おことわり
R18
このブログには、エッチなことがたくさん書いてあります。まだ18歳になっていない人が見ていい所ではありません。今からこんな所を見ていると、将来ダメ人間になってしまいます。早くほかのページへ移動してください。

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なお、掲載している小説はすべて虚構であり、実在の人物・団体等とは一切の関係がございません。

    
お知らせ
「オナこもりの小説」は、エロ小説を気ままにアップしていくブログです。たまに、AV女優や、TVで見た巨乳のことなども書いています。左サイドにある「カテゴリ」から、それっぽい項目を選んでご覧ください。



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妄想の座敷牢羞恥の風ましゅまろくらぶ



小説には、連続作品と一話完結作品があります。連続作品は、左「カテゴリ」の各作品名より一話から順番に読むことができます。また「目次」には、各作品の概要などをまとめた記事が集められています。

■連続作品
◆長編作品
「子宝混浴『湯けむ輪』~美肌効姦~」

◆中編作品
「大輪動会~友母姦戦記~」
「青き山、揺れる」 ▼「師匠のお筆」

◆オムニバス
「母を犯されて」

◆短編作品
「育てる夫」  ▼「最後の願い」  ▼「ママの枕」  ▼「ブラック&ワイフ」
「夏のおばさん」  ▼「二回り三回り年下男」  ▼「兄と妻」

■一話完結
「ふんどし締めて」
「旧居出し納め・新居出し初め」  ▼「牛方と嫁っこ」  ▼「ガンカケ」
「祭りの声にまぎれて」  ▼「シーコイコイコイ!」  ▼「サルオナ」  ▼「母の独白」
「童貞卒業式」 ▼「お昼寝おばさん」  ▼「上手くやりたい」 ▼「珍休さんと水あめ女」
「栗の花匂う人」「乳搾りの手コキ」 ▼「妻つき餅」 ▼「いたずらの入り口」
「学食のおばさん便器」 ▼「山姥今様」 ▼「おしっこ、ついてきて。」

作品一覧

旧居出し納め・新居出し初め
「いやあ、二人のおかげで、ホント捗るな」
啓成(ひろしげ)は隆々と筋肉の盛り上がった前腕で、日光にきらめく額の汗を拭った。褒められた二人は「いやいや」などと謙遜している。彼らもまたいずれ劣らぬ筋肉の持ち主だ。三人は学生時代のラグビー仲間で、啓成の一学年先輩が次郎(じろう)、一学年後輩が義就(よしなり)。今日は啓成の引っ越しを手伝いに来ていた。

 「ほぉんと。たった三人でもう片付いちゃった」
荷物をすっかり運び出した旧居から、セミロングの外はね茶髪を揺らしながら啓成の妻・厚子が出てくる。目鼻立ちのはっきりとした顔に派手なメイクを施した上、いかにも気の強そうな目力を湛えた、一種の美人である。ちなみに彼女と夫は元同級生で、次郎と義就を含め皆同じ学校に通っていた。

「恭章(やすあき)来い。新しいおうちに行くぞぉ!」
啓成は今日の為に借りたトラックの運転席に向かいながら、あと数か月で六歳になる息子・恭章を手招きした。息子は素直に駆けていき、父の太い腕にひょいっと抱え上げられて真ん中の席に納まる。助手席には次郎が乗り込んだ。トラックは定員の都合で全員一遍に乗ることが出来ない。大人の男三人は二人ずつ交代でこれまで二往復し家具を運搬してきた。運び出す荷物はこの便が最後である。

「出発進行!」

「オー!」
親子の元気な号令で、三人を乗せた車は走り出す。それを見送って、厚子と義就が屋内へ戻った。

「もう大体は掃除し終わったんだけど。あとさ、こういう……」
ガランとした家の中で、厚子はフローリングに這いつくばる。後から続く義就は、そのタイトジーンズの尻を絡みつくような視線でじっとりと眺めた。はち切れそうな程ピチピチに張った尻の表面には、くっきりとV字形の曲線が浮き出ている。彼はおもむろにそれへ近づくと、戯れに己の股間をピッタリとその谷間へ押し付けてみた。

「ちょっと、何してんの!」
驚いた厚子が咄嗟に腰を引いて逃れ、振り返る。その緩い胸元を、義就はじっと見つめた。厚子はその意味に気付いてTシャツの襟を押さえる。主張の強いGカップが深く黒い谷を覗かせていたのだ。

「相変わらず、でっけえな」
心の声をそのまま声に出す義就。あえてズケズケと品評するのも昔馴染みの気安さからだ。かつて一度は我が手中に収めた物。厚子と義就は学生当時に恋人同士であった。まだ啓成と付き合う前の話だ。

 彼は今日一日ずっとムラムラしていた。久しぶりに昔の女と会ってみれば、驚く程その体型が変わっていないばかりか、年輪を重ね、人妻となりまた母親となって、むしろ当時より強烈な色香がムンムンと肌から立ち上っている。作業をして汗ばんでくればなおさらの色気だ。

