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妄想の座敷牢羞恥の風ましゅまろくらぶ



小説には、連続作品と一話完結作品があります。連続作品は、左「カテゴリ」の各作品名より一話から順番に読むことができます。また「目次」には、各作品の概要などをまとめた記事が集められています。

■連続作品
◆長編作品
「子宝混浴『湯けむ輪』~美肌効姦~」

◆中編作品
「大輪動会~友母姦戦記~」
「青き山、揺れる」 ▼「師匠のお筆」

◆オムニバス
「母を犯されて」

◆短編作品
「育てる夫」  ▼「最後の願い」  ▼「ママの枕」  ▼「ブラック&ワイフ」
「夏のおばさん」  ▼「二回り三回り年下男」  ▼「兄と妻」

■一話完結
「ふんどし締めて」
「旧居出し納め・新居出し初め」  ▼「牛方と嫁っこ」  ▼「ガンカケ」
「祭りの声にまぎれて」  ▼「シーコイコイコイ!」  ▼「サルオナ」  ▼「母の独白」
「童貞卒業式」 ▼「お昼寝おばさん」  ▼「上手くやりたい」 ▼「珍休さんと水あめ女」
「栗の花匂う人」「乳搾りの手コキ」 ▼「妻つき餅」 ▼「いたずらの入り口」
「学食のおばさん便器」 ▼「山姥今様」 ▼「おしっこ、ついてきて。」

作品一覧

「師匠のお筆」 4-2-3
『師匠のお筆』


4-2-3


二人を乗せた車は住宅地を抜け竹林の中で停まった。風が若々しい青い葉の間を抜け、全体をさやさやと揺らして過ぎた。静かな場所だった。

車は鈴美を先に降ろし、コンクリートに覆われた暗がりへと降りて行った。それを目で追いながら、きっとさぞかし豪邸が現れるに違いない、と鈴美は何となく考えていた。

だがその予想は裏切られた。枕必の先導に従って目の当たりにしたのは、実にこじんまりとした純和風の木造建築であった。「工房」と彼は呼んだが、まさしく芸術的作業にぴったりな質素な建物だった。

「どうぞ」

鍵を開け、ガラガラと格子戸を引いた枕必が鈴美を誘った。しかし、自身は中に入らず表へと出て行く。

鈴美は手持無沙汰に屋内を見まわした。民芸品のような置物や壁掛けが並んでいる。と、奥の方からぱっと光が差し込んできた。どうやら枕必が雨戸をはずしたらしかった。

「これですっきりするでしょう。さ、上がって」

玄関の仕切り一つ隔てて、左にガラス板の机と向かい合わせの二対の椅子があり、枕必は鈴美をその一つに座らせておいて、自分は流しの前へ立ちやかんを火にかけた。

「どうも散らかっていて……」

やがて茶を持って来た枕必がそう言いながら座った。

「いいえ、とても趣があって……」

鈴美は言った。お世辞ではなくそう思っていた。

確かに玄関の民芸品や目の前の机などの調度品といい、ただ乱雑に設置しただけで何らの統一感もなかったが、その乱雑な感じが仕事に徹する男らしさならではに見え、鈴美には好ましく思えた。

枕必が言うには、家具は昔住んでいた家からの余り物ばかりだそうで、ここはまったくの私的な作業場であり、誰気兼ねなく過ごせる場所なのだという。

「ここに来るのは気の置けない人ばかりですからね、まあ、後は仕事をするだけで」

「ありがとうございます、そんなところにお招き頂いて」

実際鈴美は名誉に感じていた。枕必はそれに対して鷹揚な感じだった。鈴美の言葉をそのままに受け取り、さもありなんという態度だったが、それは日頃から集めてきた名声が彼を慣れさせたものであろう。

「いやしかしまあ、男やもめの気楽さですよ」

この庵で寝泊まりもし、食事もするのだと枕必は言い、茶をすすった。

「どうぞ、飲んで下さい」

茶に手をつけない鈴美に枕必は促す。

「はあ、頂きます」

それまで両手を膝に揃えていた鈴美は、それでようやく茶を飲んだ。すっかり畏まっている彼女に対して、相変わらず枕必は話の道を付けるのが上手く、この日も一人でしゃべった。

「実は茶室もあるんですがね、使ったことが無くて、今じゃ布団が敷きっぱなしなんですよ」

その日は結局他愛もない話に明け暮れ、鈴美は帰宅した。次回この庵を訪れる約束を交わして。


<つづく>



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