おことわり
このブログには、エッチなことがたくさん書いてあります。まだ18歳になっていない人が見ていい所ではありません。今からこんな所を見ていると、将来ダメ人間になってしまいます。早くほかのページへ移動してください。 >googleでほかのページを検索する< なお、掲載している小説はすべて虚構であり、実在の人物・団体等とは一切の関係がございません。 |
お知らせ
「オナこもりの小説」は、エロ小説を気ままにアップしていくブログです。たまに、AV女優や、TVで見た巨乳のことなども書いています。左サイドにある「カテゴリ」から、それっぽい項目を選んでご覧ください。
小説には、連続作品と一話完結作品があります。連続作品は、左「カテゴリ」の各作品名より一話から順番に読むことができます。また「目次」には、各作品の概要などをまとめた記事が集められています。 ■連続作品 ◆長編作品 ▼「子宝混浴『湯けむ輪』~美肌効姦~」 ◆中編作品 ▼「大輪動会~友母姦戦記~」 ▼「青き山、揺れる」 ▼「師匠のお筆」 ◆オムニバス ▼「母を犯されて」 ◆短編作品 ▼「育てる夫」 ▼「最後の願い」 ▼「ママの枕」 ▼「ブラック&ワイフ」 ▼「夏のおばさん」 ▼「二回り三回り年下男」 ▼「兄と妻」 ■一話完結 ▼「ふんどし締めて」 ▼「旧居出し納め・新居出し初め」 ▼「牛方と嫁っこ」 ▼「ガンカケ」 ▼「祭りの声にまぎれて」 ▼「シーコイコイコイ!」 ▼「サルオナ」 ▼「母の独白」 ▼「童貞卒業式」 ▼「お昼寝おばさん」 ▼「上手くやりたい」 ▼「珍休さんと水あめ女」 ▼「栗の花匂う人」 ▼「乳搾りの手コキ」 ▼「妻つき餅」 ▼「いたずらの入り口」 ▼「学食のおばさん便器」 ▼「山姥今様」 ▼「おしっこ、ついてきて。」 ★作品一覧 |
子宝混浴 『湯けむ輪』 ~美肌効姦~ こだからこんよく ゆけむりん びはだこうかん ――午前零時四十分 次なる倫子の仕事は決まっている。彼女は運転席の方へと倒れ込むと、そこにある股間に顔をうずめていった。 「わ、危ないですよ」 ドライバーはそう言って、いかにも職務で手一杯な風を装って見せたが、その実期待満々であることは誰の目にも明らかであった。彼の名は浪岡(なみおか)と、助手席前のネームプレートには記してあった。 「こ、困りますよ……」 あくまで被害者の体を貫く彼の言葉をよそに、倫子は着々と作業を進めていく。後ろの席でやいやい言っている、渡瀬の指令に従ってである。間もなく現れたペニス。勃起していた。倫子は黙って唇をそれへかぶせていく。 「あ、危ないですから……」 浪岡はまた言った。倫子の乳房はギア類を押さえつける形になっており、確かに不安定この上なかった。しかも走行中に性交渉するというのだから、危険運転極まりない。 それについて渡瀬が、憶測で勝手なことを言う。 「いやあ、運ちゃんやったら慣れてるやろう。しょっちゅうこんなこと女にさせてんのちゃうん」 「あ、ありませんよ、そんなこと!」 浪岡は即座に否定した。 「うそやん? お金の代わりに体で払え、言うて、やらしいことしてんのちゃうのん」 「いや、ないですって」 渡瀬はなおもからかったが、やはり浪岡は真っ向からこれを退けた。いかにも酔っ払い客の言いそうな猥談ではあり、もしここに倫子がいなければ、ただ毒気のない話で済んだだろう。 だが実際には、猥褻そのものの行為を彼女が今まさに実行中なのである。こんなことは夫にもしたことがない。今日はそんなことばっかりだ。彼女が思いつきもしないこと、知らないことばかり。もちろんこの、運転中にフェラチオするなんてこともしかり。 浪岡ときたら、口では消極的なことを吹いていたくせに、その勃起たるや威勢隆々である。倫子は窮屈な姿勢で彼の腹の下に顔を寄せていたが、それの暴れん坊ぶりにはほとほと手を焼かされた。何しろ走行中の車内のことであるから、いかに些細な揺れとはいえ影響が甚大なのである。棒きれは己は気楽に快楽を要求するくせに憎々しいほどに安定せずグラグラ揺れるし、片や倫子も居場所が定まらないためにシートの端をつかみつつ肉棒をつかんでと右往左往の有様である。 ただ、その苦労も多少報われたことには、 「どや、奥さんおしゃぶり上手いやろ。気持ちエエやろ」 と渡瀬が問うたのに対して、 「はい」 と、浪岡が今度ばかりは素直に返答したことであった。 倫子の唇は、一層ぬめりを帯びて亀頭を締め上げていく。鼻息も荒く、乱れ髪を揺さぶって。肉棒はたちまちに全身濡れそぼった。初めてのことを初めての人にする、そういうことは確かに高揚感を生むものだ。今この瞬間、彼女は浪岡に従属し奉仕する心となったのであった。 その様を評して、別の観点から渡瀬が語る。 「えらい熱心にしゃぶっとるやないか。ほんまにマゾやで、この女」 顎でしゃくって、隣の藪塚を見る。藪塚もうなずき返す。 “マゾ”という単語の真意を、倫子ははっきりとは計りかねたが、それでもなぜかしっくりと自分に当てはまるように感じた。なんとなれば、渡瀬らが言うのだからそうに違いないとも思った。これだけひどい目に遭わされ続け、貶められ落ち切った底の底で、彼女は身分を確信したのである。いつぞやの境地はまだ最低ではなく、さっきの店で夫までも貶められ、すなわち彼女の日常に決別をさせられて、さらに下があることを悟らされたのであった。 改めて倫子は浪岡の下腹に頬を持たせかけながら、そそり立つ竿をうっとりと潤んだ瞳で見つめ、それを優しく握った手で慎重に上下に撫でさすった。粘液のおかげで、手はツルツルと滑る。 「そや、運ちゃん」 ふいに渡瀬が思いついて言った。 「さっきの話やけどな。これのタクシー代、こいつの体で払わすいうのはどうや」 それはなんと、最前の猥談で出た話題を現実化するという、なんとも突拍子もない申し出であった。元が元なだけに、例えようもなく下衆な提案である。 「え、え?」 浪岡、大いに困惑している。それもそのはずである。とてもまともな輩の言うことではない。こんなヤクザまがいの客には、できれば関わりたくないものである。が、一度でも旨味を享受してしまったら後の祭りだ。 「なあ、どやねんな。このまま口でええんか?」 渡瀬は巧妙に甘い誘いを並べる。 「どうせこんな短い距離やし、大して影響ないやろ」 折しも、車は目的地に到着していた。 「奥さんからも頼みぃや」 彼はそう命じると、例によって彼女に簡単なセリフをつける。 倫子、もうためらわなかった。肉竿をしごきながら、顎を上げて言う。 「タクシー代金……わたしの体で、払わせて下さい……。たくさん、がんばってサービスしますから……」 <つづく> (001)19:53~(010)20:15、(011)20:18~(020)20:44 (021)20:47~(030)21:07、(031)21:09~(040)22:03 (041)22:22~(050)23:53、(051)23:54~(060)00:20 (061)00:24~(070)00:50、(071)00:24~(080)01:36 (081)01:45~(090)03:59、(091)04:12~(100)05:46 目次へ |
子宝混浴 『湯けむ輪』 ~美肌効姦~ こだからこんよく ゆけむりん びはだこうかん ――午前零時四十二分 間髪入れず、二人は男女の仲となった。浪岡に断る選択肢は用意されていなかった。 「どや、エエ具合やろ」 渡瀬が背もたれの後ろからささやきかける。 「あ、ええ……」 浪岡は少し声を震わせながら答えた。ピクリ、ピクリと尻を痙攣させながら。 倫子にはその震えが体の内側から直接感じられていた。彼女は今、運転席にいる彼の股間の上にまたがっているのである。 ふいに話し声が聞こえて、彼女は横目で窓の外を窺った。やや離れた所を、榊原、矢板、そして夫が談笑して通り過ぎて行く。少し身を低くして彼らをやり過ごす。そんなことをしても結果に大差はないのだが。 「料金分、しっかりサービスしぃや、奥さん」 渡瀬はそう言いながら、煙草に火をつける。“料金分”といっても、ワンメーター。深夜の割増し料金でも、紙幣を必要としない金額である。随分安い額で売られた体だ。 もっとも、彼女にとって額面の多寡はこの際問題でない。ただ犯されるという事実が存在するだけだ。どういう状況であろうと、この期に及んで関係ないのである。 倫子は、相手の肩に手を引っかけつつ肘をそのシャツにくっつけて体を密着させ、べったりと彼に覆いかぶさっていた。無論男は仕事着のままであるので、一つ行為に共に励んでいても、傍目には素っ裸の彼女だけが恥ずべきことをしているように見える。もっとも、彼も我慢できなくなったのか、中途から下半身の被服をずり下ろしはしたが。 浪岡はいざことが始まると積極的であった。つかんだ尻を揉みくちゃにした上、ペッタンペッタンと餅つきのようにその肉を弄んだ。そうして結合部の摩擦を激しくするのである。一種の開き直りであろう。元来が規範意識の低い人物であったのだ。初めから性的好奇心を隠しおおせていなかった。