 朝からじっくりと盗み見てきて、義就はもう我慢の限界だった。

「あっちゃん!」
言うが早いか組み付いて、またぞろ股間を尻に押し付ける。

「キャッ!」
厚子は逃げる。床板に指を立て、這いつくばって前進する。男はそれへ覆いかぶさると、ある秘技を使った。

「ちょっと、やめて!」
たちまち苦悶の表情を浮かべ、女の口元が緩む。それは義就の得意技、押し倒しながらの全身くすぐりであった。あらかじめ弱点は心得ているのでツボを押さえるのは造作もない。甘え上手な後輩カレシは、よくこれを使ってじゃれたものだ。彼女の身もだえようは、ウィークポイントが年を経ても変わらないことを証明していた。

「ちょ、ムリムリ、ほんっと無理ってば」
多少の懐かしさも覚えつつ、厚子は苦しそうに笑いながら身をよじって逃れようとする。義就はもちろん逃すまいと押さえ、巧みに服を脱がそうとする。まずジーンズに手を掛ける。と、厚子がそこをガードしにくるので、今度はシャツをたくし上げにかかる。慌てて厚子がそちらに向かえば、改めてジーンズを。こうして、厚子の肌は徐々に剥き出しになっていった。

 さあここまでくると後は簡単だ。確かに昔馴染みの油断もある。大体レ○プというのは知人によって行われるものだ。厚子も無論抵抗し続けたがそこは女の細腕。所詮男の、しかも剛腕な彼には敵いようもなかった。床に突っ伏して抑え込まれ、

「ちょぉっとぉ!」
非難も虚しく義就の勃起が厚子の背後からぶっ刺さって消える。下着を肉棒そのものでずらし、汗まみれの素肌を滑って、熱く蒸れた肉穴の奥へと、深く深く。

「スッゲ! 寝バックのマ○コ気持ちいい!」
家具もないガランとした部屋の中で重なり合う男女。強引にブラジャーごとめくり上げられ、露出した乳房がひんやりとしたフローリングの上にひしゃげる。横にはみ出たスライムのようなそれを、義就は倒れ込んだまま撫でまわした。手の平にポチャポチャした柔らかさが心地よい。そうしながら、じっとりと汗ばんだ後ろ髪の生え際に唇を寄せる。

 ゾワゾワと総毛だたせて、厚子は歯を食いしばった。過去の男に情愛など無く、今は純粋に友人として見ている。夫が助っ人に彼を連れてきたのには驚いたが、吹っ切れている分素直に受け入れられたものだ。だからこそ、この仕打ちは悔しかった。何より己の脇の甘さに腹が立った。

 とはいえ、事ここに至りなばもう終わるまで耐えるほかない。新居まで片道ニ十分。これまでの経験上、大体トータル一時間前後で行き来するはずだ。それまでになんとか! 夫も子 供も悲しませたくない彼女である。

 ゴリゴリに固まり切った怒張が、パチュンプチュンと小さなあぶくを弾かせながら、入り口の肉壁を両脇へこんもりと盛り上げつつ、しっかりとくっ付いたまま激しく出入りする。

「たまんねえよ厚子。お前も久しぶりのチ○ポ気持ちいいだろう」
勝手な男は一人悦に入っている。黙りこくっている女にもお構いなしに、密着して腰をくねらせる。男の腹と女の背中。裸の体温が互いに伝わり合う。それが男には心地よく、女には不快に受け取られた。

「旦那のチ○ポよりいいだろ。なあ、お前オレのチ○ポ大好きだったもんな」

「(そんなわけあるか!)」
厚子はどちらの問いも一蹴したが言葉には出さなかった。ただただムカムカした。入室を許可していない男は、しかし強引に居座って室内を荒らしまわっている。例えば天井を叩き、例えば床を踏み鳴らし、その上壁に汁気を撒き散らす。

「あの頃は生でヤらせてくれなかったけど、やっぱ生気持ちいいわ」
そう言われて厚子はハッとする。案の定、彼の台詞は次の通り続いた。

「なあ、このまま中出ししていい?」

「は? テメェ、ふっざけんな!」
これには遂に厚子も声を荒らげざるを得なかった。それも若い頃のようなお里の知れる口ぶりに戻って。冷静に言えば、避妊せずに交わりだした時点で危険なのだが、それよりもコイツの吐き散らかしが体内に注がれることこそ不愉快だったのだ。

「いいじゃん、いいじゃん」
義就は笑いながら言って上体を起こした。うつ伏せの女体に騎乗するような格好となる。その体勢で尻の両肉を広げると、肉棒をくわえている膣がパックリと開いてよく見えた。フニャフニャとした尻肉を両手で持って水面のように揺らすと、汗のたまった肛門までパクパクと開閉する。彼は上からその光景を見下ろしつつ、自身を出し入れして愉しむ。挿入当初は湿り気程度だったのが、いつしか穴の内部までヌルヌルと濡れそぼっている。

「エー、ダメ?」

「外に……ていうか、早くして!」
急かしたのは終わりを促す意味だったが、相手には伝わらなかった。むしろ気分が乗ってきたと捉えたものだ。義就は厚子の腰を持ち上げると、そのまま四つん這いにさせて後ろからガシガシと腰を叩きつけた。

