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小説には、連続作品と一話完結作品があります。連続作品は、左「カテゴリ」の各作品名より一話から順番に読むことができます。また「目次」には、各作品の概要などをまとめた記事が集められています。

■連続作品
◆長編作品
「子宝混浴『湯けむ輪』~美肌効姦~」

◆中編作品
「大輪動会~友母姦戦記~」
「青き山、揺れる」 ▼「師匠のお筆」

◆オムニバス
「母を犯されて」

◆短編作品
「育てる夫」  ▼「最後の願い」  ▼「ママの枕」  ▼「ブラック&ワイフ」
「夏のおばさん」  ▼「二回り三回り年下男」  ▼「兄と妻」

■一話完結
「ふんどし締めて」
「旧居出し納め・新居出し初め」  ▼「牛方と嫁っこ」  ▼「ガンカケ」
「祭りの声にまぎれて」  ▼「シーコイコイコイ!」  ▼「サルオナ」  ▼「母の独白」
「童貞卒業式」 ▼「お昼寝おばさん」  ▼「上手くやりたい」 ▼「珍休さんと水あめ女」
「栗の花匂う人」「乳搾りの手コキ」 ▼「妻つき餅」 ▼「いたずらの入り口」
「学食のおばさん便器」 ▼「山姥今様」 ▼「おしっこ、ついてきて。」

作品一覧

ブラック&ワイフ(4)同情

風呂での一件は、遂に夫へ報告せずにしまった。というより、いつしか当初の衝撃も恐怖も薄れゆき、"一件"と呼ぶ程でもないという気になっていた。

ロクンは相変わらず寡黙であり素朴である。何を考えているか分からない、というより、何も考えていないのかもしれない。ただ自然に逆らうことなく、本能的に生きているようだ。

彼の日課は大学へ通うことである。もっとも、講義の時間はバラバラであるから、家を出る時刻は日によって違う。ほとんど一日中部屋に閉じこもっている日もある。そしてまた、講義が終われば真っ直ぐに帰ってくる。繰り返されるのは家と大学の往復のみ。

「サークルとか入ってみないの?」

陽子は聞いてみる。しかし、ロクンは黙りこくって答えない。

「バイトは……」

彼女は聞こうとしてやめた。彼にはハードルが高いのだろう。この口数の少なさ、ただでさえ不得手な日本語、異国の地で……。

「(異国の地……)」

陽子はハッとした。

「(そうか、そうだよね)」

どうして今まで気づかなかったのかと恥じ入った。単純に考えて、まだ年端もいかない男の子が一人遠い外国へやってきて、それは心細いこともあるだろうと。今まで自分のことや息子のことばかり考えて、こんな初歩的な心配りも忘れていたと。

「(どうかしてたわ)」

彼女はクスリと笑った。それは自嘲じみたものではなく、晴れやかなものだった。

その日から陽子は改まった。カデラマの郷土料理を調べて作ってみたり、息子と共に外へ連れ出してみたり。積極的にバガンマ語で話しかけもした。上辺の関わりではなく、お節介な程にだ。

「順調か、ロッくんの方は」

熱心にパソコン・モニタを睨む妻の肩に手を置きながら、夫が尋ねた。近頃の妻の入れ込みようは、彼も承知するところだった。

陽子は黙って彼の手を払いのけた。曖昧に言葉を濁しながら画面を見つめ続ける。茶化されているようで気分が悪かった。ただそれも無理からぬことではある。

「なあ……それよりさあ……」

夫は再度妻の肩に手を置いた。熱っぽく重い手だった。その手が、両肩から鎖骨の方へ移動する。

「やめてよ……」

陽子はぼそりと言った。滑り降りていた手が止まる。

「駄目か? 今日も……」

夫は寂しげに尋ねた。妻は物憂げに答えた。

「忙しいの……」

それを聞くと、夫は仕方がないという風にすごすごと一人ベッドへ去って行く。いやにあっさりとしていた。毎度のことだからである。

「(だから男って……)」

陽子は意固地になってマウスをカチカチとやった。カデラマのことをまた調べている。久しぶりに出来た仕事なのだ。彼女は生気を取り戻していた。この生気の前に、性愛は不要だった。

いや、そもそもそんなもの元から必要ないと思っている。夫との営みは久しく無い。静志を産んでからは一層減っている。セックスなんて不毛だ。子供を得た今は余計に確信していた。

「そんなことより」

気を取り直して、陽子は明日のことを考え出す。こんな前向きな気持ちは、まるで学生時代のようだった。ロクンも彼女に感化されて少しずつ前向きになっている。彼女はそう感じていた。

が、それが独りよがりだったことは、すぐに明らかとなった。翌朝、陽子はロクンにレイプされた――。


〈つづく〉


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[2013/11/09 22:00] | 「ブラック&ワイフ」 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
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