そこへ来て吹っ切れたようである。 彼にせがまれて、倫子は口づけを交わした。端から拒む意思はなかった。肩に置いていた手を、徐々に首の後ろに回していく。自然とそうなった。互いの唇の膨らみが、こすれる度にツヤツヤと濡れそぼっていく。それもそのはず、二人の唾液や、先ほど吸着した浪岡のペニスの汁が盛んに混ぜ合わされているからである。クッチャクッチャと、食事中に立てれば眉をひそめられるような下品極まりない音が口辺から漏れる。濃厚という表現がまさに適切なベーゼだった。 「妬けるなあ、おい」 二人の様を見た渡瀬が、隣に向かって話す。すると、藪塚がそれに答えようとした時だった。 “コンコン”と、窓を叩く音がした。車中の皆が見れば、そこにいたのは榊原と矢板である。渡瀬は窓を開けた。 「中々来ぇへんから見に来たら……そういうことかいな」 榊原は言った。 「はよしぃや。今さっき電話あってな、ウーちゃんから。“まだか”いうて――」 彼の話では、先発隊の同志から催促の連絡があったということである。先方はこれから行く店に入っているらしい。しかも、そこに何やら趣向が用意されているということだ。それはやはり、倫子抜きには語りえないというからには、彼女にとっては喜ばしくない趣向に違いなかった。 この辺の事情には、既に渡瀬も矢板も通じているようだ。だがそれを踏まえた上で、渡瀬は言った。 「ちょっとだけ待ってぇな。今この女にタクシー代清算させてるから」 この言葉に車外の二人が興味を示す。渡瀬は事情を説明した。それを受けて矢板、 「だったら、こっちの運転手にもそうすりゃよかったな」 と、悪びれもせずに意見を述べる。 「そやな。そやけど今時間ないから、帰りにそうしょうか」 榊原もうなずいて、ちらりと後ろを見た。連られて他の者もそちらを見る。すると、慌てて目をそらすドライバーの姿が見えた。彼はその場に停車したまま、前方の様子を密かに窺っていたものである。 そこから思いついて、榊原が言った。 「しかしこれ、丸見えやで自分ら」 彼の指摘を受け、渡瀬も外に出てみる。見れば、確かにガラス越しに倫子の背中がよく見えた。何せ裸であるものだから、暗がりでも特にその白い肌が確認しやすい。しかもそれが妙に揺れ動いているのだから、現場での違和感は隠しようもなかった。 「自分ら、走ってる最中もヤッとったやろ。あれも丸バレやったで」 それを聞いて少し照れた振りをしながら、当事者であった藪塚も外に出てきた。彼はつい今しがたまで、自身の肉竿を密かにしごいていた。もし時間がないと言われなければ、次にまたやるつもりだったのである。 「でも、当の“本人”は気づきませんでしたよね」 矢板が横から口を挟む。榊原、それを聞いて笑いながら言った。 「そうや。ちょうどそん時や、今言うた電話があってやなぁ――」 「ついさっきも横を素通りでしたし――」 「なあ! 奥さんには悪いけど、あんたの旦那、あれちょっとアホやで」 二人は笑いながら倫子の夫を愚弄した。当の倫子はその会話をBGMに、浪岡の股間で裸踊りである。それを見つつ、榊原は言葉を続ける。 「ほんで奥さん、あんたまたわざわざこっち見ながら腰振ってたやん。ようやるでほんま――」 と、そこまで言って、彼はもっとすごいことを思いついたらしく、パチンと手を叩いた。 「そや! ほんであんた、途中で車停めて外出てきたやん! あれにはびっくりしたわ。無茶苦茶するでほんま」 これには渡瀬が応じた。 「この女もアホや。夫婦揃って、どうしようもないアホやわ」 男達は嬉々としてその時の感想を言い合った。後ろの車からも、当然に倫子の行動は確認できていた。但し、夫のみは気づかなかったという。いくら電話に気を取られていたといっても、また矢板が気を使ったといっても、いささか鈍感が過ぎはしないだろうか。倫子の頭の中で“アホ”という単語がグルグル渦巻いて、彼女はめまいを覚えた。 と、そこへ、下にいる浪岡からかすかな声が届く。 「ウゥ……ッ、出る……」 たちまちほとばしる熱いエキス。浪岡は彼女の尻を力いっぱい引きよせて、根本までしっかり埋め込んだ状態で射精した。その上で、引き続き濃厚なキスをお見舞いする。 「ンッ! ンンフッ!」 倫子は、目まいの中で脳天からしびれて啼いた。太りきった海綿体で押し広げられた内壁にその青筋の脈動が直接伝わったかと思うと、突き当たりに引っ付いた射出口から勢いのよい子種があふれ出てそこに跳ね返っていく。しかもそうされながら、隙間ない接吻で口を塞がれるのだ。 こんな強烈な子作りはいつぶりだろうか。もし日頃だったら、絶対に子供ができたと直感するレベルであると彼女は考えた。要するに、メスとして究極に満足を得られた状態、女体が喜んでしまう境遇に持っていかれたのである。いや確かに、今日は何度も膣内に注ぎ込まれてきた。だが、先ほどの袋田の時といい、ここへ来てさらに壁を越えたような、何かが取っ払われたような心境になってきたのである。そしてこのことは、倫子の精神にもはっきりと自覚できる段階にまで至っていた。 「ンフゥー……ンフンー……」 彼女は鼻息荒く、腰を微動させた。最後のご奉公だった。浪岡の尻はこそばそうに痙攣していたが、倫子の尻肉も細かく揺れていた。こうして彼女は、きっちりと清算を終えた。 <つづく> 現在時刻0:48(4時間55分経過) 挿入された男根=26本 発射された精液=58発(膣31・尻12・口6・胸5・顔2・手2) (001)19:53~(010)20:15、(011)20:18~(020)20:44 (021)20:47~(030)21:07、(031)21:09~(040)22:03 (041)22:22~(050)23:53、(051)23:54~(060)00:20 (061)00:24~(070)00:50、(071)00:24~(080)01:36 (081)01:45~(090)03:59、(091)04:12~(100)05:46 目次へ |
子宝混浴 『湯けむ輪』 ~美肌効姦~ こだからこんよく ゆけむりん びはだこうかん ――午前零時四十八分 さて、車を降りた一行は、次なる戦場へと向かう。“リング”という名の店だ。ピンクの看板に枠ぶちの豆球が寂しげである。知る人ぞ知る、といった所だろうか。宿泊所よりも駅に近い場所ながら、少し奥まった場所にあって、土地勘がないと探し当てられそうもない。大方は、やはり矢板らの手配客によって成り立つ仕組みであろう。 そこへ倫子は、藪塚と渡瀬に伴われて入っていく。この間も、無論全裸である。その姿はまるで、護送される囚人どころか、運搬される家畜同然であった。己の意思も何もあったものではない。 店に入ると、中はひと際暗かった。街灯の下にいた方がまだ見通しがきく位だ。そして、けたたましい音楽が鳴り響いている。曲は、かれこれ二十年程も前のヒットソングだ。その中に、時折男の声でアナウンスが入る。一種のマイクパフォーマンスのようだが、何を言っているのか倫子にはさっぱり聞き取れない。 そのマイクの男が、間もなくこちらへとやって来た。蝶ネクタイ、吊りバンド、ズボン、靴と、カッターシャツ以外はすべて黒で統一したいで立ち。店の制服らしい。 さらにその後ろから見知った顔も現れる。宇川だ。 「遅かったやないかぁ」 満面の笑みで新参の客達を迎え入れる。その上で、 「これが言うてた人、本日の主演女優様や」 と、さっきの制服の男に向かって倫子を紹介した。 紹介された方は、興味津津と相手の体を上から下まで舐めるように眺めまわす。 その彼に向かって、脇から矢板が挨拶する。 「鎌先(かまさき)さん、どうも――」 「ああ! どうもどうも――」 呼びかけられた男、愛想笑いを浮かべながら応対した。 「今日はすごいことになりますよ! わたしもびっくりしまして――」 矢板が話し始める。 すると、それを引き取って宇川が言う。鎌先と呼ばれた、この店の人間に対してだ。 「――そういうことやねん。ほんで、さっきも言うたように頼むわな」 この一言で、倫子は鎌先へと引き渡された。彼の背へ向けて、宇川が見送りの言葉をかける。 「すまんな、無理言うて」 何が“無理”なのか、その内容を倫子が知る由もなかったが、それはつまり、普段の店の営みとは違うことをやるという意味なのであった。 「――じゃあ、これをかぶってもらえますか」 そう言いながら、鎌先はある物を取り出した。それは、いわゆるプロレスラーがかぶるようなマスクであった。目、鼻の穴、口がそれぞれ開いており、後は側面に何やら飾りがついているようであったが、一瞬のこととてよく確認はできなかった。ほとんど無理やりに、倫子はそれを着けさせられる。 「よお、似合うやないか」 横から出てきた牛滝が、そんな彼女に声をかける。なるほど、先発した一団は確かに皆ここへ来ているようだった。店内は狭い。先ほどいた入り口、その続きのわずかな空間、見れば、そこいらに見知った男らの姿が揃っている。 「わしら、もう退散や。ちょっと見してもうたら、先帰るわ」 誰かが言っている。