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小説には、連続作品と一話完結作品があります。連続作品は、左「カテゴリ」の各作品名より一話から順番に読むことができます。また「目次」には、各作品の概要などをまとめた記事が集められています。

■連続作品
◆長編作品
「子宝混浴『湯けむ輪』~美肌効姦~」

◆中編作品
「大輪動会~友母姦戦記~」
「青き山、揺れる」 ▼「師匠のお筆」

◆オムニバス
「母を犯されて」

◆短編作品
「育てる夫」  ▼「最後の願い」  ▼「ママの枕」  ▼「ブラック&ワイフ」
「夏のおばさん」  ▼「二回り三回り年下男」  ▼「兄と妻」

■一話完結
「ふんどし締めて」
「旧居出し納め・新居出し初め」  ▼「牛方と嫁っこ」  ▼「ガンカケ」
「祭りの声にまぎれて」  ▼「シーコイコイコイ!」  ▼「サルオナ」  ▼「母の独白」
「童貞卒業式」 ▼「お昼寝おばさん」  ▼「上手くやりたい」 ▼「珍休さんと水あめ女」
「栗の花匂う人」「乳搾りの手コキ」 ▼「妻つき餅」 ▼「いたずらの入り口」
「学食のおばさん便器」 ▼「山姥今様」 ▼「おしっこ、ついてきて。」

作品一覧

「青き山、揺れる」(29)

男は入り口で停止することなく、ズカズカと中に入ってきた。今さらながらに慌てる祐子だが、そんな彼女から、

「待てよ」

と言いざま、彼はタオルをむしり取ってしまう。そうして彼女に向けて構えたのは、なんと携帯電話だった。

カシャッ! シャッター音が鳴る。

「スクープ! 顔射された女子アナ!」

男は言った。

「ちょ、ちょっと!」

焦って彼の方へ手を伸べた祐子だが、彼にさっとかわされ、その手をただ布団の上に落とす。

さっきまでの快感でいまだ夢うつつではありながら、何をされたのか、そしてそれがどれほど大変なことかはすぐに理解できた。なぜなら、彼がそういう挙動に出るのは、今が初めてではないからだ。

男はやはり努素毛部屋の弟子で、緑川(みどりかわ)という。大卒で入門し、序列は部屋で上から三番目、黄本と白木の間である。小兵な方で、年下の白木と並んでも見劣りするほどだ。

さてこの男、少々癖がある。

「白木にかけられたのかよ。あいつも好きだねえ」

緑川は笑いながら、続けてシャッターを切った。光の反射で、その眼鏡がキラリと光る。彼は普段眼鏡をかけているのだ。

「しかしよく顔に出させるよな。うわ、きったねえ」

彼が祐子にかける言葉、それはすべて嘲りの言葉だった。いつもそうだ。祐子にとって悩みの種である。

「やめて!」

彼女は叫んで、彼から携帯電話を取り上げようとする。しかし彼はひょいと逃げて、捕まりそうもない。今の彼女の緩慢な動きでは永遠に無理だろう。

と、ここで祐子は諦めて方針を転換した。とりあえず顔についた精液だけでも拭いてしまおうと。彼女は新しいタオルを取りに向かう。

しかしそれは緑川によって阻まれてしまった。彼は祐子の前に立ちはだかると、その両頬を片手でつかんでへこませ彼女の相好を歪め、さらにその様子を撮影する。

「すっげえ顔」

笑う彼。

祐子の頬の肉や唇は中央に盛り上がり、鼻を圧迫して上に押し上げる。屈辱的な境遇だ。だが、その屈辱はまだ序の口だった。

彼女が相手を振りほどこうともがき、それが難しいと知ると、精液だけでも手で取り去ろうと試みた時だ。

パチンッ! 急に左頬に衝撃が走った。ビンタだった。祐子はその反動でカッとなり、相手に立ち向かおうとする。すると、すぐさまもう一打、パチンッ! 再び左頬。

「静かにしろよ! 今撮ってんだろうが」

まるでレイプ犯のように冷徹な物言いの緑川だ。彼は撮影を続ける。そのモデルの頬は、手形に赤く染まっていた。力士のビンタといえば張り手も同然、加減はしたのだろうがかなりの衝撃ではあったろう。

祐子の目に、痛みと悔しさから涙がにじみだす。そうやってこみ上げる涙がまた悔しい。彼女の職場でいえば、緑川はまだADぐらいの年齢と格である。そんな男に体罰を受けて叱責されるなどあり得ない話だ。

だがどうしようもなかった。どうしようもないことは、これまでの経験から分かっていた。彼女にはトラウマがあった。


<つづく>




<目次>
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