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なお、掲載している小説はすべて虚構であり、実在の人物・団体等とは一切の関係がございません。

    
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小説には、連続作品と一話完結作品があります。連続作品は、左「カテゴリ」の各作品名より一話から順番に読むことができます。また「目次」には、各作品の概要などをまとめた記事が集められています。

■連続作品
◆長編作品
「子宝混浴『湯けむ輪』~美肌効姦~」

◆中編作品
「大輪動会~友母姦戦記~」
「青き山、揺れる」 ▼「師匠のお筆」

◆オムニバス
「母を犯されて」

◆短編作品
「育てる夫」  ▼「最後の願い」  ▼「ママの枕」  ▼「ブラック&ワイフ」
「夏のおばさん」  ▼「二回り三回り年下男」  ▼「兄と妻」

■一話完結
「ふんどし締めて」
「旧居出し納め・新居出し初め」  ▼「牛方と嫁っこ」  ▼「ガンカケ」
「祭りの声にまぎれて」  ▼「シーコイコイコイ!」  ▼「サルオナ」  ▼「母の独白」
「童貞卒業式」 ▼「お昼寝おばさん」  ▼「上手くやりたい」 ▼「珍休さんと水あめ女」
「栗の花匂う人」「乳搾りの手コキ」 ▼「妻つき餅」 ▼「いたずらの入り口」
「学食のおばさん便器」 ▼「山姥今様」 ▼「おしっこ、ついてきて。」

作品一覧

湯けむ輪(47) 23:44

子宝混浴
『湯けむ
~美肌効


こだからこんよく
ゆけむりん
びはだこうかん






――午後十一時四十四分


長身の男は、そう言ってしまってからにわかに声を落とし、あからさまに噂の対象を慮るような調子を取り繕いつつもなお、

「今日泊まりに来たお客さんっすよ」

と念を押すように言った。

そんなことは分かっているという風に、彼の上司らしき男はじれったそうに小刻みにうなずく。

そのうるさそうなしぐさを見ても、興奮した部下は、己の手柄を認めさせたいとばかりに自分の持つわずかな情報を重ねて披露する。

「今日、確かにバスに乗せましたよ」

そう話す彼は、これなん確かに、倫子達一行を駅まで迎えに来たバスの運転手であった。連れと同じ袢纏を着用しており、彼はここの従業員にしてバスの送迎をも担当する者なのである。その胸に光るネームプレートには、藪塚(やぶつか)と記されていた。

藪塚は、相手から予期したほどの感動が返って来ぬことに些か不満らしく、さらに言葉を足そうと口を開いた。が、それは相手の男に遮られて果たせなかった。

「お、お客さん」

男は緊張した笑い顔を作って、倫子に呼びかけた。膝がしらに手をついて、彼女の方に上体を折る。と、前に垂れ下った袢纏の胸にはやはりネームプレート。そこには袋田(ふくろだ)と書いてあった。

彼の呼びかけに、倫子は答えない。というより、答えられない。これまで長々の非日常行為も自分を諦めることでやり過ごしてきた彼女であったが、それは本来の自分と今そこにいる自分とが一致しないために危うくも成立させられた虚構であった。

ところが、今度の相手はその本来の自分と今の自分とを結び付けられる人間なのである。これは、今までとは大いに勝手の違うことであった。倫子は進退窮まった心境で、とっさにはもうどう対応していいか分からなかったのである。

「大丈夫ですか」

倫子が反応をせぬので、袋田は彼女の左肩をつかんで軽く揺さぶった。

その手の触れた瞬間、ビクリと倫子は思わず震えた。だが、それだけで、まだ人間らしい対応を返すことはできなかった。彼女はただ、その肩に置かれた手の温もりから彼の属している平凡な日常に思いを馳せ、それと同等に接することができた昼間の我が身を懐かしく思い出すだけだった。まるでそれが、遠い日の思い出のように。