それに応えて、 「奥さんで散々満足さしてもうたさかいな。ほんで、この後もあるし……」 「ちょっと充電やな」 などと口々にしゃべる声が聞こえる。いずれも、もはや倫子にとり、他人ではない男達である。そういう声は不思議と聞こえるものだ。 「じゃあ、行きますよ」 どぎまぎしている倫子の背を、鎌先が押した。途端に視界が開ける。二人は狭い足場を縫って、真向かいの壁まで移動した。 「レディース・エン・ジェントルメン!」 スピーカーから声が響く。角度の所為か、今度は聞き取れる。 「皆様お待ちかね、本日のメインタイトルマッチ! 挑戦者はこちら――」 倫子は皆まで聞く耳を持たなかった。眼下の光景に言葉を失っていた。サイコロのような背の低いソファー、それが五つ六つひしめきあっていて、それらの前にひざまずいている女性が三人ある。彼女らは皆一様に、椅子に掛ける男性陣の股間に顔をうずめていた。情を知らない女にとって、初めて見るその状況は異様そのものである。 しかし、真の問題はそこではなかった。椅子の上にいたのが、なんと揃いも揃って確かに“見知った”男達の顔ぶれだったのである。それも、ある種今日肉欲を交わした男達以上に恐ろしき面々だ……。 そこへ、マイクの声が高らかに宣する。 「――リンさんです!」 耳をつんざくその名前に、倫子は思わず司会者の顔を見た。 <つづく> (001)19:53~(010)20:15、(011)20:18~(020)20:44 (021)20:47~(030)21:07、(031)21:09~(040)22:03 (041)22:22~(050)23:53、(051)23:54~(060)00:20 (061)00:24~(070)00:50、(071)00:24~(080)01:36 (081)01:45~(090)03:59、(091)04:12~(100)05:46 目次へ |
子宝混浴 『湯けむ輪』 ~美肌効姦~ こだからこんよく ゆけむりん びはだこうかん ――午前零時五十分 一方、彼は何の頓着もなくアナウンスを続ける。“素人”“人妻”“痴女”などといった、卑猥な煽り文句がその口から並べたてられていった。どれも、本日の“挑戦者”を表す単語である。 倫子の顔面から、一瞬に血の気が引いていく。耳朶を通過するどんなあざけりの言葉も、彼女は黙認することができた。しかし、名前は、名前だけは聞き逃すことができない。鎌先は、今確かに“リン”と言ったのだ! 彼女は眼を見開いて、正面を見た。そこには、授業参観よろしく部屋の後方にいならぶ男達の姿があった。父兄ならぬ、性の亡者どもである。ちらちら飛び散る妖しげな淡い光線にまだらに照らし出されて、彼らの顔一つ一つがスローモーションのように浮かんで消えていった。すると、それらはいずれもニヤニヤとほくそ笑んでいるではないか。 (知っている? わたしの名前を!) そう見なすのも無理からぬことだ。偶然にしても、“リン”などという名をたまたま思いつくとは話が上手すぎる。夫、ないしその仲間から聞き出したと考えるのが妥当である。 (ああ……!) 倫子は絶望の淵でめまいによろめいた。夫、仲間、そう、みんないるではないか。ここにみんな揃っている! 右手前に鶴巻(つるまき)、肇の父である。その後方に新木(あらき)、翔太と修次の父。その左側には亀山(かめやま)、まだ幼い娘がいる父親だ。いずれも知りぬいた仲。日頃から同業の誼で、家族ぐるみの付き合いをしている父親達であり、今回の旅行にも共にやってきた。 妻達はいない。ここに来て、その理由は質すまでもなかった。いわゆる、“そういう店”なのだ。妻には分からない、男だけの享楽の間。それが証拠に、見よ、彼らのあの堕落した態度を。誓って言うが、彼らの内誰もが、日頃は良き夫、良き父親なのである。それがどうだ、公衆の面前で下半身を露出しては、どこの誰とも知れぬ女どもに、金で口唇愛撫を強いているのである。 倫子は視線をそらした。正視に堪えなかった。今日は散々男どもの野獣にも勝る本性に触れてきたというのに、こと知っている人間となると桁違いの不快感があった。彼女は、彼らを軽蔑し、一方で憐みもしながら、体を震えさせた。衆人環視の中、マスク一丁のほかに全てをさらけ出した裸体を。 (なんてこと……) ここは地獄である。ここには絶望しかない。人の世に地獄はあったのだ。母として、妻としての倫子の終焉、それを目の当たりにする夫達の、よりにもよって退廃的なふしだらな態度。それらがぶつかって生まれた、これはもう奇跡だった。 鎌先にエスコートされ、倫子は白痴のようにふらふらと覚束ない足取りで、前方の席に進み出た。鎌先が何か言っているが、もう何も聞き取れない。混乱が板に付いていた彼女をさえ、さらに新たな、そして大きな衝撃で驚かせる男達の鬼謀に、倫子は完敗だった。笑いたくなる位だ。 「いいの? ほんとに?」 前面の男が、何か問うている。倫子は彼によって、力無く抱き寄せられた。彼の裸の腿にまたがる格好で。 「――生本番オーケーでございます。衛生面も心配ございません。本日だけのシークレット・マッチ! 本日だけの完全未経験の素人奥さまと、お客様方だけのサービスです――」 鎌先はほかの者にも聞こえるように、マイクを通して返答した。その後は場を移動して客席から離れながらも、また時折不鮮明なトーンで何か煽っていた。 「――奥さん素人だって? ――まだ入ったばっかり? ――この辺の人?」 男は倫子の腰を抱きながら、立て続けに質問を浴びせかけた。倫子は一つも答えないが、それでも彼はめげずに、むんずとそれぞれの乳房を鷲づかみにしながら、下卑たトークに余念がない。 「――顔が見えないのが残念だけど……いい体してるねえ」 既に劣情は高揚しきっているらしく、その手さばきには勢いがあった。ほとんど乱暴ともいえる位に、乳房を激しく揉みしだいていく。思い切り握り締めたり、そのまま縦横にぶんまわしたり……。 「リンさん……だっけ? おっぱい大きいねえ」 彼の声は聞きなじみのある、低くて渋みのある声だった。倫子はふいにはっとして顔を上げた。まるで今初めて気がついたかのような感覚である。だが、これは夢ではないのだ、そこにいた人が急に入れ替わるなどということはありえない。そうだ、彼は鶴巻、肇の父親にして、今回の団体の中で最も付き合いの長い人だ。 思わず直視した彼の目と、こちらの目が合う。鶴巻はそれを興味の表れと前向きにとらまえて、現行の話題を続けた。 「ねえ、おっぱい大きくていやらしいねえ。こんなでっかいおっぱいしてたら、そりゃあスケベにもなるよねえ。ねえ? スケベなんでしょ? リンちゃんは」 その発言は、先ほどの鎌先のマイク・パフォーマンスを踏まえたものだった。その中で倫子は、“淫乱”だとか“スケベ”だとか言われていたわけである。 倫子は鳥肌立てて顔をそむけた。こんな彼を見たくなかった。それは確かに一男性として自然な態度ではあるだろう。だが、肉欲を満々に漲らせて、それを露骨に露わにする彼の姿は幻滅ものだった。しかも、親しい知人の妻である自分に向かって……。 「アッ……!」 鶴巻の指が秘所をまさぐって、倫子は反射的にあえいだ。そして気づいた、相手が決して自分を、すなわち板橋(いたばし)の妻、倫子を対象としているわけではないことに。あくまでも、素人ホステスのリンに欲情しているらしいことに。 「ああっ、リンちゃん、ビショビショじゃないかぁ。やっぱりスケベなんだなあ」 嬉しそうに言って、鶴巻はさらに彼女の尻を近くに抱き寄せた。その柔らかいたわみに、屹立した肉棒が接触する。 ありえないことだ、と、倫子は動揺した、こんなマスクのおかげでまだ正体がバレていないなんて。いや、それよりもっと切実な問題は、鶴巻と性交してしまいそうなことだった。 <つづく> (001)19:53~(010)20:15、(011)20:18~(020)20:44 (021)20:47~(030)21:07、(031)21:09~(040)22:03 (041)22:22~(050)23:53、(051)23:54~(060)00:20 (061)00:24~(070)00:50、(071)00:24~(080)01:36 (081)01:45~(090)03:59、(091)04:12~(100)05:46 (101)05:52~(110)07:07、(111)07:15~(120)08:35 目次へ |
