと思っていた浩介。優しくて聡明な浩介。しかし、佳子に横恋慕していた浩介。彼の愛は確かに本物らしい。それは分かる。彼のこともまた自分は愛しているのだ。

同じく浩介を愛する佳子。その彼に股を開かされている佳子。妻のセックスを傍から見たことなど無論初めてだ。薄闇の中でも彼女の乳房が揺れ動き、全身の汗のきらめくのが見て取れる。マスク越しでも表情は分かる。きっと切なげに眉根を寄せて、ちょっと媚びるような甘えと、圧倒的な慈愛に満ちた眼差しでこちらを見てくるのだ。

「佳子……?」

その反応は絶頂が近いことを示すと、稔の経験がお節介にも囁きかけてきた。そういえば、もう何年も妻を抱いていないことも同時に脳裏によぎった。

「あなた……違うの……」

ギシギシと軋むベッドの上で行き場もなく身悶えながらも、佳子は愛する人の視線を忘れなかった。若い肉体に貫かれる年増女の醜態をどこか客観視する自分がいる。全身の発汗がもう先程から止まらない。肌は桃色に染まり、彼女の煩悶を悦楽が塗り込めていく。

「あなた、見ないで……」

惨めに泣く佳子の穴ぼこで、青年のたぎりが弾けた。熱い中にもひと際の熱が身内に流れ込んでくる。これもまた遠い昔にあった感覚。かつては妻として誇らしくも嬉しくもあった瞬間だった。その記憶が肉体をまた紅潮させる。

浩介はくずおれるように覆いかぶさって、ギュウッと佳子にしがみついた。彼の薄い胸板の下で、広がった乳房が押しつぶされ、一部は脇から外へはみ出す。その表面にもまた汗の玉が浮いていた。

稔は射精の瞬間顔を伏せた。ある種の礼儀のつもりである。今は浩介だけの時間を尊重しようと。引き締まった尻が上下に二、三微動し、やがて完全に停止した後、いきり立ったままの彼が離れると、その下から弛んだ生白い尻がくたびれた格好で現れた。稔はまた目を伏せたが、今度は己の罪を恥じたからである。

 佳子がアイマスクを外した時、そこには夫の姿だけがあった。彼女は一瞬ハッとしたが、あくまでもそれが当然のことである。彼女は涙を誤魔化す為、眩しそうに眼をしばたかせ何か感想を探した。今までにない趣向のこと、久しぶりの営みのこと、夫が元気であったことなど幾つか候補が浮かんだが、どれも白々しく思え、口には出さなかった。

 稔もまた掛ける言葉を探したが、ついに何も言わなかった。彼の表情は平生に違わず、表向き何もなかったかのようであった。

 佳子は見てはならぬと知りつつも、つい何気なく夫の股間を見てしまった。早々とタオルを巻いていた彼のそこもまた、平坦で平生と何ら変わりはなかった。

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