「ちょ……早く(終わって)」

「なんだ、まだ早く? そっか、激しく突かれるの好きだもんな」

「ちが……」
パンパン、パンパンと空の室内に響き渡る、男と女の肌がぶつかり合う音、それから豊満な乳房同士が弾け合う音。厚子の鼻腔から刹那的に甘い吐息が漏れる。女とは経験を積むほどに男が恋しくなる生き物。まして日頃は夫婦という許された関係の中でのみ体を重ねていたら、その反動でどうしてもその場に臨んで慣れた反応を示してしまうもの。恥部が濡れるのも声が漏れるのもそういう理屈だ。

 義就は義就で、この久しぶりに手に入れた肉体を我が手に取り返すべく、まさに男を見せつけるべく奮闘したものだから中々に粘った。元々性には強い方だ。厚子が彼をフッたのも、実は彼の求めるしつこさとその態度の軽薄さの故である。

 男女はくんずほぐれつ揉み合い、ほかに誰もいない住居で恥知らずな営みを続ける。綺麗にした床を汗まみれで転がり、二人でハアハア言いながら、我が物顔でこの家を占拠している。本来主人夫婦がするべき営み。しかし夫は既に去り、残った妻だけが頑張っている。この家で最後に作られる命は、妻と間男による婚外子となってしまうのか。

 時間は刻々と流れる。体位は後背位から正常位へと移っていた。厚子は間男の手で大股開きさせられ、揺れ回る乳房も全部さらけ出している。ドスドスと上から下へ杭のように打ち付けられる男根。まだイかない。

「ンッンッ……!」
向かい合う相手の体を突き放そうともできず、厚子はしおらしく手の甲を口元に当てて眉根を寄せた。目は開けない。一つには男を見ないためで、もう一つには自分との闘いだ。女故に体が返してしまう反応を認めたくない。

 そんな中、遂に恐れていた時が訪れた。外に車のエンジン音が聞こえだす。それほど長く交わっていたのか、あるいは想定より早く戻ってきたのか。とにかく厚子にはすぐに危機が分かった。義就の胸をドンドンと叩き首を横に振る。

「ムリ! もうムリ!」

「あとちょっと、もうちょっとでイくから」

「ムリだって! 終わって! 早く!」

「中で、中でいい?」
厚子は遂にヤケクソでブンブンと頷いた。

「いいから、早く終わってぇ……!」
義就はラストスパートを掛けた。玄関の外ではもう話し声がする。ひと際高く聞こえるのは恭章の可愛い声だ。それを聞きながら、父ならぬ余所者男は全部の種汁を膣内に流し込んだ。そうしながら倒れ込み、厚子に唇を重ね、無理やりそれを開くと舌をねじ込む。ネロネロと舌を絡め、最後のとどめとばかりねぶり倒す。厚子はされるがままだ。

 気が気ではないスリルの中、痴穴を収縮させる厚子。肉体は桜色に染まり、少し前とは違った発汗で全身を濡らしながら肩で息をする。しかしその後の行動は速かった。彼女はすぐさま起き直って身支度を整える。

「おう、どうだ片付いたか」
息子を伴って啓成が入って来る。

「うん、まあ、大体」
そう言いかけて、厚子は慌てて手元の雑巾を取り寄せ床をさっと拭いた。先程自分が付けた背中の汗が跡になっているのを見つけたからである。彼女はそれを気取られないように早口で続けた。

「まあ、残ったとことか、あっち片付けてからまた来てやろっかな。後でまた思い出すこととかあるかもしれないし」

「そうか」
夫は特に気にすることもなく、

「しっかし、暑いな、この部屋」
と、室内に漂う独特の熱気に辟易し、シャツをつまんでパタパタとやった。その後ろで義就は涼しい顔をしていた。





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[2022/04/13 22:00] | 一話完結 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
大輪動会-プログラム#60-(終)


  *


 金光が家に帰ってまず目の当たりにしたものは、息子が母親に挑みかかろうという場面だった。

「おい! 何してる!」

佳彦を引きはがすと、現れた勃起から粘液が弧を描いて散り、彼は尻もちを着いた。父は顔をしかめ、その腹を思い切り蹴飛ばす。

「あっち行ってろ!」

佳彦はなお立ち去りがたそうにしていたが、父が殴るような素振りを見せると諦めて逃げていった。母ともう一発の野望は遂に叶わなかった。

 さて、と向き直る。今度は妻の始末である。その姿は明らかに何かの事後であった。

「やってくれたな!」

何から責めたものかも決めかねて、とりあえず大声でなじる。妻はぼんやりとしたまま無反応。

「どういうつもりだ!」

金光は盛んに大声を上げて、間もなくつかみ掛かろうとしたが、相手の体が妙に濡れているようで、また先程の息子の件もあり、まるで汚らしい物に対するが如く、その手を引っ込めた。