子宝混浴 『湯けむ輪』 ~美肌効姦~ こだからこんよく ゆけむりん びはだこうかん ――午前零時五十四分 「入れちゃうよ、リンちゃん」 彼は耳元に囁いた。耳元といっても、そこは覆面ですっかり覆われているわけだが、このとどめの一言だけは、とりわけよく聞こえた。 「いやっ!」 と、倫子は拒絶したかった。だが何も言えなかった。声を出せば気付かれる虞がある。このマスク、そして照明の暗さのおかげで辛うじて保っている命脈だ。断ち切るわけにはいかない。とりあえず、正体が知られていないことは喜ぶべきことだ。 いや、喜んでいいのだろうか。自分の正体がバレなかったからといって、彼とセックスしていいことにはもちろんならないわけで、彼女の精神的負担はちっとも軽くならないばかりか、むしろ新たな重みを増すことになるのである。倫子にはわけが分からなくなってきた。 「欲しいだろ、んん? こんなにグチョグチョに濡らしてぇ、いやらしいなあ、リンちゃんは」 鶴巻はいよいよ興に乗って、女陰を弄ぶ。合体に至らずとも、もうこの時点で十分な過ちであった。他人の妻の裸を抱き、その恥部を指で確かめることが、一体どのような理由で許されるだろうか。少なくとも、今この場面で通用する言い訳はあるまい。 彼がこのように、風俗店での浮気を倫理的に何とも思わないこと、さらに言えば、そもそも倫子には、彼が次々と卑猥なセリフを連発することが意外だった。こういう性に積極的な所は、中々日常でお目にかかれるものではない。それこそ、配偶者でなければ本来分からないことだ。そう、セックスとは夫婦の営みなのだから……。 (ああ……) 今最も思い出したくない人のことが脳裏に浮かんで、倫子は密かにむせび泣いた。それは、鶴巻の本来の相手である、彼の妻だった。本当なら、彼女一人が独占すべき彼の情報なのである。 背後からは彼が臨戦態勢になっていることが、ひしひしと尻に伝わってくる。女達の悲しみをよそに、鶴巻の欲望はもはや暴徒化していた。 (ああ、どうしよう、どうしよう……) 彼女は狼狽した。だが一方で、どうしようもない、という答えを彼女は既に得てもいた。ペニスは今や完全に発情しきっており、片や倫子のヴァギナも、男の指摘通りすっかり潤っているのである。もっとも、その湿りは、彼が想像したような理由によるものではなく、ほとんどが先客のザーメンによるものなのであったが。 「入れるよぉ……?」 鶴巻は、目的地へ向けまっしぐらな欲棒を、グリングリンと秘唇の溝に沿って動かした。彼のものも濡れていた。それは、先ほどまでいた女の唾液によるものだった。彼女が大きく育て上げ、倫子がそれを喰らうという、いわば前説と本番のような関係だ。 (許して……) 瞬間、倫子は胸に祈った。彼の妻と彼女とは、夫らと関係なしにも親しい友人だった。だが、いくら親しかろうとも、許されるはずはないのだ。そう言う意味では、むしろ残酷な宣言である。 やがて、尻が相手の股間に納まっていった。その時はもう入っていた。 「ん、柔らかい……っ!」 この時ばかりは妙に静かになって、鶴巻は我が手にした女を抱きよせる。言葉少なくなった代わりに、乳房への愛撫をまた積極的にやり出す。手繰り寄せた豊乳を持ち上げ、その先端を大口開けて頬張る。ついぞ考えられもしないことであった。あの鶴巻が己が乳を吸うなどとは。 思えば、と倫子は振り返った。今宵のこの狂った宴は、この鶴巻の息子・肇によって幕を開けられたのだった。彼が倫子を犯したことが、全ての元凶だったのだ。もっとも、あれは確かに不可抗力だったが、それに至るまでに彼女自身のわきの甘さがあったことは否定できない。本当に、どうかしていたのだと自分でも思う。 今ちょうど鶴巻がしているように、肇にも、それに翔太や修次といった子らにも倫子は乳房をしゃぶらせた。そういえば、彼ら兄弟の父親もここにいるのだ。倫子はちらりと横手を見やった。するとそこには、女に陰茎をしゃぶらせて満悦の体である彼の姿があった。彼女は眉をひそめた。 「リンちゃん……」 鶴巻は接吻を所望した。倫子は了承した。向こうの肩に手をひっかけて、上から彼の唇に覆いかぶさる。ブリブリしたふくらみが、滑り合ってはじけた。 唯一つ、肇とその父親とでは違いがあった。それは、キスのあるなしである。肇は、父よりも先に倫子の貞操を奪ったが、唇までは奪わなかった。 倫子は目を上げた、不意に呼ばれた気がしたのだ。視線の先には宇川がいた。そう、彼が最初に唇を奪ったのである……。 と、ここまで思い出して、彼女ははっとした。同時に羞恥に震える。ほかでもない、あろうことか、彼女は鶴巻と肇とを比べだしていたのである。なんという厚顔無恥であろうか。父と子の両方と関係を結んだ上、彼らを品評するなんて。その事実に、改めて倫子はぞっとした。 宇川はその心を見抜いているのではないだろうか。見抜いていて、さも“どっちがいいんだ?”と問いたげに見える。あり得る話だ。というより、彼と初めて交わった時にも、それに近い感想を既に抱いていたことを、彼女は思い出した。 (ああ……なんという……!) 倫子は、我ながら己の恐ろしさに驚き呆れた。誰のせいでもありはしない、みんな己が悪いのだ。結局彼女自身が、生来の淫乱症だったのだ。今も挿入が始まるや否や、すぐにそれに没頭して我を忘れたのがいい証拠である。何が謝罪だ、とんだ寒々しいホラ話である。 (許してぇ……っ!) それでも狂った己を呪いはする。友人から夫も息子もどちらも奪って、のうのうと性の快楽に酔う己を。もう戻れない。化けの皮が剥がれて現れたのは、異常性欲者の自分だったのだ。 「ンッ! ンッ!」 こらえていた声も漏れだす。すぐに剥がれるメッキだ。ここで感じてしまえば、いよいよもってアイデンティティーは崩壊するというのに。 とはいえ、どちらにしろ女体の正直な反応までは隠しようもない。比較してはいけないという思いが、返って女の園を燃え上がらせた。むしろ必死で、それを締め上げて形を捕捉しようとしだす。そもそも、あれほどすくすくと育った肇を最初に生み出した、製造元なのである。ここから出た種が、今では父と変わらぬまでの立派な大きさになったのだ。 固さは固し、長さも、また太さもそん色ない。似ているかどうかは分からぬが、父と息子、いずれのペニスも倫子の熟した体を愉しませるには十分だった。そしてまた卑劣なことに、友人のことを思えば、妙な背徳感が性感を刺激するようだ。その友人にいつも入っている夫のものと、彼女が永遠に知ることのない息子のもの、そのどちらも入れるのは、今後も倫子ただ一人だろう。 「あっ、うぅ、で、出る……っ!」 興奮してきつく締めあげる膣肉に、父親はすぐに音を上げた。この辺りは息子と同様である。 「ダ……ッ、メェ~……ン!」 倫子の制止も虚しく、鶴巻は生殖を終えた。彼女の叫びは、必ずしも膣内への射精を止めただけのものではなかったが、いずれにせよ、彼はこれ以上もたなかった。 勢いよく内部に噴射する精子。これで倫子は、一晩のうちに父と息子の両方から種を授かったのであった。 <つづく> (001)19:53~(010)20:15、(011)20:18~(020)20:44 (021)20:47~(030)21:07、(031)21:09~(040)22:03 (041)22:22~(050)23:53、(051)23:54~(060)00:20 (061)00:24~(070)00:50、(071)00:24~(080)01:36 (081)01:45~(090)03:59、(091)04:12~(100)05:46 目次へ |
子宝混浴 『湯けむ輪』 ~美肌効姦~ こだからこんよく ゆけむりん びはだこうかん ――午前一時一分 「よかったよ」 鶴巻は言った。ちょうど倫子が立ち上がった瞬間だ。彼女の身には、しっかりと親子の種が植え付けられている。 倫子はよろめきながらも、鎌先の介助によって次の相手のもとへと移動した。さりげなく振り返ってみると、どこかから現れた女が鶴巻の足元に近寄り、彼の股間をウェットティッシュやおしぼりで清めていた。 「お疲れ様」 などと、笑顔で語りかけてもいる。要するに、事後の世話を買って出ているわけである。見ていると不思議な感じがした。いわば、セックスがシステム化されているわけだ。男の世界ならではのものだと思った。 そのシステムに乗って、倫子は隣の客の上にやって来た。客は、おいでおいでをしている。先ほどとは違って、話はダイレクトだった。いきなりの挿入である。彼がおっぴろげている股の上にまたがって、何の前触れもなく交合するのだ。こうやって次から次へと客の上を移動して、ただただ精液を絞り出していく、これぞ職業的性交だ。そこに情は必要ないのである。 「中出しされたの?」 合体するなり、客は問うた。これまた普段の彼からは想像もつかないセリフだった。彼は新木(あらき)。風呂場で倫子と戯れ、彼女の乳を無心に吸っていた子達の父親である。鶴巻よりはずっと若い。倫子よりも年下である。その彼が、平生ならば敬語であるにもかかわらず、今は対等に話しかけてくる。もちろん、相手を倫子と知らないでのことだが。 「中出し、いいんだ?」 彼はややはしゃいだ様子で聞いた。ここでの会話は、皆こんなに露骨に猥褻な調子なのだろうか。即席のホステスである倫子には全く分からなかった。それもあって、彼女は相変わらず無言だった。沈黙が返って怪しさを増すかもしれないと一瞬は危ぶんだが、新木は特に意に介さない様子だった。 「ああ、すげえ。久しぶりのマンコ、すげえ気持ちいい――」 彼は言って、倫子の腰をつかみ、前後に揺さぶった。