「さあ、ヒカルちゃん、完全に技が決まって逃げられない。オチンチン、入るか、入るか! どっちに入る」
司会者鎌先が気分を出して実況すれば、否応なしに緊張感が場にみなぎる。
そうして衆目が一か所に集中する中、とうとう、そしていともすんなりと挿入は実行された。
「おおっ!」
人々が妙な感動に包まれる前で、男根は深々と、一気に深々と肛門にめり込んでいった。
「ン、オゴ、オッフ……ッ!」
「入ったぁ! 入りました、アナルです。アナルに決まりました」
有紀が呻くのと、鎌先が叫ぶのとはほとんど同時だった。
男根は完全に勃起していた。それなのに、その太い肉の棒はいかにもスムーズに、一度もつかえることなく、本来狭いはずの入り口を通って侵入に成功していた。広げて入ったというより、広がっていたところに入った感じだろうとは、先程確認した穴の具合から、客達が連想した次第である。
「(どうだ、ブタ野郎)」
高橋は金光を冷酷に見下ろしつつ心で罵った。
「(オメーの自慢のカミさんは、ケツマンコもガバガバだぜ)」
彼の肉棒は垂直に昇り、玉袋の継ぎ目が挿入口の輪っかに隣接するまで埋まっていた。決して短小なサイズではない彼のもの、それが全部有紀の腹の中に収まる。
「ほお……エラい所に入れおったなあ」
金光は目を丸くして凝視している。自分にはそんな趣味はないし、一度も経験はない。見るのも初めてだったが、興味がなかった割には意外と見ていられた。同じ立場の見物仲間が居たせいもあっただろう。
他方の妻は、夫がこれなものだから、当然今日が初めてだった肛門性交。にもかかわらず、猛スピードで使い込んで、今やベテランの域にまで達していた。尻穴での浮気だけで十数人を数える。その安定感からか、見る者の目にはもはや、彼女の尻が自ら肉茎をしゃぶり込んでいったかのように映る程だった。
しかし、慣れるものではない。特に意識が一度はっきりしてしまった今は尚更。
「グ、フ、クウゥ……ッ!」
小刻みに震えながら有紀は啼いた。この場合、どこに力を込めていいかがいまだに分からない。口にボールをくわえさせられている分、奥歯も噛み締められない。おまけに見世物にされて、心理的圧迫は極度のものだ。妙な悪寒すら覚える。
「(マヌケ……ミジメ……)」
現状を表すそんな言葉が頭を巡る。分娩みたいな恰好で抱えられて、肛門に陰茎を入れられる姿を見せびらかしている。果たして、これはなんなのだろうか。男らは、しかし、夫も含め楽しんでいるらしい。
考察はここで中断される。なぜなら、現段階が最高位ではないからだ。男はもう一人控えている。この意味を輪姦慣れした女には理解出来るはずだった。
「おおっと、タッグパートナーも動いた。これは、ルール無用の挟み撃ちだ!」
第二の男、慶介が有紀と向かい合う。彼がその位置についてから、彼女の中に入るのに時間は要さなかった。
「ングギイヒイィーイー……ッ!」
大量のよだれが流れ落ちた。肛門と膣と両方で性交、彼女のもはや正位置。ただ、今でもやはり衝撃は大きく。
別穴に突き刺さる二本目の男根。よりスムーズな挿入。互いに慣れたものだ。後ろの男も前の男も、また受け入れる女さえも。慶介は高橋を手伝って、有紀の膝の裏辺りに腕を通した。
「おおっ、なんだ? 二本挿しか!」
「なんと! そんなこと、出来るのか」
口々に客達から驚き怪しむ声が上がる。
鎌先がそっと指示して、三人を横向きに立たせる。正面から合体した為、慶介の背で有紀が完全に隠れてしまっていたからだ。この配慮で客席から多少見易くはなった。女が持ち上げられ、その体内に二人の男根が入っている様子が。
それでも結合部はどうしても見づらい。それまで食い入るように見つめていた村本は、自然と前へ這い出ていた。
それを見て、鎌先が勧める。
「いいですよ、どうぞ、もっと近くで見て下さい」
許可を得て、村本は舞台に頭を乗せ、演者の股の下から覗き込んだ。
「スゲー……」
思わず本音がこぼれる。僅かに離れた穴二つに、大の男二人がそれぞれペニスをはめ込んでいる様は、空前絶後の迫力で彼の視界を圧倒した。殊に尻穴に入れた方は、子作り的に何の意味もない行為。人間が快楽の為にここまで非常識になれることの証左を示されたようだった。
村本の行動に続き、猪瀬、舛添も同じように覗き込みを始める。感想は同じだ。こんな状態を生で見たことは今までにないことだった。
「こんなこと、ほんとに出来るもんなんだねえ」