「今まで何してやがった」

ここでようやく有紀の機能が復旧してきた。

「あたし……犯されたのよ」

「あ?」

「あたし、レ○プされたの。あたしねえ、集団レ○プされたのよ!」

口に出す内に段々と言葉は強くなる。それに負けじと夫も語気を強めた。

「何言ってる」

「集団レ○プ! 分かんない? あんたの妻が、男共に寄ってたかって乱暴されたのよ!」

「チッ!」

気がふれたような妻の剣幕は夫をただただ苛立たせる。彼女の体を見れば、確かにそういうことかもしれない。だが、彼がここに来たのは、第一に妻の浮気問題を糾弾するためであって、一足飛びに別の事件を持ち出されても混乱するばかりだ。

「前原はどうした。お前、オレが知らないとでも思ってんのか!」

「は?」

有紀はまだ動画流出の件を知らない。それで、もはや過去となった愛人のことを今さら夫が気にしているのを見て一気に鼻白んだ。

「どうでもいいでしょ、あんな奴」

「どうでもいいことあるか!」

金光は激高してソファーを殴った。

「お前のせいで大迷惑だ! マスコミも嗅ぎ付けやがったし……」

有紀は最後まで聞かず、ふいに立ち上がってフラフラと歩き出した。

「おい、どこへ行く」

「警察。警察呼ぶのよ」

「ダメだ」

「じゃあ、あんた呼んでよ。顔利くんでしょ、先生」

「警察は関係ない。呼ぶ必要ない」

「なんでよ! あたしレ○プされたのよ! あたしが証拠よ!」

「いい加減にしろ!」

金光はとうとう妻を蹴り飛ばした。

「お前、どんだけオレに迷惑かけたら気が済むんだ! オレの立場を考えろ!」

彼の考えでは己の社会的立場こそが第一だし、なんとなればそれは家族にとっても最重要課題のはずだった。

「オレの金で贅沢できてんだろうが! それを、つまんねえ浮気なんかで足引っ張りやがって。ロクなことしねえなあ! このバカ女が!」

有紀は蹴られた反動で突っ伏したまま、相手の顔を見ずに床の先を睨んでいる。

「レ○プだあ? どうせお前が連れ込んだんだろうが。このアバズレめ」

ここで息子のことを思い出した。

「さっきのあいつ、あれなんだ? お前、自分の子 供にも手ぇ出したのか」

「フン」

有紀は鼻で笑った。

「アイツもレ○プ犯よ」

「とんでもない母親だな! どんな教育してんだよ」

「は? あんな奴息子でもなんでもないわよ。気に食わないんだったら、愛人ちゃん達に新しい子でも産んでもらえばぁ? ま、どうせ、あんたの子じゃ、キ○ガイしか出来ないだろうけど」

「黙れクソが!」

金光は妻の髪の毛を引っ掴むと床にその顔をこすり付けた。決して我が子への侮辱に怒っているのではない。口の減らない“バカ女”にただ腹を立てているのである。

「もういい! 出ていけ!」

吐き捨てて、とりあえずタバコに火を点ける。有紀はゆっくり起き上がると、ノロノロと出口へ向かった。その背中へ念を押す。

「おい、余計なことすんじゃねえぞ」

警察への通報を念頭に置いた発言だった。有紀は一切歩みを止めることなく去ってゆく。それを見て金光はまた舌打ちすると、おもむろに電話を手に取った。

「おう。カンか」

掛けた相手は元金光配下で一時はナンバー2にまで上り詰めたが、任せられたシンジケートの薬物に自ら手を出し、身を持ち崩した挙句に今では己の名前すら忘れてしまった憐れな男である。

「仕事だ。ツラ出せ」

それだけ言って切る。ほとんどまともな会話も通じない相手だが、命じれば何でもやるので汚れ役をさせるために飼っている。

「愛人に新しい子 供か。フン、なるほどな」

一人呟いて鼻で笑う。金光の念頭には今、妻とさらに息子に対するある決着があった。

 その時玄関のチャイムが鳴った。出てみると一人の青年が立っている。豪志という彼は裕福な家の御曹司で、現在は金光家のいわば食客という身分である。後々は政界へ進出する予定だ。

「先生、おはようございます」

育ちの良さを絵に描いたような朗らかさで、能天気に笑っている。昨夜来の事件も知らず、平常通りの訪問であったが、生憎主人の機嫌は悪かった。

「家内を見張ってろ」

「え、見張る?」

初めての指示に聞き返すも答えてくれない。

「……あの、奥様はどちらに」

「知らねえよ、自分で探せ」

いつにない剣幕で怒鳴られ、豪志は逃げるように奥へ入った。金光はそちらをもう見ようともせずに、新しいタバコを取り出して、また新たな電話を掛ける。

 豪志は戸惑いながら捜索を始めた。この邸宅に出入りするといっても隅々まで見たことはない。寒々しい廊下をただ何となく気配のする方へ進んでいくと、忙しなく物音を立てている者を見つけた。

