*
「さあ、飛び入り参加の挑戦者さん、いよいよ初アナルです!」
鎌先のアナウンスが室内に響く。
「おお、おお、とうとう家族でヤるってか」
缶ビールを煽りながら、テレビを見つめる小林。その隣で腕組みしている島田は、
「(来るところまで来たな……)」
と、感慨深げに唸った。ざまあみろ、などという気持ちはとうになく、恨みが自分の手を離れて独り歩きしていくのを遠くから見守っているような不思議な感覚。
「どんな気持ちなんだろうな」
浩樹は佳彦の内心を推し測り、次いで傍の友人に問うた。
「お前出来る? 親父と3P」
「は? 出来るわけねえじゃん。気持ち悪い」
竜二はチキンナゲットをかじりながら、吐き捨てるように答えた。心からの意見だった。
佳彦の同級生二人も全く同じ考えである。彼らにとって、この数奇な運命をたどる親子の心情は、あまりにも想像の枠を超えていた。
*
「こういうのも“親子丼”っていうのかな」
控え室から袖の方へ身を乗り出しながら、ギラギラした目を舞台へ向ける高橋。
後ろにいる矢板は、その異様な興奮ぶりにやや距離を置きながら、黙って成り行きを見つめていた。
彼らが窺い見る先で、金光が今にも結合しようとしている。ガニ股になって腰を落とし、手で位置を調整しながら。
「(狂ってる)」
有紀は寒気を感じていた。夫婦の営みが気持ちよかったことなど一度もないが、ここまで嫌悪感を覚えたこともなかった。
「(気持ち悪い)」
妻と知らず、また向かい合うのが我が子とも知らずに挟み撃ちし、妻の肛門で初めての性交を試みようとする夫。父の目の前で母を犯し、あまつさえ父と共同でそれをまだ続けようとする息子。夫と息子と同時に性交しようとする妻であり母でもある己。そして、それらを仕組み、鑑賞しようとする悪趣味な連中……
この異常すぎる状況に、マスクの下は顔面蒼白。これまで蓄積されてきた淫肉の火照りもどこへやら、冷や水を浴びせられたように呆然となる。
そこへ、金光が押し込んできたものだ。
「(は、は、入ってくる)」
ブヨッとした輪郭の太いモノが、便よろしく穴を塞ぐ。その感覚は性というよりもっと生理的な感じだった。今日今までされてきた時は、どんなに不本意でもあくまで性の一環として捉えられたものだが、今度のは決定的に何か違う。夫と妻という唯一許された関係でありながら、それが返って不自然さを生じ、特別な痴情を遮断している状態。
有紀は口枷の下でいの字に口を結び、奥歯を噛み締めた。ただただこの気色の悪さ、狂気の悪夢に耐えるのみだった。一体こんな所業の何が面白いのか、男らの愉しみ方がさっぱり分からない。これならただの輪姦の方がマシだ、などという極端な考えもチラリと浮かんだ。
「どうですか、初体験のご感想は?」
全部入った頃合いを見すまして、司会者がインタビューを始める。
「ん……キツいな」
問われた方は素直な感想を述べた。彼の陰茎はズルズルと押し込まれ、そのまま根元まで埋まっていた。
「でも、立派にマンコになってるでしょう?」
「そう、だな」
異存はない。確かに彼の基準からいっても性具として申し分なかった。
鎌先の視界を、舞台袖から覗く高橋の顔が一瞬かすめる。その喜色満面を見て、彼はふと思いついて言った。
「どうです? 奥さんじゃあ出来ないでしょう?」
彼個人に金光への思い入れはないが、寝取られ夫をだしに使うのは、趣味として好ましい演出だったのだ。
「あ、カミさん? ないない! ヤるわけない!」
「どうです、これを機に、今後奥さんも開発されてみては?」
「いやあ、いいよ、アレは。面倒だ」
鎌先のこの趣向は高橋にとって大当たりだった。もう有頂天になって小躍りしている。
「(バカだ、アイツ! 今ヤッてんのが嫁だろうが。“ヤるわけない”だって。ソイツもうヤりまくってんだよ! 何本もチンポぶっ込まれて、ケツの穴ガバガバなんだよ。あっ、そうか、ガバガバだから分かんないのか。ガバガバにされた嫁のケツ見るの初めてだもんな)」
目の縁に涙さえ溜めて笑っている。もし声を出せる環境だったら、大笑いして喝采を送っていただろう。
金光は本腰を入れて動かし始める。穴の中で肉壁に握られ、彼の肉も引き締まりだした。
硬くなるのは女体でもすぐに分かる。
「(こいつは何を考えて……)」
