*
「おっ、また動きだした」
画面の中の佳彦を見て、竜二が指をさす。
「やるねえ、“抜か二”か」
沼尻が言うと、森岳が、
「何、ヌカニって?」
と尋ねるので、それが“抜かずの二発”すなわち射精後も陰茎を抜き出すことなく次戦に挑む意であることを彼は説明した。
そのやり取りを聞きながら、服部がスルメを噛む。袋田が持ってきた菓子やつまみを食べながら、一同は雑談しつつテレビモニターを見つめていた。さっきまでは立ち見であったが、今は皆座っている。
「コラ!」
缶チューハイに手を伸ばそうとして、慶介が島田にたしなめられる。酒やジュースも用意されていた。煙草を吸っている者もある。飲み食いしながら和気あいあいと集っている様は、さながら地域の祭りか何かのようだった。
*
一向に鎮まる気配のない肉茎を、佳彦は前後に微動させて快楽を探る。腰はまだ上手く使えない。だが、手本は散々見てきたわけで、やりたいイメージはつかめている。現に動かしだすと気持ちいいわけで。
彼は夢中になって、眼下の蜜ツボをまさぐり続けた。集注するあまり、周りの状況も気にならない。
そんな彼の背後では、すったもんだの末、ようやっと金光が重い腰を上げようとしていた。
「ヤッたことありますよね、複数プレイ?」
「そりゃあ、ある」
村本の挑発的な問いかけに、金光は即答する。今は一対一のセックスしかしないし、それしか興味がないが、若い時分は舎弟と結託して、何人もの女を無理やり乱暴してきた。ちなみに、村本にも学生時代にそういう経験がある。
結局 金光は、なんだかんだでとうとう舞台に上がることになった。階段を上がりながら、ブツブツ言う。
「大体、プレイとかそういうチャラついた言い方じゃなくてだな、集団暴行とか、集団レイ――」
途中でふいに足元をふらつかせ、こけそうになる。咄嗟に鎌先が手を貸したが、彼はそれをうるさそうに振り払った。鎌先は肩をすくめて引き下がる。
「ウウー……ウ、ウ」
酒臭い息を吐きながらちょっと伸びをして、金光はノソリノソリと舞台中央へ向かった。
「イヨッ! 待ってました!」
客席の取り巻きが囃し立てると、
「うるせえっ!」
と言ってはにかみながら、右手を大きく掲げてから下ろした。
佳彦の隣へ立つ。そして、彼の接続部を覗き込むも、少年はやはり全く気付かない。
その間有紀は、努めて冷静に状況を見守っていた。彼女にとって、もはや佳彦を受け入れたこと以上の衝撃はないと思われた。と同時に、夫の登壇により、いよいよもって今日一連の悪夢に終止符が打たれるものと確信していた。
「(フッ……アハハ……これで終わり。何もかも終わり)」
心の中で自嘲しながら、彼女は静かにその時を待った。また、終わる時は呆気ないものだ、とも思った。
それよりも今の関心は、佳彦が金光によっていかなる制裁を受けるかにある。間違いなくなんらかの鉄槌は下るだろうが、その時の佳彦が見ものだと思った。この坊主ときたら異様なまでに父親を恐れているのだから。
暗い期待の高まりだけが、彼女の今の慰めだ。我が世界の崩壊に際して、もはやほかに何もない。夫――それは平生彼女が財布や金庫位にしか見なしていない物――が、どんな反応を示すかにも興味はあったが、もう想像するのは面倒だった。どうせもうすぐなるようになる。
「(みんな傷つけばいい!)」
家畜のように裸で縛られて、皆に交尾を見られて、しかも交尾相手が息子で、傍に夫も来て……そんな女の心の内は、茫漠たる荒野の如く荒れ果てていた。
「おい、ボウズ、そろそろ代われや」
金光が唐突に佳彦へだみ声を浴びせかける。“ドラマが始まった”と有紀は意地悪にほくそ笑んだ。一方、佳彦はこれでも無反応。そこで、金光がもう一度何か言おうとした時、村本が口を挟んだ。
「金光さん、後ろが空いてるじゃないですか」
「ん? 後ろ?」
言わずもがな、それは肛門のことだった。実は金光もそれは承知していた。知っていて、あえて“前”を選択したのだ。
「ア・ナ・ル!」
村本が指をさして念を押すように強く言う。その上で尋ねた。
「ヤッたことないんすか?」
「うん」
素直に頷く金光、この時ばかりは、いともあっさりと。彼は、汚らしいと思う肛門性交を、どうしてもやりたくなかったのである。