「あっ」

思わず声を上げ、慌てて隠れる。開け放たれた部屋の中で派手に探し物をしていた人こそまさに尋ね人であったが、彼女が素っ裸であったので遠慮したのである。

「誰? あ、豪志君?」

「す、すみません」

「何? 何か用?」

こちらもまた、いつになく抑揚のない調子で早口に言う。彼ら夫婦は通常彼に対して比較的温厚なのである。豪志は一瞬ためらったが結局白状することにした。

「先生に、奥様を見張れと」

「ああ……」

有紀は素っ気なく応じた。この無考えの青年は言われたことを言われるがままにやっている。まだ立ち入った仕事は任せられず、したがって金光の負の職域には触れていない。つまりは金光本体の一派には組み込まれていない。そんなことを頭の片隅で考えて、ふと彼女は手を止めた。そうして部屋の外に佇む豪志の元に近寄る。

「ねえ」

「お、奥様」

豪志が目のやり場に困って顔を背ける中、有紀は一層彼との距離を詰めた。サラサラしたカッターシャツに、昨日から勃起しっぱなしの乳首がこすれ、さらにギュウッと肉塊がうずもれていく。

「お、奥様、どうされたんですか」

有紀は答えず、相手の腰から尻の方へと手を回し、腿で股間の辺りをまさぐる。もちろん豪志は身を逸らそうとするが、彼女はこれを逃がさない。

「時間が無いの。じっとして」

乳房を密着させながら有紀の顔は徐々に下降していった。事態を察した豪志は焦りに焦る。

「ま、まずいですよ、奥様」

「どうして? わたしじゃ不満?」

そんなことはない。そのことは彼の熱くなった股間が証明していたし、有紀も足で感じて気付いている。豪志から見ても彼女は日頃から魅力的だった。もし“先生の奥様”でなければ願ってもない誘いだったろう。現にきっぱり振り払おうとも逃げようともしない。

「大丈夫」

そう囁きつつ有紀はファスナーを下ろすと、ゴソゴソと肉茎を取り出すが早いかパクリとそれを吸い込んだ。全く躊躇の無い動きだった。その上口をモゴモゴさせながら手をベルトに掛ける。が、外すのは困難だった。

「ほら、自分で脱いで」

「でも……」

「早くしなさい」

命じられたからには逆らえない、とばかり、豪志は下半身をさらけ出す。夢みたいなシチュエーションだと思った。夢はさらに続く。日頃見飽きる程見つめてきたあの大きな乳房、それがありのまま拝めているだけでも驚きなのに、その持ち主はなんとそれを持ち上げて、その谷間でペニスを包み込んでみせたのだ。

「奥様ぁ」

歓喜の声が漏れる。勃起はKカップに埋もれてすっかり姿を消し、不可視の領域で全身をズリズリと摩擦されている。亀頭から先走りの白い汁が飛べば、他方で乳首からはミルクがポタポタと垂れた。

「(大きい人はみんなこんなことが得意なんだ)」

とは彼の感想だが、どうしてどうして一夜漬けのテクニックである。哀しいかな昨日の経験は彼女をパイズリ名人に仕立て上げたのだった。ギュウッと押し付けた親指でへこんだ窪みがその乳圧の凄さを物語る。

 豪志はもう自分から腰を使い始めた。膝立ちの女の胸に向けてヘコヘコと腰を打ち付ける。親には見せられない情けない姿である。

「奥様ぁ!」

最後はとうとう胸の中で射精した。けたたましく震えて全部中に出す。圧迫がきつ過ぎて最初は精液も見えなかったが、後にじわじわと谷間の上の方に滲み出して水たまりが出来た。有紀はそれを湛えたまま肉棒を抜いて立ち上がる。

「お願いがあるの」

白い水たまりを見せつけるように捧げ持ち、相手の目をじっと見つめて言った。

「ねえ聞いてくれる?」

彼女がさり気なく胸を揉みだすと、間のダムが決壊し粘液がドロドロと腹の方へ落ちる。その行方を追う豪志の目線が、やがて漆黒の森に行き当たった。二人の間でまだ勢いのあるわだかまりがビンビンとしなる。

「中でお話しましょうか」

これで豪志の理性もまた決壊した。閉ざされた部屋で彼は有紀の乳房にむさぼりつく。己の精液が付くのも厭わず、揉みしだき、あるいは舐めしゃぶる。

 そしてやがては森の奥へと移る段階で、有紀はさり気なく攻守交代を促した。なんとなく恥部を直視されたくなかったからである。あれだけの輪姦の後で、どういう変化があったかを知られたくない思いがあった。

「時間がないから、ね」

興奮する男を半ば強引に押し倒して、再び怒張を頬ばる。程なく、それが使用可能なことを知った。すると、自ら跨っていく。

「ゴム……」

「いいの」

生身の男根が一気に女陰の奥へと引きずり込まれた。直前の挿入からまだ一時間と経っていない。最後に入れたのは駐車場のバスの外だった。体に仕込まれた記憶がフラッシュバックする。

「アンッ!」

思いがけず艶めいた喘ぎが漏れた。絶え間なく肉棒を嵌められ続けてきて、彼女の穴はもう空洞であることを忘れていた。久しぶりにまた塞がれて、何やら安定したような感覚である。肉体が輪姦専用機に作り変えられていたことをにわかに思い出したものだ。