妻の正体にも気づかず、ということは他所の女だと思って、それも初めてヤるという肛門性交で勃起。愛人がいることは先刻承知であるが、ここまで見下げ果てた変態だとは思わなかった。有紀は金光を、あくまでも性欲旺盛な中年男位の認識でしか見ていなかったのだ。バイタリティ溢れる実業家によくいるタイプと、彼女の中でなんとなくカテゴライズされる程度の。そもそも、彼自体に興味がないということもあったが。
輪をかけて意外なことには、勃起しているのに全然性的興奮に結びつかない。決して背徳感で興奮を覚えてきたつもりはなかったが、ほかの男だったら体が反応していた。無理やりでも発情させられてきた。ヤられていることは同じなのに、この結果の差はなぜだろう。有紀には答えを出せない。ただ言えることは、冷めていく一方ということ。とにかく不愉快。
夫は彼女と反比例式に激しさを増していく。急性不感症に罹った尻穴性器に己の欲棒を突き立て、むさぼるように独りよがりに愉しむ。
一方、それと反対に失速していたのが息子の佳彦だ。少年は父と相対した瞬間から戦意を喪失していた。
「(いつまで入れてんだ)」
有紀がイライラと見下すのも無理はなく、硬直も溶け始め、なぜ挿入を継続しているのかも分からない状況。
もうこのまま終わってしまうのか、しかし、そう思われた時、彼を司会者のある一言が救った。
「さあ、新挑戦者、ガンガンアナルを攻めておりますが、対するミゼットレスラーも負けてはいられません。ここは意地を見せてほしいところ。もうひと頑張りして、ヒカル嬢をイかせられるか。いや、イかせてくれ!」
ハッとして佳彦は顔を上げた。
「(そうだ、マンコは僕が入れてるんだ)」
その身に勇気が湧いてくる。父と取り合っている、これは勝負だ。対等の勝負だ。母の膣を攻め、アナルの父ではなく、自分がイかせるのだと。
「(お母さんは……お母さんは……)」
生まれて初めて父に立ち向かう。その時、少年の分身はこれまで以上に力み返っていた。負けられない戦いがそこにあった。
「(お母さんは、僕の女だ!!)」
息子は満を持して躍動を再開した。ちょっと押された父親も、すぐに立て直して腰を振る。間にいる母を、妻を、父と子は二人して、パコパコ、パコパコと突きまくった。
もはや涙を流して指差し笑うのは高橋。
「(スゲーよ、コイツら! 家族で3P二穴挿しとか。変態一家だな。マジで、頭おかしいだろ!)」
ただどんなに嘲笑されても、当人らは自覚がないから仕方ない。息子が必死で母を突き上げれば、父もアナルを突き下す。補助を買って出ている薮塚と花村は腕が痺れてきて互いに顔を見合わせ苦笑した。それに頓着することなく、親子は夢中で摩擦する。
「(まだだ、まだイくもんか! どうだ、お母さん! お父さんより気持ちいいんでしょ? 僕のオチンチンの方が、お父さんより気持ちいいでしょ?)」
「(よく締まるな……なるほど、確かにアナルも美味いもんだ)」
「(早く終われ。このキ チ ガ イ親子が!)」
家族三人、三者三様の思いが交錯する。
されるがままに親子間で弄ばれる有紀。その乳房に男達の手が伸びたのはほとんど同時だった。
「あ!」
「ん!」
父と子の手が乳の上でぶつかって、互いに声を上げる。だがどちらも引かず、奪い合うようにして両者はそれを揉みしだいた。父の手が子の上に重なる時もあれば、またその逆の時もある。
子の側にとってこれは重大な挑戦であったが、父の側では、それが鬱陶しいと思いこそすれ、さほど重要な案件ではなかった。それよりも、別な思い付きが彼の中で芽生え始めていた。
それは、背中越しに両の乳房を持ち上げた時だ。
「(この重量感、どこかで……)」
ズシリとくるそれは、ちょっと容易にはお目にかかれない程のボリュームであったが、彼にとってはむしろ馴染み深いものであった。
〈つづく〉
〈現在の位置関係〉
▼大広間
有紀、金光、花村、猪瀬、舛添、村本、藪塚、前原、鎌先、佳彦、袋田
▼控え室
矢板、高橋
▼中広間
服部、羽根沢、森岳、沼尻、浪岡、松倉、七里川、慶介、浩樹、竜二、小林、島田、鈴木、比嘉、祥吾、雅也
▼帰宅
俊之、克弘、恵太、優斗、豊、聡、翼、清美、瑞穂
〈輪姦記録〉
挿入男根:33本
射精回数:94発
(膣56・口16・尻14・乳5・顔1・髪1・外1)
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