勢いのままにこうなったが、当たり前のように二人は男女の仲となっていた。無論、仮面なくしてはありえない構図であり、鶴巻の時と同様、改めて激しい抵抗感はある。やはり、これは裏切り行為であるからだ。 そういえば、彼は“久しぶり”などと話しているが、家では近頃ないのだろうか。倫子はふと疑問に思った。この辺りは、彼女が狂っている為というよりも、女ならではの厚かましい好奇心の故であった。さすがに聞いてみることはできないが、彼の妻を知っている手前、気にはなった。鶴巻の妻と同様、彼女とも倫子は親しくしているし、夫の愚痴なども互いに言い合っているのだ。 しかし、 「ンッ……ンッ、ンフ……ッ!」 そんな殊勝な考えはすぐさま雲散霧消した。ゴリゴリと硬いもので奥の壁を削られると、途端に浅ましいメスの姿となって快感に身悶える。折しも、先客のおかげで興奮しているさ中、またぞろ卑しい背徳感まで込み上げてきて、不徳の悦楽に拍車をかける。しかもその思いは、思わぬ形で飛び火した。 「ああっ、いいっ! うちの嫁よりいいよ!」 なんと新木からこんなセリフまで引き出してしまったのである。これには倫子も、少なからずショックを受けた。 だがよく思い合わせてみれば、新木の妻は、極めて子煩悩な上に気さくで話しやすい好人物であるが、髪型や着る物にはほとんど気を使わないし、体型も中肉中背で、いわゆる女らしさには些か欠ける印象を否めなかった。辛辣なものであるが、女はそういう値踏みをして常に生きている。倫子は刹那的にそれらを思い浮かべ、一人納得してしまった。 そして得た結論は、ズバリ、己の勝利であった。年は上だが、女としての優位は確実と思えた。いつの間に、彼女はこんな悪性になってしまったのだろうか。ここまでの価値観の解放は、女故ではなく、やはり狂ったが為であっただろう。 「アアン……ッ!」 彼女は勝ち誇ったように吠えた。現に今体内に新木の陰茎がある、これが勝利の証だと。 さっき隣を窺い見た時にはまだ眉をひそめたものだったが、あの後から急速に彼女の中で何かが変わっていた。性そのものを直視するようになったというのであろうか。要は、ここに集っている夫達も自分も、生活とは別個の所で性を発散しているのだと、それ自体が目的化しているのだと悟ったようである。 しかも、ここでの彼女の役割は職業的なセックス士である。次から次へと精子を抜き取っていく仕事だ。その中で倫子は、まるで花粉を運ぶ蝶のように柱頭から柱頭へと渡っていき、しかもそのことに一種の陶酔をすら感じるようになっていたのだった。 見渡せば、他の女達も順々に渡り歩いている。彼女らにとっては、これぞ本職である。よく見れば、今鶴巻の世話をしている女がどうやら先ほど新木の所にいた者であるようで、女達はこのように座席の前を巡回しているのだ。だが、やっている内容には、倫子との間に決定的な差があった。すなわち、彼女らは口で奉仕するのみであって、その中の誰一人として挿入行為にまでは及んでいなかったのである。 「本番ありだなんて、びっくりしたよ」 新木もそのことに触れて言った。 「穴場だねえ。こんな田舎でさあ。――あ、田舎だからかな」 彼にはよほどこのサービスがお気に召したらしい。ハイテンションで、言わなくてもいいことまでしゃべる。 「実はさ、ここ結構年齢層高いじゃん。で、“あ、まあ田舎だし、こんな流行らない店に、しかもいきなり来たんじゃしょうがないか”なんて思ってたんだけどね――」 他の者には聞こえないように一応気は使いつつ、ひそひそと彼は続ける。 「でもさ、リンさんみたいなお姉さんなら大歓迎だよ。後から出て来たの見てびっくりした。こんなナイスバディーとヤれるんだ、って。外人みたいな乳だよね。たまんねえ」 言いながら、彼は倫子の乳房を持ち上げ、そしてストンと落とし、また持ち上げてはストンと落とし、というのを何回か繰り返した。急降下した後に軽く弾んで揺れる脂肪の塊からは、説明不要の重量感がにじみ出ていた。 それにしても、鶴巻といい新木といい、その女の乳の扱い方に実際に接してみればみるほどに、どんどんと彼らの生々しい性の実態を目の当たりにしているようで、倫子はまた最初とは違った感想を抱くようになっていった。この時点では、もはや不快感よりもむしろ妙な高ぶりの方が先に立っていた。向こうは想像だにしないことだろうが、こちらは彼らが誰なのか知っているのであり、それが一種の覗き趣味のような気まりの悪さを生む。家で奥さんにどうやっているか、そんなことまで妄想が膨らんでしまうのだ。 「ンンッ! ンフゥ……ッ!」 舌をからめ合いながら、彼女は身悶えた。その身をたぎらせるのは、またしても背徳感。 さっき新木は、“年齢層”などという言葉を使ったが、倫子が誰かは知らずとも、相手がそこそこの年増であることを察してはいる風である。おそらく彼にとってこういう店に期待するのは、もっと若い相手なのであろう。だが、それでも倫子ならいいと言う。現に陰茎を激しく勃起させ、子供のように無邪気に乳房と戯れているではないか。 果たして妻との交渉でも、彼はこんなに愉しめるだろうか。彼女も倫子より年下である。それでも彼はリンの肉体を選んだ。オスの性欲は、もっと熟した女との繁殖をあえて望んだのだ。彼だけではない、彼の息子達だって倫子の裸を見て勃起していたではないか。まだ機能は未熟だというのに、一人前に彼女をメスと見定めて、これを孕ませようと反応していたのだ。 「なんか、リンさん、すげえエロい……」 新木は言った。それは気持ちを高ぶらせ、体を火照らせて、痴穴からバシャバシャと煮え立った汁をわき出させる熟女を見て、自然に出てきた表現だった。熟れた肉体は、今宵数々の男を経てさらに熟成し、その上タブー破りの連続によって精神的にもかせが取れて、オスの本能を刺激せずにはおかない作品にまで仕上がっていた。 新木の股間はいよいよヒートアップした。より角度をつけ、熱を帯びて突き上げる。倫子も負けじとこれを受け止め、さらには絞り上げさえする。 彼女はふと思った。翔太や修次もいずれこのようなことをするのだろうか、と。思えば、肇も昔は小さかった。彼のことは、ほんの幼い頃から知っている。そういう子と、あんなことをするようになるとは思わなかった。今では、父もろともに子作りをする仲だ。だから、ひょっとすると……。 「あっ、イく! イくイくイッ……うっ!」 倫子の邪まなる欲情に飲まれたのか、新木は急激な絶頂を迎えた。派手な宣言とともに、陰門内部へ怒涛の射出。 「ウッ……フウゥ~……ン!」 倫子は彼の肩を抱きしめて、その全てを迎え入れた。その脳裏を、今はまだ幼い兄弟達の、この父親のとよく似た形がよぎっていた。 <つづく> (001)19:53~(010)20:15、(011)20:18~(020)20:44 (021)20:47~(030)21:07、(031)21:09~(040)22:03 (041)22:22~(050)23:53、(051)23:54~(060)00:20 (061)00:24~(070)00:50、(071)00:24~(080)01:36 (081)01:45~(090)03:59、(091)04:12~(100)05:46 目次へ |
「いよいしょっ! いよいしょぉっ!」 子どもの動きに合わせて、大人たちが声を揃える。 ここはマンション下の広場。今日は餅つき大会である。主役はもちろん子どもたち。といっても、参加しているのはほとんどが小学生以下であるから、杵をふるうのも危なっかしくて仕方がない。だから、大抵は大人が補助に付くことになっている。 「よいしょっ! それ、よいしょぉっ!」 今しも、小さな男の子が餅をつき終わった。まだ未就学児童の彼故、その後ろから杵を支えてもらっての作業であった。つまり、大人と子ども一組で一本の杵を振り下ろすのだ。 「よくつけたねえ」 今その補助役に就いていた男が、少年の肩に手を置きながら言った。米村というこの男は、このような奉仕活動に実に熱心で、地域でも知られた顔である。子どもの扱いも上手い。 男の子は嬉しそうに笑いながら、近くで見ていた母親のもとへと駈けて行った。母親、それを受け止めながら、米村ら担当者に会釈する。 それを見て、臼の傍で餅を返す役をしていた女性が彼女に声をかけた。 「お母さんもどうですか?」 「え、あたしですか?」 母親は困ったようにはにかんだ笑顔を浮かべた。そして、手を振って遠慮を表す。しかし、それは通らなかった。息子が喜んでこの企画に賛意を示したからである。 「そうですよ、碓井さんも折角だから」 米村も口を添えた。彼とこの母親、碓井鏡子とは知り合いの仲だった。地域の役員会で一緒になるからである。年は、今年やっと三十路をスタートさせた彼女に比して、彼は定年も間近の五十代と開いているが、同じ目的を共有する集まりに所属するうち、いつしかざっくばらんに話すようになっていた。 「そうですかぁ?」 方々から勧められて、仕方なしに鏡子は出て行った。