 何も知らない豪志はただただ艶めかしい有紀の身悶えに圧倒されていた。女体として最高の出来だと思う。引き締まったくびれ、それに反比例して豊満に突き出た胸、整った顔、重厚な尻。それらをサワサワとさすりつつ、暴れ回る乳房に顔面をぶつけて、彼は肉棒を上下に出し入れする。もうどうなってもいいと開き直り、子種汁を噴射するのはもう時間の問題だった。

 その頃、金光はとりあえず電話で済ませられる用件を終え、気分を変えるべく朝のリフレッシュタイムに移っていた。椅子に腰かける彼の足の間には次女の瑞穂がおり、父の勃起した陰茎をペロペロと舐めている。生まれた時から仕込んできただけあって、父自慢の口淫技術である。

「ミーちゃん、ほら、パパのおチ○ポミルク出るよ、飲んで飲んで」

父は甘えた声で言うと、次女の小さな口にドバドバと精液を流し込んだ。先程妻を責めた口でこういうことを言う。金光とはこういう男である。ちなみに、既に長女の処女は奪っている。次女もやがては自分が初めての男になるつもりだ。

 そういえば、と次は長女に奉仕させるつもりで彼はその部屋へ向かった。ようやく気分が落ち着いてきた所だったが、娘の部屋へ入るや否や、また激怒することとなる。

「何やってんだ、貴様!」

父が見たのは、長男の佳彦が長女の清美とまぐわっている場面だった。紛れもなく彼の陰茎は娘の膣に挿し込まれている。金光はやにわに息子を突き飛ばすと、さらに掴みかかって、二発、三発と顔や頭を殴り、それでも飽き足らず、腹を何度も蹴飛ばした。

 それを見て、長女は耳を塞いで恐れ戦いた。彼女は兄との性交を何ら恐れてはいなかったが、それというのも今朝が初めての交わりではなかったからである。だが、父の暴力を見たのは初めてだった。後から付いて来た次女も同様である。二人してワンワン泣き出した。

「うるさい!」

金光は怒り狂い、それもこれも皆妻の所為だと思い至って、ようやく彼女の所在を気に掛けだした。

「お前も覚えてろよ!」

丸まって動かない息子に捨て台詞を吐くと、ドスドスと音を立てて屋敷内を歩き回る。どこへ行っても見つからない。最後に中庭へ出ると、やっと豪志に出会った。

「アイツはどうした」

「いや、それが、いないんです」

「は? 見張ってろっつっただろうが!」

「す、すみません。でも、見つからなくて」

「ふざけんなクソが!」

金持ちのボンボンだからと甘く接していたが、今日ばかりは枝野らと同様に殴り倒してやろうと、金光は豪志の胸ぐらを掴む。が、柵の向こうが騒がしいと気づいて、まずはそちらを見た。マスコミだ。屋敷の前をマスコミの連中が取り巻いている。庭のその辺りは外からも覗き込めた。

「チッ」

金光は舌打ちして手を離す。それから幾分トーンを落として吐き捨てた。

「お前なんかクビだよ。とっとと出ていけ。二度とうちに来んじゃねえぞ」

こうして豪志は追放されたわけだが、これが幸運だったことに気付くのはもう少し先のことである。

 さて、金光は家中探し回ったが妻は見つからなかった。それもそのはず、彼女はもうそこには居なかった。豪志を体で買収し、脱出したからである。着の身着のまま、最低限の貴重品と現金だけ持って。買いためた服も宝石も全部手放したが、命より高いものはない。

 初めは車で逃げようとしたが、前述の通り記者が張っており表から出られない。そこで逃げ込んだのは、なんと隣の島田家であった。島田その人が招き入れてくれたのである。彼は多くを語らなかったが何かと察している様子だった。結果、自ら車を出し、有紀の逃走を手助けした。

「(罪滅ぼしのつもり?)」

そんな悪態が脳裏をよぎる。そのほか様々な罵詈雑言も浮かんだ。だが有紀は一言も口に出さなかった。助けてもらった恩義からというより、そのどれも見当違いで、今や空々しく思えたからである。

「フン……フ、フフ、フハハハハハ……!」

無言の車内で有紀は突如けたたましく笑った。大人数に丸一日輪姦され、夫から命を狙われて逃げ出し、積み上げた何もかもを失った挙句、その輪姦魔に助けられる滑稽さ。たった一日で一変した我が身の上こそあまりにも劇的だ。

 だが、心は清々しかった。ちょうど化粧の剥がれた今の顔が物語っている。それはまるで憑き物が落ちたような晴れやかさで、すっきりとしていた。

 車は町を出た。有紀は里には戻らず、知人を頼って別の街へ行くつもりだ。


  *


 金光家の没落は早かった。端緒となった不倫問題から芋づる式に悪事が露見していった。何しろ叩けば埃しか出ない体だ。おまけにマスコミが面白おかしく騒ぎ立てたので余計に拍車がかかった。町の人間や反対勢力がかねてから準備を進めていた結果である。とうとう金光は複数の汚職事件で何度も逮捕され、犯罪者となった彼は表舞台から姿を消した。

