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妄想の座敷牢羞恥の風ましゅまろくらぶ



小説には、連続作品と一話完結作品があります。連続作品は、左「カテゴリ」の各作品名より一話から順番に読むことができます。また「目次」には、各作品の概要などをまとめた記事が集められています。

■連続作品
◆長編作品
「子宝混浴『湯けむ輪』~美肌効姦~」

◆中編作品
「大輪動会~友母姦戦記~」
「青き山、揺れる」 ▼「師匠のお筆」

◆オムニバス
「母を犯されて」

◆短編作品
「育てる夫」  ▼「最後の願い」  ▼「ママの枕」  ▼「ブラック&ワイフ」
「夏のおばさん」  ▼「二回り三回り年下男」  ▼「兄と妻」

■一話完結
「ふんどし締めて」
「旧居出し納め・新居出し初め」  ▼「牛方と嫁っこ」  ▼「ガンカケ」
「祭りの声にまぎれて」  ▼「シーコイコイコイ!」  ▼「サルオナ」  ▼「母の独白」
「童貞卒業式」 ▼「お昼寝おばさん」  ▼「上手くやりたい」 ▼「珍休さんと水あめ女」
「栗の花匂う人」「乳搾りの手コキ」 ▼「妻つき餅」 ▼「いたずらの入り口」
「学食のおばさん便器」 ▼「山姥今様」 ▼「おしっこ、ついてきて。」

作品一覧

「青き山、揺れる」(16)

「……ちは」

そう挨拶らしき言葉を口にしながら、彼は部屋の中に入ってきた。“こんにちは”と言ったつもりらしかったが、その大部分を口の中で唱えるので、こちらにはよく聞き取れなかった。

その顔は無表情で、あまつさえボサボサの髪の毛、パンパンに張った頬などを見れば、まるで寝起きかと見まごうような姿であり、かつ機嫌が悪そうでもあった。

だが祐子はそれを懼れなかったし、彼に気を使おうとも思わなかった。一戦交えて既に性が爆発していた胸の内には勢いがあったので、たとえ相手がどんな男でも獲って食おうという腹づもりだったし、それに何より、彼の様子はいつもそんな感じだったからである。

もっと言えば、彼の年齢と立場が、祐子にそんな鷹揚な態度を許すのだった。

「こんにちは、白木君」

彼女は丁寧にはっきりと言った。その身は、先ほど来の汗をタオルでぬぐい、そこにあった浴衣を羽織っただけの急仕立てであるにもかかわらず、堂々とした威容を示していた。セックスを目的にここまで来て、つい今しがたまでも実際にペニスを入れられて悦び狂っていた女の癖にである。

だが相手にはそんな内幕は知る由もなかったようで、

「ど、どうも……」

と、彼は、祐子に声かけられて些か狼狽して態で、改めて首を前に出し加減で挨拶するのだった。その態度には、彼の若さと社会経験の少なさがにじみ出ていた。

彼、白木(しらき)は、ここ努素毛部屋で最も年少の弟子である。中学を出てすぐに入門し、それからまだ間もない。その体躯は、黄本にはさすがに及ばないとは言うものの、同世代の子と比べれば、縦も横もはるかに大きく、既に街を歩けば異彩を放つほどである。

しかし、どんなに立派な体格をしてふてぶてしい表情をしていても、やはり若さというのは隠しようがないもので、その態度や考え方には、まだまだ十代の子らしい幼さが垣間見えるのだった。はっきり言って、祐子から見ればまだ子供である。

とはいえ、彼のその大柄な肉体には食指を動かさずにはいられなかった。いくら子供といったって、彼ももう力士、世の大人と比較しても十分大きな体をしている。それに、これから益々発達するその過程の肉体でもある。祐子にとっては、それへの期待も含めて、美味しそうな肉であり、既に欲求の対象なのであった。

実際、彼女はもう以前に彼と肌を合わせていた――。


――初めて会った時、もうその頃には祐子は努素毛部屋と濃厚親密になっていたので、この部屋の勝手に通じているという意味では、彼女の方が彼より先輩であった。そういう面も踏まえてのことだろう、ある日、いづ美から祐子に依頼があった。

「今度入門してきた子なんだけど」

そう言って、彼女は白木の来歴を披露した。その上で、

「祐子さん、年下はお好み?」

そう尋ねてきた。祐子は正直に、特にどちらとも言えないと答えた。年齢で男性を限定する嗜好はあまりない。ただどちらかといえば、今まで年上と付き合ってきたことが多かった。

中には、妻子ある男性もいた。真面目な彼女ではあったが、その反動からか、時にそういう冒険に踏み切ってしまうこともあった。不器用なのである。そもそも、これまでいた恋人の数が決して多くない。基本的に、仕事人間の祐子なのである。

さて、いづ美が尋ねているのは、具体的に白木はどうか、ということであるが、年齢という条件だけで判断するならば、特に興味は湧かなかった。十代ど真ん中とくれば、とりあえず子供と認識し恋愛対象から除外してしまうものだ。しかし、こと力士の卵となれば、些か話は違ってくる。しかも、彼はもう中々にいい体をしているのである。

元来スポーツ好きな祐子としては、一生懸命にそれに打ち込んで汗を流している男子には好印象を持っているが、その場合、若い子であっても男としてそそられるものを感じることはあった。しかも白木は相撲をやっているわけで、体型的にも好みということになる。

と、そう考えた時、祐子はあることを思い出した。いづ美の、例の“役割”である。愛という名のもとに、彼女はもう彼に股を開いたのであろうか、彼はもうあの歳で、何も知らなそうな顔をして、既に女を知っているのだろうか、我ながら下劣な想像だとは思ったが、考えずにはいられなかった。

すると、ちょうどその問いに答えるように、いづ美がこんなことを言い出した。

「じゃ、“初めて”の男の子はどう?」

「え?」

祐子は聞き返す。とっさには意味が分からなかった。いづ美は続ける。

「まだ彼、経験がないのよ」

それは、先ほどの祐子の妄想を否定する内容だった。

「それでね、そういう子は、祐子さんどうかな、と思って」

どうと聞かれてもよく分からない。彼女が示唆する童貞というものについて、これまで深く考えたことがなかった。それがそんなに特別なものだとは知らなかったし、故に相手に対して重視したこともなかった。概して、男性側の事情を考慮してこなかった彼女である。

だが、今こうして妙にもったいつけて言われてみると、途端に興味深いものに感じられだすから不思議だ。それも、いづ美に言われてみると。

「もしよかったら、どうかしら? せっかくの機会だし」

祐子を誘惑するように彼女は言った。どうにも破廉恥な会話である。他人の童貞を勝手にやり取りする女二人だ。だがその後ろめたさに気づきつつ、いやむしろそのせいもあって、祐子の胸はドキドキと高鳴りだした。たちまち白木の株が彼女の中で急騰しだす。

その気持ちにダメを押すように、いづ美が言った。

「教えてあげてくれない? 彼に、初めてを」

とうとう祐子は、ぽっと頬を上気させて、その提案にうなずいた。


<つづく>




<目次>
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