午前中から始まった大会はもうあらかた済んでいて、順番待ちのいないことも彼女の登場を後押ししていた。 「じゃあ……」 杵を手に取る。成人である彼女に補助は必要ない。そう誰もが思った。が、その時だった。 「あっ!」 思い切りよく腕を振り上げた彼女が、なんと風にあおられてバランスを崩したのである。刹那、 「危ない!」 と、とっさに飛び出したのが米村だった。彼は、左手で竿をつかむや、右手で体を抱きとめて彼女を支えた。実に迅速かつ適切な措置だった。 「す、すみません……!」 鏡子は恐縮して首をすくめた。そうして、 「意外と重いんですね、これ……」 と、照れ隠しに言い訳をした。 その髪の香りが、米村の鼻腔をくすぐる。体を受け止めた手前、距離は近かった。彼は、右腕をちょっとこわばらせた。そこに乗る背や肩から、柔らかさと温もりが伝わってくる。 結局、鏡子は大人ながら、彼に手伝ってもらって餅をつくことになった。後ろから杵を持ってもらいつつ、ともにそれを振り下ろしていく。 「いよいしょ!」 さっきまでよりもややトーンの下がった掛け声が、後ろから聞こえる。ちょうど頭一個分米村の身長が高い。これが子どもだったら、彼の腹の辺りまでしかないところだが、さすがに成人女性ともなるとそんなに身長差は生まれない。自然密着の面積も大きくなる。声が遠慮勝ちになるのも無理からぬところだ。 しかし、妙な気遣いが差し挟まると、互いの間に微妙な空気の流れ出すもので、鏡子はいささか気恥ずかしさを感じずにいられなかった。そもそも、男性に後ろから抱えられるという姿勢は、通常の生活で滅多にあるものではない。だから、表面上こそ平静を装ってはいるが、内心相手の温もりを意識せずにはいられなかった。 それは、片や米村においても同様であった。むしろこういう場合、男の方こそ気を使うものである。それがいけないことだと理解していても、頭のどこかではやはり彼女を女と見てしまう。男のさがである。それ故彼は、出来るだけ隙間を開けて立つように努力した。 「いよいしょ……!」 しかし、離れて立つと厄介なのは、腕の力だけで得物を支えなければならなくなり、とりわけ手首への負担が大きいことだ。米村にはちとこれが厳しい。そこで、やむを得ず足を前に踏み出す。そうすると、どうしても触れ合う部分が出てくるが、腰の踏ん張りを利かせるためには仕方がないのだ。 だが、これはこれで厄介なのは、また相手の女を感じ過ぎてしまうことである。米村は地域の役員を引き受けて、しかも評判をとる位だから、このような場で公然と性欲を露わにすることなぞ決してない大人であるが、どういうわけか今日ばかりは勝手が違った。やはり男の立場としても、このように女性と密着する機会などまずないからであろう。意表を突かれたようなわけだ。そういう時に限ってエロスを感じるということは、ままあることである。 「いよいしょっ……!」 そういうことは、女の場合にも少なからずある。もし最初から下心見え見えで近づいて来られたならてんで相手になどしないのだが、こういう風に突発的に接触の機会が与えられるとどぎまぎしてしまうのだ。たとえ、相手の男性に異性としての興味がまったくなかったとしても。いや、あるいはそれが為返ってドキリとさせられてしまったのかもしれない。いわゆるギャップの妙である。 米村のことは、いい人だと思っている。新人の鏡子にも親切に色々教えてくれる。それも決して、下心の故ではなくだ。だがそれにしたって、はるかに年上と認識している彼に、男性としての温もりを期待してしまったことは、彼女にとって意外なことに相違なかった。 折しも、彼の腰が臀部にぶつかる。彼が腰を入れて構えだしたためだ。その所為で、彼の重心はやや下方に落ちた。鏡子の髪は今、米村の鼻の先にある。 「よいしょぉ……!」 米村は、にわかな逡巡にさいなまれていた。甘い香りと白いうなじ、腕やその他から伝わる柔らかさと温かみ……、そういったものが彼の理性を揺さぶりにかかる。いくら“よその家の奥さんだ”“あの子の母親だ”と言い聞かせてみても、己の邪な部分がそれを遮って誘惑をしかけてくるのである。こんなことになるとは思わなかった。 彼も男であるからには、それは彼女の美醜に興味がなかったわけではない。下心の全くなく近づいたかと詰問されれば、これを否定しきれない心の弱さもある。彼女は若くて可愛らしい女性だとも認めている。考えだすと、彼女の丸顔、小ぶりな目・鼻・口、和風な面立ち、少しぽっちゃりとした体型、そういうものをちゃんとチェックしていた自分に気づく。 だがしかし、彼女は人妻、そして自分も家庭を持つ身である。何よりいい歳して、若い女に欲情するわけもあるまい。そう、そうなのだ。実に馬鹿馬鹿しいことなのだ。なのに、なぜ男という生き物は、その客観的な思考を実地に生かせないのだろうか。なぜその先の顛末に思いを致せないのであろうか。たった今の性欲、これに我が身を乗っ取られたら、男は終わりである。 米村はさりげなく、本当にさりげなく、股間を前方に動かしていた。目指すは女の桃尻。これに股間を触れ合わせる。無論、少しでも避けられたら即座に中止して誤魔化すつもりだ。 「い、よいしょ……」 鏡子はすぐに知った。時々“当たる”ことを。実は、そういう可能性もあるかと真っ先に考えついていたのである。だから、元から神経をその辺りに集中させていた。ただ、それが当たっていると感じたのは、自分の思い過ごしかもしれないとも思った。米村がそんな行動に出る人とは到底考えられなかったし、何よりこんな場所で白昼堂々とそんな破廉恥な行為が成し遂げられるとはとても信じられなかったからである。 だが、それにしても接触は確かにある。わざとではないかもしれない。しかし、確実に局部が当たってくる。それはさながら、餅に杵が沈むような感じである。不意にそんな例えを思いついて、鏡子はその低俗な思いつきに恥入った。だが一度思いついてしまうと、変な絵が脳裏に浮かんで離れない。柔い膨らみに直立した竿が、ペッタン、ペッタンと打ちつけられる場面である。 女だからといって、性的な妄想を抱かないわけではない。特にこうして具体的な材料を与えられたならば、つい善からぬことを考えて、無聊を慰めたりするものである。妄想は退屈な日常へのスパイスだ。そうして、これに好奇心が加われば、いよいよもってスリルなフルコースの出来上がりである。鏡子には今、不愉快な気持ちはなかった。その頬がにわかに紅潮していく。 「よいしょぉ……ぅ」 ペッタン、ペッタンというより、実際には、グニャリ、グニャリという感じで、杵が餅をこねていく。手元の話ではない。腰元の話である。そして、ついにくっついたまんまになった杵は、餅をへこませて止まった。杵は杵だった。餅をつくのに相応しく、固い。 米村は、とうとう上半身まで隙間なく密着した。完全に前方の背中全体に覆いかぶさる格好である。初めは恐る恐るだったのが、相手が拒まないのでつい調子に乗ったものである。年甲斐もなく、彼は理性を見失っていた。自分が刑罰に向かって歩み始めたことにも気付かず、ただ欲求に素直になるばかりである。 と、その時、突然に彼は前のめりによろめいた。これはわざとではない。単なる油断である。この時、思わず彼は、彼女を羽交い締めにせんばかりにきつく引き寄せていた。 「す、すいません!」 当然謝る。ただし、餅の割れ目に杵の竿を沈着させて。 「い、いえ……!」 鏡子は反射的に答えた。表向きこの会話は、ただアクシデントに付随したやり取りにしか見えなかったが、その裏には、米村が自身の思わぬ発情を人妻に謝罪する隠喩の意味があると、そう彼女は解釈していた。それ故に妙に緊張して、半ば彼の語尾にかぶせ気味に答えたのである。 「いよいしょぉ……っ!」 再び餅つきが始まる。まだ数回しかついていないというのに、鏡子は汗びっしょりだった。さっきから子どもらを手伝っていた米村ももちろんである。二人して汗かきながらの共同作業だ。 とはいえ、本来なら子どもの付き添いである母親の飛び入り参加、ちょっと体験すればいいだけであり、何も本格的にやらずとも良いはずである。そう気づいてから、鏡子はたちまち不安になった。いや、実際にはまだ十回にも満たない回数しか餅をついていないので、誰も不信には思っていないのだが、気になりだすとキリがないものだ。 臼の傍に座って餅を返している女性。鏡子よりもはるかに先輩のベテラン主婦だ。彼女はとうに異変に気づいていて、それでも指摘できずに固まっているのではないだろうか。それから、少し離れたところで談笑している母親たち。ひょっとしたら、自分たちの破廉恥行為を噂の種にしているのではないだろうか。そして極め付きは我が息子。彼は大人の性向をまだ知ろうまいが、いずれ大きくなってから思い返して、この事実を疑うかもしれないし、そうでなくても、これはれっきとした裏切り行為である。 「よい……しょぉ……」 一方、この手の不安は米村にもぼつぼつ感じられていた。やはりまだ命は惜しかったと見える。ここでようやく、性的欲求を保身の利益が上回った。