痛みはない。本当はあるのだろうが、それ以上の心的衝撃が大きすぎて、意識下に上ってこない。
あれから恐らく数時間、朝からずっと犯され続けている。日が落ちかかって、今は夕方頃か。陽子は時計を探そうともしなかった。正確な時刻を知るのが、なんだか怖かったからである。
彼は一体何度射精したのだろうか。この長時間だ、一度もということはあるまい。最初の一撃で気を失った彼女には、正確な所がまるで分からない。そもそも、セックスの回数はいつを基準に考えるのだかも分からなくなってきた。
「(終わりは……ない……?)」
レイプの終わりはいつだろう。死ぬまでだろうか。やはり殺されるのだろうか。既に死を意識した身でありながら、今もこうして生き永らえていることに、陽子はむしろ不条理を感じた。
貞操を奪われても、即そこで人生が終わるわけではない。当たり前のようにその続きがある。体は依然ペニスを受け入れ続け、人形のようにひたすらその用に供している。
性器は今どうなっているのだろうか。これだけ乱暴に酷使されて、無事でいるはずがない。丸太のような太さ、鉄のような硬さでドスドス殴られているのだ。もう破壊されつくしてしまったのではないだろうか。腕も足も動かないのは、折られた記憶はなくとも、やはり同じく破壊されてしまったのに違いない。陽子はそれを目の当たりにするのが怖くて、確かめられないでいた。
彼女はただ天井を見ている。全てを諦めて、されるがままになっている。もう犯されてしまったのだ、これ以上抵抗して何を得ることがあるだろうかと。あまつさえ、死を覚悟しているのである。
だが、ロクンはただの屍を相手にしてきたわけではない。
「ア……アァ……」
陽子はギョッとした。その耳に聞き慣れない声が聞こえたからだ。それは喉の奥から絞り出すような不気味な声。そして、そこに入り混じる激しい息遣い。彼女はすぐに気付いた。だが認めたくなかった。それが自分の喉から漏れていることを。
「ォア……ガハアァ……」
獣との営みの中で、自身獣になったのか。相手の野蛮さに呼応するように野生の雄叫びが漏れる。体内の肉棒のうずきに同調し、まるで呼吸をするように反射的に出ている、それは音だ。
「(ハハ……何これ……)」
訳の分からぬ音まで出すようになって、陽子は自虐的に笑った。他人事のようだ。もはや自分の体とは思えない。それほど、肉体は変身していた。
今しも、亀頭型に膨らんだ子宮が、胎内の脈動と同化してピクピクとうずく。赤ん坊よろしく、母の室内を占拠したロクンだ。
「グゥッ……ィヒ……ッ!」
うずきに合わせて腹筋が収縮し、陽子の背中は跳ねた。すると、動かぬはずの腕が上がり、相手の肋骨にしがみつく。それは、彼を押しとどめようというのではない。ただ、耐える為のものだ。
ロクンは構わずに腰を使う。引き出したかと思えば、根元まで押し込む。本能の求めるまま、ひたすら自分本位に陽子を使ってペニスをしごく。その下腹部の縮れ毛には、白濁した粘液がまつわりついていた。
「ハア……ッ! アゥフ……ッ!」
陽子の目玉が裏返った。またぞろ動かぬはずだった足が持ち上がり、かかとを相手の腿の裏に引っかける。
慣れというものは神秘的だ。あれほどの巨大さを頭の先から尻尾まで、彼女の穴はすっぽりと包みこんでいた。つまりは、そういう風にできている。易々と壊れたりはしないのだ。
「ヘ……デェ……ッ!」
あの世に逝ったように人としての尊厳を忘れた顔で、彼女はよだれを垂らして乱れた。頭を占めるのは、あの日見た男根の像のみ。あの巨大さ、雄々しさがそのまま体内の全てに充満している。一分の隙もなく産道を占領している巨根。その所為で、まるで女体そのものが男根になったようにすら感じられる。亀頭が上昇すれば上へ、下降すれば下へ、右むけば右、左むけば左、陽子はもうロクンの自由自在だ。
「(どうなるの……これ……)」
慣れは意識下にも及ぶ。肉体改造に伴って次第に気を失う時間が短くなっていく。すると同時に、体の奥から未知なる衝動の湧き起ってくるのを感じた。痛みではないジンジンする響き。彼女は知るまいが、陰茎をくるむ潤滑油は刻々と増えていた。
「アウェ……グァウブゥ……ッ!」
自分が正気かどうかさえ分からない。陽子はただ、これも壊れた肉体の作用と結論づけるのがやっとだった。女体の真実を彼女はまだ知らない。
だが、これが今日初めての感覚でないことには薄々気づいていた。気を失ったり失わなかったり、その途切れ途切れのまどろみの中で、彼女は強制的に教育されてきた。それは、女性の成長過程、"女"へと成熟する通過儀礼だった。
「(マ、タ、ク、ル……!)」
この日一日、ただ一度の巨人の進撃で、彼女は女として目覚めたのだった。
「ンハアアアァー……ッ!」
爽快なまでの絶叫が、あらゆる艱難を洗い流してこだました。
〈つづく〉
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