「お客さん!」

袋田は、今度は右肩をもつかんで揺さぶりかける。それにつれ、肩と地続きの出っ張った脂肪が軽く波打った。

「フーム……」

彼はため息交じりに低く呻って、相棒の方を振り返った。

相棒は、慌ててそれを見返して、

「どうしましょうか」

とでも言いたげな表情を作る。彼の眼は袋田と視線を合わせるまで、揺れる脂肪に釘付けだったのである。その後も彼の視線は、袋田が視線を外すや否や、すかさず元の位置へと下りた。彼のズボンの前は、もっこりと盛り上がっていた。

他方、袋田の股間にも山はできていた。男とはこうした時、どうしたらいいか、よりも、どうしたいか、の方に頭を占拠される生き物である。

この時倫子は、たとえ確認しなくても、彼らがどうなっているか分かっていた。先ほど来のいやというほどの経験のなさせる技であった。

本当に、もし性の奴隷というものがあるのなら、今日の倫子がまさにそれである。ほんのわずかの時間のうちに、一生かかっても経験することのなかったであろう人数の男達と性交してきた彼女だ。今までの人生で体験してきた人数をはるかに上回る、まして四十代以降のこれからの人生では到底伸びる見込みのなかった数である。

驚くべきは、彼女が売春婦ではなく、一介の主婦である点だ。ただの主婦が、二十本を超える男根と怒涛のごとく立て続けに交尾させられ、己の意思とは無関係にひたすら種付けされてきたのだから、当人の衝撃たるやひとしおである。そういう意味では売春婦よりもひどいと言わねばならない。

そういう境涯に落ちた者の心境を、一体誰が想像しうるであろうか。際限のない男のリビドーをダイレクトにぶつけられてその相手をさせられ、みじめにも無理やり欲情させられ性感を開発され、果ては愛娘よりも年下の全くの子供とも子作りを行って衆人環視の中オーガズムを曝した女の心境を。

果たして、そういう境遇に至りなば、倫子は完全に男という生き物の本質を悟りきったのであった。奴隷には奴隷根性というものがある。しからば、性奴隷と化した彼女のものは、差し詰め性奴隷根性とでも呼ぶべきであろうか。息をするように絶え間なく男の性欲にさらされ続けた女の、それはまるで使命感のようなものであった。ペニスの僕というロールプレイに、彼女は覚醒していたのである。

実は、だからこそ彼女は声を上げなかったのだ。例えば旅館の人間である袋田らに、恥を忍んでも助けを求めるという選択肢だってありえたのだが、彼女の脳裏にはそういう可能性が全く欠如していた。虚栄心のためではない。また、困惑のせいばかりでもない。その真相は、すっかり叩き込まれてしまった性奴隷根性の故なのであった。

倫子はそのことを自覚してはいない。ただ今までのことが身内に露見し、日常が崩壊するのを恐れるばかりだ。だが実は、その内心にこういう動きがあったのである。

そうとは知らない男達、股間にわだかまりを抱えつつも、恐る恐ると倫子を抱き起こしにかかった。このままここに放置してもおけないのである。それはこの旅館の人間としての職務であった。

袋田が決めたのは、とりあえず大浴場に連れていくことであった。倫子の体は、あまりにも“事後”の様相を呈し過ぎていた。彼女としてはそれをきれいにしたかろうと、彼は気をまわしたのである。もっとも、最前に宮浜らとの行為を見、その後彼らが倫子をこの場に放置したことを知っている袋田が、どの程度真面目に彼女の立場を考えていたかは疑問であったが。

ところで、大浴場と言えば先客がいるのである。平常ならば時間が時間だけにありえぬこととて、袋田らには予期できぬのも無理はなかったが、倫子の身の上に常軌を逸した事件が起こっているのと同様、やはり彼女に関連して、浴場には異様な闇が待ち設けているはずなのである。今晩は、この旅館そのものが異常なのだ。


<つづく>



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