「てことは、アナル童貞なんすね?」
「いや、童貞っておかしいだろ……」
目下の者に自尊心を煽られて、金光はやや気色ばむ。
そのやり取りを見ていた舛添がまた申し出た。
「あのぉ、ヤらないんだったら、わたしに先ヤらせてもらえます?」
場を和ませようという意図もないではないが、やはり本音は早くしたいのである。
そんな彼に、ふと村本が問うた。
「舛添さんって、アナルヤッたことあるんすか?」
「おれ? あるある、もちろんある、好きよ」
答えを聞いて、村本が視線を移すと、それに応えるように猪瀬が自ら告白した。
「おれもあるよ」
直後に彼は、
「風俗だけど」
と付け足したが、それはこの際問題ではなかった。
追い打ちをかけるように、薮塚が口出しする。
「オレもありますよ! あと、あっちのオジサンも」
薮塚が親指を立てて指し示した先で、袋田が“言うな”みたいな顔をして手の平を上から下に振っている。
「ねえ、普通ありますよねえ」
村本が真顔で言うと、花村もウンウンと頷いていたが、これはウソである。彼はまだ経験がない。
「ウーム……」
あまりにも皆が経験者だと知らされて、遂に金光は黙ってしまった。すると、彼の不安を鋭く察した鎌先が、やんわりとフォローする。
「意外と汚くはないんですよ。特にヒカルちゃんの場合は事前にしっかりと洗浄していますし」
ここで鎌先は有紀の黒い洞穴に指を向けて断言した。
「それ、もう完全に性器ですよ」
舛添も追加で後押しする。
「アナルヤらせてくれる女なんて、みんなじゃないからなあ。貴重なもんですよ」
それを聞いて村本の放った次の一言が、結果的に金光の背中を押す決定打となった。
「奥さんじゃ出来ないことをヤるからいいんじゃないですか」
「ウーン……そうかあ?」
金光の重たい足が、有紀の背後へとゆっくり動き出す。
「(え……?)」
有紀は呆然として固まった。夫がすぐ真相に気付く展開しか、彼女は考えていなかった。
「(なに……? アナ……ル?)」
夫がアナル。ついぞ考えたこともなかった。彼女だって今日まで処女だった。それはとりもなおさず、彼が夫だったからでもあるわけで。
「ここにか……?」
ぽっかり空いた口を見下ろし、金光はベルトを緩める。鎌先がさりげなく遠巻きに後ろへ寄ったが、特に手伝うことはしなかった。さっきの二の舞はごめんである。それに、穴に入れるだけのこと、馬鹿でも出来るだろう。
やがて、金光はいちもつを取り出した。一応勃起していたが、まだ本調子ではなくブヨブヨしていた。その根元を握って、彼は覚悟を決める。
「よし!」
その時になって、佳彦はやっと視界にその存在を捉えた。彼にとり絶対的存在、恐怖の権化、父の姿を。
脇から支える薮塚と花村が、金光の入れやすいように有紀の角度を工夫する。何しろ、“前”の佳彦と親父とでは、かなりの身長差があり、“サンドイッチ”がしづらい。
彼らの気遣いに押されて、佳彦は少し後ろへよろめき後ずさった。途端に、脇の両名も姿勢を崩しそうになる。それを見て、金光が声を掛けた。
「おい、しっかり立てよ、ボウズ」
期せずして、まるで父親らしい物言いになった。
佳彦は思わず俯いて視線を逸らす。いつもとおんなじだ。気後れして逃げ出したくなる。先程まで愉しかったのが嘘のよう。ペニスも入っているのだか、なんだか分からなくなってきた。
他方、有紀は有紀でゾーッと薄ら寒い気持ちを禁じえなかった。
「(親子で……この人ら、親子で何してんの? 親子……よね?)」
彼女の尻の穴に、亀頭があてがわれる。
〈つづく〉
〈現在の位置関係〉
▼大広間
有紀、金光、花村、猪瀬、舛添、村本、藪塚、前原、鎌先、佳彦、袋田
▼控え室
矢板、高橋
▼中広間
服部、羽根沢、森岳、沼尻、浪岡、松倉、七里川、慶介、浩樹、竜二、小林、島田、鈴木、比嘉、祥吾、雅也
▼帰宅
俊之、克弘、恵太、優斗、豊、聡、翼、清美、瑞穂
〈輪姦記録〉
挿入男根:32本
射精回数:94発
(膣56・口16・尻14・乳5・顔1・髪1・外1)
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