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ショートオムニバス・シリーズ 『母を犯されて』
ケース5 母・唯(ゆい) 24歳 僕が5歳頃のことで、その人の顔すら思い出せないが、どうしても忘れられないエピソードがある。後々になって思い返してみる程、ちょっとモヤモヤする話だ。 彼はうちに住み込みで働きに来ていた従業員の一人で、当時まだ十代だったと思う。一番若かったこともあり、“カズ兄ちゃん”と呼んで僕はいっ時よく懐いていた。 ある朝、僕はかなり早起きをして、ふいに調理場へ下りてみた。おそらく、人の気配がしたから気になったのだろう。中を覗くとカズ兄が一人でいた。そして、僕に気が付くと慌てふためいた素振りをした。今までに見たことのない取り乱しようだった。 僕はカズ兄が動くよりも先にもう傍へ寄っていた。見ると、彼はギンギンに勃起したペニスを握りしめていた。ただ、その当時の僕には勃起とかオナニーなんて知識は全くなく、どうしてオチンチンを握っているのか分からなかった。 「何してるの?」 当然の質問だった。すると、彼はほとんど間髪入れずに答えた。 「朝ごはんの準備だよ」 台の上にはヨーグルトの器が乗っていた。その日の朝食当番はカズ兄だったのだ。 だが、僕が聞きたかったのは、もちろんそんなことではない。そんなことは彼だって百も承知だったと見え、多分この時咄嗟に、何かしらの方針を決めたのだろう。おおよそ次のようなことを言いだした。 特製のヨーグルトを作っている。それは、オチンチンから出るミルクを混ぜたもの。栄養たっぷりである。ただし、女の人にしか効果がない。女の人はオチンチンのミルクを飲むと元気になるのだ。お母さん(つまりは僕の母)は最近元気がない。こっそりと特製ヨーグルトを作って応援しているんだよ、と。 よくもまあいけしゃあしゃあとたわ言をほざいたものだが、その時の僕は妙に感心してしまった。よく分からないが魔法みたいな、秘術みたいなことが行われていることに、ちょっとわくわくしたぐらいだ。子 供なんてちょろいものである。 まず“オチンチンのミルク”なるものが想像つかない。するとカズ兄は、途中までやりかかっていたそれを目の前で見せつけてきた。既に我慢汁の垂れていた勃起を猛烈にしごく。間もなくして例の白濁液が漏れ出すと、彼は手際よくその迸りをグラスの中へ受けた。多分だが、その日が初めてではなかったのだろうなあ。 僕は僕で、きっと食い入るようにその光景を見つめていたに違いない。まずオチンチンからオ シッコ以外のものが出ることに驚いた。百聞は一見に如かず。これでカズ兄の立派な行いが証明されたわけだ。 それにしても良いことを聞いた、と思った。母のためになるのなら自分もやりたい。それに神秘の技法を実際やってみたい。僕はすぐさま自分もパンツを下ろして、見よう見まねでペニスをしごいてみた。生まれて初めてのシコシコだった。 カズ兄は笑って、 「大人にならないと出ないんだよ」 と諭した。それを聞かされて、僕はガッカリと肩を下ろした。 だが、師はこうも語った。 「毎日シコシコしていれば、早く出るようになるかもね」 僕はにわかに希望を見出し、手淫を続けることにした。するとカズ兄も、あるいは手本を見せるためか、そうでないとしたらどういう神経か分からないが、僕のしごくのを見ながら、再び膨張し出したペニスを摩擦し始めた。二人向かい合って、しばしシコシコとやる。 程なくして二発目が注がれた。さっきと同様に、一滴余さずグラスに入る。 「スゲー」 とかなんとか、僕は言ったんじゃないだろうか。それも憧れの目で。 その朝、素知らぬ顔でカズ兄は自分の精液を混ぜ込んだヨーグルトを母に配膳した。見た目に違いは分からないが、目印はちゃんとつけていたものと見える。僕は口元がほころぶのをこらえつつ、それを完食する母を見ていた。母の舌にはなんの違和感もないらしかった。うちで紅一点だった若かりし母は、こうして不良従業員のオナペットにされ、吐きだした劣情をまんまと飲まされたのである。 僕はよっぽど、 「いつもと違う?」 などと問いただしたかったのだが、あらかじめカズ兄から注意されていたので約束を守って黙っていた。いわく、 「このことは誰にも話してはいけないよ。効果がなくなるから」 と。それは大変だと、僕は馬鹿正直に受け取った。冷静に考えれば、僕に知られてしまった時点で効果が切れているんじゃないかと思うが、そう指摘されたらされたで、また適当な誤魔化しを考え付いたのかもしれない。もっとも、それを確認する機会はもう来なかった。 というのも、彼はその後間もなくして姿を消したからだ。詳しくは聞かないが、やはり辞めさせられたようである。 僕はヨーグルトの一件以来、しょっちゅうオチンチンをいじっていた。何しろ早くミルクを出したくて仕方がなかったからだ。それを恥ずかしい事とも知らなかったから、特に人目をはばからずにやっていた。当然、すぐに母の目に付いた。 訳も分からないまま叱責され、僕は泣きながらカズ兄の教えを吐いた。母は父に報告したに違いない。カズ兄が居なくなったのはその直後だ。 僕がそれ以上怒られることはなかったが、母はカズ兄の件を「誰にも言うな」と念を押してきた。大人はすぐに口止めしたがるが、やむを得ない事情あってのこと。母も母で複雑な心境であったのだろう。もちろんこの話を母とその後したことはない。それに大人になるにつれて色々な意味が繋がってくると、僕自身なんとも言えない気持ちになる。 さて、あの人は今どこでナニをしているやら。 〈おわり〉
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