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小説には、連続作品と一話完結作品があります。連続作品は、左「カテゴリ」の各作品名より一話から順番に読むことができます。また「目次」には、各作品の概要などをまとめた記事が集められています。

■連続作品
◆長編作品
「子宝混浴『湯けむ輪』~美肌効姦~」

◆中編作品
「大輪動会~友母姦戦記~」
「青き山、揺れる」 ▼「師匠のお筆」

◆オムニバス
「母を犯されて」

◆短編作品
「育てる夫」  ▼「最後の願い」  ▼「ママの枕」  ▼「ブラック&ワイフ」
「夏のおばさん」  ▼「二回り三回り年下男」  ▼「兄と妻」

■一話完結
「ふんどし締めて」
「旧居出し納め・新居出し初め」  ▼「牛方と嫁っこ」  ▼「ガンカケ」
「祭りの声にまぎれて」  ▼「シーコイコイコイ!」  ▼「サルオナ」  ▼「母の独白」
「童貞卒業式」 ▼「お昼寝おばさん」  ▼「上手くやりたい」 ▼「珍休さんと水あめ女」
「栗の花匂う人」「乳搾りの手コキ」 ▼「妻つき餅」 ▼「いたずらの入り口」
「学食のおばさん便器」 ▼「山姥今様」 ▼「おしっこ、ついてきて。」

作品一覧

「青き山、揺れる」(17)

とはいえ、祐子にとって、“初体験をする男”は初体験である。いざ二人きりで相対した時も、いきなりどうしていいのか分からなかった。彼は積極的に自ら挑みかかってこようとしないのである。そうした態度には、確かに未経験の者らしさが表れていた。

(ほんとにしたことないんだ。それにしても……)

祐子は不思議に思った。ここまでお膳立てされて、もう後はやるだけという許された状況におかれても、相手はただもじもじと戸惑うばかりである。彼女にはそんな男性は初めてだった。これが童貞の男子というものかと、彼女は新鮮な思いだった。

と同時に、自分としても何をどうしていいものやら見当つかなかった。相手はこれまでにないタイプである。今まで会ってきた男性たちは、皆向こうの方から仕掛けてきたものだ。そうしてセックスが始まるのである。祐子にとってセックスとは、男性が主導権を握るものだった。ところが、今はそうはいかない。相手は動かないのである。

(ええっと……)

祐子は困った。初体験だというから、もっとがっついてくるのかとイメージしていたのだが、全く違う。彼はこちらが動くのを待っているのだろうか、それとも?

(ひょっとして、別にしたくないんじゃ?)

そういう可能性だって否定できない。実はいづ美のいらぬお節介で、本人にその気はなかったのかもしれない。いや、もしかすると、やりたいのは山々だが、祐子がその対象ではなかった可能性だってある。いづ美が良かったのかもしれないし、どちらも嫌なのかもしれない。祐子は心細くなってきた。

またその推理は、彼女のプライドをちくりと傷つけるものであった。いづ美は確かにきれいだし憧れの女性だから、彼女に負けたとしても納得はいく。無論、彼にも好みはあるだろうから。

だが、自分だってそう捨てたものではないとの自負はある。仮にも女子アナである。テレビに出ている有名人の端くれである。自惚れているわけではないが、多少男性の興味を引く要素はあるはずだ。それを彼は否定するのだろうか。女子アナとしてのプレミアが、祐子にはないというのだろうか。

もっと言えば、女性としての魅力を祐子には感じないのかもしれない。これは彼女にとって恐るべきことだった。性的対象として見てもらえない女だということ、この期に及んでそれを認めるのは辛い。だが十分ありえる話だ。十代の彼に自分は年上過ぎる、それは確固たる事実である。下手すれば、二回りも歳の離れた女を抱くなんて、彼にとっては罰ゲームみたいなものなのかもしれない。

もちろん、年齢以前に彼の容貌の好みの問題もあろうが、若い彼とこうして男女として対面してみると、自分の歳とったことがひと際意識されるのだった。しかも、自分の方がすっかり乗り気になっていただけに、ショックも大きかった。彼女の心には、淫乱で強欲なおばさんが若いツバメに発情し、彼に無理やり抱いてくれと迫る情けない図が思い浮かんだ。

しかし、もしそうだとしても、もはやこのまま引き下がれるものではない。抱かれてもいいという状況に自分は既に踏み込んでいるのだ。それで抱かれなかったとなれば、それこそ女の恥である。女子アナとしての付加価値もゼロになる。そういうわけにはいかない。これはもうプライドの問題だ。

加えて、開き直る気持ちもあった、淫乱で強欲で何が悪いと。自分はしたいのだ。もう彼を相手と決めているのだ。だから欲望に素直に従おうと、相手が嫌がろうが、今日童貞を奪ってやろうと、祐子は決断した。

そんな彼女の心を励ますように、事前のいづ美の言葉が思い出される。

「しっかり“かわいがって”あげてね」

“かわいがり”とは、角界において、上の者が下の者に稽古をつけることをいう。この場合、先輩として祐子に白木の指導をせよということだ、女との相撲の取り方を。

祐子は、えいっとばかり気合いを入れ、思い切って彼に近づいていった。


<つづく>




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