さも感心したらしく、まだ信じられないという風に猪瀬が首をひねっている。
「さあさあ、お兄さんも、どうか遠慮なく近くで見てやって下さいよ」
やや出遅れた金光に、鎌先が促す。
別に勿体つけていたわけではないが、金光は鷹揚に頷き、舛添が譲ってくれた場所から結合部を見上げてみる。当人は知ろうまいが、妻の足の間に入って、その寝取られ現場を確認しているわけだ。
高橋にはそれが愉快で仕方なかった。ここぞとばかりに腰を振り、彼の妻を辱めていく。夫が未経験のアナルファックを、まざまざと彼に見せつけてやる。妻は知らない男にその処女を奪われて、挙句何回も犯されまくってきた。そのせいで変わり果てた尻穴、無様に拡がった穴、ペニスの形に広がり、交尾専用に作り変えられた、いわば精液搾取器、男のおもちゃ、そんな肛門で今もまさに憎い男を喜ばせているのだ。
「(バカが、見てるよ。こいつ、カミさんがサンドイッチでマワされてるとこ、ほかの男にチンポ入れられてるマンコとアナル、見ながら笑ってやがるよ)」
興奮した彼の勃起はますますアナルを激しく摩擦する。すると、その反動でどこかから飛び散ったものであろう、それが何かは分らぬが、いわゆる飛沫が金光の顔面に降り注いだ。
「ブワッフ!」
素早く顔を手で拭って立ち上がる金光。
「きったねえなあ」
それは、妻の愛液であったかもしれないし、間男らの精液だったかもしれない。精液だったとして今までの誰のものかは判然としないし、あるいはいくつもの汁が混じりあったものかもしれない。いずれにせよ、我が妻と他人のセックスの産物が彼の顔を汚したのは確かである。
金光は辟易となりながら、その場を離れた。
「いやしかし、とんでもない女だ、ケツとマンコ、両方一遍にチンポぶっ込まれて」
呆れ顔で話しかけてくる金光に、前原は力ない笑みで返した。もっと前で見ることを勧められたが、彼はやんわりと断った。
一方、散々見慣れているはずなのに、花村と薮塚はかぶりつきで見に行っていた。
その眼前で、高橋が終焉を迎えた。極度の興奮状態のまま、彼の目は真っ直ぐに金光を射抜いている。
「(オラッ、ケツマンコにっ、中出しだっ、オラァッ! バカ亭主のバカ妻! ケツでチンポしゃぶるメスブタが!)」
いきり立ったペニスから子種汁がほとばしり、直腸を逆流する。憎悪のこもったそれは、心なしか粘り気が強く、しつこく内壁へまとわりつくいてはそこを焼くようで、
「ウッ、ンッ、ムエァ……ッ!」
有紀は下腹に力を込めて、それに耐えねばならず、するとその為に尻性器周りの筋肉が引き締まって、慶介の方を喜ばせてしまう結果となった。
「おおっと、アナルに中出しが決まりました。ヒカルちゃん、一人ヌき成功!」
司会者がアナウンスし、高橋の射精を知らしめる。リングアナ風に実況しているが、この場合、どちらが勝ちなのかは誰にも分からない。
彼のマイクパフォーマンスの後ろで、復讐を完了した高橋が、ズルリと分身を引き抜いた。
「ヒッ、ウッ」
栓を抜かれて、ビクビクッと痙攣する有紀。
金光はその様子と、高橋の濡れそぼった抜き身を見やりながら、膳の前へ戻ってグラスに酒を注いだ。傍に座る前原が自然と相手になる。前原は元の場所から動いていなかったのだ。すっかり無気力になったこの男は、思考を停止してこの宴の末席に連なっていた。
「とんだ変態女だな、ありゃ。あんな女がいるもんなんだなあ」
「そうですね……」
「ああいう商売をするしかないのかねえ。可哀そうな女かもしれん」
「……そうですね」
「いい体してんのになあ」
金光のあくまでもひと事な物言いにも心揺さぶられることなく、前原は相変わらず最低限度の作り笑いで応じた。省エネルギーな彼の返答に、しかし金光も特別不審がらない。それだけ信用している証だった。
「おっ、なんかまた出てきたなあ。あれ、さっきと違う奴だよな」
枝豆を口に運びながら金光が舞台を指し示す。そこには、明らかに先程よりも年を食っていそうな男が、やはり覆面姿で袖から出てきていた。
〈つづく〉
〈現在の位置関係〉
▼大広間
有紀、金光、花村、猪瀬、舛添、村本、藪塚、前原、鎌先、高橋、慶介
▼舞台袖
島田、浩樹
▼控室
竜二、鈴木、小林
▼廊下
佳彦、比嘉、服部、祥吾、雅也、矢板、羽根沢、森岳、沼尻、浪岡、松倉、七里川、袋田
▼帰宅
俊之、克弘、恵太、優斗、豊、聡、翼、清美、瑞穂
〈輪姦記録〉
挿入男根:30本
射精回数:90発
(膣53・口16・尻13・乳5・顔1・髪1・外1)
- 関連記事
-