すると、直ちに彼は行動に出た。 「もう出来ますかね……」 杵が臼に落ちた時点で、ぱっと鏡子から離れる。一旦思いきると潔い身の引き方である。 これは鏡子にとり意外だった。もちろん歓迎すべきことであるが、いざこうなると、なぜか一抹の名残惜しさもある。ともかく、これで体験は終了だった。 ところが、実際の終了はもう少し後になりそうだった。臼側の女性が知人に呼び出された為に、役の交代を依頼してきたからである。これを断れない鏡子だ。今度は餅をこねる方を体験することになった。例によってこれに声援を送る息子が、自分もやりたいので、傍に駆け寄ってきて座った。親子並んでの延長戦である。 もっとも、今回は米村と離れているのだから何も憂慮すべき点はない。……はずだった。が―― 「よいしょ……ぉっ!」 代わって一人で杵を振るうことになった米村。それはいい。臼の前に立って己の作業に没頭している風だ。そしてその足元で、鏡子らが餅をこねる。足元で……、つまり、彼の腰辺りがちょうど顔の近くにあるわけで―― 「いよいぃしょぉっ!」 見てはいけないと思った。しかし、一度でも見てしまうと、どうしても目線がそちらに引っ張られる不思議。そうでなくても視界にはそれが入り込んでくる。鏡子は、息子がそちらに気づいてくれないように祈りながら、懸命に顔を伏せる努力を行った。 米村のジャージの股間には、突っ張った山が出来ていた。それが目線の周辺で存在を誇示する。こんな状態を見せては言い逃れできないではないか、と彼の心を責めてもみる。だが、この状況を回避する手立ては考え浮かばない。心なしか、山の頂きには雨が降っているようだ。本当はそんな事実はないのであるが、彼女にはそんな幻影が見えていた。濡れた染みの広がる光景だ。 「よいしょっ!」 当然米村にも自覚はあった。なんとなれば、濡れたわだかまりをすら見せつけたい位だ。欲情してしまった彼は、さっき折角踏ん切りがついたところだというのに、まだしつこく抵抗を試みていた。未練である。 この行為がどんなにリスクのあることかは分かっている。否、本当の意味では分かっていないかもしれない。ことが露見すれば、身の破滅だってあり得るのだ。それなのに見せつけたい衝動を収められないということは、危機への実感が足りないからであろう。その裏には、ひょっとしたら彼女はまだ一連の行為に気づいていないかもしれない、なんて、そんな甘い考えもいまだにあった。 「いよいしょぉっ! いよいしょぉっ!」 餅つきとは、古来男女の営みを象徴化したものという。打つ男性と受ける女性、そして、共同作業で餅を誕生させる構図。今、知らず知らずその象徴的意味を体感しながら、互いの心を一つにして、餅つきに精を出す男女であった。 〈おわり(?)〉 |
子宝混浴 『湯けむ輪』 ~美肌効姦~ こだからこんよく ゆけむりん びはだこうかん ――午前一時七分 「ンンム……」 二人は余韻に浸りながら唾液を交換する。 その様子を、横からじっとりと眺めている者があった。次の番を待つ、亀山(かめやま)である。彼もまた今回の旅行の参加者の一人だ。 倫子は例の段取りに沿って、今度はもう鎌先の介添えも要せずにそちらに向かった。次にさばくべき客、という認識である。その心には、些かの安堵と油断があった。 だが、その心境に到達するには、まだまだ時期尚早であった。 「あああぁ、リンさん……」 倫子が腿にまたがるなり、亀山はその背に腕を回して彼女をきつく抱き寄せてきた。この時彼女は、前二者の経験を踏まえて、彼もまたこの場限りの性欲にまい進し、そのはけ口としてリンという女性を見ているだけだと信じていた。そこには、高揚しきった心と体と、そして男らが己をメスとして選んでくれたことへの一種の驕りが作用していた。それ故、もはや彼らの秘められた本性を目の当たりにしても、一定の慈しみを覚えたほどである。 ただ、そう判断してみても、亀山の興奮ぶりは少しく異常であった。かなり呼吸が荒いし、何より目が笑っていない。鬼気迫るほど、真剣そのものなのだ。 間もなく倫子は、その衝撃的理由を知ることになる。その瞬間は、唐突に訪れた。抱きしめた手を緩めて、ちょっと間合いを置いた亀山が、うっとりとした眼差しで彼女の目を見つめ始めたその時だ。 「リン……さん……。あの……リン子さんって、呼んでいいですか……?」 にわかにそんなことを申し出たのである。 倫子はぎょっとして固まった。 (バレた!) 心臓を握りつぶされたようである。これまでのことは、ほんの短い夢に過ぎなかった。やはり見抜かれていたのだ。つい己の淫乱症にかまけて甘い見通しに酔っていたが、普通に考えて気付かれないはずはない。そんな暗い絶望感が、彼女を再び取り巻いていく。どんなに狂っても、やはりバレたくはなかった倫子なのである。 「すいません……。でも……リンって名前だし……」 亀山はやや照れながらも己が主張を述べ続ける。 「体だってこんなに……む、胸も……」 倫子はもはやうわの空だった。知られているのといないのとでは、雲泥の差なのだ。彼女はまだどこかで、この痴態を隠し通せる未来を信じていたのである。 「アソコも……ああ、すごい……」 亀山は倫子の体の一部始終へ、まんじりともせずに視線を這わせた。そして、まるで高価な芸術品を扱うかのように、おずおずとその輪郭を撫でていく。その様子は、半ば狂気じみても見えた。 「ずっと……好きだったんですよ……!」 彼は言った。その一言が、新たな波乱を現場に呼び起こす。 (え?) 倫子は困惑した。素性がバレた上に、わけの分からない告白まで始ったのだ。だが、話は悪い方向ばかりにも進まなかった。 「――“その人”のこと。……だから、リン子さんって、呼んでいいですか?」 勢いのままに、心にため込んできたものを遂に吐き出したという態の亀山。その余勢をかって、彼は男根を陰裂にあてがった。 「入れていいですか?」 許可を欲しているのではない、それは確定事項だった。肉竿は、早くも割れ目の道へと潜り込んでいく。 「あっ、やっ……!」 (ま、待って!) 倫子は戸惑いを隠せない。一つ一つの事実を整理していく暇もないのだ。そんな中でも、男根の突入は止まらない。すぐに根本まで入って、二人は一体化した。本当なら、倫子は拒みたかった。二つのことをだ。一つは、“リン子”という名で呼ばれること、もう一つは、合体である。彼女の中で、ドキドキが治まらない。 「リン子さん、好きです! 好きです、倫子さん!」 興奮した亀山はうわ言のようにそう繰り返しながら、倫子の腰をかき寄せて揺さぶる。 (か、亀山君?) 段々落ち着いて考えてみると、彼が自分の正体に気づいたわけでないらしいことは、倫子にも何とか理解できた。彼は“その人”と確かに言ったのだ。だが、それ以外に打ち明けた内容は、一体どういうことなのだろうか。こちらは依然謎である。 すると、その問いに答えるかのように、亀山がひとりでに告白を続ける。 「初めて会った時から、ずっと好きだったんですよ! だから、ずっとこうしたいって……」 その言葉は、一々倫子をドギマギさせた。彼は確かに自分を同一人物だとは思っていないはずだが、妄想の空では既に同一視してしまっているらしい。彼の中では、完全に倫子を抱いていることになっているようだ。何とかそれを思いとどまらせたいが、理由が難しい。変に勘繰られては厄介である。それ故声も上げられずに、倫子は彼の述懐を聞くしかできなかった。 「ああっ、この胸! すごい……! いっつも谷間を覗いてた……ブラの線も……これ、このデカパイ!」 言いながら、亀山は彼女の乳房をブルブルと震わせた。両手でその周囲を包み小刻みに動かすと、柔い肉の表面はさざ波を作って振動する。 「お尻も……いつも見てた。パンツの線も。パンチラだってしょっちゅう。――そうだ、この前鍋した時、ずっとパンツ見えっぱなしでしたよね。倫子さん、いつも無防備だから。……それとも、わざと見せて誘ってたんですか?」 彼の口は、次第に滑らかになっていった。相手の尻を手の形がつく位ギュウッと握りしめて、己の性癖を続々と吐露していく。その偏愛ぶりは、一途というよりもむしろストーカー的だった。 (亀山君……わたしのこと、そんな風に……) 倫子は耳を赤くして彼の独白に耐えていた。その内容には驚きもし、同時に気恥ずかしさも感じた。彼の場合、常日頃から倫子その人を性の対象として狙い定めていたわけだ。これは、彼女にとり信じられない事実だった。 亀山は、以前夫の下で働いていた男である。いわばそこで修業し、後に独立したわけだ。年は新木よりも若い。下積み当時は一緒にいる時間も多く、倫子も女将さん的な立場で自然と彼をかわいがりもした。そんな若者が我が身を色気づいた目で見ていたなんて、想像もしないことだった。今では結婚して、可愛い奥さんと娘にも恵まれているのだから、なおさらである。 「いっつも倫子さんでヌいてたんですよ、このオッパイや、おマンコ想像して。――それから……フフッ……」 不敵な笑みまで浮かべる彼。その話の中身とも相まって、ぞっとする感じである。 