 ならば父祖伝来の裏社会で生き残ろうともがくも、当人に才覚がない上、日頃の行い故に人望もなく、周りからどんどんと人が去ってゆき、あるいは敵対勢力に寝返られ、ほとんど四面楚歌の有り様となって破綻。

 今は邸宅も売却され、土地が島田に戻るかといえば中々そうもいかないが、ともかくあれだけ幅を利かせた名物一家は、その一味も含め瞬く間に町から姿を消したのだった。

 当の金光は祖国へ渡り一念発起をと最後の望みをかけたが、生まれも育ちも異なる地で今さら地盤を築けるわけもなく、差別され社会に溶け込めないまま孤独に死んでいった。

 彼らの子らもまた憐れで、父が亡くなるよりも随分前のこと、川で顔の確認出来ない少年らしき変死体が発見されたがこれが佳彦であるという。陰茎部分がそぎ落とされていたり、体の損傷が激しく、まるで拷問を受けたかのようであった。間もなく“カン”と自称する住所不定無職で外国籍の男が逮捕されて事件は収束。通常に比して大きな話題とならなかったのは、遺族が名乗りを上げなかったからである。

 二人の娘は施設に預けられたが、いずれも体が弱く、また日に日に精神障害が激しくなったせいもあり、続けざまに他界してしまった。

 このほか金光に加担したり取り入ったりしていた者はことごとく失脚し、距離を保っていた猪瀬や舛添ですら隠居となったし、村本は己の横領が発覚して逮捕、秘書の枝野などは罪をかぶって偽装自殺させられた。

 直前に解雇された豪志は幸運で、政治家こそ断念して町を離れたが、今は家業の子会社を任せられている。例の流出動画で一躍時の人となってしまった前原も、ほとぼりが冷めてから細々と働きだしている。

 ところで、あの大輪姦に関わった男連中はというと、一切の罪に問われることなく、それ以前にあの件自体が世に出ることなく、ただ当事者だけが知る記憶となっている。ということは親告されなかったわけである。

 あれだけ金光が話題となった時も、当然に注目されるべき派手妻の存在は忘却されていた。あの強烈なモンスターペアレンツの記憶も、PTA役員の一方的放棄を不問に付したことも、いつしか人々から忘れ去られていったのは、破廉恥な動画流出がある意味禊と見なされたためかもしれない。町から消えた彼女をさらに追い詰めようとまでは誰も思わなかった。それに、もっと大きな禊を彼女が為したことを、一部の人間は知っていたから。


〈完〉





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[2022/04/06 22:00] | 「大輪動会」 | トラックバック(0) | コメント(2) | page top
大輪動会-プログラム#59-


  *


「まだ早いだろ」

玄関ホールに降りてきた金光は明らかに不機嫌な調子で言った。袋田の勧めもあって、折角だから朝風呂でも浴びて、飯も食っていこうかと考えていた。だが秘書は、今すぐに、と急かす。到着してから金光の仕度を待っている間ももどかしかったものである。

「お電話でも少しお伝えしましたが……」

枝野というこの男は、主人の腕を取らんばかりに車へと促した。金光はそれを嫌ってノロノロと靴を履く。

「なんの問題だ。揉み消せよ。大体なんの為にお前がいるんだ」

人目もはばからずに広言する。この男は元来不真面目だが、ここ近年はそれに輪を掛けて働く気がない。だから大抵の処断も秘書に任せっきりだった。

 枝野は、詳細はあくまで車中で、とここでの説明を避けた。それが結果的に勿体ぶるような格好になって、金光はなおイライラとした。

「オレが出る程のことなのか」

ブツブツと愚痴りながら、袋田らに挨拶もせずに車に乗り込む。

「実はご家族の問題で……」

「あ? 家族が? お前になんの関係がある」

「いえ……申し上げにくいんですが……その……」

「早く言えよ、早く」

「奥様がですね……」

「ん? 奥様?」

そこで金光はピンときた。両者黙って目を見合わせる中、機先を制して金光が言った。

「浮気か」

「……はあ」

「クッソ、あのアマ! 散々金やってりゃいい気になりやがって」

ドン! と前のシートを蹴飛ばす。腹立たしいことこの上ないが、妻を盗られた悔しさよりも、目下の関心事は事後処理だ。秘書が出てきたということは醜聞が世に出るという意味で。

「どこの記事だ。それこそ揉み消せないのか」

「いや……記事じゃなくてですね……ネットで」

「ネット?」

そういう事情には一向疎い彼である。

「はあ、ネットに浮気の、その……現場というかですね……が、出回りまして」

それがどれ程の影響をもたらすものなのか、いまだに金光には分からない。そこでとりあえずと、現物を確認するしかなかった。

「今あるのか、それ」

「ええ……まあ……」

「見せろ」

「え、み、見られますか」

「いいから見せろよ、早く」

枝野からタブレット端末を奪い取ると、金光は教えられて件の動画を再生した。それはつい昨日の朝撮影されたばかりの、例の教室内の情事だった。彼は眉間に深い皺を寄せて画面を凝視していたが、