「――奥さんの下着盗んだり、歯ブラシにぶっかけたこともありますよ」 (そ、そんなことまで!) 倫子の背筋を寒気が走る。自分の今の境遇を棚に上げて、今後の彼との距離の置き方などを思案しだす。しかも、彼は今“奥さん”と言った。それこそが、平生の彼の呼び方である。おかげで、一気に話が身近になった気がした。一方で、“倫子さん”とも呼ぶ彼。一人の女として見ている証である。 「倫子さんっ! 倫子ぉっ!」 ついには呼び捨てまでしだす始末。それに比例して、肉棒は益々凝り固まり、その摩擦はどんどん激しくなる。 (こんなことって……!) 煩悶する倫子。建前上は倫子と亀山ではないのに、これでは実質同然だ。まるで亀山に犯されているようである。その彼がまた、普段の爽やかな風貌とは打って変わって、屈折した性癖の持ち主だったからには、輪をかけて複雑な気分である。 ただ、彼の倫子への熱意は本物だった。肌を合わせると、はっきりとそれが分かる。彼は心から、倫子としたくてしたくてたまらなかったのだ。そういう一直線な求め方をされると、女の情は脆い。彼女の股間からは生暖かい汁が白く泡立って落ちた。 「おっ、おお、倫子、倫子! 好きだよ、倫子!」 いくら店内が騒々しいといったって、こんなに鮮明に名前を連呼しては、彼にとってもリスクが大き過ぎる。すぐ近くの席には、倫子の夫も控えているのである。そうでなくても、周囲の知人に聞かれるだけでまずいはずだ。だが、それでも彼はやめない。それほどの情熱を傾けているのである。 「ア……ン、ン……アッ……アフ……ッ!」 女体も次第に呼応していく。激しく求められるセックスは、やはりいいものだ。こんなに“好き、好き”連呼されて、現に逞しい態度で示されたら、既に燃え上がっている熱情の折も折、ほだされて股も緩んでくる。 「うああっ、イくぞ、倫子! 孕め! 俺の精子で孕めぇっ!」 「ンヒイィー……ッ!」 (亀山くぅ……んっ!) 亀山の掛け声とともに、彼の欲望の全ては、横恋慕する人妻の中へと一気に注ぎ込まれた。片や人妻、刹那は夫のことも忘れて、その歪んだ情熱に酔いしれる。 <つづく> (001)19:53~(010)20:15、(011)20:18~(020)20:44 (021)20:47~(030)21:07、(031)21:09~(040)22:03 (041)22:22~(050)23:53、(051)23:54~(060)00:20 (061)00:24~(070)00:50、(071)00:24~(080)01:36 (081)01:45~(090)03:59、(091)04:12~(100)05:46 目次へ |
子宝混浴 『湯けむ輪』 ~美肌効姦~ こだからこんよく ゆけむりん びはだこうかん ――午前一時十三分 「ハアハア……」 両者はまるで二人だけの世界に没入したかのように甘い時を刻みだす。寸分の隙間もなく抱き合い、お互いから求め合って舌をからめる。射精の前後から、倫子の方も相手の背に腕を回すようになっていた。しっかりと抱きよせて固定し、相手の口を占拠する。まさに愛し合うセックスの体である。 精液を入れてしまわれれば、女体は自分ではなくその男の所有に帰するものだが、倫子もまた亀山によって手なずけられ、彼の命令に従いその種を孕まんとする勢いであった。それをさらに決定づけようとでもするように、彼の男根は一向に萎えない。膣の感覚では射精の有無を感知できない倫子でも、勃起は分かる。そこで彼女は、射精がいつまでも続くことを漠然と疑った。 すると、亀山がその実態を説明した。 「ねえ……もう一回していい?」 やや遠慮気味にではある。一度女を自分のものにして少しは落ち着いた様子だ。しかし、倫子への情熱の炎はいまだ冷めやらず、その驚異的な熱さは抜かずの二発を所望させたのであった。 ただ、こういう店には本来種々の制限があって、この店のように女性が回転して接客する場合にはなおさらシビアに判断されるものだ。もし今のような特殊なケースでなかったら、この願いは叶わなかった可能性もある。しかし、そこはやはり特別な今夜である。事情を知らない酔客にとっては、ただただ幸運であった。 新人風俗嬢は拒まない代わりに、濃厚な唾液の応酬によって答えた。業界の習いに則さない彼女にとって、これはただの性交に過ぎないのである。鎌先も何も言ってこなかった。彼女は軽くアシストすらように、自ら股間をすりよせていく。 対して、最初はさすがに及び腰だった亀山も、段々と最前の活況を取り戻していった。間もなく激しい腰振りを再現しだし、併せて持ち上げた乳房の先端を吸い上げていく。 「ンン、フ……ッ!」 倫子はその責めを受け、己が手の甲を口に当てながらのけぞった。思わず声が漏れる。愛を求められ、あまつさえ発情しきっていた肉体はあまりに脆かった。ことに乳首は敏感甚だしい。 その反応に気を良くして、亀山は一層責める。右・左、左・右と絶え間なく移動しては、母乳も吸い出さんとばかりに強く吸引する。その上吸われてたわんだ脂肪をその根本から両手で先端へと揉み搾っていく。 「ンッンッ、ンフ~ン……!」 かかる不埒な搾乳に、身も蓋もなくよがり鳴く豊乳熟母。暴れん坊の赤子の頭をきつく抱き寄せる。これは苛烈な求愛を耐え忍ぶためでもあったが、同時に更なる刺激を欲してのことでもあった。現に膝を揺り動かしては、自ら性交を助長している。貪欲なのである。 これに亀山も男気で応える。 「エロいよ、倫子。またいっぱい中出ししてやるからな」 実に驚くべき持続力によって連射を現実のものとする彼である。メス穴も受精の悦びに勇んで締め上げる。ところが、続いて発せられた彼の一言が、にわかにこの悦びに水を差した。 「旦那の横で思い切り孕ませてやるからな」 この時倫子はちょうどまたのけ反って宙空を見上げている最中だった。そこでこの言葉を聞いて、思わず彼女は左に視界を広げた。左側の席にいる者を見たのである。すると、たまたま相手もこちらを見ていた。 「アアァッ!」 たちまち彼女の口から断末魔の喘ぎがほとばしる。決して忘れていたわけではない、が、その存在が意識から遠のいていたのは事実だった。 「旦那よりオレの子供を産みたいんだろ?」 亀山は己の言葉に陶酔した様子で囁く。彼の中ではいまだ“リン”と“倫子”の同一視が続いているのである。すなわち、彼は倫子のみならず、恩人であるその夫をまで辱めんとするつもりなのだ。 「ンギ、イ、ヒ、イ、イ、イ……!」 倫子は歯を食いしばってこの凌辱に耐える。否、これは果たして凌辱なのか。女の体は、現に占拠されている男根の持ち物ではなかったか。折しもウィークポイントを亀頭で削られて、彼女は迷いだした。夫、それは我が子の父親であり、絶対的な存在のはずなのに。 「イッ、イッ、イィヒッ……!」 その腰は遠慮しない、迷いの中でも。ヴァギナは静止することなく仕事を続ける。ペニスを芯までしゃぶり尽くし、その精を自身に取り込もうとする考えだ。 熟妻は目まいを覚えながら打ち震えた。ゾクゾクする感じが背中から腹から同時に上ってくる。今は顔を右に向けて、その上念入りに目まで閉じていたが、さっき見た視線はその網膜から離れなかった。確かに目が合った、次の客と。忘れてはならない、次の客は決まっているのだ。 彼はまだ観ているのだろうか、そう思ってみても、発情した女体の欲するところは変わらない。厚かましくも素直に快楽に向けばく進していく。それでも保険はかけておきたい。 (あの人も気づいていない……気づいているわけない……!) そう自分に言い聞かせて、少しでも安心を得ようとする。安心の中でこそ最高の快感が得られると思うから。ところが、それをあざ笑うかのように亀山が、 「見てるよ、旦那。倫子が中出しされるとこ」 と囁きかければ、途端に脳髄がしびれて不思議な満足感が降りてくるのだ。倫子は反動で亀山の背中をかき寄せた。膣門がぐっと閉まる。 (来る……来ちゃう……っ!) 暗闇の中でも肌に突き刺さる視線が分かる。マスク越しとはいえ見られているのだ、かつての部下に種付けされる淫乱妻のアクメ顔を。そうと分かっていながらあえて登り詰める性感は、もはや如何ともしがたい。 「ンッ! アフッ!」 倫子は節操を保てなかった。昇天――。同着で亀山の精液が膣房に広がる。その激しい脈動の中、彼女は亀山と接吻を交わした。たとえ社会上の配偶者が誰であろうと、動物本来としての夫は常にどういう者であるかを傍観者に知らしめるかのように。 <つづく> (001)19:53~(010)20:15、(011)20:18~(020)20:44 (021)20:47~(030)21:07、(031)21:09~(040)22:03 (041)22:22~(050)23:53、(051)23:54~(060)00:20 (061)00:24~(070)00:50、(071)00:24~(080)01:36 (081)01:45~(090)03:59、(091)04:12~(100)05:46 目次へ |