「おいコイツ、あの弁護士か!」

と、顔を上げて秘書に怒鳴った。ずっと運転席から半身を向けている枝野、決まり悪そうに頷き返す。動画内には、有紀と前原の絡み合う表情がバッチリと映っていた。

「カーッ……あの野郎」

金光の脳裏に昨日会った前原の顔がまざまざと思い出される。通りで熱心に来ていたものだと、全ての線が繋がった。自分が間抜けな役回りを演じさせられていたことにやっと気づいたものだ。そもそも妻に関心が無いから疑いすら持たなかったのである。

「おい、そういやアイツどこ行った。夕べ泊まったんじゃないのか」

思わず振り返って窓から大輪館を窺う。

「いえ、もう出ていった後でしたね」

「チッ、クソが」

金光はもう一発、ドンと座席シートを蹴った。

「それで? これどうすんだ」

「それがその、既に昨夜から“祭り”状態で」

「あん?」

知らない言葉が出てくるとイラッとする。

「かなりネット上で炎上騒ぎになっていまして」

「知らねえよ、消せよ! これ……どこに出てんだか知らねえけど」

「いえもう、どことかいうレベルではなくて」

「うるせえな! なんとかしろ! お前の仕事だろうが」

金光は言うが早いか、枝野の後頭部を掴んでハンドルへ叩きつけた。ドン、ドン、ドンと三発やって、さらに平手で頭を殴る。

「と、とりあえずですね、ご自宅の方にお送りします。事務所も“電凸”……で、電話が鳴りやまない状況で……」

枝野は涙目になりながら必死で言ってエンジンを掛けた。


  *


 やっとの思いで帰宅した前原は、顔を洗って着替えると、結局一睡もしないで出勤した。事務所に着いてみると、周囲の人間が皆自分に妙な視線を送っているのに気が付く。早速親しい同僚に問い質してみようとした矢先、彼は所長に呼びだされた。

「どうだった向こうは」

「ええ、滞りなく用件も済みまして」

本当は散々な目に遭ったわけだが、それを報告する必要はない。ここまでは日常のやり取りだった。

 所長はおもむろに書類を出すと、デスクに広げたそれを黙ってトントンと指で弾いた。見ろ、という意味なのは明らかで、前原は素直に覗き込む。直後、その目が見る見る見開いていった。それはよくある週刊誌のスクープ記事だったが、問題はその題材で。

「朝一で届いたよ。さすがに大手は仕事が早いね」

間もなく全国で発売されるという。すなわち、ある町議会議員の夫人と顧問弁護士の密会、いや密会とは生ぬるい、生々しい営みの写真だ。ご丁寧にも文章では行為の順序まで下劣にも書き綴られている。名前は伏せられ、顔に目線こそ入っているが紛れもない。

「これ……君だね?」

「違うんです」

そう言いたかった。が、これがここに届いていて、それを目の前に突きつけられたということは、つまりそういうことだ。前原は力なくうなだれ、もはや返事をする気力も失った。すると、所長が励ますように言い出した。

「いやなに、君を責めるつもりはないんだよ。むしろ――」

彼は立ち上がって前原の肩に手を置いた。

「よくやった、と言っていいのかもしれない」

言われた方が意味を解しかねて不安気に相手を覗き込むと、所長は親切に応えてくれた。曰く、彼は金光の政敵側の人間と懇意にしていて、今回のスキャンダルは結果として彼らを利することになったと。これを皮切りに続々と不祥事を暴く流れに繋げ、最終的には金光を失脚させるのが狙いだということだった。何しろ叩けば出るほこりは随分と多い体なのだ。

「君も聞いているか知らないが、あの人のおじいさんがね、これがかなりしたたかで、二代目に継がせた後も院政を敷いて、その間は地盤も盤石だったんだが、亡くなってからね、いわゆる二代目で傾き、三代目で潰すを地で行くような有り様で」

昨今では金光家に対する風当たりもようやく強くなり、従来あちらサイドだった連中も見切りをつけ始めているという。

 前原はただただ聞いていたが、正直な所己の身の上が心配過ぎて、話はいまいち頭に入ってこなかった。それを目ざとく察して、所長は記事の方に改めて目を落とす。

「しかし学校というのが少々まずかったな……しかも運動会の最中とは……幾らかうるさい偽善者が湧いてくるだろうが」

またしても不安にさせるようなことを言ってみるも、すぐに向き直り、

「まあ、なんとか抑え込めるさ。危惧する程のスケールにはならないよ」

と話してニコリと笑った。さらに、

「しかし君も案外大胆な男だね、ハハハ」

と付け足して大いに笑った。つられて前原も微かに口角を上げたが、笑っている場合ではないだろうと自身をせせら笑っていた。


〈つづく〉




〈現在の位置関係〉
▼自宅
有紀、佳彦、清美、瑞穂
▼車中
金光、枝野
▼事務所
前原


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[2022/03/15 22:00] | 「大輪動会」 | トラックバック(0) | page top
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